にゃんこと黒ラブ

猫達と黒ラブラドール、チワックスとの生活、ラーメン探索、日常について語ります

藤井聡太七段『棋聖戦』第一局VS渡辺明

2020-06-09 18:03:00 | 日常

 昨日はこの対局のため仕事をあらかじめ早上がりして午後3時くらいから自宅でPCとスマホの両刀使いでLive放送を楽しむ。

 第一局と最終局(第五局)だけは振り駒で先手番を決める。将棋は江戸時代から棋譜が残っているが、昔から先手番がわずかではあるが有利とみなされている。

 統計的には近年のプロ棋士が先手番勝率53%らしい。感覚的にはもっと先手番が勝ってる感じで60%くらいかと思ってた。

 ちなみに、ボナンザという将棋AIソフト同士で1600回対局させたら、先手番の勝つ確率は52%だったそうで、プロ棋士のそれと酷似している。ほんの少し先手有利の不思議な数字。

 現役のプロ棋士100名?ともう少しくらいの中で、八大タイトル戦の一つでも獲得した棋士は10〜15名?もいないくらいだ。天才的集団の中で、激烈な戦いを勝ち続ける力がないとこの舞台には立てない。

 羽生善治先生が20代から30代にかけて勝率8割超えと鬼のように勝ち続けた頃、羽生先生がよく指された戦型が相手の最も得意な戦法であった。

 つまり、将棋の戦法は先手番が序盤どう指していくかで戦型が決まっていくのだが、羽生先生はいつも相手が得意とする土俵で戦おうと意図があった、

 羽生先生自身はオールマイティで得意不得意がない。全ての戦型を深く研究して準備されている印象だ。相手からしたら、自分の得意な戦法で負けるのだから、たまったもんじゃない。

 今回の藤井七段先手番の戦型選択に、羽生先生のそれと酷似した雰囲気を感じた。渡辺明棋聖が最も得意とする矢倉という戦型に誘導するとは!

 矢倉という戦型は江戸時代からある古典的な戦法で、将棋の純文学と称されている。守りの陣形が銀、金、角の配置にお城の形に似ている。

 ただし、現代将棋の矢倉は昔に比べて急戦が多い最新形に変化しており、序盤、中盤の一手のミスが命取りになりかねない非常に難しい高度な戦型だ。

 藤井七段は今回も中盤で時間を使い考えに考え抜いて、渡辺棋聖の予想範疇にない手を数手指している。終盤は4時間の待ち時間をお互い使い切って1手1分の秒読み将棋となった。

 こんな終盤でAIソフトの対戦2人の評価値が50対50のジャストイーブンだなんて信じられない終盤戦となった。しかし、突如として均衡は崩れる。

 そのきっかけは無謀とも思える(感想戦で先は見えなかったと正直に言っている)踏み込み、強い攻めの手筋だった。

 最終盤はどうなるのか見えてなかったと一手1分の中でお互い何十手も指している。AIソフトが98対2と圧倒的に藤井有利になっても、この2人は決着がわからないまま、諦めることなく凄い緊張感の中差し手が続いた。

 最終盤のAIは完璧な精度で読むが、人間は何が起こるかわからない面白さがある。まして、秒読みに追われる局面での応酬は見てて1番面白いところだ。そこで、AIの判断による数値を見てしまうと興ざめしてしまう部分がある。

 プロ棋士の将棋では素人では分からない投了がよくある。それも一つの美学かもしれないが、昨日の渡辺棋聖は誰もがわかる美しい投了図まで形作りをしてくれた。普通の敗者がなかなか出来る芸当ではない。

 藤井七段はやはり只者ではない。弱冠10代の若者にどうしてあのような年季の入った指し回しが出来るのだろうか?

 やはり、天才は教えられるのではなく、年齢に関係なく自らで発見して成長していける人なのだとつくづく思う。