白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

Where is the name from?

2010-08-25 | 画廊の様子


薊の漢字は本当に「名は体を表す」ですね。
葉っぱは切れ込みがあってとげとげがいっぱい!
ガクは鱗みたいです。

道端の草むらの中に可愛い飴玉のような花が
ひっそり頸を振っていました。
野のあざみ(thistle)です。
この植物について少し調べてみました。

薊にはたくさんの種類がありギリシャ、ローマ時代から
伝えられてきた歴史ある薬草です。
ヨーロッパの修道院では重要な治療薬として今も大切に使われています。

マリアアザミ(milk thistle)は聖母マリアが幼子イエスに乳を
飲ませている時にその滴が落ちて生まれた野草で、
その葉にはミルクが流れ落ちた模様が残されていると言う
伝説があります。

解毒作用や、また解熱や食欲増進、催乳などの薬効があり、
種は咳や気管支炎の快復を助けるといわれます。
今はハーブ(herb)のお店などで買うことができます。
わたしはお茶の葉と一緒に煎れていただきます。
香ばしくて美味しいです。

アーティチョーク (ちょうせんあざみ artichoke)も
胃腸のトラブルや、動脈硬化などの治療薬として大切に使われて
います。大きいつぼみを茹でてバターを付けていただくこともあります。

瑠璃玉薊(small globe thistle) るりたまあざみは
小さな小さな青い花が集まっていて、まるでお菓子のボンボンのような
愛らしい姿をしています。
学名はエキノプスといい、ラテン語でハリネズミのことだそうです。
ボンボンとはりねずみどちらの名前が相応しいんでしょうか。
   ボンボンか、はて、はりねずみさんか・・・
                       s・y

薊はスコットランド地方のエンブレムです。
nemo me impune lacessit
     何人も害を受けることなく我を襲わず





君が好き

2010-08-15 | 画廊の様子
光の君は夏の夕闇の中にぽおっとそのつぼみを咲かせる
あの白い儚げな花が好きです。
それは十七才の夏ふとしたことで出逢い、甘く切ない日々を共に過ごした
今は亡きあのひとを想いださせてくれるからです。

月日が流れ運命の糸が知らぬ間に手繰り寄せられました。
あの忘れられない恋のお相手と光の君の生涯のライバル貴公子との
秘密の忘れがたみ、二十歳の花の姫君玉鬘が現れます。

恋ひわたる身はそれなれど玉かづらいかなる筋を尋ね来つらむ 源氏の君

心のときめきなのか下心あってのことなのか秘密裏に
玉鬘を養女にしたものの数多の若い貴公子たちがお熱をあげて
言い寄って来るので源氏の君は面白くなく若者達を
ちょっとからかってみたいと思うのでした。

ある夜、闇にまぎれて色好みの貴公子がやって来ました。
見張っていた源氏の君は御殿の御簾をそっとあけて袖に隠しておいた薄衣に包んだ
蛍を放ったのです。
一瞬の仄かな明りに玉鬘の横顔が浮かびあまりの美しさにそこにいた共の者たちも
息を呑んだのでした。

この先、玉鬘十帖と名づけられるほどの長いお話が展開して行きます。

「はかなびたるは ろうたけれ」 と源氏の君は誰よりもあの白い花のつぼみのような
儚げな人を理想の女性として生涯忘れることはなかったでしょう。

今日の一枚の絵  「蛍」  宮下柚葵  肉筆

美女、白い花のつぼみ、蛍いづれも命の儚さの代表と
いえましょう。

    龍馬さま、いえ雅治さまが歌っています。「蛍」

      ありがとう この街で 僕のこと見つけてくれて
      僕たちは何もかも 知りたくて 恋をした
      どこにいたの どんな世界で 君は生きていたの
      誰を愛したの どんな傷があるの
            一人きりで泣いていたの
      今 君だけを見つめている 怒った顔も 笑った顔も
      この言葉じゃ きっと足りないけど
            君が好き
                         s・y

星屑のタンゴ

2010-08-06 | 画廊の様子
地上の喧騒が止み夏の夜空に漆黒のカーテンが降ろされると
夜明けまでのほんの一時、ここに星たちのお祭りが始まります。

明かりの消えた公園の木立の中で静かに天を仰いで待っていると
やがて小さなちいさな星屑が集まってくるのが見えてきます。
地上の熱気で温められた星たちは一粒ひとつぶゆれながらぶつかり合って
チチ、チチと音をたていつの間にか光の帯になってまあるい空のてっぺんから
南の地平線へと流れ落ちて行きます。
夜空にちりばめられた星たちはかすかな音をお互いに響かせながら
踊り明かします。
チチ、チチ、チ、チまるでタンゴのリズムです。

星が瞬く、星が煌く、星達が囁く!星たちに相応しい美しい言葉です。


空のダイヤモンドと讃えられること座のペガ、
逞しいわし座のアルタイル、
そして十字の形になって恋の架け橋を渡す白鳥座のデネブが
眩いばかりの銀河の流れの中でその輝きをましながら
ロマンあふれる夢のお芝居を演じます。

この三つの星たちが創る夏の大三角形が西の空に傾く頃には秋がやって来ます。

            七夕や秋を定むる夜のはじめ 芭蕉     
                        
s・y



今日の一枚の絵    「七夕」 竹久 夢二   木版