【十字架上のキリスト】ベラスケス
ええと、今回の言い訳事項は、実際には【26】のところの続きだったりします(^^;)
同性愛者のクリスチャンの方や、そのご家族の方を悩ませる問題として――「同性愛者は(キリスト教の)天国へ行けない」ということがあるんですよね。だから、マリのお母さんのエマは、自分たちと同じ(キリスト教の)天国にマリが死後家族と一緒にいられるようにと思い、パリの娘の恋人や友人たちに強く交渉することが出来た……のみならず、こうした人々がマリのことを「譲る」ことが出来たのも、母親の情に心が動いたというより、「自分たちの元だけでなく、実家でも両方でお葬式があげられたなら、マリが天国にいることは絶対間違いなく確実ということになるだろう」――という、教義の部分に心を動かされたということだったり(^^;)
このあたり、ちょっとわかりにくいとは思うのですが、昔『デスパレートな妻たち』という映画に、次のようなシーンがあったと思います超有名な大ヒット作なので、あらすじを説明する必要すらない気もするのですが、デスパレート=崖っぷち☆という意味で(辞書には、絶望的な/自暴自棄の/死にもの狂いの、とあります^^;)、主要登場人物は四人(五人かな?)の奥さま。その四つ(五つ)ある家庭にはそれぞれ色々な問題があって、その家庭の問題が時にコメディタッチに、また時にシリアスに順番に照らし出されていくわけなんですけど……その中の1人である、パーフェクト・ワイフなブリー・ヴァン・デ・カンプ夫人。彼女の夫はお医者さんで、ふたりのティーンエイジャーの息子と娘がひとりずついます。立派な家を隅々まで綺麗にし、料理の腕前も主婦の鑑のようなブリーでしたが、そんな妻・母の完璧っぷりに、実は他の家族は大変難儀していたのでした……やがて息子さんも娘さんも、ブリーの無言の重圧による「あなたたちはこんなに恵まれているのだから、わたしの理想の息子・娘でいてちょうだい」的態度に反抗するようになり、上の息子さんのほうがその後、ゲイであることがわかるという。
ブリーは熱心なクリスチャンでもあるらしく、この息子さんと口論になった時、確か「ゲイの何が問題なのか」的な話になったことがあって(ただし、わたしも見たの相当昔なので、細かいセリフのやりとりまでは忘れてます^^;)。それで、ブリーが「あなたがわたしたちと同じ天国へ一緒に行けないからよ」みたいなことを言うと――この息子さんのほうでは(話にもならない)というような、軽蔑しきった顔をして、母親との心の距離がますます広がっていくというか。
今はそうしたこともなくなってきてるのではないか……と思ったりもするのですが、少し前くらいまでは「<同性愛>は病気だから、その病気が治るように△□さんのために祈りましょう」といったことが、教会では本当にあったりしたって言いますよね(いえ、アメリカの中西部の田舎では今もそうだって聞いたりするのですが、実際はどうなのでしょう^^;)。
ゆえに、いわゆる良家のセレブなお嬢さまとして育ったエマ・ママにしてみたら……「あの子は病気だから仕方ない」っていうのは、大きな心の支えであり、「それゆえに天国へは行けるはずだ。神父さまもそうおっしゃっていたし」ということに物凄く縋ってもいたというか。。。
でも本当に、「同性愛者は天国へ行けないのよ」と言われたりすることほど、キリスト教を信じていなくても不愉快極まりないことはないと思うので、「誰が天に上げられ、地の奥底に下るか」など、誰にもわからない……というのは、どちらかというとわたしが個人的にそう思ってることだったりします(ジョン・レノンの『イマジン』の歌詞って、わたしは個人的に素晴らしいと思うのですが、キリスト教右派の方の間で問題になるのは、彼が『天国も地獄もないって想像してごらん』と、キリスト教の教義に反することを歌っているからだと思います^^;)。
前回、カトリックの神父さまにも、そういった意味で引用していただいたのですが、実際にはここの本当の意味というのは、
>>しかし、信仰による義はこう言います。「あなたは心の中で、だれが天に上るだろうか、と言ってはいけない」。それはキリストを引き降ろすことです。
また、「だれが地の奥底に下るだろうか、と言ってはいけない」。それはキリストを死者の中から引き上げることです。
では、どう言っていますか。「みことばはあなたの近くにある。あなたの口にあり、あなたの心にある」。これは私たちの宣べ伝えている信仰のことばのことです。
なぜなら、もしあなたの口でイエスを主と告白し、あなたの心で神はイエスを死者の中からよみがえらせてくださったと信じるなら、あなたは救われるからです。
人は心に信じて義と認められ、口で告白して救われるのです。
(ローマ人への手紙、第10章6~10節)
※聖書訳注=キリストはすでに天に上られたのだから、自分の力に頼って、天に上ろうとしたり、地の奥底に下ろうとする必要はない、ただ心で信じて、口で告白すればよい。
ということだったりします。
つまり、「天に上る」(死後に天国へ行く)、「地の奥底に下る」(死後に地獄へ行く)という意味ではなく、すでに主イエス・キリストが十字架上で贖いの業をなしてくださったのだから、その救いの教えを探しに天や地の奥底まで行く必要はない、今はすでに恵みの時代となったのだから、ただ、主イエスを信じて口でそう告白すればよい……といった意味なのだと思います(たぶん)。
まあ、カトリックの神父さまがそのことを知らないはずなかろう……ということで、一応念のため(^^;)
それではまた~!!
自然保護団体に結構な額、寄付してきたと思われるマリですが……WWFの事務局あたりに行って、「わたしはネコ族の女王だ!だからオマエたちに寄付してやろう!!」みたいな感じだったら、「なんや、コイツ。ま、なんにしても寄付してくれるんならいっか☆」という感じだったのかどうか(笑。あ、字幕が付かない場合は、設定のところで字幕をオンにして日本語で見れるようにしてくださいねm(_ _)m)。
マリのいた夏。-【27】-
「マリ、あんたのことが好きだったのよね」
リサたちの態度が、明らかに『ロリにだけ用がある』というものだったせいだろうか。エリは珍しく警戒の目を向けるでもなく、オリビアやドミニクにしても、『あんたたちに用はないのよ』という視線で見られても、特にそれを失礼とは感じなかったようだった。
「えっと、そのこと、リサたちは一体いつから……」
「ノア・キングのことを締め上げたちょっとあとくらいかな」
そう言ったのは、エレノア・ワイアットだった。
「だってマリ、あんたとノア・キングの奴がセックスしなくてほんと良かったみたいに、繰り返しそのことばっか言うんだもん」
「そうそう」と、シンシアがエレノアの隣で何度となく頷く。「もしかしたらあなたはマリに好かれてたから知らなかったかもしれないけど……マリ、本当は結構怖い子だったからね。あ、べつに死んだ大切な友達の悪口言うっていうんじゃないのよ。あたしたちはみんな、マリのことが大好きだった。でも、あれ……高二の時だったっけ?リサと敵対してる感じの生意気な子がいてさ。でも一年の時はクラスが別々だったからモメるってこともなくて……」
「そうよ」と、リサがシンシアのあとを引き取る。「その子、テイラーって名前の子だったんだけど、便宜上Tってことにしておきましょうか。で、そのTって子はモイラって名前の頭いいんだけど、声甲高くてちょっと浮いてる感じの子をいじめて学校から追放しちゃったわけ。ま、追放なんて言っても、実際には自主退学ってことよね。なんでも、更衣室で丸裸にひん剥いて、恥かしい写真を携帯で連写して撮ったっていう噂だったわ。で、二年の時、わたしとTが同じクラスになって、マリとエレノアとシンシアは別のクラスになって……まあ、わたしこう見えて実は結構人見知りする大人しいお嬢さまだったりしてね。Tの奴、一年の頃からわたしと廊下や寮のどこかで通りすがるたんび、敵意満々って目つきでこっちを睨んでくるって感じだったんだけど、早速わたしのこと一人にして、クラスで孤立無援状態みたいにしようとしたわけ。そんな時、マリが……」
エレノアが「人見知りする大人しいお嬢さまだって。誰のこと?」と言い、シンシアが「さあね。一体どこの誰かしら」とヒソヒソ答える。するとリサが、「うるさいわよ、そこ!」と、一喝した。
「寮であの女のこと、公開処刑にしたのよ。Mが自主退学したってことにまつわる噂を聞いた時から、心に思うことは確かにあったみたい。でも、その時はまだ違うクラスだったし、ただの噂に過ぎないって可能性もあるでしょ?第一、この件については、みんなTのことを怖れて何も口にしようとしなかったから、噂を確かめることも出来なかったし……関わった女生徒たちはみんな共犯みたいな感じになってたから、無理もないことだったろうけどね。で、寮の中にある礼拝堂にマリはTのことを呼びだして、Mが自主退学したことの真偽を確かめようとしたわけ。わたしたちみんな、イエスさまの磔刑像のある脇の準備室に寄りそって縮み上がりながらふたりの話を聞いてたわ」
「正確には、録音してたのよ」と、シンシアが口を挟む。
「そうそう。二年の女子寮にいる三分の一くらいの子がそこに、ほとんどぎゅう詰めになってたってわけ」と、肩を竦めながらエレノア。
「だってそうでしょ?神聖な磔刑像がある真ん前で、マリはTから事実を確かめると――第一、あの女も馬鹿なのよ。Mをどんなふうにいじめてたかってことにマリが興味を持ってるって勘違いしちゃったんでしょうね。なんかペラペラ自慢するみたいにそのことしゃべりまくって……最後に、クラスのほとんど全員の前で裸にして、恥かしいポーズを色々取らせて写真を撮ったって自慢気にいうんですもの。途端、マリはTのことを容赦なく何度となくぶん殴ってた。今にして思えば傑作なんだけど、Tの奴、「親にもぶたれたことないのに」とかなんとか寝言をほざいてたものね。だけど、当時の十六やそこらのわたしたちからしてみたら、もう心臓バクバクものよ。シスターたちにバレたら全部自分が責任とるなんてマリは言ったけど、なんでよりにもよって神さまの前でTにヤキ入れなきゃならないんだかってだけでも、十分罰当たりな話じゃないの。とにかくね、Tの奴が祭壇の前で鼻血を流しながらぶっ倒れると、『みんな、出てきてこの女のことを押さえな!』なんてマリが言うもんだから……」
「そうよ。わたしたち、よし来た!とばかり飛び出していって、Tの体を押さえつけて、制服を乱暴に脱がせて裸にしてやったのよ」と、エレノア。「と言っても、流石にブラとパンティまで取るのは可哀想かなって戸惑ってたあたり、わたしたち、確かにいいとこのお嬢さまって感じよね」
「その時、マリが最初から呼んであったモイラにこう聞いたのよ。彼女も彼女で聖具室にずっと隠れて事の推移を見守ってたってわけなんだけど……」ここでシンシアは、くすくす笑った。「あの時のマリ、本当に最高に素敵だった。悪魔みたいに笑って、モイラにこう聞いたんですもの。『この女の下着、おまえが取るか?』って」
「そうよーう。で、あの女の口にソックス詰め込んだマヌケヅラを写真に撮ったり、そのまま四つん這いにさせて、後ろから顔の見えるような格好で写真撮ったり……大股広げさせて、みんなで囲んで携帯で連写したりね。あ、誤解しないでよ。こういうことを全部、Tはモイラにやったのよ。それで最後に、マリはMにこう言ったの。『これであんたの心の傷が癒えるとは思わないけど、これで自分の写真が流出する心配はないっていうことだけは、安心できるだろ?』って。結局、今度はTの奴が自主退学することになって……喜んだのは何も、いじめの標的にされつつあったわたしだけじゃなかった。あの女がいなくなった途端、二学年のすべて、女子寮のすべての空気が清浄化されてくみたいな感じだった。実際、その後のマリはみんなのヒーローみたいな感じだったわ。だけど、あたしは少しだけ何かが心配ではあったのよ。なんでって、Tの奴がわたしのことをいじめのターゲットにさえしようとしなければ……マリもあそこまでのことはしなかったかもしれない。マリのテニスの才能はいずれプロになるだろうってコーチたちが認めてるくらいだったから、プロのテニスプレイヤーになったあとにでも――実は高校時代そんなことがあっただなんて、誰かがネットに匿名で投稿でもしてごらんなさいよ。あたし、そんなことが少し心配だったんだけど、そんな話をしたらマリ、笑い転げてたわ。『そんなことより、わたしが神の御前であんなことをして、死後に罰を受けることのほうを怖れたほうがよっぽどいい』みたいなことを言ってたっけ。でも、あのリドロ神父の話から察するに、ああ見えてマリ、案外信仰心のほうはあるほうだったのね」
(意外だわ)という顔をリサはして、それから彼女は瞳の端に滲んだ涙をハンカチでぬぐった。リサはモデルとして活躍したのち、女優業へ転身したのだが――その第一作目の映画にて、『役者としては才能がない』、『ダイコンだ。いや、ダイコンより悪い』といったように酷評され、その時に慰めてくれた映画監督と結婚した。今は演技指導を受けたことにより、女優としてもそれなりの地位を築きつつあるが、それ以上にママタレントとして、ツイッターやインスタグラムなどで絶大な人気がある(ちなみに彼女は現在、二歳の女の子の母親だった)。
「ああ、そうそう。余計な話がつい長くなっちゃったけど、そんなことがあったあと、マリは色んな子からラブレターもらったり、アプローチされることが多くなったのよ。だからわたしたち、マリにはロイヤルウッドに超格好いい彼氏がいるって知ってたけど……それはそれとして、女の子同士で火遊びみたいな形でつきあうのも悪くないんじゃない?なんてからかったりしてたの。そしたらマリ、好きな子がいるから、他の女の子は絶対ダメだなんて言うんだもの」
エレノアは、現在マリアンヌ大学の哲学科教授の助手をしている。ちなみに夫のほうは、同大学の文学部の教授である(もしロリが彼と会ったとしたら、少しも筋骨隆々としてなく、鉛筆か針金のようにひょろ長いその姿に、きっと驚いたことだろう)。
「そうそ。ねえロリ、知ってる?あなたが振ったノア・キングの奴……結局、ルリ・ハヤカワと結婚したのよ。彼女、お金のある男と愛のない結婚をしようとしてたから、それならオレとだって同じようなもんだろ!?みたいに言って、婚約者からルリのことを奪っちゃったの。わたし、今も時々彼女のヘアメイクを担当することがあるんだけど、子供がふたりもいるだなんて信じられないくらい、あの頃と全然変わりないのよ。とにかくね、ノア・キングの奴はルリの尻に敷かれるような形であるにせよ、結構夫婦ラブラブで幸せにやってるみたい」
「そうだったんだ。なんか、それ聞いて少しほっとしちゃった。なんか、人に説明しづらいような、おかしな別れ方しちゃったもんだから……少し気になってたの。でも、今なら結婚したふたりに会っても、お互い笑いあえるような気がする」
ロリがそう言うと、リサとエレノアとシンシア、それにジェイムズは、顔を見合わせてどっと笑った。
「ああもう、あの日の夜のことはアタシ、今でもきのうのことのように思い出せるわよ」
ジェイムズがケタケタ笑って言う。彼はあれから恋人とふたりで服飾デザイン会社を設立し、今もパリコレやニューヨークのファッションウィークには、毎年のようにセンセーショナルな風を業界に吹かせ、話題をさらっている。
「ノア・キングったら、リサからほんの一通メッセージをもらったってだけで……ルリ・ハヤカワの名前によっぽど慌てふためいたんでしょうね。アタシたちが撮影を終えて一息つきながら美味しいもの食べてたら、そこへ片足ひきずりながらやってきたのよ」
「そうよう」と、今も組んでよく仕事をすることのある、シンシアがジェイムズの隣で笑う。「丘の上のキャンプ場のほうから、慌てふためいてやってきたんでしょうね。きっと途中の砂利道で、転ぶか何かしたんだわ。ハーフパンツの下の膝が血まみれでね。しかもTシャツにはカメムシとかコガネムシとか、ばっちぃような虫をくっつけたような有様だったものね。でも、ほんとにルリからお誘いが来たっていうんじゃなく、リサが仕組んだことだって即座に気づいたあたり、ノア・キングの奴も真正の馬鹿ってほど、男として頭悪くなかったわけよね」
その時、具体的に何があったのか、ロリは詳しく聞いたわけではない。ただ、リサとマリがふたりがかりで締めてやったら、金玉を縮み上がらせていたと聞いたというそれだけだった。
「まあ、これ以上のことは話すと長くなるから、このくらいにしておきましょうよ」と、リサが後を引き受けて言う。「今はもう、ロリ、あんたにとってだって、何もかもすべて時効でしょ?ノア・キングの奴はね、とにかく最初に経験した女の子がいい女すぎたことで……なかなかルリのことが忘れられなかったっていう、そういうことなのよ。たぎる性欲とか、そういうこともあったかもしれないけど、娼婦を部屋に呼んだりしてたのも、そういう部分だってあったんでしょうしね。一方で、ちゃんとまともにひとりの女性と向きあってつきあえないような男はまるで駄目だだの、真面目に考えたりするところだってあったんでしょうし。なんにしても、その時はすぐわからなかったけど、マリはあんたのことが好きだったから、らしくもなくあんなにムキになってノア・キングの奴のことを締め上げたってことだわ」
「時の流れって、本当に不思議よね」
エレノアがどこか、遠くを見るような眼差しで言う。
「だって、あんたとマリのつきあってたイケメン王子がつきあって結婚したって聞いた時、あたしたち、そりゃこう言ったものよ。『大人しそうな顔してあのロリって子もなかなかやるわね』みたいに。それで、マリがそのあと性転換して男になったって聞いて……わたしたちみんな、すぐマリに会いにいったの。そんなことくらいでわたしたちの友情は揺るぐような、そんな安っぽいものじゃないってことを証明するためにね」
「ま、アタシはマリがイタリアの病院に入院して手術受けるって時も、時間の許す限り、他のゲイやビアンの仲間たちと一緒にいようとしたものだけどね」
ジェイムズが、少しだけ自慢気に、胸を張って言う。彼こそ、性転換したわけではないにせよ、高校時代のあの頃と容貌が変わりすぎていて、まるきり別人のようだった。口の上と顎の下、それにモミアゲあたりのヒゲがすべてきっちり整えられてひとつに繋がっており、今日着ている喪服にせよ、あまりにファッショナブルすぎて、彼がデザイナーであると知らなかったら、親族には少々失礼に見えても仕方ないくらいであったろう。
「わたし……マリが突然こんなことになって悲しいんだけれど、みんなにもう一度会えたことは、なんだかとっても嬉しいの。確かにわたしたち、夏にキャンプで二度か三度会ったっていう、ただそれだけかもしれない。でも、マリを通して繋がっていて、これからだってもし街のどこかででも会ったとしたら、当然挨拶して話くらいするでしょ?マリとの思い出話のことや、最近どうしてるかみたいなことや……」
ここまで話すうち、ロリは再び泣きだした。青春時代というものは、なんだかとても不思議だ。思春期の頃にあった夏休みというのは特に……何故こんなにも胸を締めつけるような思い出として、心に残っているものなのだろう?
「マリはずるいわ」
リサが再び涙をぬぐって言った。
「あたしたち、まだ二十代の最後の二十八よ。まだまだこんなに若いのに、マリのことを思いだす時、あたしたちは若くて永遠に老いないままのあの子の姿だけ、繰り返し思い返すことになるんですもの。こんなことってないわよ」
――このあと、リサもエレノアもシンシアもジェイムズもロリも、言葉もなくただ涙に暮れた。ルークはラースやエイドリアンやクリスと、そして彼らに続くようにエリやドミニクやオリビアも、ハンカチで目頭や目尻を押さえながら墓地の門のほうへ歩いていった。
みんな、丘の麓の通りにあるレストランで食事する予定でいたから、ロリもあとからやって来るものとしか思ってなかったのだろう。ロリはマリのお墓から少し離れたところにある菩提樹の下で、リサやジェイムズたちと別れたあと……同じように、誰も人がいなくなるのを待って、マリの真新しい大理石の墓前に佇むライアンの元まで行った。彼は下ろしたての黒い喪服の袖で、堪えてもこみ上げてくる涙を何度となく拭っていた。おそらく、今回の急なお葬式のために黒の背広を新調したのだろうが、ライアンはそのズボンの膝が土で汚れるのも構わず、呆然としゃがみこんだままでいる。
「ライアン……マリのことがずっと、好きだったのよね?」
こんな時にこんな聞き方は無神経かもしれなかった。けれど、ライアンがマリのことを好きなのではないかとは、ロリは中学時代から気づいていた。もっとも、このことにはエリもオリビアもドミニクもまったく気づいてなかったらしいことから――ロリにしても確信まではなかったのである。
それがロリの中でほぼ確信に近いものに変わったのは、ライアンの結婚式に出席した時のことだった。もちろん、ただの偶然という可能性もある。けれど、花嫁があまりにもマリに似ていたことから……そうしたきっかけで今の奥さんのことが好きになったのだろうかと、心の中で思っていたのだ(もっとも、「ライアンの奥さんになった人、なんだかマリに似てるわよね」とルークに聞いても、鈍い彼は「そうかな?」と首を傾げるのみだったといえる)。
「あのさ、ロリ……この間、ありがとうな」
ライアンはロリの問いには答えず、ポケットから出したティッシュで涙をぬぐうと、その場から立ち上がった。中・高・大学時代と、ずっとゴールキーパーをやっていただけあって――彼は身長も高く、肩幅も広かった。けれど、今はどちらかというと縦にひょろ長い感じで、細面の顔には高校時代にあったそばかすのあともない。
「近所の中高年の人たちや、おじいさん・おばあさんたちを紹介してくれてさ」
「ああ、うん。あれはどっちかっていうとね、いわゆるWinWinの関係ってやつなんじゃないかしら。っていうか、みんなライアンのこと、スマートフォンの神さまみたいに思ってるみたいよ。使い方よくわからなくて、携帯の使い方を教えてくれる教室みたいなところへ行っても、ただ講師の先生がおっしゃることを礼儀正しく聞いて、『ほえ~。さいですか』なんて言って、<わかった振り>だけして帰ってくるなんて言うんだもの。その点、ライアンとライアンの携帯ショップの人たちって、ひとりひとり、わかるように懇切丁寧に教えてくれるでしょ?あれでみんな、ものすごく助かったって。その上、自分たちにどのプランが一番合ってるかも、十分納得した上で契約できるわけだから……それに、なんかわからないことがあったら、すぐ駆けつけて教えてくれたり。『そんなもん、一緒に暮らしてる身内か誰に聞けよ』って話かもしれないけど、わたしたちの住んでる地区、独居老人の人も多かったりして、なかなか難しいのよ。しかも、『なんか突然機内モードとかゆうのになったんだけど、どうやったらこれ元に戻せるの?』とか、うっかり変なとこ押したってだけで……すぐわけがわかんなくなってうちに聞きにきたりするような、そんな感じの人ばかりなんですもの」
「オレもさ、ロリからそういう話聞くまで、そんなに老人の人たちにそうした需要があるとは思ってなかったんだ。うちのじいちゃんもばあちゃんも、割と最新の家電に強かったり、自分でブログやツイッターやってたりする、あの年代としちゃ結構ハイパーなじじばばなもんだからさ。確かに、うちのショップは都心にあるから、車で出かけるのはちょっと時間かかるけど……ほんと、あれ以来うちの店、毎月の売上が安定するようになったんだよ。大体、新規の顧客としてどこらへんを開拓すればいいかとか、アフターフォローとして何が必要なのかとか、そういうことがすごくよくわかったのはほんと、ロリのお陰だよ」
ライアンは『この間』という言い方をしたが、実際にはそんなことがあったのも、かなり前のことである。その後ライアンは結婚し、結婚式では彼が今言ったハイパーなおじいちゃん・おばあちゃんも随分喜んでいた様子だった。それなのに……。
「スマートフォンの講習会をうちの近くで開く時には、うちにも遠慮しないで寄ってよ。べつに、なんか用事があるとか、そんな理由なんて何ひとつ必要ないでしょ?わたしもルークも、ライアンのこと、すごく特別な友達のひとりだって、ずっとそう思ってるんだから……」
「ありがとう、ロリ。オレさ……この前言ったとおり、離婚することになったんだ。まだ子供も一歳でちっちゃいんだけど……奥さんが実家帰って家に戻って来なくなっちゃって。何度電話しようが迎えに行こうが、てんでダメでね。オレはやっぱり、あの手の顔の女には嫌われる運命にあるのかなあ」
「そんな……マリはライアンのこと、大好きだったと思うよ。ラースとライアンのこと、ちょっと馬鹿にしたりするっていうアレは、ただの友達としてのプレイっていうか……」
「うん。わかってるよ、もちろん。ただ、随分長いこと会ってない間に……性転換してたり、ずっとヨーロッパで暮らしてたりとかさ。ルークも、今回マリのお母さんから連絡があるまで、マリとは四年くらい連絡取りあってなかったって言ってたけど……でも、四年前には会ってて、その前から実はマリが自分のことを男と認識してたっていうこととか、そういうことは全部知ってたわけだろ?でも、マリはオレには何も言わなかったし、相談するような素振りを見せたことさえ一度もなかった。ようするに、そういうことなんだって思うと……なんだか不甲斐ないよ、友達としてさ」
「マリはね……マリはマリで、いつも自分の問題で手一杯だったんだと思うよ。その上、親友だったわたしやルークが裏切るような形でくっついたり……そのことはね、わたしもルークもみんなに悪いと思ってる。じゃなかったらきっと、マリがユトレイシアへ帰ってきた時には久しぶりにみんなと会ったりとか、そういう機会がもっといっぱいあったと思うもの。だから……」
「ああ、ごめん。オレ、そういう意味で言ったんじゃないんだ。ただ、マリのお墓の前で……今、こんなことを思ってたんだ。女から男になるだなんて、すごく勇気のいることだもんな。だから、マリにしても……友達から、『そんなことやめにしたほうがいい』とか、『手術だって完全に安全ってわけでもないんだろ』とか、色々拒絶されたり説得されたりすることを思うと言いづらかったって気持ちはすごくよくわかる。でもオレは……関係なかったよ。マリが女でも男でも……マリがマリであってさえくれたら、それだけで良かったんだ。そのこと、どうしてマリが生きてる間に伝えられなかったのかなって、そのことだけが心残りだって、今そんなふうに話しかけてるところだったんだ」
「そうだったの……」
ライアンとロリは、六月末の爽やかな風に吹かれて、丘の上から見晴るかせる、アストレイシア地区、さらにはユトレイシアの街の風景をなんとはなし眺めやりつつ、親友のお墓の前で、ただ黙って佇んだままでいた。
「ねえ、ライアン。わたし、男友達の中では、ルークの次にライアンのことが好きだったの。そのこと、知ってた?」
「ううん、全然知らなかった」と、ライアンは屈託なく笑って言った。中・高時代とあまり変わらない笑顔だった。「でも、オレもそうだったよ。女友達の中では、マリの次にロリのことが好きだった。それで、時々こんなふうに思ってた。マリのことさえ好きじゃなかったら、オレ、絶対ロリに告白してつきあってるよなって。だって、ロリは優しいし思いやりがあるし、オレだって性格的傾向としてはなんかそんな感じだし、カップルになったらそのまま結婚しちまうんじゃないかってくらいうまくいくんじゃないか、なんてさ。でも、他のみんなはあんまり気づいてないみたいだったけど、ロリはルークのことが好きなんだろうなって、なんとなくわかってたしさ」
「わたしも同じ」と言って、ロリも微笑った。「ルークのことが好きじゃなかったら、ライアンに告白してつきあってたかも、なんて少しだけ思ってた。でもライアンは、サッカー部のキーパーで目立つ存在だったし、『ごめん、友達としか思えない』で終わるんだろうなって思ったり。あとは何より、ライアンはマリのことがたぶん好きなんだろうなってわかってもいたし……」
ロリはライアンと顔を見合わせると、そのあとお互いにくすくすと笑った。それから、だんだんにそれが大笑いへと変わっていく。
「なあんだ、そっかー。やっぱオレたち、同じ空気読む族だよな。大体みんなが集まってると、なんとなく『こーしたほうがいいんだろーなー』みたいな部分をカバーしてみたりさ。お互い、なんかそんなことばっかやってたよな。言ってみれば、オレがその男友達担当で、ロリが女友達担当みたいなさ。だから、そういう時にロリとオレの間じゃ、そんなに大して言葉なんかなくても、目と目が合うだけで気持ち通じるみたいな感じだったもんな」
「そうそう。だから案外わたしたち……似すぎててダメなカップルだったかもしれないわよね。ライアンがマリのこと好きなのも、冬が自分にない夏を求めるみたいな、そんなところがあったんじゃない?」
ライアンは一月生まれである。そしてマリは夏生まれ……だから、ロリはそんな言い方をしてみたのだった。
「そうかもしれないな。可哀想な雪だるまは、真夏の太陽にさらされりゃ、すぐさま解けちまうだけだってのに……『それでもいいんだ。彼女のことが好きなんだ』なんて、オレも随分いじましい奴だよな」
ロリとライアンがそんな話をして笑いあっていると、娘のお葬式に参列してくれた人々を見送ったミドルトン夫人が――何故かひとりだけで戻ってきた。シャーロットがシャロンから聞いた話によると、アーサー・ミドルトンは会社の重役の任を引退する前から鬱病の気が強く、フランチェスカとマーカスの間に出来た初孫さえ、彼に生きる気力を与えられないらしい……ということだった。
「ありがとう。あなたたち……マリがこんなにたくさんの人に愛されてたんだってわかって、わたしも母親として……こんなに嬉しいことはないくらいだったわ」
疎遠になっていた娘の死のみならず、重い鬱病を患う夫の介護ということもあってだろうか。エマ・ミドルトンはロリが彼女に最後会った時より、ぐっと老け込んで見えた。セレブ御用達の一流サロンの高級シャンプーによって光り輝いていたブロンドはすっかり色褪せ、以前は週に一度は必ず通っていたエステへも今は行かなくなって久しいのだろうか。顔が全体的に皺だらけでぼってりしており、それを見苦しく厚化粧によって必死に隠している……何かそうした印象だったのである。
とはいえ、ロリの家族がアストレイシア地区へ引っ越してきた時、マリの母親は女優のように美しかったし(少しだけ面差しがマリリン・モンローに似ていた)、それはその十年後もあまり変わりがなかったようにロリは記憶していたものだった。
「すみません、オレたち……マリに最後のお別れをしてるところだったんです」
「いいのよ。本当にありがとう……ロリちゃんもね、あなたたちがうちのすぐそばに引っ越してきてくれたから、マリも救われたっていうのに、あなたとルークが結婚してからはすっかりシャーロットとも疎遠になってしまって。でも、話のほうはいつも聞いてたのよ。シャロンを通してね」
シャロン・ハミルトンとエマ・ミドルトンは、マリとルークが生まれた時からの幼なじみであったように、ほとんど似たような関係性だった。シャロン・ハミルトンは三人兄姉妹の真ん中、エマ・ミドルトンは四人兄弟姉妹の末っ子だったが、お互いのことを血を分けた家族よりも近しい存在として感じ続けながら育った。
ロリはルークの家で、若かりし頃のエマとシャロンがチアリーダー姿で写っていたり、その他チア部の仲間たちやアメフト部と一緒に写っているアルバムを見せてもらったことがあるが――ようするに今でいうスクールカーストのトップに常にいる、イケてる女子たちだったわけである。
「今ならもう、何を話しても時効と思うから言うんだけれどね……わたしもシャロンも、あのままマリとルークが上手くいってくれたらって、そのことばかりずっと願ってたわ。よりにもよって男になりたいだなんて……わたしね、よくあの子にこんなふうに言ってたものだった。『あんたは天邪鬼だから、男になってたら男になってたで、きっと今度は女になりたいって言ったり、ゲイになって親のこと困らせたり、そんな感じだったんじゃないかしらね』って。わかるでしょう?家族ってそういうものよ。しつこくずっと同じことを繰り返し言われ続けると、相手が正しいとか悪いとかじゃないの。とにかく親としてはね、毎日気が狂いそうなくらい同じことばかり言われても、他にどうしようもなかったのよ。そのことで、どんなにあの子がわたしたち親のことを恨んでたかもわかってる。でも、どんなにわたしもアーサーも、あの子のことを愛してたか……っ!!」
この瞬間、ロリは胸抉られる思いを味わった。自分が彼女の望みを裏切り、ルークと結ばれてしまったからではない。今は自分の姑となったシャロンが、昔のエマの写真を指さして、こう言っていたことがあるのだ。『ねえ、フランチェスカはどっちかっていうと父親似だけど、マリは若い頃のエマにすごくよく似てるのよ』と。『こんなこと、フランチェスカにはもちろん言えないんだけど、ふたりとももうすっかり大きく成長したんだから大丈夫よね。エマはね、長女のフランチェスカよりも妹のマリのことが好きだったのよ。それはもう本能的なものでね、自分でもどうしてなのかわからないって言ってたわ。ほら、フランチェスカは優等生でほとんど手なんてかからない感じだったじゃない。それなのに、あんなに我が儘で憎ったらしいことばっかり言う、手のかかるマリのほうが……まるで自分の分身みたいに可愛かったんですって。性格のほうも自分と似て天邪鬼だから、手に取るようにわかる部分があったでしょうしね。だけど、顔を合わせるとケンカばかりで上手くいかないのよ。難しいものよね』
それから、こんなこともあった。あれは自分やマリが、まだ十歳とか十一歳とか、そのくらいの頃のことだ。ほんのつまらないことでマリが姉に意地悪く絡みだし、フランチェスカが珍しく、「あんたにはもううんざりよ!」と、妹のことを突き飛ばしたことがあった。「わたしが自分よりママに愛されてるですって?馬鹿も休み休み言いなさいよっ。ママが愛してるのはね、わたしよりもあんたなのよ、あ・ん・たっ!!それなのにくだらないことでいちいち僻んだりして、本当に馬鹿な子よ、あんたはっ!!」と怒鳴ったことがあったのだ。けれど、この時マリはといえば――珍しく姉がとうとうブッチ切れ、自分に暴力まで振るったということで、ニヤニヤ嫌な顔をして笑っているというそれだけだった。
ライアンも泣いていた。彼も、中学時代からマリが、自分の家族のことをあまりよく言わなかったという記憶が今もある。けれど、一児の父というのになった今では、その頃はわからなかった境地から物事を見ることが出来るようにもなっていたからだ。
「あなたたちは、本当に親孝行よ。だって、少なくとも親よりは長生きしてるんだもの。正直ね、マリが死んだって聞いた時、わたし、直感的に自殺だったんじゃないかと思ったわ。でも実際にはあの子はあの子なりに自分の幸せってものを掴んで、いい人生を送ってたのよ。そのこと、わたしもアーサーも、知ろうともしなかっただなんて……本当に馬鹿な親よ。何か困ったことがあって帰ってきたら助けてやろうなんて、そんな話はわたしたちもしてたわ。でも、自分たちの我を折ってまで、娘に会いにいこうとまではしなかった。今にしてみれば、本当にすべてがくだらないことだわ。一体、こんな惨めな思いを味わうことになるまで……たったこれだけのことにお互い気づかなかっただなんて、こんなに悲しいことがこの世界にあるものかしら」
ロリもライアンもなんの言葉もなく、ただ涙を流すことしか出来なかった。けれど、おそらくはそれでよかったに違いない。ミドルトン夫人にしても、他人からのなんの意見も感想も慰めも、求めてなどいなかったのだから……。
彼女は最後、ライアンに「今日は来てくださって、本当にありがとう。あなたがここにいてくださることが、何よりも娘の友達としての真心のしるしと思っています」と言い、ロリに向かっては、彼女の両手を握りしめ、涙の溢れる眼差しによって、じっと娘の親友の瞳を見つめて言った。
「実はね、今ミドルトン家はなんとも言えない陰鬱な暗い家庭になってしまったのよ。それはマリが亡くなってしまったからじゃなくて、その前からずっとそうだったの。ほら、フランチェスカは内向的な性格で、大人しいほうじゃない?そのせいか、いわゆるママ友みたいな友達がいなくてね……あの子はあの子でちょっと育児ノイローゼっぽくなってるんだけど、その上父親が重い鬱病でしょう?ロリちゃん、もしよかったらまた昔みたいに、うちへ遊びに来てちょうだい。せめて、同じ母親としてフランチェスカの話相手になってあげて欲しいの。以前ね、大分前のことだけど、街中であなたとルークと双子の可愛い女の子が幸せそうに笑っている姿を見て――その時はこう思ってたわ。マリとルイーザと名づけるだなんて、一体どういうつもりなのかしらって……だけど、あなたたちにはあなたたちにしかわからないことがきっとあるのよね。どうか約束してちょうだい、ロリちゃん。あの可愛らしい女の子たちを連れて、うちに遊びに来てくれるって……どうかお願いよ」
「はい……もしおばさまさえ良ければ……いつでも遊びに伺いたいと思います」
ミドルトン夫人は、ロリの手を握ったまま「ありがとう、ありがとう」と何度も言って、次の瞬間には再びハンカチで瞳の涙をぬぐいはじめた。その後、娘の墓の前で放心状態でいる彼女のことが、ライアンもロリも心配だったわけだが――母と娘のふたりきりにしたほうがいいのではないかと思い、ただ静かにその場を離れることにしたのだった。
>>続く。