「防犯カメラが捉えた、2人組の犯行の瞬間です」
ニュース番組でこんな風に
防犯カメラが捉えた映像が放送されることは多いですが
怖いなあと思うのは
防犯カメラで見られているのは承知の上で
バイクや農園にかけられた鍵を手早く壊し
堂々と目的を果たしてゆく犯人が増えてること
そして見せるだけ見せておいてテレビは
「犯人はまだ捕まっていません」と言い置いて
サクッと次の話題に移ってしまう
視聴する私は、与えられた情報と引き換えに
常に必要以上に脅かされていることを
自覚したほうがいいのかもしれないなあと思ったりします
脳一個に対して目は二個
これ以上のたくさんの
これより遠いところの事象を見過ぎると
私の脳は無駄に傷んでしまうのではないか?と思うのです
だから是非
カメラが捉えた犯行の一部始終!
なんて映像を流す際は
犯人は捕まりました!というオチまでつけて放送して欲しい
けど
そういう呑気な期待を
平和ボケというのかな
店長がまたグリグリと
カメラのコントローラーを回していました
「また何かありました?」
さっきレジ応援がかかったのに、駆けつけようともしないのは珍しい
私としては
自分の業務をチェックされているのではないか・・
という恐怖が常にあるので
こう言うことされてると不安になります
「麦さん・・・」
「はいっ!」
「・・・・もし、
万引き犯が自首してきて
反省する様子を見せたとしても一切無視して欲しいんです」
「え?
あ?はい・・・」
思わせぶりなアプローチにビビらされて
私は適当に答えましたが
一介のパートのところに
万引き犯が自首してくるなんてこと、あるの?
でもこの店長は時々
敢えて言葉足らずに話すことで、こちらの頭の回転を測ったりするので
突っ込んで聞きました
「自首を無視するとは、具体的にどの様に?」
「これまでのうちの大量窃盗犯は・・若頭だったんです」
「へぇぇっ?!」
(嘘でしょ?)
(とてもにわかには信じられない知らせを受け取った時
私はこんな声出すんだ・・・
そして「え?」じゃないんだ・・)
と思いました
その情報は、私のこれまでの人生においても
5本の指に入る級に
信じられない話
若頭は三年前、私が入社して程なく栄転して行った
とてもお世話になった中堅社員でした
仕事のできるイケメンで、全方位から愛されキャラで
異動の際には皆がその出世を
心から祝って送り出しました
さらにこの三月
資格を活かした団体職員への転職が決まりましたと
誇らしげな挨拶をLINEでくれていて
<最後のお礼参り>と称して
二日間
有休消化中に
この店に応援に来てくれてたそう
「その日の動画ですけど、見ます?」
「いや、遠慮します・・」
「こうなると
これまでの全部
辻褄が合うんですよね
若頭がここに赴任してから、急に棚卸しのロスが跳ね上がって、彼が異動したら」
「ロスも異動した・・」
「過去にこれを指摘する人もいましたが
でも、やっぱり
まさかと思うじゃないですか」
「若頭ですもんね・・」
店長はロスの責任をその身に負いながら
彼の仕事ぶりを強く推していただけに
傷は深いだろうなと思いました
「あっ、また盗りますよ!」
24時間分の動画再生チェックを交代していた紅一点嬢が声をあげたので
思わず店長と一緒に覗き込みました
「見ててください、今左手に持ってるHAKUをサプリの棚の最上段に隠します」
画面の中の若頭は、確かに若頭なんだけれど
モニターの画素数のせいか、粗くて変な顔に見えました
目が塗りつぶされた様に真っ黒で
表情がない
「<狩る者の顔>ですよねぇw」
紅一点嬢はショックが一周回って振り切ったようで
なんだか楽しそう
これまで化粧品の数が合わない度に思い悩んで相談し
鍵付きのアクリルケースを壊されない様に一緒に工夫したりして
頼っていたのは若頭だった
「どんな気持ちで相談に乗ってたんでしょうね?」
「鍵開けて盗ってたくせにねw」
「こいつ、HAKUの前にアスタリフトも二本やってますからね」
「この日上がってから、僕たち一緒にご飯食べたんですよ
カバンの中にあれ全部入れて、誘って来たのかと思うと・・」
「一線越えちゃったかなあ・・」
疑う余地のない裏切りを目の当たりにして
最初こそ重苦しく
言葉が出なかったけれど
敢えて恨みの言葉を口にして
気持ちを共有するうちに
みんなで癒されれてゆくる様な妙な空気が出来上がりました
それは
優しくて頼れる愛すべきイケメンだった若頭
もう2度と会うこともないだろう若頭を
記憶から葬る儀式
悼むのとは違う
けれど
少しお通夜に似ているな
と思いました
「これから若頭はどうなるんですか?」
万引き犯は警察に即通報だし、これだけの証拠もあれば立件されて
数年にわたる悪質な犯行の罪は重いはず
団体職員への転職も不意になって
奥さんとお子さんたちにバレて
「なんともならないんじゃ
ないかなあ・・」
と店長
「カメラに映ったのは
棚から取って隠したところまでなので」
「カバンに入れて店から出てゆく
決定的な部分がないとね」
「本人の自白次第ですけど、防犯カメラのことはもちろん
そのあたり全部解ってやってるはずなんで
認めないでしょう」
「転職なんて滅茶苦茶になりやがれ!
って思いますけど
もう彼、
うちの社員じゃないですし」
今や街中にカメラがあって
24時間記録し続ける世の中でも
その時
カメラが回っていても
何にもならないことがある
「この映像を見た人は、
どうか
攻撃を止めさせてください」
切実な
命をかけた願いを訴える映像が
世界中に拡散されても
何一つ
変えられないように
今日はそんなカメラ譚の
おしまいの話
( ̄一 ̄)ノシ
🎞🎥 🐢
・
万引き病だったりして?
良い人を演じるストレスを万引きで相殺?
人のモノを盗る人、結構、多いなと思った中学校時代を思い出しました。
で、
命の母、そうなのね。
今日ね、生徒さんが入院。
凄く元気で持病の無い人だったのに、失神して転倒、調べたら、房室ブロック、準緊急で、明日、ペースメーカー入れるそうです。
夫婦で売上金を抜くひとが…
肝心な場面が映ってないということで
お咎めなしでした。
人当たりの良い優しい感じの夫婦でした。
万引きは、ブロンがごっそりのパターンが多かったですねー。
コッチもなんか収集つかなくなってるんだけどさ。
本来の業務以外の所で疲弊するのは辛いねぇ…
ホントにカメラに写ってるなら、確実に捕まえて欲しいよね。監視カメラの意味がなくなっちゃう。
実際簡単にいかないのは分かってるけどさ。
店内カメラから軍事衛星カメラに
思いが行った気持ちが、わかった…気がする。(^^;
ショックだよね。
いかにも、な人ではなく、頼りがいがあって爽やかでイケメンでって。。
優しくて頼れる愛すべきイケメンだった若頭
もう2度と会うこともないだろう若頭を
記憶から葬る儀式
悼むのとは違う
けれど
少しお通夜に似ているな
ここの部分がすごく好きです。
素晴らしい表現力ですね╰(*´︶`*)╯♡
私もこれに似た人と遭遇したことあります。とても賢くて、キレ物で、気が利いてテキパキしていて、羽振りが良くて部下にいつも差し入れやプレゼントをしていた女性が窃盗常習犯でした。
以来、第一印象が良すぎる人は要注意と思っています。
クレプトマニアって言われるやつかなあと思いました
ちょっとした御曹司で家賃もローンもなく
お金はあるみたいでした
ただ、大きな期待の元に育った果ての
ドラッグストア勤めというアイデンティティに、私は何と無く闇を感じてはいました
一病息災がいいのかなと思います
働いているうちは会社の健診がありますが
リタイアすると健診の機会を逃しがちで
丈夫だと医療に繋がる機会がないですもんね
命の母のおかげで
すっかり鳴りを潜めた動悸ですが、
これで良かったのかちょっと心配です
笑顔の中に何があったんでしょうね
今の所レジのお金が欲しいと思うような生活でないことに
に感謝したい気がします
ブロンは空箱展示になってます
売る時も5つくらい目的を質問しなければならないようになってますから
さぞ高値で売れたでしょうね( ̄▽ ̄💧)
出来事としては
ホントに涙がにじむほど辛かったけど
それでもま、
彼は息子でもないわけで
一旦そういうものとして切り離してしまえば
自分には関係ないことだったかも
ちるるのところは大変そうだね
ホントそうなのよ
カメラが捉えた事実に傷ついても
解決を見ないんじゃ
知らないほうがよかった!
って気持ちになっちゃうな( ̄◇ ̄)
だと嬉しいなあ( ̄▽ ̄”)
いやあ、最初は本当に泣きそうになったよ
私たちにとって万引き犯というのは
日々<憎しみの対象>だから
こんなパニックなかなか無くて
動機が貧困ではないから
余計に闇が深いよね
( ̄▽ ̄”)
小学校の時
小さい二重丸の付いた傍線で
作文の中の一文を褒められた時のことを思い出しました
ありがとうございます
お金に困ってなさそうなのに盗る人
に出会う方が
辛いですよね