新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

照会・お便りetcはこちらへどうぞ
opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

北朝鮮の融和ムードのなかで医学界が考えておかねばならないこと:その4 英はどう見ているか

2018-05-16 23:25:45 | 北朝鮮

北朝鮮の融和ムードのなかで、医学界としておさらいシリーズ。UKの渡航者向けサイト、Fit for Travelにはどう記載されているのか確認。

  • 各国共通事項(省略)
  • ワクチン:UK在住で必要なもの(インフル、MMRなど)
    通常推奨 破傷風
    他に考慮するもの ジフテリア・A型肝炎・B型肝炎・日本脳炎・狂犬病・チフス
    黄熱病イエローカード:流行地からの入国の1歳以上
  • マラリア予防は必須。長袖長ズボン・露出部の虫よけ剤・蚊帳の使用
    マラリア予防薬は必ずしも勧められない
    マラリア地図は全国Low riskに分類。
  • 高山病注意(2400m以上/3658m以上)の地域があり、そこに行く場合には高山病など生命の危機となる状況に注意

接種すべきトラベルワクチンは東南アジアの途上国とおおむね似ていますね。

渡航者に対してすべきアドバイスは東南アジアに準じてと。

URLは
http://www.fitfortravel.nhs.uk/destinations/asia-east/democratic-peoples-republic-of-korea#Malaria

 


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北朝鮮の融和ムードのなかで医学界が考えておかねばならないこと:その3 マラリアの経緯

2018-05-14 00:01:05 | 北朝鮮

南北首脳会談、金正恩氏の大連訪問(今ここ)。22日の米韓、6月までの米朝。
北朝鮮の融和ムードのなかで、我々医学界も知っておくこと、考えておくこと、その3は、この国のマラリアの経緯のおさらいです。

1980年代までに、朝鮮半島からマラリアは撲滅された。
しかしながら経済危機のなか衛生水準が低下するなかで、1990年代にマラリア復活。
2001年には30万例のマラリア感染が発生し、韓国政府は支援180万ドル。
2000年代初頭は減少傾向。2003年6万例、2007年7430例。
マラリア媒介蚊はDMZを越えて韓国側へ、韓国側で677例の感染者
(以上、2008年の記事)
https://www.reuters.com/article/us-korea-north-malaria/north-korea-fights-off-malaria-disease-heads-south-idUSSEO16790420080527

May 27, 2008 / 5:50 PM / 10 years ago

North Korea fights off malaria as disease heads South

北朝鮮側から、DMZを越えて媒介蚊がやってきて韓国側住民が感染している。
DMZでは草・灌木が多く、蚊にとって好環境。と2016年時点の記事でも。
http://www.dw.com/en/koreas-demilitarized-zone-a-malaria-battlefield/a-19084748
Korea's demilitarized zone: a malaria battlefield
 
韓国市民団体から抗マラリア薬支援を拒否。
(2017年、文政権初期の報道)
http://www.newsweek.com/north-korea-rejects-malaria-package-south-after-sanctions-621649

North Korea Rejects Malaria Package from the South After Sanctions

UN body says 5.6 million remain at risk, however

 



 


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北朝鮮の融和ムードのなかで医学界が考えておかねばならないこと :その2

2018-05-08 21:42:25 | 北朝鮮

北朝鮮の融和ムードのなか、我々医学界の人間もあの国の様子を、限られたソースではありますが、知ることのできる部分は知りましょうということで、概況のペーパー紹介。

  • 元データの信頼性に問題ありだが、国際機関の数字で検討。
  • 北朝鮮は、伝染性疾患と非伝染性疾患、二重の負荷に対応せまられている。
  • 乳児死亡率は千対26(韓国4)
  • 5歳未満死亡率は千対33(韓国5)
  • 死因別、
    伝染性疾患、栄養問題 29.1%(韓国6.1%)
    非伝染性疾患 65.1%(韓国82.3%)
    外傷5.8%(韓国11.6%)
  • 結核
    死亡率は減少を続けており韓国と変わらぬ水準、有病率は高水準
    2011年のデータで
    死亡率 人口10万対 6(韓国4)
    有病率 人口10万対 422(韓国149)
    発生率 同     345 (韓国100)
    結核の治療を受けられる人の割合は着実に増えてきており、治療成功率も高いものの、有病率の高さから、事の重大さに照らしてこの分野での援助が十分ではなく、拡大しつづけているといえる。したがって、依然として、結核による負担は重いといえる。

  • マラリアは減少傾向。2005年から年間1万例ベース。
  • 結核やマラリア以外の感染症も重荷になっている。
    肺炎や下痢をおこす感染症は小児の死亡原因になっており、また、学齢期の児童の1/3は寄生虫疾患をもっている。
    B型肝炎・性行為感染症も。
  • 予防接種接種率は先進国並みであると発表されているも、ワクチン保存のコールドチェーンの状況は不明であり、ワクチンが有効かどうかはわからない。
  • 感染症分野は国際支援の注目を集めやすい部分であり、改善が認められるものの、結核は、他の注目を集めにくい感染症ともども、依然として重荷になっている。
  • 非伝染性疾患。
    近年、発展途上国は従来の伝染性疾患や低栄養と並んで、非伝染性疾患も加わった二重の重荷に苦しんでいる。北朝鮮も例外ではなくい。WHOの2004年の調査によれば、驚くべきことに、心血管系疾患が韓国の3倍となっている。南東アジアでは北朝鮮は都市化がもっともすすみ、また、2006年には高齢社会になっている。
  • さらに個人レベルでも、喫煙や大量飲酒などの危険な行為も、WHOに同地域に分類される国々のなかでは最も多い。
  • また、小児期から成長期に経済危機の時代をおくった世代では、同世代の韓国人に比べて身長など明らかに差がでている。この世代にとって非伝染性疾患の負荷はさらに大きなものになろう。つまり、経済危機の以前から重荷であった非伝染性疾患は、経済危機の世代からさらに加速しているといえる。
  • 小児の低栄養。
    メディアやNGOの報告によれば、経済危機の時代に数十万人の子供が低栄養で亡くなっている。5歳未満の子供の32%は低栄養状態にあり、年齢があがるとさらに状況は悪くなる。19%の子供は低体重児。アフリカに近い数字。
  • 国内の地域間格差も激しく、特に北東部のRyanggang, North Hamgyong, South Hamgyong, Kangwon, and Jagang,で低栄養、低体重児ともに状況が悪い。一方で平壌では低栄養・低体重はRyanggangの半分。
  • 山間部にあるJagang, Ryanggang and North Hamgyongでは食糧安保の状況が悪く、国際援助も届きにくい。
論文中でも、北朝鮮に関しては信頼できるデータが得られないことが繰り返し述べられており、限界はあるものの、ある程度の状況は浮かんできます。今後、北朝鮮情勢の大転換があるとすれば、そして、ODA/NGOとしてなんらかの支援をしなければならないとなれば、
1.感染症分野では結核とマラリア だけれど
2.心血管系疾患の重荷、循環器内科や心血管外科の先生の出番多く
3.小児の低栄養・低体重等、小児科の先生も期待され
4.もちろん公衆衛生、保健師の役回りは大きく
5.主たる活躍フィールドは北東部山岳地帯にあり
ということになりそうです。 
 
「北朝鮮 国旗」の画像検索結果
 
ソース:なぜか(gooブログの機能のせいか)ncbi とかnihとか入っていると不正な文字列表示で、貼れなくなっています。URLがはじかれてしまいますので、元ソースにあたられる方は、タイトル「Overview of the Burden of Diseases in North Korea」でぐぐっていただければ、全文表示されます。
 
 J Prev Med Public Health. 2013 May; 46(3): 111–117.
Published online 2013 May 31. doi: 10.3961/jpmph.2013.46.3.111
PMCID: PMC3677063
PMID: 23766868
Overview of the Burden of Diseases in North Korea
Yo Han Lee,1 Seok-Jun Yoon,corresponding author2 Young Ae Kim,1 Ji Won Yeom,3 and In-Hwan Oh4

 

 

 

 
 

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グローバルファンドが北朝鮮の結核・マラリア支援を見合わせ

2018-05-07 00:44:17 | 北朝鮮

グローバルファンドが、北朝鮮の結核・マラリア対策への支援を中断報道。

  • 北朝鮮の結核有病率は513/人口10万あたりと、サブサハラ・アフリカをのぞけば突出しており、世界でもっとも影響をうけている30か国にも入っています。WHOは北朝鮮の結核死を5000人@2014年と見積もっており、これは韓国の5倍以上。
  • さらに多剤耐性結核(MDR-TB)も増加、治療薬へのアクセスも限られることから多剤耐性獲得もしやすくなります。
  • グローバルファンドはこの8年間に朝鮮に対して19万4千例のマラリア治療、230万張の蚊帳提供を提供してきましたが、これを停止。この支援規模はグローバルファンドとしては小規模ですが、北朝鮮に対して支援する国際組織として唯一なので影響は甚大。
  • これまでグローバルファンドが支援を停止した例としては、ウガンダで腐敗を理由としたものがあり。
  • 多くの国々では、結核の蔓延はHIV感染と結びついていますが、ここ北朝鮮では慢性的栄養不足、治療へのアクセスが無いことと結びついています。
  • マラリアについては北朝鮮は1970年代にはいったん撲滅できたものの、その後の経済停滞によってふたたび増加、2013年には21000例、2016年には5000例。人口の40%はマラリアに感染可能性のある地域に居住。
  • 細菌や媒介蚊は国境に無関心であり、それだけに中国など近隣諸国は神経をとがらせている状態。
  • 今回の措置はおそらく政治的。

う~ん、数少ない頼みの綱のグローバルファンドが支援停止となれば、雪解けムードに思い切り冷や水を浴びせることになります。将来、本当に雪解け→人の行き来が増えたとき、この2018年の措置の影響がどう出てくるか、懸念されます。

ワシントンポスト
https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2018/04/12/north-korea-has-a-big-tuberculosis-problem-its-about-to-get-worse/?utm_term=.252f511f166f

Bloomsberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-04-11/north-korea-s-other-weapon-is-poised-to-explode

 


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北朝鮮の融和ムードのなかで医学界が考えておかねばならないこと:その1

2018-04-30 12:17:43 | 北朝鮮

南北首脳会談につづいて、次は米朝首脳会談・・・ということで、北朝鮮をめぐる雰囲気は急展開しています。
こういうときの、変化は本当に本当に早いです。当管理人は、いまは誰もが変化を認めなびいているミャンマーに、定点観測に通う・・というテーマで科研費を頂戴したりしているわけですが、まあ、いったん舵を切られた国の変化というのは、そりゃあスゴイものですよ。ちょっと前の常識が通じなくなります。ミャンマーは、いまを去ること6年前の2011年までは、ちょうど昨年までの北朝鮮とおなじようなイメージの国でした。軍事政権が君臨し、スーチーさんを軟禁したりするから(それ以外にも色々あり)西側諸国は足並みそろえて経済制裁(これも北と同じですね)を続けていたものでした。それが2011年の軍事政権の終焉とともに、2012年頃からは経済界の「ミャンマー詣で」なる現象が生じ、リアルな投資ブーム、政府ODAによるインフラ整備、工業団地の整備といった奔流のさなかにあります。

軍事暗黒政権時代のミャンマーからいまのミャンマーを続けてみれば、これから10数年のあいだに北朝鮮に起こるであろうことをなんとなくイメージできます。ちなみにいまのミャンマーは、アウンサンスーチー氏と並立して軍もしっかり権力の一端をもっており(ミンアウンフライン将軍という軍トップの動向は、日本における統合幕僚長のそれの100倍ぐらい注目されている)まったく表舞台から退場しておりません。国会議員にも大量の軍人枠。北朝鮮だって現行の権力層は退場しないでしょうから、この点もミャンマーと同じになろうと思っています。

さて、以上は前置き、ここから本論、われわれ医学界はどうかかわることになるのか。
アジアのなかに、援助して国全体のレベル引上げに協力しなければならない国が出現したとき、そこには医療協力というものが必ずでてきます。国を代表する国立病院には技術支援として精鋭が送られる。ヒトもモノも。ミャンマーでいえば、ヤンゴン総合病院の新棟は別名JICA病院なんて呼ばれたりしています。日本の国際保健医療学会にゆけば、いまやミャンマー関連の演題があちらの会場、こちらの会場と発表されているのを見ることができます。

そしてワンテンポかツーテンポおいて、進出した日本人や西側の人間や現地富裕層を診る医療機関が必要になってきます。SOSインターナショナルやラッフルズのようなチェーンが日本の医師募集サイトに広告出したり・・

というわけで、北朝鮮の医療状況がいまどういう現状になっているのか、我々医療界も勉強はじめても良いのではと思います。かの国の当局から発表される数字がかなり恣意的であるというのは、何度か聞いてきたところではありますし、管理人自身、北京在勤中にたっぷり過労死しそうな位かかわった脱北者案件からも実感はされます。しかし、本当のところは神のみぞ知るである以上、まずは公式、WHO統計を紐解いてみるほかないでしょう。

まずは総論。
http://www.who.int/countries/prk/en/
人口2500万、平均余命は男女 67、74.
多くの項目でnot availableになっていて先が思いやられますが(苦笑)

なんといっても結核。
https://extranet.who.int/sree/Reports?op=Replet&name=/WHO_HQ_Reports/G2/PROD/EXT/TBCountryProfile&ISO2=KP&outtype=html

120,323例(!!)
うち医療受けられているのは87%(13%の結核感染者は放置!)
有病率は右肩上がりで上がる一方
年齢層では35-45歳、次いで45-54歳

結核については一般報道でもいろいろ。
この国には2つの最終兵器がある。ひとつはミサイル、もうひとつは結核・・・とか
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-04-11/north-korea-s-other-weapon-is-poised-to-explode
https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2018/04/12/north-korea-has-a-big-tuberculosis-problem-its-about-to-get-worse/?noredirect=on&utm_term=.387c5f164f66

もうひとつはマラリア問題
昨年2017年の4月頃、いく隻かの漁船漂着とともに、「体制崩壊で日本に大量の難民が!?」という論調が日本のメディアで盛り上がったことがありました。北京の脱北者案件でヘロヘロになった元医務官(苦笑)のところにもいく本かの取材を頂戴しマラリアについても聞かれたのですが、あの当時の私の答えは明確でした。ノープロブレムですと。「日本国領土内に」「蚊のシーズンではない4月に」あらわれたマラリア感染者から、どんどん拡散するかという問いに対する答弁としては、まあそうでしょう。(日本国内にもハマダラ蚊の棲息は確認されておりますから、8月ならちょっと違ったお答えになっていたかもしれませんが)

しかし、支援の一環として医療界の人間がかかわるということになれば、もちろん、上記答弁では通用しなくなります。
かの国のマラリアに関するWHO統計はこうです。


file:///C:/Users/katsuda/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/ZXJ1HK5V/profile_prk_en.pdf

DMZ近辺に・・・というのは耳にしてきたところでありますが、あらためて見直してみると、黄海南道、黄海北道、江原道あたりに中程度の色(1-10)がついているのがわかります。三日熱が100%。

蚊対策、マラリア支援ならスミスリン付き蚊帳をはじめノウハウが色々ありますから、JICA平壌事務所の専門家が腕を振るう・・・というのが〇年後の光景になるのでしょうか。

一方で「いまは大丈夫そうだけど、体制が変わって強権色が弱まるとかえってリスクが高まるもの」もあります。たとえば鳥インフルエンザ。管理人が北京在勤中の2004年か05年、北朝鮮で鳥インフルH5N1発生がありましたが、WHO北京の専門家はあまり心配したこと言ってなかったのを覚えています。まあ、それはそうで、強権体制では隔離、鳥市場の閉鎖、没収、流言対策、etc、確実なる履行が可能だったりします。しかしながら、人民が経済に目覚め、締め付けが弱まれば・・・ここは先進国のノウハウをしっかり入れるべきところでしょう。

メンタルヘルス。こちらはトラウマケアですね。脱北のみなさまが語られていたところでは、失敗すると(世間一般が勝手にイメージするような銃殺刑が即待っているわけではなく)中腰にならないと頭がつかえる真っ暗な地下室に収監されるのだそうです。つまり、我々が思ってるほど殺されない。おそらくは、トラウマを抱えたまま生きている方々は思われている以上い多いはずで、慢性的トラウマケア。これは大変ですが何から始めるか。PFAは妥当として、EMDRだなんだと受けてくれる専門家がいるのだろうか(ミャンマーと状況が違うかもしれない)。。。

 


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北朝鮮難民の検討始める厚労省のみなさんへエール

2017-11-14 14:24:49 | 北朝鮮

北朝鮮有事をにらんで、日本にかの国から難民が大量に流入したら・・・の検討を始めたと報道されています。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171113/k10011221271000.html

北朝鮮からの難民を想定 感染症対策検討へ 厚労省

かの国から脱出する方々といえば、北京在勤時に脱北者のお世話をたっぷり(あの時は過労死するかと思ったぜよ・・)させていただいた管理人から、研究班のみなさまへエールです。実際に万一のことが発生したら、当時の私と同じ思いをされるであろう現場の皆さまにも。

机の上だけで考えてものごと動かしたらエライ事になる。これだけは叩き込んでください。

1.彼らを扱う経験者から学ぼう。管理人も初動はカナダの医務官から情報もらった。
 たとえばWHO公式数字で人口10万あたり511と言う数字の結核罹患者。まず保護したら、真っ先にチェックすることは?(10ウン年前の北京なら胸部X線とツ反ということでしたが、それは現代に合わせるとして)。彼らを扱いなれて情報・データもってるのは中国衛生部(当時。今でいう国家衛生和計画生育委員会)。結核指定病床ではどう扱うの(手錠付きと手錠なしの入院光景とか)。

2.彼らを診療した経験者から学ぼう。
たとえば彼らが「私は心臓が捻じれるように痛いです」と言って(⇐通訳で直訳してもらうとこうなる)きたとき、何(病)を考える? 日本の医学部で教えてるとおりやったら、心エコーも心カテも、数か月先まで予約待ちの列になってしまうことでしょう(日本人の受診者はどうなる?)。
医薬品の投薬は? 分3×5日分を渡したら、何日でなくなるでしょう?服薬アドヒヤランスの概念が根本から異なります。 看護学部の人も薬学部の人も痛感するでしょう(というか、痛感じゃなくて、あらかじめノウハウを持っていないと大変なのですが)
ここらへんは 韓国ハナ院あたりにノウハウは蓄積しているでしょう。

3.本当の大変さはボディブローのように効いてくる
いざウン万人がわっとやって来たとして、当初は世間の注目のもと、アドレナリンいっぱい、DMATやDPATやNGOもワッと集まってくることでしょう。でも、1カ月後は3カ月後は6カ月後は? 何人に対してもベストを尽くすプログラム単一仕様の(多くの国のようにお金を払える払えないで対応を変えたりというプログラムがインプットされていない)日本の医療従事者、過労死が出るでしょう。計画で絶対に忘れちゃいけないのが、「急性期の次」。ロジスティックスの発想で。

まあ、奥歯にいっぱいものが挟まっていますが、ブログに書けるのはここまで。なにかございましたら。

J-ideo 第3号 P426~もご参照ください。


 

 

 


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北の国から飛翔体で忙しくなるのは感染症・渡航医学界隈かもしれない

2017-10-08 20:40:22 | 北朝鮮

北の国が飛ばす飛翔体。そこに載っているのは、核兵器や通常兵器だけではないかもしれない。生物兵器としての病原体もキープされているかもしれない・・・とBelfer Center for Science and International Affairs at the Harvard Kennedy School の報告。

  • 北の国が生物兵器を保持しているかどうか、その証拠はない。しかし、指導者が生物兵器に関心を示していることを示唆するサインはある。たとえば兵士に天然痘ワクチンを接種するなどの状況証拠はある。
  • 所持している可能性のある病原体は炭疽菌・ボツリヌス・コレラ・ハンタウイルス・ペスト・天然痘・チフス・黄熱・黄色ブドウ球菌・赤痢菌・T-2 mycotoxin 。
  • 最近の韓国政府発表によれば、北朝鮮は13種類の病原体を所持しており、10日以内に兵器化できる。なかでも天然痘と炭疽菌の可能性が高いとしている。

もっぱら核兵器の文脈で語られるかの国の問題ですが、ここにハーバードがあげた病原体の数々ということになれば、一挙に感染症・渡航医学界隈が忙しくなります。

感染症指定病院に入院勧告・・・なんて規模じゃなく対応は迫られるわけで、先日紹介した「結核有病率500/人口10万の国から10万人の難民が流入する試算」ともども、頭の片隅ではシュミレーションしておくべき話でしょう。

http://outbreaknewstoday.com/biological-weapons-north-korea-report-outlines-known-unknown-71409/

Biological weapons in North Korea: Report outlines what is known and unknown

October 7, 2017

 

https://www.belfercenter.org/sites/default/files/2017-10/NK%20Bioweapons%20final.pdf

North Korea’s
Biological Weapons
Program

 


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北朝鮮有事で渡航医学界隈が懸念しなければならないこと

2017-04-24 00:27:31 | 北朝鮮

ここのところメディアを騒がせている「北朝鮮有事」のあれやこれや。

我々、渡航医学界隈で真剣に懸念しなければならないことは何か。それはそれは一杯ありますが、今回は「結核感染者の大量流入とその医療体制」


管理人は前職、外務省医務官時代に脱北者のみなさんのお世話業務にかかわったこともあり、先日コメントの機会がありました(35分からのあたり)。スーダンやセネガルやコンゴの話みたいにあけっぴろげには話しにくいことも多く、少々奥歯にものも挟まっておりますがよろしければ。
https://www.youtube.com/watch?v=CYBw4x9aAF8

北朝鮮有事にてあの国が崩壊すると、日本に流入する難民が10万人~100万人発生するという試算があると聞きました(グーグル検索でもこれらの数字は出てくる)。100万人というのは、南北で戦争状態になりどちらも破壊というシナリオらしく、現実的には「から」の方、10万人の数字でしょうとも。

WHOの公式データを引っ張ってみると、
http://gamapserver.who.int/gho/interactive_charts/tb/cases/atlas.html

結核有病率 (人口10万対、2015年、WHO)
北朝鮮 561
日本  17
米国  3.2
とあります(日本の最新数字は14.4ですが、上記2015年で比較)

この数字と前述の流入予測10万人と組み合わせると、つまり、結核感染者が561例入ってくるだろうということになります。(10万÷561=178人にひとり結核感染者という計算にもなりますが、当時の実感は、これよりかなり多いのでは?と言う感じ。だから561人で済むか疑問もありますが、とりあえずここではWHOデータ採用で)このうち活動性はといえば、治療薬入手難(⇐病院でも医薬品がなく闇市場で・・とは、番組内で北朝鮮問題専門家が言っているところ)から相当なる割合にはなるでしょう。
さて、ある日一挙に561例の結核感染者が日本国領土に現れたとして、日本国領土内で適応される感染症法なる法律では、この疾患は2類感染症に分類され、また、入院勧告がなされ同意がえられなければ入院措置ということになっています。つまり、561例×(相当なる割合)=X床を強制入院させる感染症病床を「即座に」用意して、それを動かせる専門医・看護師を「即座に」確保しなければならないのが北朝鮮有事という事象に付随する現実なのですそしてそれ以上に強調するのが、これが何年も続くということ(野戦病院的テントでは続かない)という現実なのです。


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