酒田市の人口減少に歯止めがかからない。県下では鶴岡市についで2番目の減少であり、自然動態も社会動態共にこの27年間で最大となった。中心街の凋落現象にも「はっ」とさせられる。大きな商店がいつの間にか駐車場に変わっていたり、空き家になっていたりで町並みが変わってしまった。「おくりびと」の滝田洋二郎監督に「消えていくものにこそ、失われたものの美しさがある」と言われても、そこに住むものとしては「凋落していく行く様は美しいなあ」とも言っておれない。
でも酒田は、最上川舟運と北前船西回り航路の基点として栄えた往時の文化と気質が色濃く残っている。「傘福」と呼ばれる「つるし飾り」もそのひとつである。酒田商工会議所女性会が平成17年よりその復活事業に取り組み、酒田商人、酒田の女性の切なる願いの賜物を、次世代に継承していこうと始めたもので、「庄内ひな街道」の「もうひとつのひな街道」として波に乗った。今では、廃業した料亭「山王くらぶ」を展示主会場に多くの来館者が絶えない。「おくりびと」の主たるロケ地、割烹「小幡」の近くでもあり、このブームの相乗効果たるや週末には1時間に500人にもなると言う。
日本の三大つるし飾りとして酒田の「傘福」、福岡県柳川市の「さげもん」、静岡県東伊豆町の「雛のつるし飾り」だけが現存している文化遺産として今も残っている。