『日本ナショナリズムの歴史Ⅰ』を読む
句郎 梅田正己著『日本ナショナリズムの歴史Ⅰ』を読んだ。副題に「神国思想」の展開と明治維新とある。
華女 「神国思想」とは、何なの。
句郎 日本は「神の国」だという考えだと言っている。
華女 そう言えば何年前だったかしら。「日本は神の国だ」と述べ、顰蹙をかった首相がいたわね。誰だったかしら。
句郎 二〇〇〇年五月十五日、神道政治連盟国会議員懇談会において森喜朗内閣総理大臣(当時)が挨拶の中で述べた。「日本の国は、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを国民の皆さんにしっかりと承知して戴く、そのために我々、神政連関係議員は頑張って来た」。
華女 「神の国」とは、天皇を中心にまとまっている国ということなのかしら。
句郎 神である天皇が臣民としての日本人を支配する国が戦前の日本国だった。
華女 森元首相は戦前の日本国にしたいと主張していたということなのね。
句郎 そうなのかもしれない。戦前の日本国民は天皇の臣民として絶対服従することが義務付けられていたからね。為政者たる森喜朗氏たちにとっては具合がいいからな。
華女 「神国思想」とナショナリズムとは関係があるのかしら。ナショナリズムとは民族主義ということでいいのよね。
句郎 日本語で意味する民族主義と英語のナショナリズムが意味する内容が同じ所と違っているところがあるようだ。ナショナリズムという言葉が意味する内容が大きいようなんだ。だから、ナショナリズムと梅田さんは言っているんじゃないかと考えているんだ。
華女 ナショナリズムとは、どのような考えを言っているのかしら。
句郎 日本の歴史を考えてみると文明の誕生地中国黄河中流域に成立した漢帝国への朝貢を通して国家を形成してきたという歴史があるでしょ。
華女 漢字文化圏が東アジアにできたということ。
句郎 そうなんだ。東アジア地域、日本、朝鮮、満州、モンゴル、チベット、ベトナムは中国の文化、律令や、仏教、儒教、漢字を受け入れ、国家形成したきた経過があるんだ。
華女 遣唐使の派遣ということは、中国の文化を輸入していたということなのね。
句郎 八世紀、中国の唐王朝文化を受け入れ、律令国家体制を整えたと言えるように思うんだ。
華女 残念ながらまだ日本独自の文化は誕生していないのね。
句郎 十世紀になると漢字から日本独自の文字、仮の文字、仮名文字を発明する。この仮名文字が国風文化を創造するんだ。それが『源氏物語』に代表されると言っていいんじゃないのかなと思う。
華女 その国風文化が日本独自の民族文化ということなのよね。
句郎 世界に誇る日本民族文化としての『源氏物語』だよね。初めてといってもいい日本独自の民族文化は女性によって築かれた。輝かしい民族文化を築いたのは男ではなく女性だった。
華女 女性は一貫して文化の担い手だったのかもしれないわ。そうじゃないの。 (続く)
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