サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

企業における気候変動適応策

2013年05月25日 | 気候変動適応

 温室効果ガスの人為的排出量の増加による気候変動(地球温暖化)の影響は、いたるところに既に発生している。これに対する対策(適応策)は、農業分野や防災(水災害)、熱中症対策等として、既に取り組まれ始めている。

 

 しかしながら、適応策の本格的な採用は未だこれからの段階にある。政府や一部、先行的な地方自治体において、適応策の検討に着手がなされているものの、適応策に関心を持っている民間企業は少ない。一部の損害保険、あるいはコンサルタント、マスコミ等が、適応策に注目、着手しているに過ぎない。

 

 民間企業においても、現在、頻度が増加傾向にある猛暑や豪雨に対する備えはされているが、長期的な視点からの気候変動の影響に対する予防や、防御しきれない気候変動の影響な深刻なレベルを想定した対策はなされていないだろう。

 

 民間企業における気候変動への適応策として、特に取り組むべき課題について、いくつかの視点を列挙する。

 

(1)企業が提供する製品・サービスのライフサイクルの各ステージにおいて、取り組まれるべきである。つまり、原材料の調達・製造あるいは輸送過程といったサプライチェーンにおける適応、自社が提供する製品・サービスの使用(あるいは廃棄・リサイクル)過程における適応等が必要となる。サプライチェーンにおける適応策は、特に途上国等に生産を依存する多国籍企業において深刻である。

 

(2)使用期間が長い設備や構造体、建築等の維持管理や新設・更新等における適応策、とりわけ社会資本といわれる道路等の交通機関・施設、ガス・電気・水道等のライフライン等、公共性が高い施設での適応策が必要である。維持管理における高温状態や豪雨の増加による劣化の進行への対応、新設・更新における設計強度や立地選定での配慮、被害を受けた後の回復措置の準備等が求められる。

 

(3)投資余力のある大企業はまだしも、適応策に対する人や資金の確保がしきれない中小企業・零細企業が、適応能力における弱者となる。こうした中小企業・零細企業においては、企業間の連携による支援や行政等による支援施策も検討されるべきであろう。

 

(4)地域の気候条件への依存度が高い業種として、冬の寒さを利用する伝統産業(和紙、寒天等)、自然資源を活かす観光業(紅葉、花見に関する観光)等がある。こうした気候資源依存型産業は、地域への密着性が高く、地域行政等との連携による適応策の検討がのぞまれる。

 

(5)気候変動は得てして産業活動の脅威(向かい風)となるが、それを機会(追い風)として活かすビジネスが考えられる。気候変動適応ビジネスには、適応策支援産業、気候変動への影響を防御・軽減する製品・サービス、気候変動に適応していることで差別化した製品・サービスの提供、気候変動を活かした新たな商品・サービスの提供等が考えられる。

 

 注)これまでの環境対策と同様、受動的・予防的な段階にとどまらず、機会追及型の対応が期待される。ただし、こうした適応ビジネスの市場規模の拡大を目標にしてしまうと、市場性が高い対策が優先され、本来なすべきソフトウエアやヒューマンウエアに係る対策がなおざりになる可能性もあるため、注意が必要である。

 

(6)英国では、企業に適応策の策定を法律により義務付けている。企業における適応策が短期的な対策に留まるのでれば、長期的な影響予測と予防的措置、あるいは影響のモニタリングと順応的管理を義務付ける法制度の整備も必要となろう。

 

以上

 

 

 

 

 

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