醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  705号  「日本ナショナリズムの歴史」を読む③  白井一道

2018-04-19 11:30:20 | 日記


  「日本ナショナリズムの歴史」を読む ③



句郎 今の天皇は誰が考えても神であるはずがないよね。日本人の一人にすぎないよね。
華女 まぁー、そうね。私は美智子妃のファンだったのよ。若かった頃、高貴な美しさがあったでしょ。憧れていたのよ。
句郎 そういう人は多かったよね。私が入学した高校ではテニス部に入部する人が多かったのを覚えているよ。
華女 軽井沢でのテニス、憧れ以上のロマンに胸のときめきがあったわ。
句郎 私たちにとっての天皇は神でも何でもない存在になっているのかな。
華女 天皇もテニスした美貌の女性に恋をして結婚する普通の男だっていうことが明らかになっているんでしよう。神様も恋をするのかもしれないけれど。天皇を崇拝するという気持ちは、どこからくるのかしら。
句郎 そうなんだよね。天皇崇拝というのはフェティシズムだと思っているんだ。
華女 フェティシズムとは、何?
句郎 物神崇拝とか、呪物崇拝というんだ。霊力があると人々が認めるものを崇拝することをフェティシズムと言うんだ。
華女 足フェチなんていう言葉を若い女の子が話しているのを聞いた事があるわ。それもそういうことなの。
句郎 そうなんじゃないのかな。足の綺麗な女の子に恋をする男の子を足フェチなんていっているんじゃないのかな。
華女 女の恰好が良い足には男の子を引き付ける魔力があるということなのね。
句郎 そうだと思うよ。そのような霊力というか、魔力のあるものが呪物なんだ。
華女 『おくのほそ道』にでてくる「殺生石」も呪物ね。その石に近づく虫は皆死んでしまう。そのような魔力がある石だと昔の人は「殺生石」と恐れたわけよね。実は那須岳の噴火で出た硫化水素や亜硫酸ガスなどの有毒な火山ガスによって虫たちは死んでしまったのよね。
句郎 魔力や霊力の実態が分からないものを人間は呪物として恐れると同時に崇拝するようなことがあるということなのかな、
華女 句郎君は天皇崇拝もそのような呪物崇拝、フェティシズムだと言いたいのね。
句郎 『古事記・直毘霊(なおびのみたま)』の注釈をした本居宣長は神代の奇蹟の結果、天皇が生存するようになったと説明している。このように梅田さんは述べていると私は理解したんだ。例えば、芭蕉は『おくのほそ道』紀行の中で栃木県にある「室の八島」を訪れている。ここには木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の伝説が伝わっている。コノハナサクヤヒメは燃え盛る火の中で無事子供を産んだと『古事記・直毘霊(なおびのみたま)』にある。その子孫が神武天皇になる。このような奇蹟の賜物としての天皇は全能の神ということになると本居宣長は言っていると梅田さんは述べている。
華女 天皇は神様だと『古事記』を研究した本居宣長は主張し、神である天皇の支配する国は「神の国」だということを述べているということね。
句郎 天皇を崇める国学が日本ナショナリズムの源流だと梅田さんは述べていると私は読んだんだけどね。

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