スタジオSZ8のブログ

スタジオSZ8(鈴八)のぬるめの日常

クリスマスエクスプレス0号車(88年版、深津絵里主演)を考える

2023-03-05 | 映画、ドラマ、テレビ
かわいい深津絵里を見るためだけのCM。
ではない。
クリスマスエクスプレスを生み出した名作を考察してみようと思う。

まず、最初にお断りするが、この作品は正確には「ホームタウンエクスプレス」というシリーズのクリスマスエディションとして製作されている。
「ホームタウンエクスプレス」とは、簡単に説明すると、当時、ちょっと疲れたり、悩んだりしたら故郷に帰ろう。
というテーマで展開していたシリーズだ。
しかし、実質的にクリスマスエクスプレスの第一弾として認知されている。僕自身もそうだ。
JR東海自身も認めているし、それで問題はないのだけど、実はこの考察を進めていくうえで、
「ひょっとして、思い違いをしているのかも?」
と思うようになった。
これは順を追って書いていこうと思う。

大まかなストーリーはこうだ。(60秒バージョン)

ある駅の新幹線のホーム。
おしゃれをした女の子(以下、彼女)が停車している新幹線を見つめている。
多くの人が乗り降りするが、目当ての人物は見当たらない。
新幹線は発車し、取り残された彼女は、ちょっぴり不貞腐れる。
するとホームの柱からプレゼントが現れ、鈴をチリンと鳴らす。
気づいた彼女がふりかえると、柱の陰からバックスライド(ムーンウォーク)で男性(以下、彼氏)が現れダンスを踊りだす。
彼女はこぼれた涙をふき、あきれたような表情をうかべる。
ふたたび柱に隠れる彼氏を見て、彼女は「バカ」(サイレント)という。
ホームで戯れる二人の画面に
「帰ってくるあなたが最高のプレゼント」のコピーの後
「JR東海の新幹線(←ここ)」のフレーズの後、JR東海のジングルが流れる。

こういった流れになっている。

まず、僕にとって一番印象深いのは、彼女の赤い唇である。
鮮やかな赤が、彼女の白い肌と相まって、非常に目立つ。
なぜここまで鮮やかな赤が使われるのか? 何か絶対意味があるはずだ。
少なくとも、これを説明できる仮説が自分の中にできないと、非常に気持ち悪い。
モヤモヤするのだ。
これが、全く考察が進まなかった。

で、今回、改めて別方面から考えてみたら、意外な着地点が見つかった。
それを進めてみる。

別方面とは、彼女のいでたちだ。
これが気になった。
軽装を通り越して、なんと手ぶらだ。
外出しているのに手ぶら。考えてみれば、非常に不自然だ。
駅まで歩いてきたとしても、入場券を買うにもお金は必要だ。ポーチの一つでも持っていれば別だが。
彼女はこの駅にどのような方法で来たのか?

まず思いついたのが、自家用車で来たという仮定だ。
これなら、軽装で、何なら手ぶらでも小銭だけ持って出れば出迎えられる。
だが、問題は靴だ。結構かかとが高い靴を履いている。これで運転をしてくるか? 無論、履き替えれば済むことだが、なんかイメージが合わない。
そもそも彼女は運転免許をもっているのか?
ここで、ふと、彼女役の深津絵里の年齢を調べてみた。
そしたら驚いた。
なんと当時15歳!!
さすがに設定を成人女性にするには厳しい。最大限引っ張って、せいぜい18.19歳が限度だろう。
僕は牧瀬里穂版の考察で「本人は17歳でも設定を22歳とか25歳にするなら」と言っていたが、10代半ばの2歳差はでかい。
成人後の4.5歳前後は違う感覚だ。(大人の方なら、なんとなく理解できるだろう)
詳しい設定はわからないが、自動車免許を持てる年齢かどうかも怪しい。

じゃあ、家族に送ってもらったのか?
彼氏の出迎えに、家族が送迎をするか? かなり考えづらい。
だが、これを解決する考え方が一つある。
これが「家族(両親)公認の仲だったら?」だ。
そうなると、話は別だ。
もっと考え方を進めてみよう。
彼女、彼氏、双方の家で公認の仲だったら?
なんとなれば、家族ぐるみの付き合いだったら? 家が近所で、彼女彼氏は幼馴染だったら?

ここで、はたと思い当たった。
ひょっとしたら、僕は大きな思い違いをしていたのかも知れない。と。
これはあくまでも「ホームタウンエクスプレス」シリーズだったのだと。
現在の我々から見ると、これは「クリスマスエクスプレス」シリーズとして捉える。
だが、過去にさかのぼり、当時の製作スタッフにしてみれば、翌年「クリスマスエクスプレス」が生まれるなんて思っていない。
当然「ホームタウンエクスプレス」のフォーマットで、作品を作るはずだ。
どういう事か?
彼氏は、彼女に会いに帰ってくるのではない(当然彼女も含まれるのだが)。
冬休みを利用して「故郷」に帰ってくるのだ。
そうなると話は全然違ってくる。

僕などは、当初、実は彼女彼氏は恋人同士なんかじゃなく、ほとんどブラコンの妹が、帰ってくる大好きなお兄ちゃんを待っている。という仮説を立てたぐらいだ。
さすがに、これは無理がある。あの赤い唇が、全く場違いだ。これが通じるとしたら「それ、なんてエロゲ?」の世界になりかねない。却下だ却下!

やはり、彼氏彼女は恋人同士。幼馴染なら、なお収まりがいい。

ここからちょっと物語り調だ。
ある日、彼女は彼氏のお母さん(お父さんかも知れない)に話しかけられる。
「今度うちの子がイブに帰ってくるんだけど。一緒に迎えに行く?」
実は、彼女は彼氏の両親より先にそれは知っているのだが、口には出さない。
「はい、行きます」
「ついでにうちでご飯食べてく? 泊って行ってもいいよ」
これまでも、というか小さいころから互いの家で泊った事があるので(当然寝室は別だが)、彼女に断る理由はない。
彼女は自分の両親に許可をとる。特に反対はされない。だが、父親はちょっと面白くない。彼氏に不満があるわけではないが、かわいい娘が手元から離れるのはいい気がしない。

当日、彼女はちょっと冒険をしてみた。ちょっと大人っぽい服を選んだのだ。
そんな彼女を彼氏のお母さんが自家用車で迎えに来る。彼女の姿に驚くお母さん。いつの間にこんなに大人っぽくなったの? と
だが、一つ注文があった。メイクがまだまだ、だったのだ。
お母さんは思い出した、都合がいい事に、まだ未使用のルージュがあった事を。それも大人の真っ赤なルージュだ。
いたずら心が沸いたお母さん。
「私、娘が欲しかったのよねえ」
等と言いながら彼女と自宅に寄って、彼女にメイクを施す。
「これで、あんなバカ息子なんてイチコロよ」

と、まあ、我ながら妄想全開の物語だが、こうすると彼女のいでたち、そして、真っ赤な唇の説明がつく。
(イチコロって…言葉が古いか)

ちょっと時間より早めに駅に着いた。送迎レーンで待っているつもりだったが、彼女は落ち着かない。
早く会いたくて、ソワソワしている。
お母さんは小銭を彼女に渡す。
いや、送っていったのはお父さんかも知れない。むしろ、料理とかの準備でお母さんが残る可能性は高い。
(この当時は、母親が家事を主に請け負う、という考え方は結構主流だった)
彼女の髪形もお母さんがセットしたとしたら、もっと時間はかかるので、途中でバトンタッチしたかも知れない。(迎えに行ったら料理する時間がない)
「ホームで待ってる?」
「ありがとうございます」
彼女は駅に駆け込み、入場券を買ってホームに上がる。
それにお父さんは、ちょっと鉄オタだ(おいおい)。入場券の金額は知っている。

あ、物語り調が抜けず混じってしまった。

ともかく、これで物語のスタート地点だ。
ここまで矛盾はない。と思う。

その後の展開を考え始めたら、いきなり矛盾があった。
彼女が立っている位置に乗車位置の表示が見える。
「14号車」
車両的には13号.14号車あたりか?
この位置から新幹線を見送っているので、その視線から、発車したのは下り列車で、先頭は1号車だと言う事が分かる。
かなり後ろの車両だ。
よく見ればホームの終わりが見えている。

突発的にここで待っていては、落ち合える可能性は低い。
せめて改札に向かう階段口で待っていないと。それすら、難しいかも知れない。

一番簡単に推測できるのは、迎えに行くと判った時点で、彼女と彼氏は連絡を取り、「何号車に乗るからその付近で待ち合わせよう」と約束してた。と言う事だ。
親公認はいいが、いつでも監視されてる気もしている彼氏は(彼女も、か?)、せめてホームで二人きりになりたかったのかも知れない。

もう一つは、彼氏の両親が「帰ってこい」と指定席券を送った。という推測。
これなら、何号車かあらかじめわかる。

ちょっとわき道にそれるが、彼氏のキャラクターをここで考察してみる。
彼氏と彼女が同い年。というのは十分にあり得るのだが、彼氏の方が1.2歳年上。と考えると物語をイメージしやすい。
小学校も一緒、中学校も1.2年かぶる。ひょっとしたら高校も同じかもしれない。
友人から
「おーい。旦那が来たぞ」
と、からかわれるぐらいには有名だったら面白い。
そんな彼氏は都会の大学に進学した。彼女は高校に残る。
なんだかんだ夏休みに帰れなかったりしたら、今回久しぶりの里帰りと言う事になる。
じれた親が
「お金がないんだったら、旅費ぐらい出す」
と思ったか、切符を送った。と考えれば辻褄もあう。

このあたりは、いくつか考察はできるだろう
ともかく、ホーム上で待つ彼女。
だが、約束の列車で彼氏は降りてこない。
この時の彼女の膨れた表情は、どういう心理だろうか?
たぶん、性格もお互い判っているはずだ。
彼氏は、結構いい加減な部分があるかもしれない。
『この列車のはずでしょ?
 なんで乗ってないのよ!
 どうせ、また遅刻して乗り遅れたんでしょ。
 本当に時間にルーズなんだから』
こういった類のことを考えていた、と考察するとしっくりくる。

石を蹴るしぐさをしたり、このあたりの彼女の表情、仕草は、意識して子供っぽさを演出しているのだろうか?
とにかく可愛い。(個人的主観)

ところがここで画面に向けてくるっと背を向ける。
この時の心理はどうなのだろう。
『…あっちにはキレイな人が一杯いるのかな?(深津絵里ほどの人が一杯いるとは思えないのだが)
 もしかして、何かあって乗れなかったのかな?
 どうしよう、もしそうだったら、やだな・・・。
 会いたいよ』
様々な思いが短時間で浮かんでは消える。
そう考えると、あのポロっと流れる涙の説明が説明できる。

このあたりで、彼氏がプレゼントのベルをチリンと鳴らす。音は聞こえてこないが、劇中では音が鳴っており、この音で彼女がふりかえると考えるのが一番自然だ。
その後のダンスも、都会で覚えてきたのを自慢半分で披露した。なんてのが面白い。

彼氏がなかなか姿を現さなかったのは、こんな感じのいたずら心だろう。
だとしたら、先の彼女が彼氏の乗っている号車を知っていた理由は、二人で落ち合う約束をしていたと考えるのが自然な気がする。
彼氏の知らないところで、彼女が不意打ちできていたら、このいたずらは出来ない(難しい)。
彼氏のいたずらは彼のイメージ通りに進んだ。
だが、これは不発だった。
彼女の機嫌はすこぶる悪い。
長い付き合いだ。雰囲気でそれが分かる彼氏は、スゴスゴと柱の陰に隠れるのだ。

そこで「ばーか」だ。
彼女役の深津絵里の可愛さも、もちろん欠かせないのだが、この二人の仲の良さが、「故郷、ふるさと」に帰ってきた「ホームタウンエクスプレス」の魅力だ。という作品からのメッセージが、心にしみるのではないか?

最後、ホーム上で戯れる二人。
どう見ても、互いの想いを確かめる。という絵ではない。
一番ピッタリな言葉は
「じゃれあっている」
だ。
子犬達が遊んでいるイメージすらある。
前述の「ひょっとしたら、二人は兄妹かも知れない」と思った理由だ。

悪い言い方をすれば、もう、甘い期間は終わってるのかもしれない。
近くにいて当たり前の存在、それが離れ離れになり、その上の帰郷。
これを「ホームタウインエクスプレス」と呼ばずに、なんと呼べばいいのであろうか?


最後に、蛇足になるが、このロケ地となった駅はどこなのだろうか?

僕は本来、ロケ地と作中のその場所は別物だと思ってる。これは全く別のドラマでも同じだ。
だから劇中の構造や立地が、実際と矛盾することがあっても問題はない。という考え方だ。
昔、「西部警察」というドラマが、地元でロケをしたことがある。
放送時「あ、その道に行ったら、あそこには行けないぞ」と思ったことがある。
実際の地形と、ドラマの中の地形は違うのだと、それから割り切れるようになっている。
だから、「クリスマスエクスプレス」第一弾で、大時計が背後で映るシーンから「逆走だ」とは思わない。
「これはあくまでも架空の駅だ」
という考え方だ。

その上でこの作品の駅を見てみると、ホーム番号が「16」だ。
大ターミナルではないか!?
東京、(新)大阪ではないだろう。東海道新幹線沿線の途中駅であるはずだ。
京都というのも大阪から近すぎる。それでは大阪で放送してもピンとこない。

実は僕は豊橋かとも思った。背景に明かりも少なく地上駅にも見えたからだ。
背後に見えるのは貨物線にも見えた。
だが、豊橋駅には16番ホームまではなかったはず。(当時の記憶は曖昧)
そう考えると名古屋駅か?
新幹線の走り方が、記憶の実際の名古屋駅と違うような気がするし、新幹線の曲がり具合も辻褄が合わないが、言ったように、ロケ地と劇中の駅は別物だ。
{クリスマスエクスプレス」第一弾は明らかに名古屋駅なので、そう考えるとこれが正解だろう。
すると、「クリスマスエクスプレス」シリーズの大半は名古屋駅がロケ地となるようだ。

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