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心人-KOKOROBITO-

亡き先人と今を生きる人に想いを馳せて
慰霊活動や神社参拝で感じ取った事を書き綴った日記と日々の雑感コラム

人間の悲しみと憤り

2011年08月07日 | 震災



【陸前高田の薪、「五山送り火」に使う計画中止に】

東日本大震災で津波になぎ倒された岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」の松で作った薪(まき)を、京都の伝統行事「五山送り火」の大文字で燃やす計画が中止になった。放射能汚染を心配する声が京都市などに寄せられたためという。放射性物質が含まれていないことは検査で確認したものの、主催する地元保存会は「世論をみて難しいと判断した」。400本の薪に書かれた鎮魂の思いは、広がり続ける放射能不安にかき消された。

 計画は、高田松原の松が薪になって売られていることを知った大分市の美術家、藤原了児さん(61)が発案。京都の「大文字保存会」に呼びかけて、震災で亡くなった家族や復興への思いを書いた薪を、五山の送り火で燃やそうと準備を進めていた。

 だが企画が報道されると、「放射性物質は大丈夫か」「灰が飛んで琵琶湖の水が汚染される」などと不安がる声が、保存会や京都市に電話やメールで数十件寄せられた。

 市と保存会は7月下旬、すべての薪を検査し、放射性物質が検出されないことを確かめた。保存会では「これで大丈夫」との意見が出る一方、牛肉などの放射能汚染が問題になる中で、「放射能への不安を完全に取り除くことは、世論をみると難しい」という慎重論が消えず、苦渋の決断をしたという。

2011年8月7日 朝日新聞より原文転記





阪神大震災を題材にしたドラマが数年前放送された。震災で被災した神戸新聞では、社員の安否を確認の上、記者達は現場写真を撮り震災の現場をカメラに収めて行った。だが、肝心な記事を仕上げる印刷が出来ず、路頭に迷いながらも、交渉の末、京都新聞の機械をお借りし、新聞を発行し続けたのである。この交渉のシーンでは、並々ならぬ神戸新聞の記者の熱意と、寛容に受け止める同じ同志として懐深く了承した京都新聞の感動的な絆が、そこにはあった。

今回も地域や被災の規模は違えど、「五山送り火」の大文字を被災者自身が書き綴った倒木の薪を燃やす事の発案に対し、阪神大震災での神戸新聞と京都新聞の記者が交わした同志たる友情に近いものが感じられた。この気持ちというものこそ、痛みを共有する事のように思える。

だが、最終判断は記事の通りだ。発案された方、そして被災地で祈りを書き綴った薪を集めた方、主催の地元保存会の最終使用しないという決断、それぞれに無念さが残るだろう。

使用しない被災地の薪。
京都の伝統行事「五山送り火」で燃やされると聞かされ、
遺族達や被災者は、おのおのに祈りを書き綴った。

薪を使わない決断の理由に、被災地の遺族をおおいに傷つける結末を迎えてしまった。薪の検査で白ならば、保存会の責任者は、そのまま使用し意義ある「五山送り火」を実施すべきだった。人々の祈りの気持ちよりも、人々の危惧する少数の声を大多数の世論と定め、優位とした彼らの判断に、人間として、深い悲しみと憤りを覚える。

日本人は、いつからこんな判断力が低下していったのだろうか。

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