貧富の格差が拡大しあらゆる問題を引き起こしています。新自由主義の名のもとに、アメリカ、イギリス、オーストラリア、日本などで急激に貧富の格差が拡大しました。先進工業国による資源国からの収奪、経済格差問題、中東周辺国での紛争とテロ事件発生、子供たちの貧困による教育機会の喪失なども先進国共通の問題として広がっています。
貧困と格差が次世代に継承されないようにすることが、政治が果たすべき役割であるにもかかわらず、その子供の教育が危機に瀕している。新自由主義政治経済の醜さと愚かさには驚きます。その政治的代理人であるこれらの国家の政治指導者層への民主的な規制と法制度における規制を再確立しなければなりません。
同時に、政治的な整備、改善ができるまでの補完措置としての市民社会が貧困と格差をこれ以上放置せずに、補うための共同した支援活動も必要になっています。
<信濃毎日社説>貧困の実態に目を注ごう こどもの日に
おもちゃで遊ぶ幼児がいる。近くでは大人を相手に将棋を楽しむ中学生。おにぎりを食べている子もいた。とてもにぎやかだ。隣の部屋に入ると、数人の子どもたちが熱心に宿題に取り組んでいる。横には大人が座り、質問に答えていた。長野市街地にある介護施設の一角で、毎月3回開いている「きずな塾」の光景だ。
「ここはご飯も食べられて、勉強も教えてもらえる。塾に行きたいけれど、お金のことで親に心配かけたくないし…」
学校の宿題を終えた中学生の男の子はこう話した。
<深刻化する格差問題>
きずな塾は地元の有志や医療生協関係者、弁護士らでつくる「反貧困ネット長野」が2012年に始めた。経済的な問題を抱えた家庭の子どもらのための無料学習支援活動だ。
幼児から高校生まで毎回十数人が訪れる。元教師や社会人、大学生ら登録ボランティアが子どもらの希望に沿って、マンツーマンで勉強の手伝いをしたり、話し相手になったりしている。経済的な理由だけでなく、居心地がいいからと来る子も多い。
塾の開設時から関わる元小中学校教師の小林啓子さんは「子どもの貧困は一人一人事情が異なり、実態が見えにくい。当事者も世間体を気にして助けを求めにくく、対応が難しい」と話す。
小林さんは、子どもの貧困は日本の社会が抱える構造的な問題と考えている。さまざまな課題を掘り下げて対応策を考えようと、12年から「長野子ども白書」の編集にも関わっている。
毎年途切れることなく、これまでに4冊出した。今年ももうすぐ出る。貧困についてさまざまな問題点を指摘し続けている。
<国の施策は不十分だ>
昨年の白書には「学校事務室からみえる子どもの貧困」という記事を載せた。県内のある小学校の事務職員に仮名で書いてもらったもので、深刻化する実態を浮き彫りにしている。
この小学校の児童数は440人。うち、生活保護世帯の子は12人、給食費や学用品代などを自治体が補助する就学援助制度の対象者は65人に上った。17・5%の子どもが経済的な支援を必要としているのだ。申請をしない家庭もあるため、実際には20%を超えるのでは、と書いている。
国の調査でも同様の結果が出ている。就学援助制度の支給対象者の割合は12年度に15・64%で過去最高を更新。13年度は15・42%とやや減ったものの、高止まりの傾向がはっきりした。
近年注目されている「子どもの貧困率」も同じ傾向だ。平均的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の子どもの割合を示すもので、12年度に16・3%と過去最悪を記録している。
他の国と比べても日本の状況はよくない。国連児童基金(ユニセフ)が発表した子どもの格差に関する調査では、先進国など41カ国の中で下から8番目。米国や韓国より格差が大きかった。
国は14年に子どもの貧困対策推進法を施行し、「子供の貧困対策大綱」を閣議決定。昨年は学習支援などを進める生活困窮者自立支援法を施行した。
大綱には奨学金制度の充実、幼児教育無償化などを盛り込んでいる。しかし、貧困改善に向けた数値目標の設定は見送られ、実効性を疑問視する声は多い。
調査などによると、一つのクラスの中に6人に1人、5人に1人といった高い割合で貧困状態の子どもがいることが想像される。就学援助を受けても、光熱水費に回さざるを得ない家庭も多い。国の施策は不十分だ。
貧困問題の解消を願う小林さんは「国は所得や資産の再配分に力を入れ、児童扶養手当の充実や医療費の窓口無料化など、子どもに関わる施策にもっとお金を回してほしい」と訴える。
政治の対応が鈍いのに対し、民間の動きは広がっている。
松本市では市民団体「反貧困セーフティネット・アルプス」が3年前から無料の塾を開いている。市が子どもの権利条例を施行したのをきっかけに、家庭の経済事情に左右されることなく、学ぶ権利を保障しようと始めた。
<マンパワーを生かす>
県内で始まった市民による無料学習支援の特徴は、さまざまな世代の人が子どもの教育や育ちに関わっていることだ。多くの人の目が1人の子どもに注がれることで見えにくかった問題解決への糸口が見つかるかもしれない。
地域として取り組むこともできる。少子高齢化の中、ボランティア活動に携われるマンパワーはあるはずだ。学習支援などを通じて地域で子どもを育てる意識が広がれば、貧困の直接的な解決にはならなくても孤立化を防ぐことにつながるのではないか。
「こどもの日」。それぞれの地域で子どもが置かれた状況に目を向けたい。
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