こじらせ女子ですが、何か?

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残酷な庭で遊ぶ子供たち。-【1】-

2021年06月28日 | 日記

(※萩尾望都先生の漫画『残酷な神が支配する』のネタばれ☆を含みますので、閲覧の際は一応ご注意くださいm(_ _)m)。

 

 タイトルの、『残酷な庭で遊ぶ子供たち』というのは、『残酷な神が支配する』という素晴らしいタイトルから連想的につけた程度のことですので、あまり深くお考えにならないでくださいね(^^;)

 

 わたしが『残酷な神が支配する』を途中まで読んだのは、かなり昔のことでした。前にどこかで書いた、カツオと中島くんのやおい本を読ませてくださった方が、萩尾望都先生の『残酷な神が支配する』を貸してくださったのです。でも何分、貸していただいたのが相当昔のことだったので、「ジェルミくん可哀想……」、「グレッグ、マジでキショいな……」といった記憶はぼんやりあったものの――細かいところまで覚えてなかったせいもあり、今回文庫本のほうを全10巻すべて購入して読んでみることにしました♪

 

 それで、ですね。ここからは本の内容について当然ご存知……といった前提によってお話を進めさせていただきたいのですが、先にちょっと<処罰の檻>という設定について書いてみたいと思います。

 

 ジェルミくんのように、十代の頃に性的に虐待された――といった経験がなかったとしても、ジェルミくんの深い心の傷と絶望については、ある程度理解できるように感じる方は多いのではないでしょうか。というのも、ジェルミくんほど酷い心身に及ぶ深い傷でなくても、誰にでもなんらかの形による<心の傷>のない人はいらっしゃらないでしょうし、その心の傷の一部分とジェルミくんの心の傷と深い絶望を自分のそれと重ね合わせて理解する……そうした読み方をする方は(わたしも含めて)多いと思うんですよね。

 

 ただ、ジェルミくんの心の傷と絶望をより深く理解するために、わたしやあなたが<処罰の檻>のようなものに入れられると先に設定することで――ジェルミくんの心の傷を、より近く、自分のもののように感じられるような気がします(そしてこれは、怪物グレッグさんの心情のようなものを多少なりとも理解しようとする試みでもあります^^;)。

 

 たとえば、その<処罰の檻>の中で起きたことは、決して絶対に明るみに出ることはないし、そのことであなたが訴えられることもなければ、社会的に恥を見ることもない……としたら、心身ともに健康な男性で、そこにいる若くて美しい女性に対し、何もしないで去らせる――という男の人というのは、どのくらいいるものでしょうか?(また、その方がゲイの男性であれば、自分好みの男性がベッドに縛られた形で存在するものとします)。

 

 これはあくまでわたしが思うに、ということではあるんですけど、ベッドの上に縛られている女性を見て「何もしないで逃がす」という男性は少ないような気がします。それでも、自分の良心の声に従い、怯えきっている女性を逃がし、あとから「チェッ。ちょっとくらいえっちなことするか、一回くらいセックスしときゃあ良かったな」と思う方は人間として本当に善良なのではないでしょうか。

 

 多くの男性の方の場合は、グレッグと同じように好き放題やりはじめる……のが普通でないかという気がするのは、たぶんわたしの気のせいでないような気がします。もちろん、「いや、オレあんな怪物じゃねえよ」という方もいらっしゃるでしょうし、「えっちなイタズラとかセックスするにしても、乱暴な形でなく、ある程度人道に配慮した形でだよ」といったようにおっしゃる方もおられるかもしれません。

 

 でも、「誰にもバレないから、その女性(男性)に何をしてもいい」といった場合、最初は比較的ノーマルなセックス・プレイだったものがだんだん狂気じみてくるというのは、「その可能性のほうが高いだろう」と答える方のほうが多いのではないかという気がします。

 

 そして、これを仮に<処罰の檻>と呼ぶことにして、あなたがここへ約四か月間監禁され、ジェルミくんと大体のところ同じ目に合わされたと仮定します。あなたのグレッグに対する憎悪は殺意へと変わり、やがて好機を捕らえ、彼を殺害することに成功したものの――他にもうひとり、あなたと一緒に監禁されていた女性のことを見殺しにするということになってしまいました。

 

 この場合も、彼女の名前はサンドラとしましょう。あなたとサンドラは、グレッグから交互に犯されるような関係であり(ややこしいので、3Pはなしということで^^;)、あなたがグレッグの言うことを聞かないと、親友のサンドラをひどい目に合わせるぞと脅され、それは彼女のほうでもまったく同じでした。けれど、サンドラを見殺しにすれば自分はこの地獄から救われるという誘惑にあなたは負けてしまい、好機を見てグレッグに重傷を負わせ、逃げることに成功します。

 

 その後、あなたは警察を呼び、「これでサンドラも救われるはずだ」と思い、元いた場所へと戻りますが、すでにサンドラは死亡していました。何故か?あなたに重傷を負わされたものの、グレッグはまだ息があり、部屋のカーテンに最後の力を振り絞ってライターで火を点けたのです。サンドラは逃げることが出来ませんでした。何故なら彼女は、ここへ来た時からずっと、手足を縛られたり足枷をはめられたりして、自由を奪われ続けていたから……。

 

 さて、あなたの命は助かりました。けれども、ジェルミくん同様、ここからが本当の地獄のはじまりでした。毎日夢の中にグレッグが出てきては、あらゆる方法によって痛めつけ、レイプされた時のことが甦るだけでなく、親友だったサンドラからは「あなたはわたしを見捨てて逃げたのよ!」、「信じていたのに」、「本当の友達だと思ってたのに……」と、涙ながらに責められます。

 

 とはいえ、あなたが無事に家へ帰ってきたことで、あなたの家族はみんな喜びました。サンドラの家族もまた、「あなたが悪かったわけじゃない」、「あなただけでも助かって良かった」と、苦しげな顔の表情の奥から、そんなふうに慰めてもくれました。

 

 けれども、ジェルミくん同様、あなたはもう<処罰の檻>へ連れて来られる前のあなたではありませんでした。家の自分の部屋にいるとグレッグの幻影に悩まされるため、あなたは外で夜遊びしてはアルコールやドラッグに手を染めるだけでなく――売春婦として体を売って歩くようにもなりました。何故ならそうしないと、グレッグがやって来てあなたを犯そうとするし、そのことを一時的にせよ忘れていられるのはドラッグをやっている時だけであり、サンドラを見殺しにしたという罪悪感から逃れるためにも、SM好きな男たちに罰としてぶたれる必要があったからです。

 

 あなたのお父さんやお母さんは泣き叫び、「こんなのわたしの娘じゃない!」とか、「おまえは昔と違ってしまった。前はあんなにいい子だったのに……」と、あなたのことをどうにか正道へ戻そうとしますが、彼らの「前のいい子に戻ってちょうだい!」という悲痛な叫びは、あなたの心には届きません。また、カウンセリングへ行くようにと、強引にその手の場所へ連れて行かれもしましたが、あなた自身はカウンセラーの先生に対し、「こんなババアに一体あたしの何がわかるんだよ!」と、いつでも冷笑的な態度です。

 

 さて、大体こんなところで、ジェルミくんの身に起きた出来事は、漫画の中で起きた出来事というよりも……今この瞬間も、世界のどこかで似たようなことが起きている、繰り返されている――ということが、現実の出来事として、より身近な問題として捉えられるのではないでしょうか。

 

 ではでは、次回は「怪物グレッグ氏の精神病理について」、何か書いてみたいと思います(^^;)

 

 それではまた~!!

 

 

 

 

 


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