去年の今頃、1/12のマスタングに乗せるブリットを作ってほしいと依頼があった。その時まで1/12のマスタングといえばRevellの1966年式のプラモデルしか知らなかったので、このWEN-MAC製のマスタングを知ったときはちょっとした驚きだった。ほとんど日本では知られていないのではないだろうか。いかにもアメリカらしい大きくて頑丈なモーターライズのトイカーでなんと単一電池2個でライトをつけて走るという言うなれば「マッスル(トイ)カー」!!シャーシは金属製で重量感もたっぷり。
当初はホイールやリア部分をブリットの1968マスタングGT390仕様に可能なだけ近づけて改造しようと思っていたが、考えていくうちに、中途半端に改造するよりモーターライズやこの大雑把な玩具の愛すべき持ち味をそのまま残したほうがいいように思えて最小限の改造に留めた。結局フロントグリルのエンブレムを切り取ったのとボディ色を水色からダークグリーンのメタリックにして内装をホワイトからブラックにしただけ。結果これで正解だったと思う。
フィギュアはハンドルを持ったシンプルなドライビングポーズ。1/12というこれまでより少し大きなサイズでもあり、表情等はいつもより念を入れたつもり。加えて今回試してみたかったことのひとつ、ツイードジャケットのヘリンボーン柄の表現。柄をデカールにして、それを細かく切り張りしマークソフターでなじませながら貼り付けていった。ある程度狙い通りに表現できた。
タイトル写真は木製の専用飾り台に乗せたもの。本来マスタングに乗せる目的で作ったが、いざ乗せてみると造形のほとんどが隠れてしまうので表に出して飾れるように飾り台を作った。
映画「ブリット」(“BULLITT”1968)は西部劇が衰退しつつある時代にそれに代わるように刑事ものが台頭し始めたきっかけとなった作品。当時はそのカーチェイスが話題になり、この映画を機にカーチェイスはアクション映画の約束事のひとつとなった。しかしいまだにこの映画のドライビングの緊張感は色褪せない。最後の猛スピードで走るマスタングを止めるシーンは実際にブレーキが壊れていたらしいが、レーサーのマックイーンだからできる芸当でリアルそのもの。
またこの映画でのファッションのさりげなさ。濃紺のタートルネックに端正なブラウンのジャケットとちょっとひねった感じのスエードブーツ。そして軍用腕時計。すべてがしっくりしてバランスとれている。野暮ったさが微塵もない。これぞスティーブ・マックイーン!