中国四国地方環境事務所主催の気候変動適応研修会が高松であり、講演者として参加してきた。その際、デング熱の話を聞くことができた。感染症研究所の津田先生が、昨年、代々木公園での感染が問題になったが、その後の顛末や取るべき対策を具体的に説明された。
講演では、感染を媒介するシマダラカのことを理解し、平時におけるシマダラカの防除対策の必要性と方法が、科学的知見をもとに説明された。
シマダラカの幼虫ととなるボウフラは池には生息せず、古いタイヤやプランター、木のうろ、雨水ます等であること、幼虫と成虫の生息場所は異なり、成虫は木陰や草藪の中であること、など、丁寧な調査データが示された。
対策としては、この4月に国立感染症研究所が公表した手引きに示されている(参考文献)。定時の対策として、感染リスクが高そうな場所(リスク地点)の調査と駆除を推奨している。
リスク地点は、以下に該当する管内の屋外の施設(観光施設、寺社、公園、イベント広場等)が対象となる。
1) ウイルスの流入機会が多い:成虫の活動時期である5 月中旬から10 月下旬に、流行地から多くの人が訪れることが予測される。
2) 感受性者の曝露機会が多い:長時間滞在する者や頻回に訪問する者(例:ジョギング、犬の散歩等)が多いか。または、5 月中旬から10 月下旬に大勢の人が集まるイベント等が開催されることが多い。
駆除方法としては、「適宜、成虫対策としての清掃(下草を刈るなど、成虫が潜む場所をなくす)又は物理的駆除(ごみや不要物などを片付ける)等を行い、風通しをよくし、日光が当たるようにする。特異な環境によってこれらの対応が困難な場所では、幼虫発生源をなくすことに務める」と示されている。
幸いにも、今年はデング熱の感染が問題にならなかった。気象条件もあるが、医療や検疫での対策、リスク地点での駆除対策等が成果をあげたということであろう。ただし、地方自治体においては、定時の調査や対策は続けることが望まれる。
生活者においては、誤った対応をしないようにしたい。公園には蚊がいるから近ずかないようにしようとか、行政が対策をとるべきであって、自分達にできることはない、という姿勢をとらないようにしたい。
そうした姿勢をとることは、自然との距離を広げてしまい、自分自身での自然とのつきあいを希薄化させてしまうからだ。自然とのことをよく知り、自然とのつきあい型を身につける、自分達でできることは自分達で行うという姿勢を持たなければならない。
水たまり理論というのものがある。近所に水たまりがあって、川で遊ぶ機会があって、水や川との距離の取り方を身につけて育てば、川でおぼれることが少なくなるという理論である(仙台の広瀬川の仕事の際、東北大学の先生から教わりました)。
シマダラカの対策のことでも、生活者がそれとの関わり方を身につける方向で、住民の学習や参加を促すことが重要である。
参考文献:
「デング熱・チクングニア熱等蚊媒介感染症の対応・対策の手引き
地方公共団体向け」国立感染症研究所、2015年4月
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20140912-03.pdf