ホロコーストとナクバ ①
侘輔 ノミちゃん、「ナクバ」という出来事を知っているかい。
呑助 「ナクバ」ですか。それはどんな出来事なんですか。初めて聞く言葉ですよ。
侘助 ノミちゃんのように博学な人が知らないのかな。
呑助 そう人をおちょくっちゃいけませんよ。
侘助 日本人一般は知らないのが普通なのかもしれないな。
呑助 早く説明して下さいよ。そうもったいぶって物知り顔をするものじゃありませんよ。
侘助 ナクバの悲劇は今も続いているんだ。「ガザ」という地域がどこにあるのか、ノミちゃん知っているよね。
呑助 イスラエルのパレスチナ人自治区ですかね。
侘助 確かに日本の地図には点線でガザは囲まれている。この東京二三区のほぼ六割ぐらいの地域に200万人以上の人々が押し込まれている。
呑助 出入りは自由にできているんですよね。
侘助 コンクリート壁で囲まれ出入りは厳しく制限されているようだよ。
呑助 イスラエルという国は第二次大戦後国連決議によって成立した国じゃないんですか。
侘助 イスラエルという国の成立がアラブ人にもたらして悲劇をナクバと言っているんだ。
呑助 日本人にはあまり縁のないユダヤ人たちがヨーロッパ各地での差別を逃れてパレスチナの地にユダヤ人の国をと、いうことで建国されたんじゃないんですか。
侘助 ヨーロッパ中世以来のユダヤ人差別、ユダヤ人への偏見を政治的に利用して外国の豊かな資源を奪おうとした政治家たちいたんだ。そのような人々を帝国主義者と言うんだ。
呑助 イギリス人のセシル・ローズですか。
侘助 セシル・ローズは次のようなことを述べているんだ。「私は昨日ロンドンのイーストエンド(労働者地区)に行って、失業者大会を傍聴した。そして私が、そこで、パンを与えよとの絶叫にほかならない、いくつかのあらあらしい演説を聞いて帰宅したとき、私は帝国主義の重要さをいよいよ確信した。私の抱負は社会問題の解決である。イギリス帝国の4000万人の人民を血なまぐさい内乱から守るためには、私たち植民政治家は、過剰人口を収容するために新領土を開拓し、また彼らが工場や鉱山で生産する商品のために新しい販路をつくらねばならない。決定的な問題は、私がつねに言う事だが、胃の腑の問題である。彼らが内乱を欲しないならば、彼らは帝国主義者とならねばならない。(1895年)」。このようなことをね。
呑助 「胃の腑の問題」というのは、イギリス人が豊かな生活をするにはということですかね。
侘助 そのためには外国に侵出し、そこの富や土地を奪おうということだからね。戦争だよ。強盗の戦争だよ。
呑助 ユダヤ人迫害と関係あるんですか。
侘助 ユダヤ人は悪い人間だからユダヤ人の財産や土地を奪ったとしても悪くないんだという意識を植え付けていったんだ。
呑助 あぁー、こうしてユダヤ人の殺害や土地財産を奪っても悪の意識から解放したということですかね。
侘助 一九世紀後半の時代はイギリス、フランス、ロシア、ドイツといったヨーロッパの列強は帝国主義化していく。帝国主義というのは、他国の富や土地を奪う強盗の戦争をするということだからね。
呑助 泥棒や殺人というのは、嫌なことですよね。嫌というより犯罪ですね。
侘助 ロシアでは、帝国主義的な政治に反対する社会主義運動が起きて来ると社会主義運動はユダヤ人の運動だと言って弾圧したんだ。ユダヤ人の運動は悪いに決まっているでしょと、いうことで弾圧した。ツァーリズムはユダヤ人への偏見を利用して社会主義を弾圧した。が勿論社会主義者の中にはロシア人もいた。