「認知症の原因は、心の世界にあるかもしれない」と話す専門家がいます。
例えば私が年老いて歩けなくなり、
下の世話さえ誰かにさせ、愛する人も誰もいなくなった時。
私は最期まで生ききるために「全てを忘れる」というやり方で心を守るかもしれない、と思うのです。
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桜色。
その鮮やかなのに、ほのかな色合いは、高齢者の記憶を優しく引き出します。
それは長年、桜を愛でてきた、私たち日本人ならば「分かる」感覚ではないでしょうか。
真っ白だった画面に、
桜色の絵の具が染み込み、
桜型がぽっ、と浮かび上がる。
浮かぶ桜の色合いに、皆様の心を開かせる「なにか」があります。
「…うちの桜」とふいに思い出し、呟く方。
うつむいてた顔をあげて、
ほんのり笑む方。
同じ地名を繰り返し、セラピストへ伝える方。
皆様のかけがえのない記憶は、アートを介して、
言葉、身振り、ときに笑顔となり、一本の桜となりました。
天晴れ、と全てを肯定するかのような大木です。
今年も、桜が咲きます。
シニアアートワークセラピスト 高橋 恵子
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