桜木詩音様
シオンちゃん、と書いていい
いのかどうか、しょっぱなか
ら考え込んでしまうのですが、
でも
僕にとっては、そうとしか呼
びようがないので、とりあえ
ずこう呼ばさせて下さい。
シオンちゃん。何から書けば
いいのか、気持ちだけが先走
て、息苦しいほどです。
とりあえず、順番に書いてい
くしかありません。
まず、去年の十二月のはじ
めに、しおんちゃんが僕に会い
に、わざわざアメリカへ、ラ
インベックまで来てくれたこ
と。
僕はそのことをおととい、知
ったのです。これを書いてい
るのは四月八日。信じてもら
えるかどうか、まったく自信
はありませんが、
僕はこの四ヶ月のあいだずっ
と、そのことを知らなかった
のです。
それどころか、僕は詩音ちゃ
んに対して、失望していたく
らいなのです。
なぜなら、詩音ちゃんがアメ
リカに来てくれた日、僕は
成田空港で「待ってくれている
はず」の詩音ちゃんを、ひとり
でずっと待ち続けていたから。
六時間ほど待ちました。
話が前後してしまいますが、僕
は仕事で知り合った人の紹介で
十月に、自然農法を実践してい
るひとりの思想家と出会いま
した。
詳細は長くなるので省きますが、
僕はこの人の考え方に強い影響
を受けて、しばらくのあいだ、
学校を休学し、彼の畑で働かせ
てもらことにしたのです。
農場は人里離れた山奥の村に
あり、そこには電話もパソコン
もなかった。詩音ちゃんには、
山にこもる前に、メールでその
ことを伝えたつもりでした。
これからしばらくのあいだは、
郵便で手紙を出して欲しいと
書きました。でもなんらかの
トラブルがあって、そのメール
は届かなかったようですね。
その少し前に、チュンユーと
の出会いがありました。