もしも好きな人ができても
あんまり何にもあげないこと
にしよう
林檎がほしいと言ったら
へっ ととぼけた顔をして
ぼんやり見つめよう
そうするとその人はあきらめて
自分くふうするだろう
もしもその人が
空を見たいと言ったら
すみわたった青空を見たいと言ったら
えっ ととぼけた顔をしてその人を
じいっと見つめよう
そうするとその人は考えて
言ってもムダだと思うだろう
何もかもあげすぎたばかりに
きらわれてしまったことのある
私だったから
あんまり何にもあげないこと
にしよう
林檎がほしいと言ったら
へっ ととぼけた顔をして
ぼんやり見つめよう
そうするとその人はあきらめて
自分くふうするだろう
もしもその人が
空を見たいと言ったら
すみわたった青空を見たいと言ったら
えっ ととぼけた顔をしてその人を
じいっと見つめよう
そうするとその人は考えて
言ってもムダだと思うだろう
何もかもあげすぎたばかりに
きらわれてしまったことのある
私だったから
家のなかで顔を合わせるたびに、
夫とわたしは諍(いさか)いを
繰り返していた。
夫は、わたしが仕事を続けたい
なら、借家を引き払って、母親の
家で同居して欲しいと、盛んに
言い立てた。義父は多額の財産を
残して、数年前に他界していた。
義母はわたしを嫌っていた、にも
かからわず、わたしたちと一緒に
暮らしたがっていた。いや、もっ
と正確に言えば、彼女は息子と
孫娘と一緒に、暮らしたがって
いた。
義母との同居はしない、近くに
住むだけ。それは結婚するとき、
夫と交わした約束事のひとつだ
った。
「せやけどそれは、あんたが家に
、という大前提のもとでの約束
やったはずや」
と、夫は言った。だから、どっち
かにしてくれ、と、夫は主張した。
わたしはどちらもいやだった。
仕事を辞めてずっと家にいる生活
も、仕事を続けながら義母と同居
する生活も。
そんなある日、娘が学校で描いた
「お母さんの絵」というのを持ち
帰ったことがあった。
そこにはわたしとは似ても似つ
かない、着物姿の女性が描かれ
ていた。
「琴子ちゃん、この人、ママに
全然似て似てへんねえ」
と、わたしが言うと、娘はランド
セルのなかから一枚の写真を取り
出して、わたしに見せた。
「おばあちゃんがね、この写真
見てかきなさと言わはったの。
琴子のママは世界中でこの人ひ
とりだけなのやと、言わはった
んよ」。
それはお宮参りの写真だった。
生まれたばかりの赤ん坊を抱いた、
若い母親の姿が写っていた。
このような出来事は日常茶飯事
だった。けれども夫には何も
話さなかった。わたしが話せば、
夫はおそらくこう言っただろう。
「それはあんたが、母親として
のつとめを怠ってるせいやろ」と。
家のなかは荒涼とした砂漠でも、
一歩家から出ればそこには、優
しい人とわたしの世界が広がって
いた。毎日、玄関から外に出て、
家を背にした瞬間、わたしの耳
には家が崩れ落ちてゆく音が聞
こえていた。同時にわたしの躰
のなかで、後妻であり継母(まま
はは)である女が死に、みずみず
しい別の女が目を覚ますのがわかった。
夫とわたしは諍(いさか)いを
繰り返していた。
夫は、わたしが仕事を続けたい
なら、借家を引き払って、母親の
家で同居して欲しいと、盛んに
言い立てた。義父は多額の財産を
残して、数年前に他界していた。
義母はわたしを嫌っていた、にも
かからわず、わたしたちと一緒に
暮らしたがっていた。いや、もっ
と正確に言えば、彼女は息子と
孫娘と一緒に、暮らしたがって
いた。
義母との同居はしない、近くに
住むだけ。それは結婚するとき、
夫と交わした約束事のひとつだ
った。
「せやけどそれは、あんたが家に
、という大前提のもとでの約束
やったはずや」
と、夫は言った。だから、どっち
かにしてくれ、と、夫は主張した。
わたしはどちらもいやだった。
仕事を辞めてずっと家にいる生活
も、仕事を続けながら義母と同居
する生活も。
そんなある日、娘が学校で描いた
「お母さんの絵」というのを持ち
帰ったことがあった。
そこにはわたしとは似ても似つ
かない、着物姿の女性が描かれ
ていた。
「琴子ちゃん、この人、ママに
全然似て似てへんねえ」
と、わたしが言うと、娘はランド
セルのなかから一枚の写真を取り
出して、わたしに見せた。
「おばあちゃんがね、この写真
見てかきなさと言わはったの。
琴子のママは世界中でこの人ひ
とりだけなのやと、言わはった
んよ」。
それはお宮参りの写真だった。
生まれたばかりの赤ん坊を抱いた、
若い母親の姿が写っていた。
このような出来事は日常茶飯事
だった。けれども夫には何も
話さなかった。わたしが話せば、
夫はおそらくこう言っただろう。
「それはあんたが、母親として
のつとめを怠ってるせいやろ」と。
家のなかは荒涼とした砂漠でも、
一歩家から出ればそこには、優
しい人とわたしの世界が広がって
いた。毎日、玄関から外に出て、
家を背にした瞬間、わたしの耳
には家が崩れ落ちてゆく音が聞
こえていた。同時にわたしの躰
のなかで、後妻であり継母(まま
はは)である女が死に、みずみず
しい別の女が目を覚ますのがわかった。
誰にも気づかれず
月が消え
枯れ葉が落ちて若葉が生まれ
秋になって
雨があがって虹がかかる
夕焼けの空に言葉を探すより
きみに帰らんあぜ道沿いに
YouTube
Tatsuro Yamashita 山下 達郎 - kissからはじまるミステリー
https://mixi.jp/list_community_voice.pl?id=79929
月が消え
枯れ葉が落ちて若葉が生まれ
秋になって
雨があがって虹がかかる
夕焼けの空に言葉を探すより
きみに帰らんあぜ道沿いに
YouTube
Tatsuro Yamashita 山下 達郎 - kissからはじまるミステリー
https://mixi.jp/list_community_voice.pl?id=79929
人と人の出逢いはミステリア
スだ。人智では計れない。
あの時、あの人に出逢わなけれ
ば、今の自分は居ないだろう、
と思うことの連続である。
また別れも同じで、ある日突然、
目の前から消える人がいる。
死という形で消滅するケースは
もちろん、それまでの蜜月が嘘
のように、お互いに気が合わなく
なることもある。
とくに何かあったわけでもない
のにいつのまにか疎遠になり、
縁が切れる人もいる。
スだ。人智では計れない。
あの時、あの人に出逢わなけれ
ば、今の自分は居ないだろう、
と思うことの連続である。
また別れも同じで、ある日突然、
目の前から消える人がいる。
死という形で消滅するケースは
もちろん、それまでの蜜月が嘘
のように、お互いに気が合わなく
なることもある。
とくに何かあったわけでもない
のにいつのまにか疎遠になり、
縁が切れる人もいる。
まったく異なる星のもとに
生まれ落ちたー
ふたりの人間。
ジャスミンの香りのシャボンを
泡だてて
今日一日はなかったことに
YouTube
木蘭の涙 コブクロ×佐藤竹善 カバー Brange Code アコースティック
https://www.youtube.com/watch?v=J00A8gQ0xZk
生まれ落ちたー
ふたりの人間。
ジャスミンの香りのシャボンを
泡だてて
今日一日はなかったことに
YouTube
木蘭の涙 コブクロ×佐藤竹善 カバー Brange Code アコースティック
https://www.youtube.com/watch?v=J00A8gQ0xZk