痛快時代劇ミステリー。舞台は江戸深川。いまだ下っ端で、岡っ引きの見習いでしかない16歳の北一は、亡くなった千吉親分の本業だった本や小間物を入れる箱を売る商売・文庫売りで生計を立てている。やがて自前の文庫をつくり、売ることができる日を夢見て・・・。物語は、ちょっと気弱な主人公・北一が、やがて相棒となる喜多次と出逢い、親分のおかみさんや周りの人たちの協力を得て、事件や不思議な出来事を解き明かしつつ、成長していく物語。北一が住んでいるのは、『桜ほうさら』の主人公・笙之介が住んでいた富勘長屋。いきなり育ての親というか、保護者を失った主人公、おかみさんとの絡みが謎解きのあれこれ、訳ありな喜多次という相棒得て今後の展開と、成長譚としても楽しみだ。登場人物の着物の柄や着こなし、立ち居振る舞いまでが感じられて、心がほっこりで読みやすい。あどけない雰囲気が可愛らしく挿絵もありほっとするページ。今の社会に漂う閉塞感を吹き飛ばしてくれる時代劇だ。続きが楽しみだ。
2020年6月PHP研究所刊
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます