白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

むすんで、ひらいて

2013-05-16 | 画廊の様子
花時雨がさっと降り注いで桜のつぼみや柳の木の芽を柔らかく湿らせ
しっとりとした春の甘い香りが辺りに漂っています。

風呂敷包みって女の子が胸に抱えていると可愛らしいものですね。
中に包まれているのは何かしらとか、何処へお出かけなのかしらとか
なんだか夢を誘うものですね。

この一枚の正方形の布は中に包む物のどんな形にも優しく沿って
四隅を結ぶことの出来るすぐれものです。

絹縮緬の風呂敷はお届けものをする時に使います。京友禅のはお洒落の
よそ行きに持ち、お花見のお弁当を華やかに包んだりもします。
木綿の大きなものは布団や重いものを包んだり、一升瓶を包むのにも
役に立ちます。

ぱっと広げると桜の花びらが散っていたり、まるまる太った五月人形が
こちらを見据えていたりと日本の四季折々のみずみずしい自然や行事が
描かれ、また古式懐しい伝統文様が染められたものや、
お目出度い模様のもあり、粋な縞模様の片隅にお店の名前が入った
ものなど、それはそれは豊かな和の心がそこに包まれています。

私も頂いたもの、母や祖母のもの、ついつい買ってしまったもの等
たくさん持っていて、お届けする絵を包んだり、行事を追って
テーブルや壁に飾ったり、埃よけに使ったりして本来の目的以外にも
便利でしかも楽しい必需品として大切にしています。s・y

今日の一枚の絵 「稽古がえり」 岩田専太郎  木版

  お歯黒どぶの角をぐるりと曲がるとそこにはしっとりと懐しい
  大黒屋の寮がありました。
  塗り木履の音も弾けて花のように美しい少女が駆けてきました。
  髪に飾った紅染めの鹿の子、蒔絵の櫛に桜の簪、
  黒繻子の襟に花びらを散らした襦袢の襟がいっそう初々しさを
  際立たせています。

筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
比べこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずして誰かあぐべき
                 伊勢物語