逝きし世の面影

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『攻撃やめて』伊情報機関がタリバン買収工作

2009年10月26日 | 軍事、外交
イタリア軍がタリバンを買収?そのせいで仏兵士が死亡と英タイム紙

【12009年10月16日 AFP】英紙タイムズ(Times)が15日、アフガニスタンに駐留するイタリア軍への攻撃を避けるため、イタリア情報機関がイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)に数万ドルの「わいろ」を渡していたと報じた。

■金を渡して安全確保?
タイムズが西側軍事筋の話として報じたところによると、アフガニスタンの首都カブール東郊サロビ(Sarobi)地区にイタリア軍が駐留していた間、タリバンの指揮官や地元軍閥などに情報機関が金を支払い、同地区での安全を確保していた。
また、この件について2008年6月に、駐イタリア米大使が買収工作についてイタリア政府に抗議した。
さらにタイムズは、イタリア軍から同地区の治安担当を引き継いだフランス軍が、交代直後の2008年8月にタリバンの攻撃を受けて兵士10人が死亡する惨事となったのは、イタリア側が買収工作のことをフランス側に伝達していなかったため、『治安状況を誤認したことが原因』と指摘する。
『地元勢力を買収して治安を確保するのは1つの手かもしれないが、同盟国にそのことを伝えないのは狂気の沙汰だ』との北大西洋条約機構(NATO)軍幹部のコメントを伝えた。
(西側の軍高官らは買収工作の存在を知っていたが、仏軍には隠していたと言う。)

■イタリア
これに対し、イタリア首相官邸は『まったく根拠のない非難だ』と報道を強く否定。
(イタリア軍からフランス軍にサロビの引き継ぎが完了したのは08年夏。ベルルスコーニ首相は同年4月に首相に就任している)
『ベルルスコーニ政権はタリバンへの金銭の支払いを承認したことはなく、(中道左派のオリーブの木連合の)ブロディ前政権がそのような行為を行っていたとの認識もない』との声明を発表。
(イタリア部隊はアフガン作戦で被害が比較的少なく、ラルッサ国防相がイタリア紙に『わが軍の兵士は現地の人々と親密に接している。そこが他国部隊との大きな違いだ』と誇ったこともある。)

■フランス
フランス軍も、報道は『事実無根』と一蹴。
Christophe Prazuck軍報道官は、『うわさに過ぎないし、この手のうわさを聞くのは初めてではない』と述べ、記事を裏付ける情報は存在しないと強調した。

■NATO
NATOが主導するアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)の報道官を務めるエリック・トレンブレー(Eric Tremblay)大将も、AFPの取材に対し、イタリア軍がタリバンを買収していたとの『認識はない』と語った。

■アフガニスタン
一方、アフガニスタン軍高官は、イタリア軍がタリバンにわいろを払っていたのは事実だと主張している。
『サロビでイタリア軍が敵に金を払っていたことは知っている。西部へラート(Herat)州でも、NATO軍に所属するイタリア兵によって同様の合意がなされたとの情報も得ている』
この高官によると、こうした買収工作はへき地に展開するNATO加盟国軍の多くで行われているという。


■イラク
『アメリカ軍がスンニ派勢力と秘密交渉』2007年05月15日
イラクのタラバニ大統領は15日付の英紙デーリー・テレグラフとのインタビューで、イラク政府が、イスラム教シーア派国家イランの脅威に危機感を抱いたイラクのスンニ派武装勢力の代表者と、和解に向けた秘密交渉を行っていることを明らかにした。
大統領は交渉が良い方向に進んでいると強調。
歴史的合意は間近だとして、激しい宗派間の対立が数カ月以内に沈静化し始めるとの見通しを示した。
大統領やマリキ首相が、国際テロ組織アルカイダには属していない武装勢力との交渉に臨んでおり、参加した英軍将校らが重要な役割を果たしてきたという。
大統領は「スンニ派は米軍よりもイランを危険視している」と強調。シーア派が多数を占めるイラク南部などで影響力を増大させているイランに対し、スンニ派内で大きな意識変化があったと指摘した。

08年アメリカ大統領選挙の前に、イラクへ米軍を大増派して武装勢力の攻撃が鎮静化したとのブッシュ政権や共和党マケイン候補の話は大嘘で、実体はアメリカ軍に抵抗していたスンニ派武装勢力(覚醒会議)10万人と和解?(買収)して掃討する替わりに米軍が月300ドルの給料を払うようになったのでイラクの治安が飛躍的に安定した。
当時のイラク駐留アメリカ軍司令官がアメリカ議会でアメリカ軍はイラクで『勝利できない』と、認識する発言をしている。
アメリカにいる文民の政治家よりもイラクの現場の軍人達の方が余程冷静に物事を見ているのでしょう。
2年早く始まってアフガン戦争はイラクよりも悪いらしい。
イラクのスンニ派武装勢力と同じ様に、一部でタリバンを雇って給料を払っているようですが、空からアメリカ軍が爆弾を落としてアフガン市民を殺していては折角の努力は水の泡である。
ところが日本は、空からアフガン市民を殺しているアメリカ軍(多国籍軍)にインド洋で会場自衛隊が給油している訳です。
日本の言う『国際貢献』とは、アメリカ軍の行う『人殺しの手伝い』で、殺される側のアフガニスタンの市民にとっては軍事作戦以外の何ものでもなくトンデモナイ話である。
テレビニュースなどでは今でも『米軍がアフガン武装勢力を何十人殺害した』と平気で伝えているが、現地のパシュトーン人の男は誰でもみんな例外なく武装しているのですから『武装勢力うんぬん』は全く意味が有りません。

今回発覚したイタリア軍の現地武装勢力(タリバン)への賄賂(和解)懐柔工作は、アメリカ軍がイラクで一足早く行い一定の成果を指している作戦であり、当然NATO黙認と考えた方が辻褄が合うだろう。
現地アフガン政府(カルザイ政権)が行おうとして未だ成功していないタリバンとの和解ですが、『米軍増派』と『現地武装勢力』の買収はイラクでは一体のものであったので、アフガニスタンでも一体であると理解する方が正しいだろう。


『アフガン戦争の敗北』

アフガン大統領選挙前に2万人以上増派したばかりのアフガニスタン駐留米軍のマクリスタ ル司令官が今年の8月に『1年以内に追加増派しなければ、この 8年の戦いが失敗に終わる』とオバマ米大統領(アメリカ)政府 に報告したらしいが、オバマは未だに熟慮中で増派決定は出していない。
これに対して共和党右派からは『優柔不断』と攻撃しているようですが、マクリスタ ル司令官の出したアフガン現地情勢に関する評価報告書の中身は非公開である。
米紙ワシントン・ポストが非公開文章をすっぱ抜く訳ですが、これをリークしたのは誰かが興味深い。
ようは8年間戦って『アメリカ軍は負けている』と現地司令官から報告が来た訳です。
今『増派しないと負ける』ことが確実だが、たとえ増派しても米軍がアフガンで勝てる見込みはどこにも無い。
増派しても、わずかに米軍の『敗北』を(将来に)先送りするだけであるが、究極の官僚組織(お役所仕事)である『軍隊』は、面白い事に(日本の)キャリア官僚の色々な悪弊が矢張り全て当てはまる。
①どれ程問題が山積みされていても、担当している最高責任者(官僚)は、時間が来れば(数年間で)必ず別の部署に横滑りで『配転』されることになっている。
②事業(戦争)の失敗は明らかであるが、自分の担当している時に失敗(敗戦)が決定すれば(今までの失敗の)責任を(自分が)取らなければならない。
③幾ら失敗が明らかでも、金や人を注ぎ込む(米軍増派)限り、『失敗』(敗北)を先送り出来る。
④任期いっぱい(数年間)は公共事業(戦争)を継続し(失敗)責任を先送りして(自分の)体面を保つ。
何のことはない。
日本の八つ葉ダムや諫早湾干拓事業と全く同じ構図で、意味も無く大きく無駄な『公共事業』の失敗が誰の眼にも明らかでも、自分では撤退出来ずに、ずるずる推進してしまう官僚組織(アメリカ軍)とそれに群がるもろもろの利権団体と関連企業。
自分の任期中に撤退して失敗を確定したくないので、軍人(官僚)には結局『増派』の選択肢しかないので、ベトナムではだんだん増派した結果が最大兵員55万人にまで膨れ上がってしまった。
これ(負け戦)を止めれるのは軍人(官僚)では無理で、『敗戦の受け入れ』は政治家の判断(決断)だけである。
遅いか早いかの違いだけで、『米軍撤兵』以外の選択肢はアメリカに残されていないが、オバマにベトナムからの『負け戦での撤兵』をしたニクソンの判断が出来るかどうか。?
史上初めての『アメリカの敗戦』の責任を取らされて(ウオーターゲートは口実では?)辞任させられたニクソン大統領の前例をどう解釈するかで、オバマの今後が決まる。
因みにアメリカ史上一番不人気な大統領はアメリカ軍が初めて勝てなかった朝鮮戦争を開戦から停戦まで指揮したトルーマンである。
二番目に不人気な大統領は、アメリカが初めてベトナム戦争で敗北した(敗北を認めて撤兵した)ニクソンである。



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4 コメント

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アパッチ砦 (ましま)
2009-10-26 09:47:41
アメリカはいまだにアパッチ砦を卒業できない。日本も100何十年たって勤王攘夷がさかん。

 結構、イタリアがルネッサンスの先陣をきるかも……。
返信する
インデアン戦争 (逝きし世の面影)
2009-10-26 15:39:40
ましまさん、コメント有難う御座います。

今の世の中、『尊王』はともかく、残念ながら『攘夷』?(自主独立)を主張するのは共産党など左翼が中心で、社会全体では余り多くないのではありませんか。?
特に国粋主義であるはずの右翼が良くない。
ナショナリズムの正反対の、対米従属のグローバリズム一辺倒で真の国粋主義右翼は皆無で、比較的ましなのは民族派の一水会鈴木邦男程度で絶滅危惧種のヤンバルクイナ状態です。
日本の右翼や左翼にかかわり無くナショナリズムの正しいスローガンは矢張り『攘夷』でしょう。
徳川幕府の開国で、内外価格差の影響で国内の金が流出し深刻なインフレ(諸物価の高騰)で全ての日本人が苦しんでいた。
また外国船が日本の港に入港する度にコレラや新型インフルエンザなどの疫病が蔓延して多くの日本人の命が失われる。
国内経済の混乱(崩壊)と海外列強の横暴になすすべが無い無力な徳川政権打倒のスローガンが尊王攘夷なのでしょう。
当時の多くの日本人が共感した『攘夷』には正当な理由があったのです。
そして今グローバリズムに苦しめられている多くの日本人にとっても、これからは新しい『攘夷』は必要ではないでしょうか。?

尊王攘夷の旗印で成功した明治維新が1868年なのでアメリカのインデアン戦争(今で言うところの民族浄化エスニッククルージング)戦争とが時代的に重なります。
カスター将軍の第七騎兵隊がクレージー・ホース率いるスー族に敗北したのは1876年で明治の西南戦争に近い。
それ以降アメリカは徹底した皆殺し戦争を行いインデアンの人口は最盛期の100の1程度に激減して100年前に(アメリカ政府の勝利で)終結する。
世界の警察官を自認しているアメリカですが、百年とは三世代か四世代前のことで、イラクやアフガンを見ているとアメリカでは懲りることなく今でもこの時の力任せの野蛮極まるインデアン戦争を世界規模で行っている心算なのでしょうか。?
それなら世界の警察官ではなく、『世界の騎兵隊』で、日本は間違ってもアメリカの真似だけはして欲しくありません
イタリアは流石に政治学の名著『君主論』のニッコロ・マキャヴェッリの国だけあり、やりますね。
欧米では戦争は『日本の公共事業』と同じ性格のものであり、それなら『費用対効果』で絶対に勝てない敵対勢力に金を渡す方がずっと安上がりのはずです。
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攘夷 (ましま)
2009-10-26 20:50:54
今の攘夷は、グレードの低い排外主義、差別主義です。日英同盟改定の頃あった「内地雑居」反対の方がまだましですね。
ナショナリズムとは縁もゆかりもない、アパッチ砦征服精神です。
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イラク戦争開戦当時 (逝きし世の面影)
2009-10-27 14:13:37
報道関係者が03年の開戦時にラムズフェルド国防長官やパウエル国務長官などブッシュ政権の閣僚たちを皮肉って、西部劇のカウボーイになぞらえたポスターを作ったら、ネタにされた閣僚たちは怒るどころか喜んでこのパロディのポスターを全員が欲しがったそうです。
『アパッチ砦征服精神』も相手が厚顔無恥のブッシュでは、ましまさんの皮肉や当てこすりや批判とは受け取らず、ジョン・ウェインは強くて正しくてかっこ良くて、しかも断固としていたので( 正反対に)『最上級の褒め言葉』と思うかも知れませんね。
1960年当時は西部劇が全盛期で日本のテレビでも盛んに放送されていたが、不思議はダブルスタンダードの人道主義で貫かれていた。
確かに白人には民主主義が適用されるのですが、同じ人間でも相手がインデアンだと無条件で『殺せば殺すほど正義』なる不思議な価値判断になっている。
対テロ戦争とは21世紀に始められた新しい形を変えた西部劇なのでしょう。
西部劇の決まり文句であった『生死にかかわらず』なる言葉が、01年のアフガン戦争開戦時に使われていましたよ。
オマル師やビン・ラディンはアパッチ族の酋長役なのでしょうが、二番煎じの粗悪品で40年前の人気は到底期待できませんが、今では誰の眼にも間違ったアパッチ砦であったことは理解されているようです。
ただ戦争は始めるのは簡単であるが止めるのは何倍も難しいが、特に負け戦での撤収は最も難しい。
今の人気が凋落しているオバマに可能か。心もとない限りです。
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