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販売店の食事は、朝食と夕食の二食分が出た。
おかずが一品限り、そして、納豆、味噌汁、ご飯はおかわりが出来た。
四国出身の私は、それまで納豆を食ったことがなかった。
だから、最初はなんだか抵抗があったものだが、直ぐに慣れていった。
だって、それを嫌いだなんて言ってたら、腹が満たされないのだから。
昼食は、各人が出先で摂る。
ただ、私はそれを抜いた。
それは、ある欲しいものを買う為の辛抱だった。
或る日、高校時代の友人が訪ねて来て、隣町の豊玉北の下宿に住んでいるという。
以来、よく遊びに行った。
そしてある時、その友人と別の下宿人の部屋にお邪魔した時のこと。
そこには、コンポーネント・ステレオセットがあった。
そして、そこで聴かされたのが、当時新人だった荒井由実の『ミスリム』というアルバム。
その音が素晴らしかった。
その時、『やっぱり、コンポが要る』
と思ったのだ。
そう、これが、その『欲しいもの』な訳だ。
しかし、貯金も小遣い銭もない身には、それを買う金を薄給の中から捻り出す外に方法はない。
となれば、高々昼食代と言えど、それも足しにしなければ、そんな思いからだったのである。
それからは、時間を見つけては秋葉原通い。
一遍に揃えるのは不可能。
となれば、まずは、アンプとレコードプレーヤーとヘッドフォンを買おう。
それも、一つずつ。
どうせ電車で行って、抱えて戻ってくるのだから、いくつもは持てないし。
やがて、それらにスピーカー、チューナー、カセットデッキと買い足していき、全てが揃ったのは、歳の暮れではなかったか。
何故それを覚えているか?
確かその年、解散していたS&Gが一時的に再結成してリリースしたのが『マイリトルタウン』という曲で、当時エアチェック用に読んでいた『レコパル』で、それがNHK-FMで特集されると知って録音した記憶がある。
そしてそれが、年末特集だったと思うから。
とても良い曲で、心に染み入った。
なので、今でもそれを聴くと、当時の空気感が蘇ってくる。
Simon & Garfunkel - My Little Town (Audio)
それらは、その後二度あった引っ越しと新居浜へのUターンの折にも持って帰って、大事に使っていたが、やがて順に壊れて処分していった。
ただ、スピーカーだけは、押し入れの奥を探せば、まだ在る筈だ。
こいつは、片方のウーハーのコーンが酔っぱらってひっくり返った時の衝撃でへこんではいるが、まだ鳴る筈。
だって、当時はマークツーと呼ばれる、三菱ダイヤトーンの、それなりに評価の高いものだったのだから・・・
続く
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販売店の食事は、朝食と夕食の二食分が出た。
おかずが一品限り、そして、納豆、味噌汁、ご飯はおかわりが出来た。
四国出身の私は、それまで納豆を食ったことがなかった。
だから、最初はなんだか抵抗があったものだが、直ぐに慣れていった。
だって、それを嫌いだなんて言ってたら、腹が満たされないのだから。
昼食は、各人が出先で摂る。
ただ、私はそれを抜いた。
それは、ある欲しいものを買う為の辛抱だった。
或る日、高校時代の友人が訪ねて来て、隣町の豊玉北の下宿に住んでいるという。
以来、よく遊びに行った。
そしてある時、その友人と別の下宿人の部屋にお邪魔した時のこと。
そこには、コンポーネント・ステレオセットがあった。
そして、そこで聴かされたのが、当時新人だった荒井由実の『ミスリム』というアルバム。
その音が素晴らしかった。
その時、『やっぱり、コンポが要る』
と思ったのだ。
そう、これが、その『欲しいもの』な訳だ。
しかし、貯金も小遣い銭もない身には、それを買う金を薄給の中から捻り出す外に方法はない。
となれば、高々昼食代と言えど、それも足しにしなければ、そんな思いからだったのである。
それからは、時間を見つけては秋葉原通い。
一遍に揃えるのは不可能。
となれば、まずは、アンプとレコードプレーヤーとヘッドフォンを買おう。
それも、一つずつ。
どうせ電車で行って、抱えて戻ってくるのだから、いくつもは持てないし。
やがて、それらにスピーカー、チューナー、カセットデッキと買い足していき、全てが揃ったのは、歳の暮れではなかったか。
何故それを覚えているか?
確かその年、解散していたS&Gが一時的に再結成してリリースしたのが『マイリトルタウン』という曲で、当時エアチェック用に読んでいた『レコパル』で、それがNHK-FMで特集されると知って録音した記憶がある。
そしてそれが、年末特集だったと思うから。
とても良い曲で、心に染み入った。
なので、今でもそれを聴くと、当時の空気感が蘇ってくる。
Simon & Garfunkel - My Little Town (Audio)
それらは、その後二度あった引っ越しと新居浜へのUターンの折にも持って帰って、大事に使っていたが、やがて順に壊れて処分していった。
ただ、スピーカーだけは、押し入れの奥を探せば、まだ在る筈だ。
こいつは、片方のウーハーのコーンが酔っぱらってひっくり返った時の衝撃でへこんではいるが、まだ鳴る筈。
だって、当時はマークツーと呼ばれる、三菱ダイヤトーンの、それなりに評価の高いものだったのだから・・・
続く
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