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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1章4節 「衝撃の告白」

2016-09-23 | 迷宮・緑柱玉の世界
年の差。
男女の差。
性格もあるだろうけど、互いを知る為の心の葛藤がこの先数回出てくるはず。
他人の恋なら、いつまでも同じ事を・・・と思うけれど
好きになった当の本人なら、あれこれ考えて、ありもしない問題を自分で作り出し悩んでいく
そんな場面が多くなる。
何時だったか、互いの私利私欲とか男と女の気持ちの違いについてインタビューされたっけ・・・
それがきっかけで、雑誌に載るようになったりした。

でも本当に、恋愛ってしつこいぐらいに互いのことを思って考えてると思うんだ。
そんな面も、改めて読み返してみると、新鮮だった。


******************* 迷宮・緑柱玉の世界 1-章-4節-1「衝撃の告白」**********************




私は今朝、彼女がアルバイトを承諾してくれた時点で、今日中に彼女をこの部屋に迎きいれようと決めた。
もう先延ばしにはできない。彼女が来てくれるのを待つだけの余裕がなくなってきていた。
私の心は、自分の欲求を満たすためだけで、それ以外のものは見えなくなっていた。

家を出る時、再び部屋を散らかして出てきた。
なぜ、そのような、子供じみたことをしてくるのかわからないが、そうせずには居られなかった。
彼女は、もう、見ただろうか?そう思うだけで、興奮してしまう。
それを見て、彼女はどう思うだろう。嫌な思いをして、帰ってしまったかもしれない。
それならそれで仕方ない。それまでの相手と思うしかない。

私が今欲しいのは、私を受け入れてくれる彼女が、欲しいのだ。
誰でも良いのではない、彼女が欲しいのだ。
本当はすぐにでも帰って、彼女の姿を見たいと思う。

しかし、ここで焦ってはいけない。
彼女が私をどう受け入れるかをじっくり確かめたい。
強引でも強制的でもなく、穏やかな始まりを、私は望んでいるのだ。
彼女とは、永遠の時を過ごしたいと思っているのだから、出足は、肝心だ。

家路に着く道のりがこれほど、うれしいと思ったのは懐かしい。
いつごろのことだっただろう?
もう久しくなかったように思う。
マンションの駐車場に車を止め、管理人に、挨拶をすると、
「おみえになっておりますよ。」
と管理人の言葉に、彼女は、帰っていない事がわかり、私は安堵した。
管理人には、部屋の掃除に若い女性が来ることは告げてある。
帰ってしまうようなことは無いとは思ったが、やはりどこかで心配していたのだ。

エレベーターに乗り、12階までが長く感じた。鍵を手にドアの前に立ち、鍵を差し込もうと思ったが、チャイムを押した。
しかし私は、せっかちなのだろう、待つのももどかしく、ドアを開け玄関に入ると、彼女は、小走りに走ってきた。
「ただいま。」
返事をするよりも早く、私の脱いだ靴を揃えていた。
「お帰りなさいませ、お疲れ様でした。」
驚いた。初めてだった。
私の胸に熱いものがこみ上げてきた。不意に訪れた感動だった。
「私の目に、狂いは無かった。」そう心で、つぶやいた。
この子は、どこまで男の心をくすぐるのだと思った。
男の望む出迎えの姿を知っていて、そうしていたのだろうか?
三つ指突いて出迎え、跪き「お帰りなさいませ、お疲れ様でした。」と言われたなら、愛おしくて手放したくなくなるに決まっている。
居てくれるだけで良いと思ったのに、私の望む姿以上の、出迎えに、彼女を抱きしめてしまいたくなってしまった。

しかし、私は、彼女との距離を一定に保つため、感情を抑え込んだ。
リビングに向かう廊下を歩きながら深呼吸した。

リビングは、片付いては居なかった。
それでもかまわなかった。片付いているとは、思っていなかった。
私は、部屋に彼女を招きいれ、見せたかったものは、私の内部にあるものを理解して欲しかっただけだ。
軽蔑されるか?理解されるか?
それは、賭けだった。

しかし彼女がここに居てくれたことで、理解してくれるのだと確信した。
そうなると、少しでも早く、彼女の中に、私という存在を植えつけてしまいたかった。
「片付いてないなぁ。やる気あるのか?」
「どう片付けていいのか解らないもの・・・」
「甘えないで、やりなさい、仕事だ。」

私は、強い口調で、彼女を急き立てた。
彼女の後ろについて、指図しながら、部屋の中を歩き回った。
彼女がさまざまなものを手にするたびに、私の心臓は大きく脈を打った。
「雛美礼が手にしている・・・」
心の中で歓喜の雄叫びをあげていた。彼女がアダルトな道具を手にした気もちを知りたかった。これらの道具を知っているのだろうか?どう使うのか知っているのだろうか?
矢継ぎ早き聞きだしたくなる衝動を抑えることが大変だった。


私は、片付けしながら、彼女の二つの過去を聞きだした。
彼女の知識や好奇心にとても興味があった。
「バイブレーターなんか使ったことあるのかい? 」
やはり答えにくそうだったがこれは聞いてみたい話である。
「誰と使ったのかな・・・」
雛美礼の表情に、なぜ、そんなことを聞くのという困った表情が見えた。雛美礼は、躊躇っていた。
「・・・・・1度だけあります。元彼と・・・」
少しびっくりしたのと、落胆を感じた。
「その時は、どんなのだったのかな?こんなのか?」
床に転がるピンク色の細長いバイブレーターを指して言った。
「言わなきゃダメですか? 」
言いたくないことは、百も承知だ。しかし、聞きたい。
知らないだろうと思ったのに、知っているというではないか。おまけに使ったことがあると答えたのだ。聞かない訳にはいかない。

「ああ、聞きたいね。君がどんな体験をしてきたかは、すごく興味があるよ。」

私は、好奇心丸出しで、早く言いなさいと言うように、彼女の方をずっと見ていた。
彼女にしてみれば、蛇ににらまれた蛙の心境だろう。
しぶしぶ口を開き始めた。

私の知っているのは、これとは違います。もっとシンプルで、メタリックな機械的なものでした。」
拒絶しないところがうれしいではないか、本当に私が望んで欲しいと思った通りの子だ。
なんて素直で、正直なのだろう。うれしくて仕方が無い。
私も言葉を選んでいるが、雛美礼も、言葉を選びながら、必死に話そうとしている姿がうれしい。
「使ってみてどうだった? また使いたいと思うかい?」
ここまでくれば、聞かないわけにいかない。とことん聞きたい。
「いいえ。お道具使うのはいやです。
感じたことは、確かですけど、気持ちがいいかは、分からないのです。
それに・・・その後、出血が止まらなくて、病院に通うことになってしまいましたから・・。
とても嫌な経験でした。」

彼女にとって、いい思い出ではないことがわかった。
「その後、彼とはどうなった?」
「その後直ぐに別れました。」
「なぜ別れたんだい?」
「私が嫌と言うことをしたがるんです。 それに・・・・年上で威張るのです。」
「それは何時のことなんだい?」
「高校3年の頃です。」
「彼は、いくつだったのかな?」
「彼は、 28才でした。」
「そうか・・10歳以上年上だったってことかな?では、僕は、もっと年上だから、対象外だね」
「いえ・・歳の差が問題ではないのです。」

私の年齢に気を使ってくれるのがうれしい。
「私が彼を嫌になったのは、性格とか、態度だけではなく、セックスに関して嫌が嫌と伝わらないのです。強引です。」
「君を初めてみた夏休みの頃には、もう男を知っていたと言うことだね。」
「・・・・・・そうですね。」

なんだか落胆もしたが、当然かとも思った。
好きになった女性が処女であって欲しいなんて夢物語だろう。
彼女は続けて話し始めた。

3年になって進路を決める少し前、両親がお見合いの話を持ってきたんです。
 それが彼です。高校卒業と同時に、結婚という話が出てきたんです。
 卒業して直ぐに結婚という人も居るんです。私もかなって、思う部分と、私は違うって・・
 でも、とにかく付き合ってみなさいと両親が言うので、付き合いました。」
「それで?」
「彼の家は、会社を経営しているので、彼は、次期社長です。
 その時、彼は見習中でという立場だったんですが、将来の事を見据えたうえでお見合いをすることになったんです。
結婚を前提という事で、私が指名されたわけです。玉の輿だとは、思いましたよ。
彼は、後継者になると決まっていましたからね。
 私がなぜ選ばれたのかは、わかりません。親同士が決めたことだとは思います。
 両親は、私が了承していないのに、私の将来が安泰だから是非受けなっさいといっていました。
想像もしていなかった、私の将来の姿を両親と彼の家族は作り始めていたみたいです。彼の妻になる。
何も、はっきりしたものが見えないまま、付き合いだけは、受けたのですが、彼の自由になる女になってしまったのです。
当然全てが、彼の妻になるんだからいいじゃないか・・・というようになっていってしまったんです。
いろいろなお勉強をさせていただくのは、嬉しかったです。私の知らない世界ばかりでした。でも、本当に、肉体的な付き合いは、嫌で苦痛でした。
男の傲慢なのか、夫婦ってそういうものなのか分かりませんが、強引なのです。」
「苦痛?どういうことだい?」

「男の人は、何しても、感じると思っているみたいで・・・
 俺がして欲しいことをすれば、女は感じると思ってる。感じるか、良いかって聞かれても、答えられません。気持ちがいいなんて、分かりません。
 それに、俺を満足させろって言うの・・何をどうするかだって、わかりません。それでも、要求されると苦痛です」
「そうか、女だって感じたいよな。感じると言うことは、わかるのだろ?」
「はい。わかります。」
「今の話聞いていると、君は、初めてではなかったようだね。君の初めては何時なんだい?」
「・・・・・・中学の1年生。」
「かなり早いね。そっか・・で相手は誰だったのかな?彼?同級生かな?」


矢継ぎ早に聞きすぎかと思ったが、聞かないわけにいかない。
きっと雛美礼は、答えたことに後悔しているだろう。
「言わないとダメですか? 余り良い思い出じゃないから・・・」
「無理にとは言わないが、聞きたいね」


私は嬉しかった。本当にこの子は、なんと素直なのだろう。言わないで断れば、断れるのに、正直に話そうとしている。
なぜ、ここまで素直で正直なのだろう。寂しさの裏返しだろうか、断れないのか?
彼女は、だまされやすいのだろうと感じた。きっと、強引に押されてしまえば、拒まず、受け入れてしまうのだろう。
すべてを受け入れる雛美礼の心に寂しさと悲しみを見たような気がした。
そうしなければいけなかった、何かがあったのではないだろうか?
私は、彼女の闇の部分の過去を聞きだし、受け止め、雛美礼を守りたいと思った。

「少しでいいから、話してくれないかな。」
「少しだけですよ。小学校の時の先生でした。」
「中学生になっていたのだよね。小学校の先生って、元担任?何処でしたのかな?好きあっていたなら良いじゃないか・・・」
「好きとかじゃないのです。担任だった先生でもありません。夏休みの間だけ小学校のプールの監視員のアルバイトを頼まれて、その時に・・・・」
「どういう風に?」

雛美礼は、黙ってしまった。
聞いたのが良くなかったのか、言葉を捜しているのか、一向に話そうとしなくなってしまった。
「もう話したくない。」
はっきりとした意思表示をした。
私を見つめ、瞳にいっぱいの涙をため、拒否をした。

此の時の雛美礼の顔をきっと一生忘れないだろう。
弱さだけで流されたのではない、彼女は、弱さから、学んだ強さを、私に向かってはっきりと示したのだ。
「そうか、辛いこと話させたね。ごめんよ。」
こぼれそうな涙をためた目が、少し微笑んだようにみえた。

「いいえ。良いって事ばかりじゃないです。
そういうと、大きな瞳から、涙がこぼれ、頬を伝って流れた。手ですくう様に、涙をふき取り、再び微笑んだように見えた。
「私が油断したのがいけないのです。
 人を信じすぎるのはよくないって、勉強にもなりました。
 それに、その年頃って異性とかセックスにすごく興味のある頃ですよね。
 興味が、自分を苦しめることもあるって、知りました。
 空想と現実の違いは、はっきりとわかりました。
 男性はすごく素敵に見えて、恋愛には、セックスと思う時期で、セックスは、すごく愛されていると信じてるから・・
 綺麗に見えていたけれど、実際してみたら、苦痛であったり、理解されないことも多かったり・・なんだ、こんなもんか・・・・って思いました。
 逆らえないで、されるがままって、怖いです。それに、男性は、卑怯な面も持っているって事知りましたから・・・ 男の方は怖いです。」


「男は、卑怯か?すまないな」 
「先生が卑怯って言っているのではないんです。さっき言った彼も、
 小学校の先生も、ほかに付き合った男性も、卑怯な面を持っているのです。
 男の方は、自分勝手なエッチするんです。卑怯です。
 自分の欲求に正直ですが、相手のことを思ってないもの。
 痛いとか嫌だって叫んでも、聞いてくれなくて、
 嫌がれば嫌がるほど、喜んでいるように見える。
 体の悲鳴と、心の悲鳴が、届かない。
 まるで、違う生き物に、犯されているように感じるときさえあります。
 何してもいいと思っている・・・どうして・・なぜ・・・
 そして、お前が悪いんだって言って終わり。
 ・・・私がお願いをしたり、誘ったみたいな言い方・・・
 私が、何をしたというのですか?
 誘ってなどいません。私が、喜んでいたなんて嘘です。
 泣いて喜んだ。そんなはずないのに、誰もそんな事、信じないの・・。」


大きな瞳から大粒の涙が流れ落ちた。
僕は、雛美礼をぎゅっと抱きしめた。
「嫌なこと話させたね。ごめんよ」

私は、いけないことを聴いたような気がした。
自分勝手な私の心が見え、拒否しようとしているように感じた。
しばらくソファーに座り、肩を抱き、雛美礼が落ち着いてくれるのを待った。
「ごめんよ」

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