佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

「遠 恋」―Ⅲ―⑷

2017-06-25 00:00:01 | 日記
いつのまにか、夜中の二時近くに
なっていた。
「じゃあそろそろ」
と、言ったのは、わたしだった。

あのひとからそう言われるより
先に、自分で言ってしまった方
が、踏ん切りがつけられると
と思って。

だけど、言ってしまってから、
後悔した。
「そろそろ」のあとに、うまく
言葉が続かなかった。本当は
このままずっと、しゃべって
いたい。朝まで話しを聞いて
いたい。

つながっていたい。そんな気
持ちが波のように、寄せては
返していた。

「信じられないくらい、長話し
ちゃたね。もう眠いでしょ?
そろそろラップアップしなきゃ」

「ラップアップ?」
「電話、なかなか切れない時って
あるでしょ。電話を切る、終わらせ
る、やめる。どれも言いにくいし、
言いたくないし、そういう時、こ
の英語が便利なんだよね

包んでしまいましょうって」
爽やかな、あのひとの声。
絶望的な、わたしの気持ち。

「向こうに着いて落ち着いたら、
必ずメールを送ります。
お元気で。今夜の電話、ほんとう
にサンキュ。じゃ、ひとまず
さようなら」

一点の曇りない声であのひとそう
言い、受話器は置かれた。

その瞬間わたしは、真夜中の片す
みに取り残された、ひとりぼっちの
深海魚になった。


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「風の子」Ⅱ

2017-06-24 19:35:05 | 日記
打ち合わせを終えたあと、わたし
たちははごく短い時間、たわいな
い世間話しを、カフェを出た。腕
時計を見ると、三時過ぎ。まるで
冬の幕間のような、ぽかぽかと
暖かい午后だった。わたしは、

「ちょっと散歩してから、帰り
ます」
と、本多さんに言って、駅の近く
の横断歩道の手前で、彼女と別
れた。

新宿の街を歩くなんて、久しぶり
だった。わたしの足は自然に西
新宿へ、新宿中公園の方へ向い
ていた。

西新宿は、アラシといっしょに
暮らした街だった。

そこで出会いがあり、そこで、
別れがあった。恋と愛が出会
って、
すれ違って引き裂かれた場所。
一生分の涙を、わたしはそこで
使い果たしてしまった。

今はさらさらと流れる砂のよう
な記憶に包まれて、ひっそりと
たたずんでいる街、涙も、心の
痛みも、傷も、情熱も、おそらく
この世には、何ひとつとして、
同じ形で同じ場所にとどまる
ことのできるものなど、ない
かもしれない。

公園に着くと、わたしは陽あたり
の良いベンチに腰かけて、鞄の
中から、うす茶色の封筒も取り出
した。ついさっき、本多さんから
から受け取ったばかりの、封筒。
中には仕事の資料が入っている。

企画書やあらすじをまとめた
文章やあらすじをまとめた文章
や構成案や、誰かの過去の作品
のコピー。
わたしは、封筒を膝の上に乗せ
てその重みを、てのひらでその
厚みを、味わった。

愛おしさにも似た感情が、山奥
で人知れず湧く泉のように、
あとからあとから、あふれ出し
てくりのがわかった。

アラシ、また会えたね。
わたしたち、また、つながった
ね。
カフェで読んだその文章を、わ
たしはもう一度、ゆっくり読んだ。
なつかしい、アラシの声が、愛
した人の魂が、粒子になって飛
んできた。
       *
これは、風に聞いた話しです。
柳の木の枝を揺らし、白樺の
木の葉を踊らせ、

アザミの綿毛を見えない手で
掬い上げながら、
静かに草原を通り過ぎてゆく、
風に聞いたお話。

仕事にも暮らしにも、人を愛す
ることにも疲れて、
何も信じることができず、自分
さえ信じることができず、
すべての希望を失い、立ち上が
る元気もなくし、

悲しみだけを抱えて、絶望の谷
底を眺めていた僕に、
風がそっと、囁いてくれた物語。




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お勧めミュージック Ⅲ:佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラム

2017-06-24 12:09:07 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3070
【6月24日(土)即買値】

ブログ:
YouTube :
『jacintha / Danny Boy 』

解説/ジャズ バラード
女性ボーカル+ピアノ伴奏・
サックス、

「DANNY BOY」をアカ
ペラで歌う

写真はジャケット。
CDの音質の良さでも有名。



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佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラムいちばん大事なのは「人」

2017-06-24 10:02:22 | 日記
K18金  ¥3290
プラチナPT950 ¥3090
【 6月24 日(土)即買値】

佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
ぴんころ地蔵側
  ~ヤナギダ~
☎0267-62-0220

※ローレックス時計買取値
佐久平一高額の店!
他店と比較ください。

g単価、他店と比較ください。
佐久平で、買取単価を表記
しているのは弊社だけ!
【ブランド時計、バック高値買取】

ブログ
人によって傷つけられ、
励まさられ、
癒され、

人によって愛され、

人によって人は人に
なれるのです。

人を
大切にすることは
自分を
大切にすること

すべては、
つながっている





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「遠 恋」―Ⅲ―⑶

2017-06-24 00:00:59 | 日記
あのひとの言葉を、ひとつ残らず
覚えていた。
優しい言葉も、熱のこもった言葉
も、さり気なく置かれたひとこと
も、ただの相槌でさえも。いいえ、
それは覚えていたのではなくて、

突き刺さっていたのだ。だから
わたしの胸は、あんなにも、痛
かった。


「俺が日本に戻ってきたと時には、
会ってくれますか」
「もちろんです。今度はいつ、戻
ってくるの」
「それはまだ決めてないんだけど
四十週間、朝から晩まで料理の勉
強をするんだ」

「四十週間というと、十ヶ月?」
十ヶ月というと、来年の一月。
「うん、それが終わったら、今度
は実習があって・・・・・・」
そのあとに、ひと呼吸置いて、あ
のひとは言った。
「桜木さんって、今、つき合って
いる人とか、いるの?俺はいない
けど」

はっきりと、わたしは答えた。
「いませんn」
十九歳の時に、片思いの恋を一度
だけ。あとは恋に恋してばかり。

臆病だった。勇気がなかった。
嫌われるのが怖くて、丸ごとの
女になれなかった。求めること
も、できないまま、まるで蛹の
ように、身も心も固くして。

それが、きのうまでのわたし。
あなたに出会うまでの、わたし。

ふたりのあいだを、沈黙が流れ
た。透明な砂時計の中を、透明
な砂がさらさらと、こぼれ落ち
ていくような、清潔な沈黙。

「そう、ないんだ」
あのひとはそれ以上、何も言わ
なかった。「つき合ってほしい」
とも、「つき合おうか」とも。
わたしも言えなかった。

だって、あしたはもう、遠く、
離れ離れになってしまう人に、
どうしてそんなことが言える?
茫洋とした海をあいだに挟んで、
東京とニューヨークに別れ別れ
になって、どうやって、つき
合っていったらいい?

カーテンの取りはずされた部屋
の窓から、見えていたのは、朧月。
滲んで、霞んで、今にも闇に溶け
てしまいそう。でもわたしはこの
想いを、このまま溶かしてしまい
たくはない。

受話器を固く、固く握りしめた
まま、わたしは思い出していた。
その夜、一緒にお酒を飲みなが
ら、語り合った親友の言葉。

佳代子は言った。ワインレッド
のマニキュアをきれいいにつけ
た細い指で、カクテルグラスを
弄びながら。

わえ、カノちゃん、教えて、

どうして人は人を、好きになっ
たするんだろう。

悲しくなるとわかってて、淋し
くなるとわかって、そんな恋
でも、平気で踏み込んでしまう
のは、なぜ。

恋ってそんなにすてきなもの?
だったらなぜ、恋すると、こ
んなにたくさんの涙が出るの。






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「アフタヌーンデライト」

2017-06-23 19:59:12 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3070
【6月23日(金)即買値】

すみずみまで、神の宿る島だった。
ランチのあと部屋に戻ると、わたし
たちはだっぷりと時間をかけて愛し
合い―――
わたしたちはそれを「アフタヌーン
デライト」と呼んだ―――、

同じだけたっぷりと午唾をむさぼ
った。昼寝から目覚めたら、夕食
を食べに外に出かけて、その足で、
ガムランを聴きに行ったりした。

年末から年始にかけての六日間。
旅が終われば、わたしは東京へ、
彼はシンガポールへ。空港で
別れがふたりを待っていた。

「寂しいな、あしたは離れ離れ
になっちゃうんだね。今はこん
なに近くにいるのに、あしたの
今頃はもう、手を伸ばしても、
届かないところにいるなんて」
彼は心の底から、寂しがって
いるように見えた。

「雫ちゃんも、寂しい?」
可愛い人、裸の彼の胸に耳を
当て、心臓の鼓動を聞きながら、
わたしは思っていた。

あなたは、とても可愛い。愛して
も愛しても、愛しても、愛し足り
ないくらい、愛してる。もう一度、
いいえ、何度でも、わたしはあな
たを抱いてあげたい。抱き合った
まま、つながったまま、眠りだい、
それくらい、好き。

「寂しいよ」
っと、言った。

でも、本当は、ちっとも寂しく
なんてなかった。
初めから、覚悟を決めて、飛んで
きたのだ。

この旅が終われば、この恋も終わる。
終わりにしなくてはならい。これ
は遊びの恋。真剣な、火遊び。

それをいとおしみ、味わい尽くす
権利は、大人だけにある。
わたしは、離婚歴も不倫歴もある
二十九歳。自分を、大人の女だと
思い込んでいた。

分別も常識もある大人の女。

信念を持っていた。大人の恋とは、
ただ楽しむためにあり、そこに
決して、生活とか将来とかを持ち
込んではならないのだと。







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「現在は過去からの贈り物」 佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラム

2017-06-23 16:33:55 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3070
【6月23日()金即買値】

ブログ:
プレゼントには「贈り物」の他に
「現在」という意味があります。
どうしてそうなったんだろう・・・。
そう考えると面白いことに
気づく。

今この現在があるのは、過去が
あったからこそ。
つまり、現在は過去から送られ
てきた贈り物なんです。
だから、現在のことを「プレゼ
ント」と言うのではないかと
思います。

別の見方をすれば、自分がいま
こうして生きている瞬間は、
未来の自分へのプレゼントでも
ある。

そんなふうに考えれば、現在(いま)
という時間が、とても大切」なもの
に感じられる。

そして、いまを作ってくれた過去に
感謝したくなる。






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お勧めミュージック Ⅱ:佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラム

2017-06-23 10:36:20 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3070
【6月23日(金)即買値】

ブログ:
YouTube :
『Dan Gibson's Solitudes:
Piano Cascades (Full Album) 』

解説/環境音楽
川の音をベースに
ピアノ伴奏+小動物の鳴き声です。
一日中聞いていられます。
カナダ発、世界的に売れたCD、

Piano Cascades
[ピアノ・カスケイズ] CD,
Enhanced, Soundtrack, Import


写真はCDジャケット




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「私には失敗する権利もあるんだ」

2017-06-23 06:25:19 | 日記
:迷ってしまったら!?
天才バカボンのパパも言って
いるじゃないか。

「これでいいのだ」
けだし名言だ。
人間が生きていくうえで、予
測できたときに、予測できる
ことを確認しても始まらない。

予測できたときに、想像通り
になる人生は、やってみる必要
はない。

想像できないものがあったとき
に、想像できない何かをやって
みて初めて、

「ああ、こうなるんだ」ってわかる。

それが人生なんだ。

内容を知っているストーリーを
読んで、おもしろいかなぁと
いうこと。
結論を知らないから、ドキドキ、
ハラハラするわけで、ピンチが
あって、それを乗り越えるから
いい、

そういうもんじゃないだろうか。

「世間の常識が」とか「世間の
目が」とか言うけど、そんなも
のも最初からないんだよ。

やってみたら、なんでもありな
んだよ。


※人生は選択の連続なんだ。
ハムレットの「To be or not
to be ~」

「生きるべきか、死ぬべきか、
それが問題だ」

つかこうへい流なら
「日和(ひよ)るめぇか、
日和らざるめぇか」


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「遠 恋」―Ⅲ―⑵

2017-06-23 00:00:00 | 日記
「きのうは」
と、わたしは言った。

きのうはわたしの誕生日で、
あなたはわたしの誕生日に、
お店に現れたんですよ、何よ
りもまず、そのことを伝えた
かった。

わたしより先に、あのひとが
言った。

「会えて、ほんとによかった。
なんできのうのうちに、電話
番号、訊いておかなかったん
だろうって、訊いてたら、会
えたかもしれない

って、今ちょっと後悔してる。
いや、実は書店で別れた直後
から
ずっと、後悔してた」

耳に飛び込んでくる。まるで
奇跡のような言葉。一日遅れ
の、神さまからの
バースデイ・プレゼント。

「きのうね、わたし誕生日だったん
ですよ」

「え!それはすごい偶然だ。
おめでとう。三月十七日って、
聖パトリック.デイじゃない。
知ってる?マンハッタンでは
その日、
盛大なお祭りがあるんだよ」

「井上さんは、いつからアメリカ
に?」

「二年前から。その前に、学生時
代に交換留学生で、西海岸に一ヶ
月ほど」
そのあとに語られた、あのひとの
ライフストーリー。

夜の静寂の中を、月明かりにに
導かれて、すいすいと進んでい
く一艘の小舟のような、軽快で
明快な物語。

その舟の作る波に乗って、どこ
までも
どこまでも、ついていきたくな
るような。



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『指の間から伝えあってる』 佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラム

2017-06-22 15:07:06 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3090
【6月22日(木)即買値】

ブログ:
書き終えた手紙を丁寧に四つに
畳んで、封筒に入れた。
封をしたあと、そこに口づけた。
口づけながら、思い出していた。

自分のことを、人前で、あなたは
わたしからどう呼ばれたい?

結婚して、アメリカに来たばかり
の頃、彼にそう尋ねたことがあった。
彼はわたしの夫となったのに「ハズ
バンド」と呼ばれるのを嫌がった。

「それなら、恋人がいいの?ボーイ
フレンド」と呼ばれるのを嫌がった。
「それなら、恋人がいいの?ボーイ
フレンドって言いましょうか?」
アメリカでは、結婚はしていないけ
れど一緒に暮らしている恋人のこと
を、ボーイフレンド、ガールフレン
ドと呼ぶ。

「それも、いやだな」
「じゃあ、なんて?」
「ラバーがいいな。キミにもずっと、
僕のラバーでいて欲しいから」
ラバーというのは日本語に訳すなら
愛人、いや、情人のほうが、もっと
近いかもしれない。

愛し合ってはいるのだけれど、それ
は日陰の愛、というイメージがある。
向日葵とたんぽぽと、真夏の空と真
っ白な雲を、全部足してもまだ、
「それよりももっと明るい」と言える
ほどの明かるい性格をした人を、
わたしはそれでも「ラバー」と呼んで
いる。

わたしもまた、「妻」には到底ならな
い。すべてにおいて不器用だし、
妻としての役割とか責任とか、そういう
のを果たすのは苦手だから。

たとえば彼が光なら、わたしは一生、
彼の日陰でありたい。
たとえば彼が楽園であるなら、わたし
はその記憶でありたい。

彼のそばにいる時、わたしは性来の
わたしでいられる。生成りの女。シン
プルな女。でもとても熱い東洋のパッ
ションを秘めた―――。

彼の「愛人」でいたかったから、彼と
結婚した。結婚して九年が過ぎたいう
のに、彼はいまだわたしの「可愛い
人」。

目に入れても痛くないほど大好きな、
素敵な「夫」の手に、この手紙が
届きますように。思いを込めて、
切手を貼った。
わたしも封筒に貼り付いて、彼の
もとまで飛んで行けたらいいなと
思った。




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「シャネルとリップスティク」 佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラム

2017-06-22 11:29:57 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3090
【6月22日(木)即買値】

ブログ:
リップスティックはシャネルが
生み出したものだ。携帯できる
口紅としてチューブに入れえ
ていたが、これがやがて改良
されて、プッシュ式のリップ
スティックとなった。

実用的であり、働く女たちの
必需品となった。
晩年に発表したベージュと黒の
バイカラーの靴も活動的な女
たちを喜ばせた。

傷つきやすい爪先が黒という
のは実用的だったし、足を小
さく見せる効果もあった。




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「絶対に幸せになるおまじない」

2017-06-22 06:22:11 | 日記
K18金  ¥3270
プラチナPT950 ¥3090
【 6月 22日(木)即買値】

佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
ぴんころ地蔵側
  ~ヤナギダ~
☎0267-62-0220

“天使”をモチーフにした
グッズと、花の形をしたキ
ャンドルを用意します。
暗い部屋でキャンドルに
明かりを灯し、天使をしばし
照らしたら、キャンドルを
両手に取り、炎を吹き消します。

天使が運んできた幸せを、
キャンドルに封じ込めること
ができるでしょう。

☆星のささやき
「幸運」の象徴である天使に、
「夢」や「希望」を表す海王星
のイメージでもあるキャンドル、
そして、「女性の幸せ」を表す
金星のアイテムの花を組み合わ
せるこ
とで、幸せをつかむチャンスが
やってくるおまじないです



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「遠 恋」―Ⅲ― 二匹の鯉

2017-06-22 00:01:01 | 日記
留守番電話にあのひとの声が残
っていたのは、出会った日の翌
日。

それは、ほとんど空っぽになって
いる部屋で、翌朝には解約して
しまうことになっている電話機
が受信した、最後のメッセージ
だった。
再生ボタンを押したのは、夜中
の十二時ちょっと過ぎ。

四条河原町で友だちの佳代子と
会って、食事をし、お酒を飲ん
で、別れを惜しみつつ、アパー
トに戻ってきたところだった。

「書店でお目にかかった井上で
す。きのうはどうもありがとう。
おかげであの絵本、すごく喜ば
れました。もう一度お礼が言い
たくて、昼過ぎに本屋さんへ
立ち寄ってみました。

アルバイト、きのう辞められた
んですね。それで、お店の人に
無理矢理頼み込んで、電話番号
を教えてもらって、かけてます。
迷惑だったらごめんなさい。
今は、東京からかけてます。

あしたアメリカに戻ってしまい
ますが、今夜はずっとここにい
ます。内田という友人の家です。
よかったら電話下さい。番号は、
東京03の・・・・・」
ああ、なんてことだろうと
思った。
東京から、かけてます?
あしたは、アメリカへ?
昼過ぎに、立ち寄ってみた?

ああなんていうことだろうと、
思った。再会のチャンスが、すぐ
そばまでやってきていたのに、
わたしはそれを、取り逃してしま
ったのだと。なぜならわたしは
お世話になった人たちに挨拶する
ため、十一時少し前に書店を訪ね
ていたのだった。

それに、あしたはわたしも東京へ
戻るのに―――
お酒の酔いがいっぺに、醒めてし
まった。
何度かメッセージを再生しながら、
迷った。こんなに夜遅く電話して、
大丈夫だろうか。

でも、声が聞きたい。もう一度、
話したい。それに、あしたはアメ
リカへ行ってしまうなんて。

電話するなら、今しかないではな
いか。さんざん迷ったあげく、
かけてみることにした。呼び出し
音を五回鳴らして、誰も出なけれ
ば、切ろうと思っていた。

「はい、もしもし」
呼び出し一回で、飛び込んできた。
真夜中の海を照らす、灯台の
明かりのようなあのひとの声。
「待ってたよ」
と、あのひとは言った。

「さっきから電話のそばで、じ
っと待ってた。絶対にかかって
くるはずだと思って」

「どうして・・・・」
そんな、確信が持てたの?わたし
の気持ち、わかってたの?
「どうしてって?そんなの
当たり前じゃん」
火花がぱっと、弾けるような言い方。

遥る気持ちを抑えながら、わたし
は言った。
「あの、きょう、お店に来てくだ
さったんですよね」
「うん。新幹線に乗る前に。急に、
会いたくなって」
会いたくなって?
わたしに?

柔らかな薔薇の棘が、胸に刺さった。
純粋で、確かなもの。その時それが、
すっと食い込んだ。そんな気がした。

会いたかった、わたしも、すごく。

そんな風にして、あのひととわたし
はつながった。果てしなく広い海で、
巡り会えた二匹の魚のように、再び、
つながることができた。京都と東京
を結ぶ、電話線のはしっことはしっこ
にいながら。



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『青春の光と影』

2017-06-21 16:30:07 | 日記
どうして?
どうして、喧嘩なんか、しちゃった
んだろう?
こんなにも好きで、こんなにも
会いたくて、三ヶ月ぶりに会えて、あ
んなにも嬉しかったはずなのに。

きっかけは、些細なことだった。
彼はきょうの午後、どこにも出かけた
くないと言い、私は町まで出かけて
食事をしたり、買い物をしたり、散歩
をしたり、夕方にはレゲエのコンサート
にも行きたいと主張し、出かけるか出
かけないか、について話し合っている
うちに、いつのまにか口喧嘩になり、

気がついたら「愛しているのかいないの
かを巡る、大きな口論に発展してしまっ
ていたのだった。

愛しているに決まっているのに、海よ
りも深く空よりも果てしなく、愛し
合っているという自信があるのに、

まったく、なんてことだろう。情けな
い。実にふがいない恋人たちだ。
貴重な時間をムダにしている。休暇は
一週間しかなくて、休暇の終わりには
また遠く、離れ離れになってしまう
のに。

わかっているのに、どちらも素直に
「ごめん」が言えないまま、彼は
部屋に閉じこもり、私は扉をさざ
とばーんと音をさせて閉め、こう
してバーにやって来て、ちっとも
酔えないお酒を飲んでいる。

なんとかしなきゃ、仲直りしな
きゃ。
このまま、大切な時間が、刻一刻と
失われていくのを、指をくわえて
見ているだけでいいの?いけない、
いけないよ、絶対にいけない。

竜巻のようにま巻き上がってくる
思いを抑え込んで、私は注文した。

「お願いします。うんと強いのを」
と頼んでみた。
「さ、できたよ。どうぞ、召し上がれ」
数分後、目の前に差し出されたのは、
いちごとミントの小枝で飾られた、
メキシカンガラスのゴブレット。

「可愛い!」
思わず、感嘆のため息がもれた。
ひと口飲んだあと、そのため息は
甘くなった。甘酸っぱくてせつない、
昔懐かしい味を彷彿させている。

ああ、この味は、いつかどこかで
味わった、何かの味にそっくりだ。
でも、なんの味なのか、うまく思い
出せない。

ストローで少しずつ、少しずつ、
吸い上げながら、味わってみる。
頭の芯が溶け出して、気持ちの編み
目がほどけてゆくのがわかる。

楽園は、近い。わたしのすぐそばに
ある。この胸のなかにある。この皮
膚の表面に宿っている。彼に触れた
い。触れられたいと願っている。

この指先に。
そこまで思った時、思い出した。
よみがえった。このカクテルの
味は、彼と交わした口づけの味だ。

パリのアパルトマンで、籠いっぱい
に盛られた摘みたての苺―――
彼がスケッチをするための果物だ
った―――を、ひとつぶ、お互い
に食べさせ合った午後。
シーツに残っていた切ない香り。

――苺みたいに甘い思い出を、たく
さんつくっておかなきゃ。あとで使
うために。

――使うの?どうやって?

――喧嘩なんかした時にね、ひとつ
ぶ取り出して口に含めば、仲直り
できるだろう?

――喧嘩なんか、しないもん。

――するよ。どんなに晴れた楽園
にも、雨は降ってくるからね。




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