白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

りいんりいん、ちんちろりん

2011-09-12 | 画廊の様子
どこからか「みんなのうた」の♪もういいかい♪が
聴こえてきます。
~♪もういいかい♪まあだだよ♪夏と秋とがおいかけっこ♪~と
歌っています。
九月、お月様の一番美しい季節です。
お昼間はまだ暑さがぼんやり残っていても涼やかな風が吹き始めると
薄墨色の空にぽうっと黄色いお月様が浮かんで
・・・ちんちろち、じいじい、りいーんりん・・・かすかな
声で虫たちがささやきはじめます。
耳を澄ますと声は音色に変りメロデイを奏でる虫の音となって
人はたちまち浪漫の世界へ引き込まれてしまいます。
源氏物語の光君が出家した女三宮を慰めるために中秋の名月の下、
琴を弾いて虫の音と合奏するシーンはあまりにも美しすぎて
ため息がでてしまうほどです。
自然の声に耳を傾けその小さな変化に美を見出す日本人の感性は
誇らしくも思います。

今日の一枚の絵は鏑木清方の「秋苑」です。
絵と静に向き合っていると移ろう季節を受け止めて、
そのわずかな動きにも心を寄せ楽しんでいる一人の女性の
心模様が伝わってくるようです。

一枚の絵の中から限りなく美しい和の佇まいがにじみ出て来ます。

あともう少し、夏と秋とがおいかけっこの日々が続きます。
今夜は中秋のお月見、魔よけの薄を飾り、豊饒を願うおだんごを
お供えし、そして虫の音に心をあずけて秋の一夜を過ごしたいと
思います。
                      s・y

心もて草のやどりをいとへどもなほ鈴虫の声ぞふりせぬ
                     源氏物語  鈴虫