新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

遺伝子変異論文の掲載にゴーサインが出たワケ

2012-04-02 23:27:17 | 議論沸騰

オランダチーム&河岡チームの、「H5N1ウイルスを遺伝子変異させフェレットに空気感染するウイルス作成」論文の掲載可否めぐるカンカンガクガクの結末。
 結局、掲載にゴーサインが出た・・・というのは今朝の朝刊各紙にひっそり報道されているところですが、日本の報道に載っていないところを補足。

  • 「河岡チームの論文を掲載公表してよろしい」というのは全会一致で承認。
  • 「オランダチームの論文を掲載公表してよろしい」というのは12対6でどうにか賛成多数で承認。
  • 今回の結論に至ったのには2つの大きな理由。
  • 第一に、専門家だけに情報を流通させ一般に対して扉を閉ざすというのは現行法体系では困難だということ。したがって「(全部を)掲載するか、一切掲載しないか」のどちらかしかあり得ない。
  • 第二に、世界中の研究者や公衆衛生当局者に聞き取りをおこなった結果、公表することが他の研究者の役にたち、かつ、自然界で起こりうる危険な変異を予測するのに有用であると結論、利益がリスクを上回ると。
  • 出版界は歓迎。

危ない橋を渡り終えたといったところでしょうか。ともあれ、次のステップを期待したいです。

ソースは3月30日付health blog↓
http://blogs.wsj.com/health/2012/03/30/bird-flu-research-gets-u-s-panels-green-light-for-publication/

Bird-Flu Research Gets U.S. Panel’s Green Light for Publication


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インフルエンザ遺伝子変異論文の研究室内部の動画を見れるサイト(abc)

2012-02-20 09:53:26 | 議論沸騰

遺伝子変異論文掲載問題、昨年秋頃から最初に話題に上がったのがオランダ エラスムスのFocher氏のチーム。そのラボ内部に取材が入り、abcにアップされています。

実際にクリックしてご覧ください↓
http://abcnews.go.com/WNT/video/bird-flu-pandemic-virus-mutates-researchers-new-information-deadly-health-15745084

おもなみどころ

  • Foucher氏インタビュー。ラボに招き入れられる記者(着かえているが、完全防備姿ではない。見せてもらえたのは限定的な範囲?)。
  • WHO会議(映っている参加者はオブザーバー含め30名)
  • ”宇宙服”での実験シーン(レベル4エリア?)
  • フェレットに空気感染実験のセッティング

といったあたりでしょうか。

なお、映像はそのままにしておくと、次々別ニュースにかわってゆきます。

 

 


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鳥インフル遺伝子変異論文掲載問題は収束へ・・・

2012-02-18 11:05:02 | 議論沸騰

H5N1遺伝子変異論文の掲載をめぐる侃侃諤々、WHO会議終了。
いくつか色々な報道があるようですが、共同通信の日本語報道。
この報道のとおりになってくれれば良いですね(収束に向かうみこみ)。

http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012021801001153.html

***************************************
(以下コピペ)

【ジュネーブ共同】米政府が生物テロへの懸念を理由に日欧の科学者による鳥インフルエンザ研究論文の一部削除を求めた問題で、世界保健機関(WHO)は17日、ジュネーブで開かれた国際会議で、論文を全文掲載すべきだとの勧告を全会一致で決めた。

 米代表も同調した勧告が研究推進を重視したことで、論文削除問題は収束に向かいそうだ。

 一方で、研究成果を共有するためにはウイルスの管理体制を確立し、安全性を一般に周知させる必要があるとの見解でも一致。WHOは管理強化について早急に各加盟国に伝える見通し。

 また、研究とテロ対策の兼ね合いについて話し合うため、加盟国代表なども含めた国際会議を6月にも開く予定。


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遺伝子変異論文、全文掲載しないとワクチン製造に深刻な影響

2012-02-17 16:36:34 | 議論沸騰

遺伝子変異研究の論文掲載めぐるディスカッション、WHO調停会議も終わった模様で論評。全文掲載は、ワクチン開発のうえで必要不可欠であると。

  • H5N1の遺伝子を数カ所変異させれば、フェレット感染しやすいウイルスが作成できたと、オランダチームおよび河岡氏発表に対し、論文の全面掲載に米セキュリテュイ当局から待ったがかかっている。
  • この、科学者側とバイオセキュリティ当局とのディスカッションは暗礁に乗り上げており、今回、WHOが調停に乗り出し「クローズド(非公開)」で会議がおこjなわれた。しかし結論先送りになった模様。
  • 医学誌編集者側は「あくまでも(検閲を排し)全文掲載するのが我々のデフォルト」と主張。サイエンス誌Albert氏は、完全な姿で発行すべきというのが我々の立場と。Dr Alberts said: 'Our position is we have to publish in complete form.'
  • 科学者が良いことをするのにいくら制限をかけても、悪者が悪いことをするのを阻止することはできない(←管理人的にはこの部分とても共感)。
  • 遺伝子のどの部分をどう変異させるのか、公表することはワクチン製造のためにも不可欠。

 

管理人としては、この論争、どう考えても双方満足して妥協しようもなく、神学論争化してゆくしかないと思います。現実になんとかしなければならないわけですが、政治的力学でどちらか強い方が大きな部分をとって決着ということなのでしょう、最終的には。
WHOの非公開会議で相当激しい応酬がなされたであろうことは容易に想像できます。 ともあれ、「全文掲載しなければワクチン開発に深刻な影響(検閲を許したら、人類の犠牲が増える)」という主張は一定の説得力をもちますね。

ソースはmail online↓
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2101437/Editor-science-journal-says-ready-publish-details-lethal-man-flu-complete-form.html?ito=feeds-newsxml
WHO delays hugely significant decision on whether to publish details of lethal man-made flu that could kill half the people it infects



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君はインフル研究者の主流じゃない!(大荒れの遺伝子変異研究パネル@NY)

2012-02-04 17:25:01 | 議論沸騰

「遺伝子変異を論文発表したらテロリスト悪用(かも)論争」の続き。

ニューヨークアカデミー科学アカデミーのパネルディスカッションが開催されるも、大荒れ模様。

  • エラスムスチームと河岡チームの実験室内変異ウイルス。フェレット感染→ヒト感染可能性で、これを論文掲載すべきかどうかのカンカンガクガクの続き。
  • パネルは最初から荒れ模様で怒号飛び交う阿鼻叫喚(shouting match)の世界に。
  • Michael Osterholm,(肩書きはdirector of the Center for Infectious Disease Research and Policy at the University of Minnesota in Minneapolis and a member of the National Science Advisory Board for Biosecurity (NSABB))は、マウントサイナイ病院Peter Paleseの最近の論文を指して「プロパガンダ」だと決めつけ。
  • そして、Pulse氏が座っていた席を指し「お前はインフル研究の主流じゃなかろうが!(“You are not in the mainstream of influenzologists.”)」と一喝。
  • Palse氏の論文では、NSABB側の懸念(テロリスト云々)は度が過ぎていると論じている。

  • また、天然痘になぞらえた議論も。天然痘が研究施設からもれ出す事態は見たくもないが、しかし、万一それが発生したとしても迅速に関係者にワクチン接種をおこなえば食い止めることはできる。しかしインフルエンザはあっという間に拡がってしまうと。

  • サイエンスとネイチャーの編集者も出席。方法の部分(主要部分)を削った状態で、どうやって載せられるのか引き続き検討していると。



    う~ん。この論争、理性的レベルを逸して神学論争化してゆくのでしょうか。パネルで怒鳴りあい、そのうち”人格を否定する発言”までお互い飛び交うようになってゆくのか・・・あの国のことですので弁護士もウハウハと参戦してくるのかな。

    世界で炎上している割には(河岡氏も巻き込まれている割には)日本ではあまり盛り上がりませんね。朝日の特集ぐらいは目撃しましたが、続いていないし・・・


    ソースは2月3日付Scientific American↓

    http://blogs.scientificamerican.com/observations/2012/02/03/schism-over-h5n1-avian-flu-research-leaks-out/

    Schism over H5N1 Avian Flu Research Leaks Out

     


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