集改センターの第137回 スキルアップセミナーの報 告をいたします。
開催日:2016年(平成28年)4月6日(水)
テーマ:「理事長の権限範囲と責任」
講 師:九鬼 正光(弁護士、集改センター正会員)
<セミナー概要>
■管理組合の理事長の権限はなにに基づくものか。
会社の代表取締役社長、公益法人の理事長、これらの代表者は、事業を具体的に執行する権限をもっています。
例えば会社との取引、契約、実施など。一方、管理組合は、区分所有法第3条で「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行う・・・」と事業内容が法律で限定されています。
この事業を具体的に進めるためには、総会で決議したものを理事会で執行するということになり、その執行責任者が理事長なのです。
つまり、理事長が単独でその権限を行使できないことが基本原則です。
従って権限の無い理事長が単独で行った行為は「無効」となります。
■理事長が行ったコンサル契約が無効とした裁判事例
設計事務所が、理事長の依頼により、建物の劣化調査・診断業務を行いました。
総会決議を経ずに設計事務所と行った契約を、臨時総会で白紙に戻した管理組合に対して、設計事務所はすでに行った業務費用の支払いを求めて提訴。
東京高裁は、総会決議の有無を確認しなかった設計事務所側の請求を棄却し、管理組合の理事長は、総会決議なく契約を締結する権限を有していないと指摘している。
■理事長の責任
理事長の責任は、管理組合に対する「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)※民法644条」があります。会計理事が横領した損害を、理事長に一部の責任を認めた判決があります。
預金通帳を確認するなど、注意しておれば簡単に分かったはず。損害額の10%を賠償しなければならないとしています。
■総会決議はどこまで必要か、理事会決議でどこまで実施できるのか、様々な質問と議論が行われ、なんとなく理解していたつもりの理事長の権限と責任について、法律の根拠や、裁判事例等により分かりやすく説明され、大変有効なセミナーでした。
~ 次 回 開 催予 告 ~
■第138回スキルアップセミナー 2016年5月11日(水)午後3時から
テーマ:「アルミサッシ改修工事&補助金制度の最新情報」
講 師:㈱ L I X I Lリニューアル(NPO集改センタ一賛助会員)
標準管理規約では、アルミサッシの改良工事は計画修繕のひとつとしています。
そこで、この工事に関する工法と工事費及び国の施策である補助金制度について知識を深めたいと思います。