あと3センチ

『前回はあと三センチ足りなかった』

山中チャンピオンがモレノとの前戦の反省点で述べていたもの。

今回はその三センチを埋めるための練習をしてきた。

とも述べていた。

対するモレノは

『全てのラウンドで、もう少し攻勢点をアピールする必要があった』

と話していた。


要するに二人とも完全決着を望んでいたのだ。


1ラウンドのゴングが鳴った。

前回と同じく右のリードブローの交換からのスタートだが、

明らかに前回と距離が違う。

モレノは積極的に手を出し、

前に荷重を置いたスタイルで戦っていた。

前回の戦いで良い感触が残っている右のフックを狙っていたのだろう。

タイミングもスピードも抜群だった。

しかし、

山中選手は前回届かなかった『三センチ』を詰める試合運びをしている。

カウンターを浴びればジエンドになるであろうタイミングに、ハラハラしながらも気持ちの強さに感心した。

前回よりも好戦的なスタイルに拘った挑戦者と、

具体的に前回の反省材料を数値化して練習から取り組んだチャンピオン。

結果的には『三センチ』を見事克服し、

チャンピオンが豪快なノックアウトで勝利を収めた。

見事というしかない。


一般のファンから僕みたいなマニアまで熱くさせてくれた世界戦だった。


改めてボクシングファンで良かったと痛感した。