白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

ひとりとふたり

2011-05-20 | 画廊の様子
春の匂いがあふれる庭で小さなちいさな花が
優しげに白い面をほころばせています。
一人静は紅い一本の茎に四枚の深緑の葉を開き、
真ん中にすうっと真っ白な花穂を一本つけます。
二人静と呼ばれるのは二本の花穂が寄り添って
います。
愛する人、義経が兄頼朝に追われ静は囚われの身と
なります。
美しくまた、この上もない舞の名手、白拍子の静に
頼朝は鶴岡八幡宮に舞を奉げるように命令します。

吉野山峰の白雪ふみわけて入りにし人のあとぞ悲しき

しづやしづしづのおだまき繰り返し昔を今になすよしもがな

と二曲歌いながら舞いました。
この静の舞に居合わせた者達は謀反人を慕う歌ということも
忘れて幽玄の世界に誘われてしまったということです。

ひとり舞う静、そして静と静の魂がふたりとなって舞う
美しさをこのつつましい野の花がその姿となり名付けられて
今も、このものがたりがいろいろな形で語り継がれているのは
人は貪欲でありながらも時には夢と幻を追い求め心を浄化させて
さらに生きていく生き物だからでしょうか。

愛知県の和菓子に「二人静」と名づけられたお菓子があります。
薄紙にふたつの半円がそれぞれ紅白の可愛いらしい和三盆が
包まれていて口に含むとすうっと溶けてしまう小さなお菓子です。

                    s・y