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リー・キット「僕らはもっと繊細だった」

2018-09-17 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
原美術館へ、「リー・キット 『僕らはもっと繊細だった』」を見に行ってきました。


事前に何も調べることなく、チラシの印象だけで足を運びましたが、その印象そのままの作品でした。

展示室に絵画や布を配置し、そこにプロジェクターで光や映像を当てるもの。
また、小さい展示室には、字幕のついた映像が延々と映し出されていました。

映像それぞれには、ストーリーは無く、人物が何かしたりということもありません。
ただの光だったり、はたまた木の揺れ具合が映し出されていたり、あるいは足を絡めながらさするような仕草だけをずっと映し出していたり。

あまりに仕掛けが少なくて、本当にあっさりと展示室を一周し終わってしまいます。



例えば、映像の中に登場人物がいたら。
その人がどんなことをするか、どんな服装をしているか、ほかの登場人物との関係は…などとその映像の中に入って行きやすいかもしれない。

例えば、音楽が付いていたら。
その音楽のタイトルだったり歌詞から、アーティストが伝えたいメッセージを読み取ることができるかもしれない。


今回の展示で見たリー・キットの作品は、そういうわかりやすさがほとんどありませんでした。
ただし、どの作品も独特の雰囲気を漂わせていて、『リー・キットっぽい』何かは感じられる。
でも、それが『何なのか』は、わからない。

作品の中には、字幕が印象的なものがありました。
ただし、その字幕をもってしても、特別なにかを主張したり、語っているわけではないのです。

チラシにも印刷されたこの脚だけの映像では、うろ覚えですが

あなたはこの秘密を手放さない

というような字幕が現れます。
一体なんのことを言っているのか?
リー・キットが香港出身のアーティストと知って、政治とか国とかアイデンティティ等について表しているのか、とも思いました。
でも、なんとなくですが、そういう話のためだけに作られた映像でもないような気もしてくる。

見た人それぞれが自分の『秘密』に思い当たるかもしれないし、当たらないかもしれない。
わかる人にはわかるし、わからない人にはわかってもらわなくてもいい、、そんな突き詰めた印象を受けたのでした。

企画展のタイトルには『僕らはもっと繊細だった』とあります。
世の中を知り、ルールも、ルール外のことも知った人たち。
いいこと悪いこと、あらゆる感情を経験して、ちょっとくらいの刺激なら慣れてしまった人たち。
そういう人たちへの冷ややかな皮肉なんだろうか、と思いながら展示室をもう一周しました。

すると、先程は気づかなかった貼り紙を、原美術館の中で一番ステキな窓の部屋のガラスに見つけました。
無造作に貼り付けられたコピー用紙には、

人生は素晴らしい


圧倒的な肯定感に包まれて、原美術館を後にしたのでした。


リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」
@原美術館 〜2018/12/24 1,100円


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