にゃんこと黒ラブ

猫達と黒ラブラドール、チワックスとの生活、ラーメン探索、日常について語ります

棋聖戦第2局渡辺棋聖VS藤井聡太七段

2020-06-29 19:12:00 | 日常

 昨日の棋聖戦第2局をAbema TVとLIVE棋譜の両刀使いで朝9時から10時間近くに及ぶ熱戦を固唾を飲んで見守った。

 藤井七段の快進撃がいまだ冷めやらぬ興奮を呼び起こしてくれている。なんだろう?このワクワクが止まらない胸騒ぎは。

 人は長い歴史の中で、受け継がれて発展してきた文化や生活様式がある。考え方や思想ですら永い積み重ねで先人の知恵を受け継いでいる。

 将棋も例外ではなく、江戸時代から残されている先人の棋譜や名局から様々な定石が生まれ戦型が確立されてきた。新たな戦法や新手を見つけることは、高度に発展した現代将棋ではとても困難なことだ。

 しかし、この30年で羽生世代といわれる40代後半の世代から、現最強棋士の渡辺明棋聖の30代の世代が新たな戦型、定石をいろいろと生み出した。それは序盤、中盤とスピードのある攻撃を最優先にした戦い方である。

 昭和の時代までのまず守りの陣形を築いてから徐々に攻撃に移る将棋ではなくなった。極端な言い方をすると、守りの陣形に駒をあまり使わずに攻め駒として、相手に攻められる前に攻め切って相手王将(玉将)を詰むという戦法である。













 昨日の渡辺棋聖が先手番で採用したのが、彼が最も得意とする十八番の急戦矢倉という戦法。

 ここでも古くからの定石があり、攻め駒は「銀」、守り駒は「金」という絶対的なルールがあった。これにはちゃんとコマの特性による根拠がある。

 藤井七段が急戦矢倉で研究の末、いつか打ってみたいと温めていた一手が、金を攻め駒という誰もが驚く、一見手筋の悪いと思われる無謀な一手だった。

 控え室の検討陣からは「え〜」という悲鳴やどよめきが起きた。渡辺棋聖も驚いたというが、それを意に介さず渡辺棋聖はどんどん攻めた。

 そして、後手番の藤井七段の受けが苦しいと見られていた局面で、AIですら候補手にない守り駒として銀を玉の隣に打ち込んだ。

 控え室ではさらに悲鳴が起きて、誰もが悪手だと思った。AIも初めは悪手の判断であったが、読みの検索を重ねて最善手に切り替わった。

 何ということだ。こんな大舞台で自分を信じて、過去に前例のない誰も思いつかない一手を指せるなんて!AIですら候補にない手を重大な局面で指せるなんて!

 それでも難解な局面が続いて、時間のない中でノーミスの手堅い攻めを繋ぎ切った。先手番の渡辺棋聖の急戦を攻めさせずに(王手すらなく)短多数で完勝するとは‥‥信じられない将棋となった。

 渡辺棋聖が明らかな悪手を打ったわけではない。藤井七段の大局観と構想が良すぎて、いつの間にか気が付いたら先手がどうしようもなくなっているという将棋になった。

 将棋のアマチュアでさえ驚いているのだから、プロのレベルからすると未知の領域に踏み込んだような、新しい手筋の鉱脈を見つけたような凄い新手なのだろう。

 トップ棋士達を驚愕させる若武者の進撃に、物凄い期待感が湧き上がる。渡辺棋聖からするとこれまで築いた最高峰の将棋で勝負にならないかもという信じられない未知との遭遇なのだろうか‥‥。

 しかし、渡辺明棋士が羽生善治棋士との凄まじい逆転劇やこの15年間の精神的な強さを何度も見てきたので、追い込まれてからの異常な強さがあるのをみんな知っている。

 もはや藤井聡太棋士がたまたまの勝ちだったり、若さの勢いだとは誰も思わないだろう。7月だけで藤井七段の快進撃は終わらないだろうと思う。

 過去に誰もやらなかった道筋を獣道から発見して行く。数学の真理の探究(発見)とまったく同じような手法領域に踏み込む藤井七段の姿に、私はワクワクし感動をいただいている。