トラウマ2題
テレビでゴルフ初心者のニュースキャスターがレッスンを受けている画面を観て、50年ほど前のことを思い出した。
ゴールデンウイークで帰省していた時、義兄と義弟からゴルフに誘われた。連休中のゴルフ場は一組3人以上でないと受け付けてくれないので、道具から何からすべて用意するからとにかく頭数に入ってくれということだった。
テレビで観て、ゴルフとはどういう競技かということはある程度知っていたが、クラブやボールに触ったことは全くなかった。とりあえず簡単な説明を受け、ゴルフ場に向かった。
順番が来て、見よう見まねでクラブを振り上げた。野球やソフトボールでは走ってくる球にバットを当てているのだから、止まっているボールを打つことは難しくないと、クラブを振り下ろしたところ見事な空振りである。後ろを見ると、順番待ちのゴルファーが列を作っている。焦りに焦って、ようやくクラブヘッドがボールに当たったと思ったら、ボールは3メートルほど転がっただけ。
キャディーは専修大学ゴルフ部のキャプテンで、見かねて5番アイアンというのをわたしに渡し、これでチョン打ちして前に進めていってくださいとのアドバイス。
池があるとチョンチョンとその周りをまわり、ロストボールを三つほど作って、ようやく最後にたどり着いた。
以来ゴルフは鬼門である。
もう一つのトラウマは社交ダンスである。
大学に入学したとき、プレーボーイの友人がダンスのレッスンに誘ってくれた。ダンス部が主催する講習会で、男性と女性の集団がホールで向かい合い、集団見合いよろしく壇上の講師の動きに合わせて、スロー・スロー・クイックと足を運ぶというレッスンだった。
クイック、ワルツ、タンゴを日替わりで教えるそうで、その日はタンゴだった。友人のいうところでは、三つのステップで一番難しいのがタンゴだという。だから、これを習得すれば後は楽ちんということだった。
集団見合いレッスンの後は、自由にダンスを楽しむ時間があって、友人はこの時間を活用すれば上達が早いからトライせよという。
レコードから流れる曲がタンゴかどうか友人に確認し、勇を鼓して壁際に立っている女子学生にダンスを申し込んだ。
ホール中央まで彼女をいざない、組手までは間違いなかったが、わたしが右足を前に出そうとすると彼女は左足を前に出して、慌てて引っこめると彼女も引っこめる。
まわりはタンゴのリズムに乗って男女が流れるように動いているのに、わたしたちはじたばたしているだけである。
すみません初めてだものでと謝ると、彼女もわたしも初めてでと、お互いにすみませんと頭を下げてさよならした。
以来、社交ダンスも鬼門である。
小さな公園の花
STOP WAR!