読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

香納諒一著「幸 SACHI」

2014-09-07 | 香納 諒一
寺沢恒彦は県警本部の捜査1課の刑事だったが、ある事件で上層部の逆鱗に触れ所轄に左遷、一生ヒラ刑事に。
寺沢の相棒・一ノ瀬明子も本部からの左遷組で現在妊娠8カ月の身重。
2人の初仕事は再開発で取り壊し寸前の商店街で見つかった認知症の老婆の保護。老女は代議士と建設会社社長という県有力者兄弟の母で、特養ホームから抜け出した熊田紗千と判明する。
紗千が見つかったのは彼女の親友・北村幸枝がかつて定食屋を営んでいた場所。その床下から死後30年以上経過した白骨死体が掘り出されたことで捜査は急展開する。
寺沢と明子は2人の「サチ」の過去を探っていくうちに殺人犯として収監されている幸枝の娘の冤罪の可能性と、再開発を巡る政財癒着の疑惑問題があらわになる。
出世を断たれた中年刑事とシングルマザーとして生きる覚悟を決めた女性刑事とが保守的で因習的な警察組織に抗していく。
展開にスピード感はないが二つの事件が交錯し、二転三転とした展開の後、後半意外な人間が浮上して楽しめた。
警察ミステリー小説に人間ドラマを加味した秀作。このコンビでの続編が期待できそう?

『あとには退くな。不器用でも、力不足でも、組織の中でこき使われるだけのコマでもいい。歯を食いしばり、困難から決して逃げるな。それが、仕事をするということだ。大の大人が、おのれの人生をいきるということだ。』(p306)

『生まれてくる子供のために、少しでもいい世の中にしたいとな。それが先に生まれてきた大人たちの責任だ・・・幸せというのは、たぶんとてもささやかなものなんだ。だから愛おしいし、壊れやすい。』(p363)

2013年1月角川春樹事務所刊

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