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それでは、今回もまたディキンスンの詩の紹介でも……と思ったんですけど、その前にちょっと<詩の定義>ということについてエリナー・ファージョンの詩を引用させていただこうかなと思いましたm(_ _)m
詩とは何でしょう?だれか知っていますか?
バラではなく、バラのかおり、
空ではなく、空のかがやき、
虫ではなく、飛ぶ虫のきらめき、
海ではなく、海のたかなり、
わたし自身ではなく、何かをわたしに見せ、聞かせ、感じさせてくれるもの、
散文ができないことをするもの、
それはなんでしょう?だれか知っていますか?
(「エリナー・ファージョン~その人と作品~」、アイリーン・コルウェル著・むろの会訳/新読書社より)
いえ、わたし、詩というものについて、これ以上にうまく言葉で説明している文章って他に読んだことがありません
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ディキンスンは、「もし私がある本を読んで、身体全体がどんな火でも暖めることが出来ないくらい冷たくなったら、私にはそれが<詩>だとわかります。まるで私の頭の先が取り去られるように体で感じたら、それが<詩>だとわかるのです。これだけが、私が詩を知る方法です。他に方法があるでしょうか」と手紙の中で語っているのですが、エミリーのこの言葉はどちらかというと天才の感覚的なことだと思うので、わたしのような凡人には理解が少々難しいような気がします(^^;)
けれど、エリナー・ファージョンにしてもエミリー・ディキンスンにしても詩人として<核>に当たる部分においては、同じもの、似たものを持っているように感じるんですよね。
絵を描こうとは思わない
それより私が一枚の絵になろう
その輝く不可能の上に
心地よく住み
そしてその感触を自分の指で味わうのだ
その類いまれな天上のそよぎは
この上なく快い拷問を
華麗な絶望を 私に思い起こさせるのだ
コルネットのように話そうとは思わない
それより私がコルネットになろう
天空に向かいゆるやかに舞い上り
さらにエーテルの村を通り抜け
軽々と上りつづけるのだ――
私は思いのままに力を与えられた気球と同じだ
ただ一枚の金属の唇弁によって
私の浮橋への橋脚を得たことによって――
詩人になろうとは思わない
耳を持つことの方がすばらしい
魅惑され 力を奪われ 満ち足りる
それは尊ぶべき許可証だ――
なんて恐ろしい特権なのだろう
その技術を身につけ
もし私が自分自身の気を失わせるとしたら
旋律の稲妻でもって!
(「エミリ・ディキンスン詩集~続自然と愛と孤独と~」、中島完さん訳/国文社刊)
いえ、今回はただ単にエリナー・ファージョンやエミリー・ディキンスンの持つ<詩の感覚>がとても好きだという、何かそんなお話でした
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それではまた~!!
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ぼくの大好きなソフィおばさん。-【10】-
継母である、ソフィおばさんと初めて過ごす一夏のバカンスは、アンディにとってあまりにも早く行き過ぎていった。
この夏の間、アンディはマクレガー先生の出した課題以外についてはあまり勉強はせず(そしてこの勉強時間はもっぱら雨の日に行われることが多かった)、ヴァ二フェル町の子供たちに誘われるがまま、近くのウジニ川まで釣りをしにいったり、近場の森でクワガタ捕りやバッタ捕りをしたり、湧き水のでる泉のそばの池で夜に蛍を見たり――あるいは、ヴァ二フェル町の夏祭りで行われた海上花火大会をみんなで見に行ったりもした。
川釣りをするのが初めての経験だと告白すると、村の子供たちはみな一様に驚いていた。何か馬鹿にしているというのではなく、本当に不思議そうな顔をしてアンディのことを見た。そして次の瞬間には、自分たちがこれまでに釣ったことのある獲物自慢がはじまるのと同時に、「いいポイントを俺が教えてやる」だの「山女や虹鱒の塩焼きはうめえぞう!!」だのいう、釣り談義で子供たちは大いに盛り上がった。
ヴァ二フェル町の子供たちはみな無邪気であると同時に、いつでもどこか無造作に昆虫などの生き物をあっさり殺したものだった。たとえば、川の中の石を転がしては川虫を見つけ、それを餌として釣り針の先にグサリと刺すくらいなら可愛いもので――次には残酷な研究がはじまり、「コオロギの頭って魚の餌になるかな?」と誰かが呟けば、みんなでコオロギやバッタを捕まえ、彼らを無情にもギロチンの刑に処し、その頭部をなんの感情もこめずグサッと釣り針で刺すのだった。
その夏、何故そんなことが流行ったのかは、アンディにとってもヴァ二フェル町の子供たちにとっても、まったく不明ではあったのだが、アンディがヴァ二フェル町を訪れた初めての夏のこと、<蜂殺し>という遊びがとても流行っていた。
子供たちは蜂だけでなく、蜘蛛やカマキリ、毛虫など、ありとあらゆる昆虫たちを次から次へと無情に殺戮したものだった。ある時、子供たちのひとりがとても大きな鬼蜘蛛を捕まえると、瓶の中に入れてそれを眺めながら――ふとこんなことを言った。
「コイツってさ、腹のほうがすごく大きくて、頭のほうが小さいけど、小さい頭のほうを潰してもやっぱり生きてると思う?」
「人間は頭をやられるとすぐ死んじゃうけど、蜘蛛はどうなんだろうなあ」
やはりここでも、「じゃあ実験してみよう!!」ということになり、哀れな鬼蜘蛛は瓶から出されると、手近にあった石で小さな頭部だけを潰された。ところが、頭を潰されても蜘蛛が大きな腹だけでわさわさ素早く動くのを見て――「うわっ、まだ生きてる!!」、「きめえっ!!」、「コイツこええっ!!」などと子供たちは叫ぶと、その化物蜘蛛から一目散に離れたものだった。
そしてこの延長線上にもしかしたら、蜂が存在したのかもしれない。湧き水のでる泉のそばにフェニルの池(蛍ヶ池)と呼ばれる池があって、その池の近くにある樹木にミツバチたちが巣を作っていた。子供たちはまず、その樹木の近くまでいくと、一匹の蜂の羽を捉えて捕まえてくる。そして急いで取って返してくると、「やったぜ!!」と言って額の汗をぬぐうのだった。
つまり、それが何故なのかはわからないのだが、蜂の巣のある樹の近くまでいって蜂を捕らえてくること――それが何か<男の証>であるように子供たちの間では認識され、さらには「まだ取ってきていないのはサムとダニエルとティムだな」といったように、名簿まで作られるようになっていたのである。
アンディもまたこの名簿に名前を載せられており、蜂など一体どうやって捕まえたら良いものか、皆目見当もつかなかった。そこでアンディがすっかり困り果てていると、昆虫好きのテディが助け舟を出してくれた。
「僕が適当に一匹、ミツバチを捕まえてくるからさ、そしたら僕とバトンタッチして羽のところを持ってラッセルのところへ行きなよ。アンディはずるしたって思うかもしれないけど、ま、こんなくだらないことをいちいち気にするなって」
アンディは三つも年下の子の意見に従い、こうして<男の証>を立てるという子供たちの間での通過儀礼をすませると、ほっと胸を撫で下ろしたものだった。ところが、話はこれで終わりではなく、子供たちの<蜂殺し>遊びはその後どんどんエスカレートしていった。
樹木の周辺を這っているミツバチを一体何匹殺せたかと、互いに競いあうようになり――こうしてミツバチたちの大量殺戮が子供たちの間で横行した。足の裏で踏み潰したり、シャベルの背で潰してみたり……そして子供たちはぴゅっとその場から逃げだすと、また間隔を置いて蜂たちの群れへと突進していくのだった。
「今日は俺、五十匹は殺したぜ」、「俺は百匹!!」、「嘘つけ、百匹も殺せるもんか。法螺を吹くなよ」――そういった具合で、ミツバチは毎日何十匹となく殺戮されていったのだが、ある時、蜂たちのほうでも何か<学習>したのであろうか。不幸にも、少し太めで仲間内で馬鹿にされている気のあるケビンが、いつも通りミツバチの何匹かを殺そうとした時のことだった。
ケビンが最初は潅木の茂みに隠れ、次いで姿を現し、地を這っていた蜂の何匹かを足の裏で踏み潰そうとすると、ミツバチの間で何か特殊な合図でもされたのかどうか、蜂たちは一斉にブーンと唸ると、ケビン目がけて襲いかかってきたのである!
ケビンはとにもかくにも一生懸命逃げようとしたのだが、前日の雨で濡れていた葉っぱで足を滑らせると、腕となく顔となく、とにかく次から次へと決死の蜜蜂隊の針で襲われた。そこへ偶然、湧き水の水を汲みにきていたバーバー・クラークの親父が通りかからなかったとしたら、ケビンは一体どうなっていたことだろう。
チョビ髭を生やし、いかにも人のいい風采をしたラスティ・クラークは、自分もまた蜂に刺されることを覚悟しつつ、ケビンの体から蜜蜂を追い払いにかかった。
「痛いよう、痛いよう……」
そうやってどうにかこうにか怒りの蜜蜂隊の手を逃れたラスティとケビンだったが、その時にはすでにケビンの顔は真っ赤に腫れ上がり、半袖を着た腕といい手の甲といい――とにかく、どこもかしこも赤くないところはないというほどまでになっていた。
バーバー・クラークの主人は、町のかかりつけ医として尊敬されているジェームズ・ロイス医師の医院へ泣きじゃくるケビンを連れていくと、ロイス医師は白髪の髭をひねりながらこう言ったものだった。
「もし刺されたのがスズメ蜂だったら、死んでるところだよ」
ケビン・ウィルソンの犯した愚かな危険行為は、すぐさまヴァ二フェル町で子供を持つ親たちの間に広まり――昆虫に無駄な殺生を行うなという一通りの分別くさい説教が、どこの家庭でも行われることになったのである。
だが、この<蜜蜂大量殺戮事件>だけでなく、子供たちがする遊びの中には、一見安全そうに見えるものの中にも、意外に危険が潜んでいたかもしれない。
たとえば、アンディは消波ブロックの積まれたあたりの海岸で隠れんぼをしていた時、消波ブロックとブロックの積まれた間にあった、なんともいえない隙間に落ち込み、危うく大怪我をしそうになったことがある。たまたまそこの窪みから叫んだところ、近くにいたダニエル・コナーが大人に知らせてくれたので良かったが、アンディはあとで、もしその時誰にも見つけてもらえてなかったらと思っただけで、ぞっとしたものだった。
川釣りをしていた時も、生意気盛りでやんちゃな子供たちは、出来るだけ上流へと上っていきたがったが、途中で道に迷って途方にくれたことがあったし、川の深みで泳いでいた子のひとりが、藻に足を取られ、危うく溺れそうになったということもあった。
ケビン・ウィルソンのことに話を戻したとすると、彼の真っ赤に腫れ上がった皮膚は新学期がはじまってもまだ引いておらず、彼は林檎のように真っ赤な頬をして登校するということになった。誰もがみな、ケビンに対してとても同情的だった。彼のぽっちゃりした顔が平時でも酒乱の親父のように真っ赤でも、誰ひとりとしてからかう者などいなかったし、もしいたとすれば、他の生徒たちから白い目で見られたか、あるいはラッセルあたりに捻り上げられていたことだろう。
怪我の功名というべきか、ケビンは普段どこかもっさりしており、人から注目されることのほとんどない子供であったが――夏休みの終わり、彼の農家を営んでいる家へは来訪者が絶えなかった。そしてケビンに対して男子生徒も女生徒も実に優しい言葉をかけて慰め、キャンディやチョコレートといった、ちょっとしたプレゼントをみなで持ち寄ったのだった。
こうして楽しい夏休みのひと時が終わりに近づいた頃、アンディの手元にはマクレガー先生の出した課題の解答集と、ソフィおばさんと作った押し花の標本、それに蛾の標本の他にクワガタ虫が二匹入ったケージ、おんぶバッタと殿様バッタの入ったケージなどが残されていた。
ただし、このおんぶバッタと殿様バッタを入れておいたケージは、明日ノースルイスへ出立しなくてはいけないという日の朝、オスをおんぶしていたメスのバッタが殿様バッタに共食いされるという悲劇により、観察日記は中断されるということになっていた。
ケージの中で、小さなオスのバッタは殿様バッタを恐れるように隅っこのほうへ引っこんでいたし、殿様バッタのほうは「やい!俺さまはいつでもオマエの寝首をかいてやれるぜ」とでも言っているかのような不敵な面構えだった。
「ねえ、おばさん。おんぶバッタの母さんが死んじゃったよ!」
スクランブルエッグやマフィンといった朝食の品を出しながら、ソフィはアンディが悲しそうにも、どこかふてくされてたようにも見える顔で、ケージをテーブルの上へ置くのを見た。
「あら、じゃあお葬式をして庭の隅にでも埋めてやらなきゃいけないわね」
「牧師のキングさんを呼んでもいい?」
アンディは至極大真面目な顔をして言った。
「そうねえ。キングさんはもちろん、素晴らしい弔辞を読み上げてくれるでしょうけれど、今日はお忙しいんじゃないかしらね。それに、あんたもわたしも、明日はノースルイスへ帰らなくちゃいけないし」
(あの大都会のノースルイスへ帰る!)そう思っただけでアンディは、とても気が重くなるものを感じた。出来ることなら、このまま永遠にソフィおばさんとふたりで、この海辺の別荘で暮らしていたいというのに――そんな我が儘と贅沢は決して許されないということも、アンディにはよくわかっていた。
「僕さ、昆虫好きのテディから聞いたんだけど、このおんぶバッタっていうのはメスがオスをおんぶしてるんだって。ようするに、ランディが言うには交尾のためだってことなんだけど、僕はね、おばさん。てっきり母さんバッタが子供のバッタを背負って大自然の中を旅してるもんだとばかり思ってたんだ。で、テディからその話を聞いたあとも、やっぱり僕の中では母さんバッタが子バッタを背負ってるってことになってて……このふたりにはお父さんが必要じゃないかなって思ったんだ。そこで殿様の奴を捕まえて、三人家族ってことにして観察日記をつけてたんだけど、なんかうまくいかなかったみたい」
「そうねえ。でも物は考えようよ、アンディ。母さんバッタは、悪者バッタが自分の子バッタを狙っているのを見て、子バッタを守るために死んでしまったのかもしれないわ」
朝食の支度が整い、ソフィもまたアンディと一緒に食卓に着いた。レストラン・マルガレーテのジャムやマーマレードにも、秋の半ばには別れを告げなくてはならないだろう。何故といって、それぞれ二瓶ずつ買ってはおいたものの、アンディはパンにこれをたっぷりつけるのが好きなので、あっという間になくなってしまうだろうからだ。
「でもおばさん、きゅうりとかさ、ちゃんと餌も与えてあったのに、どうしてこの悪い奴はメスのバッタのことを殺しちゃったのかな」
「どうしてなのかしらねえ。たぶんストレスじゃないかしら。大自然の広い世界とこの狭い檻とを比べたら、殿様バッタにとっては<何も悪いことをしてないのに囚人暮らしをすることになった>とか、そんなふうに感じることだったのかもよ」
「じゃあ、おんぶバッタの母さんが死んじゃったのは、僕のせいだってこと?」
「そういうわけじゃないわ、坊や」
ソフィがいつものように、なんともいえない優しい眼差しでアンディのことを見つめたため、アンディはそれきり黙りこんで食事を続けた。そして朝食後、「悪い」殿様バッタのことも、「善良な犠牲者」であるおんぶバッタのオスのことも――ともに無罪放免とばかり、近くの森の中へ逃がしてやった。もちろん、殿様バッタは森の入口のずっと手前で、おんぶバッタの生き残りのオスのほうは、森の奥のうんと離れた場所で離してやったのである。
その後林道を通って帰ってくる帰り道、アンディはこの一夏ですっかり慣れ親しんだ、自然たちに心の中でお別れの言葉を囁いた。そして、フェニルの池のほとりで暫くじっと佇むと、ここでみんなと石投げをして遊んだことを最初は思いだしていたのだが、そのうちに想いはやはり、ソフィおばさんのことへ戻っていった。
アンディは胸のポケットに収まった懐中時計を取りだすと、その内蓋のところに貼ってある写真をじっと眺めた。そこには、アンディが四歳の時に亡くなったという母のフローレンス・フィッシャーの写真が貼ってある。
アンディはいつも、何かつらいことがあると、懐中時計を開いてはこの母の写真を眺めて心の中で会話していた。けれどこの一夏の間――というよりも正確には、父が再婚し、ソフィおばさんがノースルイスの屋敷へやって来てから――あまり実の母と話していない自分に気づいていた。
「ごめんね、母さん。母さんのこと、忘れたってわけじゃないんだよ。でも、ソフィおばさんはとても良くしてくれるし……」
そうなのだ。何故おばさんは自分に対してこんなによくしてくれるのだろう?血が繋がっているというわけでもないし、義理の息子の世話をあれこれ焼いたところで、何か得なことがあるわけでもないのに……。
この一夏の間、そんなことはあまりあれこれ考えず、アンディはただ新しい義理の母に甘えるだけ甘えた。彼女が昼寝をしている時でも、叩き起こして自分の相手をさせたり、大嵐の日に出かけられないのを承知の上で、海へ行きたいと言って困らせたりもした。
そしてここでアンディは(そうだ!)と思い出す。嵐が近づいていた前日、庭に咲いていた大輪の薔薇の花を――ソフィが花鋏で切っていた時のことだった。
「ねえおばさん、せっかくこんなに綺麗に咲いてるのに、どうして切っちゃうの?」
おばさん自身の寝室を飾るためか何かだろうとばかり思っていたアンディは、少しばかり不審な声音でそう聞いた。
「だって坊や、今日はまだ曇ってる程度ですけどね、明日は嵐になるって天気予報で言ってたじゃないの。嵐が通りすぎていったら、ここの花たちも大方花びらを散らしてしまうに違いないわ。だから先に切っておいてね、香りを楽しもうと思ったのよ」
ほら、良い香りでしょう?と言って、ソフィがピンク色の花を渡すと、アンディはそのあまりの芳香の良さに驚きと甘い喜びを感じた。
「その花はね、フローレンスっていうのよ。坊やのお母さんと同じ名前。だから、大切になさいね」
「……うん」
それからアンディは、嵐の脅威から庭の花たちを守るため、ネットをかけたりなんだりする作業を手伝ったのだが、何故かずっとドキドキと胸が何かの予感を覚えるように高鳴っていたのを覚えている。
実の母のフローレンスの記憶といったものが、アンディにはほとんどない。だからもし彼に母の記憶があったとすれば、それは祖母であるエイドリアン・フィッシャーや女中のサラなどの口から聞いた、朧げな記憶を元に再構築した、ある意味<理想化された母親像>であったろう。
けれど今、そのような偶像は打ち砕かれ、現実に目の前にいる母親に等しい愛情を注いでくれる女性のことを、アンディはより身近な存在として愛していた。そこに何か罪悪感にも近いものが潜んでいるような気がして、アンディが池のほとりで小石を何気なく放り捨てた時のことだった。
(それでいいのですよ、アンドリュー)
一瞬、とても優しい風が吹いたかと思うと、周囲の樹木が枝を揺らしてざあっ!と鳴りさざめいた。そしてアンディが驚きとともに後ろを振り返ると、潅木の茂みの向こうからソフィがやって来るところだったのである。
「アンディ、おんぶバッタの子は、どこか遠いところに放してやったの?」
「うん、おばさん!」
アンディは子供らしい明るい、晴れ晴れとした顔をソフィに向けると、通いなれた林の道を連れだって歩いていった。途中、木立の奥に草原が広がっているところへやって来ると、鹿の群れにアンディとソフィは遭遇した。
仲間のうちの一頭が素早く人間の存在に気づき、「ピィ!」と警告の鳴き声を発すると、草を食むことに夢中になっていた十数頭ばかりの鹿たちは、ざざっという葉音をさせ、森の奥深くへと姿を消してゆく。
アンディは鹿のことでは、この夏とても楽しいことがたくさんあった。今のように森の中の道を歩いていると、時々鹿に遭遇することがあり――向こうがこちらの存在に気づいていない時には、アンディは葉陰などに巧みに隠れ、彼らのことをじっと観察したものだった。
ある時は道の角を曲がろうとした時に、ちょうどバッタリ一頭の鹿と遭遇してしまい、この鹿はあまりに驚いたのだろう、あっという間に急勾配の崖を登って姿を消した。その鹿が持つ野生の脚力の強さに、アンディは驚くと同時、神聖な何かに打たれるような思いを感じもしたものだった。
また別の時には、ちょうど森の木々の枝と枝をまるで写真のフレームにするようにして、二頭の鹿が仲良さそうに草を食む姿を見、彼らは恋人同士なのだろうと想像したし、四頭の家族の鹿が、これも思いがけなく急に出会ってしまった時――父親なのだろうオスの鹿が、まずは子供と妻を逃がし、アンディのことをギリギリまで警戒してから、最後に跳び去っていく姿を見たこともあった。
「ねえおばさん」と、アンディはこの時も、いつもするように他愛もないことをソフィに話しはじめた。「鹿って、可愛いし面白いよね。前にこのずっと先の森の奥のほうでたくさんの鹿の群れに出会ったんだけど、そのうちの一頭がね、僕っていう人間にあんまりびっくりして、思わず糞(ふん)をぼとっと落としてから逃げてったことがあったの。けど僕、全然侮辱されたとか、馬鹿にされたとか思わなかったよ。なんでって、鹿のあのハート型をした白いお尻から糞が出てくると――なんか可愛いものが落ちてきたとしか思わないんだもの。人間のはただ汚いって思うだけなのに、なんでだろうね、おばさん」
「そうねえ、アンディ」
この時アンディは、本当に何気なくただ自然に、ソフィの左の手のひらを握りしめた。アンディがそんなことをするのは初めてのことだったが、ソフィのほうでは驚いた様子もなく、義理の息子の小さな白い手を、優しく握り返したというそれだけだった。
* * * * * * *
ソフィとアンディが、ヴァ二フェル町を離れるという朝、ふたりの海辺の別荘の前には、一言お別れを言うためにたくさんの子供たちが自転車を止めていた。
彼に手紙を渡したのはラナだけではなかったし、誰もみな、何がしか自分にとっての大切なものやプレゼントを持ちより、アンディに手渡したものだった。
「わたしたちのこと、忘れないでね!」
「また来年の夏も来るんだろ?」
「もし家族でノースルイスのほうへ行くことがあったら、立ち寄ってもいい?」
などなど、アンディとしてもここから立ち去るのはとてもつらかったが、まさかここまでみんなが同じ気持ちでいてくれるとは思ってなかっただけに――思わず胸の詰まるものがあった。
「アンディ、うちの妹が、都会へ戻っても浮気するなってさ。なあに、黙っておけばわからないだろうから、向こうの子とは向こう子とで適当にうまくやっておけよ」
ブラッドがそうからかうと、すぐ隣にいたラナは顔を真っ赤にして抗議した。
「お兄ちゃん!アンディをお兄ちゃんみたいな下種と一緒にしないでよっ!アンディ、これ、きのうお母さんと一緒に作ったクッキーなの。良かったら帰りの車の中で食べてね」
ラナがアンディに手渡した、綺麗なラッピングの袋の中には、手紙が入っていた。といってもラブレターのようなものではなく、都会の学校でもし嫌なことがあったらヴァ二フェル町に越してきて、小学校でも中学校でも編入すればいいとか、そんなことが書いてあったのだった。
三十人近くも集まった子供たちの間で、この一夏の間、アンディはアイドルのような役割を果たしていたかもしれない。誰もがこの真面目そうでどこか精神的な顔つきをした子供のことを、自分たちとは違うように感じて憧れの気持ちを抱いたし、アンディのほうでも誰の子供の気持ちをも裏切らなかった。
彼は誰にでも親切だったし、特に意識してそうしたというのではなく、分け隔てがなかった。この地方一帯としては裕福なほうの子供に対しても、逆に貧しい家の子に対しても、あるいは子供たちの間にそれとなくある格付けといったものに対してもまるで無頓着で気にすることがなかった。
また、アンディは自分が持っている物に対しても無頓着であり、遊び部屋にあった漫画や小説の本などが返って来なくても気にしなかったし、それはゲームのソフトやDVDといったものに対しても同様だった。けれど、彼らはアンディがお金持ちで、アンディの家へ行けば美味しいお菓子がいつも出てくるとか、面白いゲームで色々遊べるというので、毎日のようにそこへ通っていたというわけでは当然ない(もちろんそれもあったにせよ)。
仮にアンディが金持ちの息子でもなく、普通以下にしか遊び道具を持っていなかったとしても、やはり彼にはどこか田舎の子供たちを惹きつけるところがあったに違いない。
「みんな、この一夏の間、本当にありがとう。手紙も書くし、またたぶん長い休暇のあった時にでも、ここへは来ると思うけど……」
ユ二スのプレゼントした小さな熊のぬいぐるみや、ラッセルのくれた野球のボール、ラナのクッキー、ケビンの作った革のキィホルダー、ダニエルのくれたカードゲームのセット……そうしたものを両手に持ちながら、アンディがそこまで挨拶すると、子供たちの目にはすでに涙が浮かんでいた。特に、六人いた女の子たちは何故か全員泣いていた。
そんなわけで、アンディも胸の詰まる思いから、「みんなのことはノースルイスへ帰っても忘れないし、今年の夏にあったことは全部何もかも、絶対に忘れない」とだけ言うのが精一杯だった。
別れは悲しいものではあったにせよ、ソフィの運転するランドクルーザーが一時間ばかりも舗装された道路をやって来ると、その悲しい思いが少しだけ、快いものにアンディの中で緩和されていた。この一時間ほどの時間の間、車窓の田舎の景色を眺めながら、アンディはこの一夏の間にあった色々な思い出に耽ってばかりいたのである。
そして、夏休みがもうそろそろ終わるという一週間前のこと、アンディは今自分が感じているのとはまったく別の、ある不快な問題と少しずつ心の中で対峙するようになっていたのである。この夏の日々はアンディにとって素晴らしいことばかりだったが、現実の世界というものは、そんなに素晴らしいことばかりがいつも転がっているわけではない。
アンディはこうした事柄に関して、「どうしてこうした良いことだけが人生で続いていかないのか」と深刻に考えるタイプではなかったし、心の中のある種のバランス感覚として「そういうものだ」と漠然とではあるにしても、感じていた。
だから、二時間ばかりもランドクルーザーが道を行った時、途中で休憩と食事のために立ち寄ったステーキハウスで、アンディはソフィに突然こう切り出したのだった。義理の母がTボーンステーキやサラダとフルーツ、それに飲み物を注文したあとで。
「おばさん、僕、学校に戻ろうかと思うんだ」
それがあまりに小さな声で、ステーキハウスの庭の芝をぼんやり眺めて呟かれたものであったため、最初ソフィは義理の息子が何を言っているのかがよくわからなかった。
そのステーキハウスは、夏場は外でも食事できるようになっており、この時ふたりは白と緑のパラソルの下で、注文したものが運ばれてくるのを待っているところだった。店はログハウス風で、アンディとソフィのいるテラス席だけでなく、中も結構な客で埋まっていたため、Tボーンステーキが運ばれてくるまで、三十分以上は待たされるに違いなかった。
「どうしたのよ、アンディ、急に」
ここまで来る車の中での、アンディの深刻そうな、どこか思い詰めたような感のある顔つきから、てっきりソフィはこう思っていた。おそらく道のどこかで「おばさん、僕、ヴァ二フェル町の学校に通いたい」と、そう言われるのではないかと。
「きのう、殿様バッタとおんぶバッタのオスを放してて思ったんだけど、僕、内心実はあいつって父さんに似てるなって思ってたんだ」
「なあに、アンディ。あの殿様バッタが父さんに似てるっていうの?」
なんとなくわからないでもない――そう思ってソフィは笑った。注文したアップルタイザーが運ばれてきたので、瓶の中身を半分ほどグラスに注いで飲む。
「うん。なんか感情があんまりないように見えるところがさ、似てるなと思って。それで僕は、おんぶバッタのメスが死んだあとの、怯えたあの小さいオスのバッタと同じようなものなんだろうなと思って。そう思ったらなんだか……」
「そう思ったら、なんだか?」
アンディはメロンソーダで口を湿らせると、また少し考えてから続けた。
「おばさん、僕はね、ああいうのはなんかやだなって思った。誰かの背中におんぶしてもらって、普段楽をしてるのに、肝心な時にはその相手のことを守ってすらやれないだなんて……少なくとも僕なら、自分の身を先に犠牲にするくらいのことはするよ。だって、僕は男なんだもの」
「坊やのお話はいつも面白いわね、アンディ。おばさん、創世記のアダムとイヴのお話を読むといつも思うの。アダムはどうしてイヴのことを庇わなかったのかしらって。確かに、先にイヴのほうが蛇の惑わしにあって、禁断の実をアダムにも食べさせてしまったのかもしれないけど、もし仮にアダムが――事実はそうであったかもしれないにせよ、自分が禁断の実を食べてしまったのはイヴのせいじゃないって言ってたら、今ごろ歴史は全然違ってたかもしれないのよ」
「そうだね。確かにアダムは卑怯だと思う。もちろん、なんでもお見通しの神さまが怖かったのはわかるけど、イヴに自分の罪まで押しつけるなんてひどいと思うよ」
「それで、坊やはそんなアダムみたいになりたくないから、勇気をだして学校へ戻ろうかと思ったの?」
周囲には、ステーキの焼けたとてもいい匂いが漂い、アンディはその匂いを嗅いでいるだけでも、とてもお腹のすくものを感じた。周囲の座席に着いている大人たちは大抵ビールを飲んでおり、陽気な笑い声や話し声でざわついている。
アンディはテーブルに両肘をついているソフィからじっと見つめられると、何故か突然うまく話すのが難しくなった。今日ソフィはペイズリー柄のワンピースをラベンダー色のサッシュで締めた格好をしており、こうした服を着ていると彼女はまるで二十代の娘で、自分の義理の母というよりは、姉か何かでないかという気がするのだった。
「うん……というよりもね、夏の間中、昆虫って大変だなあって思ってたんだ。大抵のは寿命がそんなに長くなくてすぐ死んじゃうし、僕もだけど、残酷な子供に捕まえられたり殺されたりで、自然って不条理で無常だなって思った。僕はね、おばさん。人間ってこの哀れな昆虫どもより、そんなさして優れてないんじゃないかと思うの。ただ、みんな一生懸命生きてるってだけ。だから僕も――内側もさ男になるのはやめて、そろそろ脱皮しなくちゃって思ったんだ」
「まあ、アンディ」
この時ソフィは、いつものように「まあ、坊やったら」とは言わなかった。というよりも、目の前にいるこの十歳の少年が(アンディはこの八月に十歳になったばかりだった)愛しくてたまらないのと同時に、よくそこまで考え、自分ひとりで決断できたものだということに、一人の大人として、ただ感心するばかりだったのである。いや、感動したと言っても決して言いすぎではない。
「そう……そうだったの。おばさんはてっきり、また秋からもマクレガー先生に教えていただいて、私立中学を受験するものだとばかり思ってたものだから……」
「うん。だからね、僕、そのことも嬉しいんだ。普通の家だったら、たぶん夏にバカンスに連れていっていい思いしたんだから、秋からはまた学校で頑張れって感じだと思う。でもおばさんはそういう<駆け引き>とか<取引>のために、僕に色々よくしてくれたわけじゃないでしょ?だから、僕……学校に行ってみるよ。次の新学期からはクラス替えがあって、前のクラスとはまた別の雰囲気になると思うし。それに、ヴァ二フェル町のみんなが手紙をくれて、学校でのことが色々書いてあるのに、僕のほうは何も書くことがなかったりしたら、つまらないと思うから」
「坊や……坊やは本当にいい子ね。おうちに帰ったら、そのことは是非坊やの口からお父さんに伝えるべきだと、おばさんはそう思うわ」
「べつに、そんなことはどうだっていいんだよ」
アンディはメロンソーダをストローで飲みながら、少しだけ不満そうな顔をした。
「なんだったら、おばさんの口から言ってくれていいよ。父さんはべつに――僕が学校へ戻るなんて聞いても、カマキリに出会ったトンボほどにも驚かないんじゃないかな。そうだ、父さんは殿様バッタなんかじゃないよ。よく考えたらこっちのカマキリのほうに似てるんだ」
「アンディ、気持ちはわかりますけどね、お父さんのことをそんなふうに言ってはいけないわ。あの海辺の別荘も、お父さんが働いたお金で借りることが出来たんだし、前にも言ったでしょう?一夏の間働きもせず、おばさんが坊やの世話をあれこれ焼けるのは、お父さんのお陰なのよって」
「もちろんわかってるよ、そんなこと」
アンディは面白くない顔をしたままで、ずずずっとメロンソーダのグラスの底のほうをすすった。この時、思っていたよりも早くTボーンステーキが運ばれて来、ふたりはその美味しい最高級の牛肉をじっくりと味わって食べた。食事の間はいつもしている他愛のない話ばかりをし、この夏にあった面白かった思い出話のことなどに花が咲いた。
こうして腹ごしえらがすむと、さらに五時間ばかりのドライブがふたりを待っていた。アンディのほうは愛するおばさんにしなければならない告白が無事済んだことで、郷愁に耽るような顔つきをやめ、明るい笑顔に戻ると、残りの長時間ドライブを楽しむことに決めた。
アンディは大きくなってから、ソフィおばさんと過ごした海辺の別荘でのことを思いだすたびに――いつまでもずっとやまない郷愁の思い、あるいは永遠への想いによく胸が苦しくなったものだった。アンディは十代を通して、ほとんど毎年のようにソフィと一緒にヴァ二フェル町へ出かけていった。その後、二十代となり、国の最高学府にしてエリート養成機関とも呼ばれるユトレイシア大学へ進学し、大学院を卒業するまで……五年ほどの間、彼はヴァ二フェル町へは出かけてゆかなかった。
そして将来の進路がほとんど決まった頃に、一度電車に乗ってヴァ二フェル町へと独り旅をした時にはまったく驚いたものだった!アンディが九歳の時、電車を下りた瞬間、エメラルドの草原などと感じた場所は、実際はただのどうということもない原っぱだったし、駅舎はさらに寂れて、昔あった売店ですら閉まっているという状態だった。
町は全体として、アンディが小さかった頃よりも過疎化が進み、漁も不漁の年があったりと、漁師たちの暮らしも決して楽なものではない様子だった。アンディがさらに驚いたのは、湧き水の出る自分が<妖精の泉>と呼んでいた場所が、有料化されていたことだったろうか。一度湧き水を汲むごとに一ドル支払うこととされており、そのお金は町の財政支援に回されるということだった。
この時、アンディがソフィと過ごした海辺の別荘は、ポートレイシアの造船業を営む富豪の物となっており、それはサンディ夫妻が亡くなったのち、彼らの子供たちがこの富豪に売ったという経緯があったようである。そのようなわけで、アンディはまったく見知らぬ他人のものとなった海辺の家に滞在することも許されず――兄と同じく親のあとを継いで漁師となっていたブラッド・スミスの家を訪ねていったのであった。
何分、五年ほどの間、まったく連絡を取りあっていなかったため、ブラッドとアンディの間では再び友情が熱く燃え上がった。アンディがこの時特に驚いたのが、ブラッドがユ二スと結婚していたことだったろうか。ふたりの間にはすでに大きな子供までいて、アンディはようやく社会人として門口に立ったばかりの自分が、何やら気恥ずかしいように思われたほどである。
ラナはサウスルイスの大学に進学し、今は小学校で教鞭を取っているという。そうした、子供時代に仲良くしていた友人たちの消息やその後を聞けるのは、アンディにとってとても喜ばしいことだった。大抵の子供たちは家の家業を継いでいることが多かったが、エリオットとエリックは、自分たちの従軍体験を生かし、この近くに戦争の疑似体験の出来るアミューズメントパークを作ったという。
当初、このような田舎にそんな場所を作って誰がやって来るのかと、町民の誰もが訝ったのだが、ふたりの目論見は見事的中し、観光シーズンの時期などは結構な人々がここを訪れ、ヴァ二フェル町にもお金を落としていってくれるとのことだった。
二十五歳の時、アンディは久しぶりにヴァ二フェル町を訪れ、昔馴染みの友人たちに非常な歓待をもって迎えられたのだが、アンディはやはり最後にひとり、海辺の崖に立つと、ソフィおばさんのことを思って泣いた。
自分が<妖精の泉>と呼んだ場所が、思い出の中で今も輝きを失っていないのも、ただの原っぱのような場所がエメラルドの草原と思えるのも、ただの寂れた漁師町を囲む海が、こここそ世界一素晴らしい海だとアンディにとって感じられるのも――すべてはそれがソフィおばさんとの思い出に繋がっているからなのだと、アンディはそのことを思い、またソフィの愛情の深さをあらためて思い知り、涙を止めることが出来なかったのである。
>>続く。