宝島のチュー太郎

酒屋なのだが、迷バーテンダーでもある、
燗酒大好きオヤジの妄想的随想録

誰かが足りない

2012-03-08 10:43:16 | 本のこと
けふのBGM

「四季」から春  ヴィヴァルディ




誰かが足りない
クリエーター情報なし
双葉社




 一昨日の定休日に露天風呂に浸かりながら読んだ。


まず、目次を観て???

予約1から予約6までの短編集。



予約がなかなか取れないレストラン「ハライ」にまつわるそれぞれの人間模様、ということなのだが、
特段そのハライの魅力については語られていない。


「食べること」好きとしては、料理の楽しさを語った小説を期待していただけに、正直肩すかしだ。




予約4のところで気づいた。

あれ?予約3も、予約日が10月31日だった?


ページを繰り直して確認すると、確かにそうだ。


「そうか!全てがその日に集約するようにプランされてるのか。」


相変わらず気づくのが遅い。


しかし、予約1についてはその件(くだり)はなく、そもそも予約を入れるという展開にもなってはいない。




この短編集は、いわゆる小説雑誌に連載されたものをまとめたもの。

そこでこんな推測が成り立つ。


著者の頭の中には、当初そのプロットは浮かんでなかったのだが、中途で思いついた。
なので、全体のバランスが悪い。



それが最後の10月31日当日の様子に顕れる。

6組の人生全てがニアミスする結末とはならず、そのうちの数組のみが登場する。

そも、ハイライトたる10月31日が、予約6の最後に少し触れられているだけという点がおかしい。
ちゃんと設計されているならば、「予約6」の後に「予約当日」とでもして、別に一編を設けるべきだ。
そして、そこでこれまでの6組全てが登場し、鮮やかな展開を見せる。


そういう組み立てなら感動させられたろう。


そんな訳で、

行き当たりばったりの手抜き短編集、そう感じさせる作品・・・
という印象は否めない。







 ただ、そこここに散りばめられているテーマに勇気づけられる喜びはある。
(ちょっと気取りすぎて、昔の片岡義男を思い出させる文体ではあるけれど)



例えば、一等心に染みたのは、哲学家キルケゴールの言葉「死に至る病とは絶望のことである」を引用して、

「失敗自体は病じゃないんだ。絶望さえしなければいいんだ」

という励まし方。




ちょっと元気になる。





 でも、私はここの登場人物ほど繊細には出来てないので、

「こんな生き方しんどいやろな」

と、単純に思ってしまう。






ともあれ、乗りかかった船、もう少しこの著者を追ってみよう・・・





死に至る病 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店
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