集改センターの第157回 スキルアップセミナー報告をいたします。
開催日:2018年(平成30年)3月7日(水)
テーマ:「新築工事のあれこれ設計、監理の観点」
講 師:實本 勝也(本会・正会員/一級建築士・設計監理部会)
<セミナー概要>
■はじめに
マンション等の大規模改修工事においても、いろいろな人が関わりますが、マンションに限らず新築物件においてはさらに多くの人が関わっています。新築建物が出来るまでの企画段階から完成引渡しまでの流れと設計者、監理者の観点また立ち位置とは、何かについて述べます。
■工事の流れと設計、監理
新築工事の場合、事業主(施主)がいて、資金を借入れた場合には銀行等金融機関が絡み、建物の設計者(設計事務所)、建築工事を施工するゼネコンなど建設業者、場合によっては近隣住民が関わってくるなど非常に多くの関係者が存在します。建築の流れとして、企画の段階において設計者はまず、「事業主が希望する通りの建物が建つ敷地なのか」を見極めなければなりません。住宅が建てられる用途地域か、容積率・建蔽率、道路幅などを検討した上で判断します。また、行政との関わりも出てきます。開発許可が必要か否か、農地であれば転用許可が必要となるのか、など建築行政以外の対応も生じます。こうしたことをクリアして初めて建築確認申請に移ることが出来ます。次に設計段階に入ります。地盤調査を行い、どういったコンセプトでいくのか、意匠設計において全体像を把握します。木造かRC造または鉄骨造でいくのか、設備のグレードはどうするか等を決めていきます。それによって構造、機械設備、給排水衛生設備、電気設備といった設計が行われます。場合によっては外構工事設計も入ってきます。設計者は事業主、行政と打ち合わせを繰り返して完成させた設計図書で工事業者に見積り依頼を行ないます。1社指定か見積合わせかは、建物の規模等により変わってきますのでケースバイケースです。業者が決まり工事段階になると、設計者は工事監理という立ち位置にかわります。限られたコスト・工程の中で事業主と工事業者の間に立ち、より良い建築物を造るために、工事が滞りなく進められるように仲介します。工事が完成すると役所の検査などの後、事業主に建物が引き渡されます。各検査合格証や保証書などが渡されます。検査済証は特に大事ですので大切に保管しておいてください。通常は、登記手続きが終わると支払がなされ新築工事は全て終了ということになります。完成後については、建物の寿命を延ばすためには、当然、定期的にメンテナンスを行うことが大事になります。
■設計事務所の役割
最後に、設計者の役割は事業主の希望を、専門知識というフィルターを通して工事業者に伝えることにありますが、事業主が間違った選択・方針をとろうとしているときに、正しい方向に導くことも大事な役目だと考えています。
~次回開催予告~
■第158回スキルアップセミナー 2018年4月4日(水)午後3時から
テーマ:「理事長解任に関する訴訟を検証する」
講 師:九鬼 正光(本会・正会員/管理運営事業部・)
<理事長解任は理事会で出来ると、最高裁が逆転判決。1審・2審と最高裁の判断を検証します。その他、マンションに関係する、最近の裁判事例を考えてみましょう。>