ヒッキーはつむじ風!!

ヒッキーが観て気に入った映画を、ブログで紹介します。

「誰も知らない」

2020-09-23 09:12:53 | Weblog
                     「誰も知らない」 

2004年公開の作品。
是枝監督の作品で、初めて観たのがこの映画です。

劇場公開時は、ポスターは見たことあったんですが、スルーしていて、タイトルもよく知らなかった本作。

観ることになったきっかけは、昨年の秋頃、知人と映画の話になった時に、「日本映画で今まで観た中で、この1本!というのをを選ぶとしたら?」という話題になった時に、知人が選んだのがこの「誰も知らない」でした(ちなみに私は「砂の器」を挙げました)。

「誰も知らない」のことは、しばらく映画から離れていたせいもあって、本当に知らなかったので、「??」状態でしたが、あらすじを聞くと、なかなか良さそうだったのと、「この1本」で選ばれた映画を、恥ずかしながら自分が全く知らなかったので、逆に興味が湧いて、観てみることにいたしました。。。

ちょい、あらすじ・・・。

主人公の少年・明(柳楽優弥)と母親のけい子(YOU)が、とあるアパートへ、引っ越してくる。
近隣へ挨拶する2人であったが、実は引っ越してきたのはこの2人だけではなかった。
荷物のトランクの中から、次男の茂(木村飛影)と、次女のゆき(清水萌々子)が出てくる。
最寄駅の駅前に明は長女の京子(北浦愛)をこっそり迎えにゆく。
けい子の子供は、実は4人いたのである。。。

この家族のルールは、大きな声を出さない。明以外の3人は外やベランダには出ない・・・。
あくまでも、けい子と明の2人だけが住んでいることにする、父親は長期出張でいない、ことにするのだった。。。


この後に作られることになる「万引き家族」もそうなのですが、この「誰も知らない」も、実際に起きた事件を元に作られているとのこと。


茂やゆきが、トランクの中から次々と出てくるシーンは、画面の色合いや、カット割り、および演出などのせいか、ドキュメンタリーの一場面を見ているかのような感覚になります。
リアリティという点で、是枝監督の意図した方法なのだと思われます。

引越ししたばかりの頃の、けい子と子供4人の食事のシーンがあるのですが、ホントに演技とは思えない、アドリブの応酬のような感じがします。
特に次男・茂を演じた木村飛影くんは、家族一の“騒がしやさん”を、これが地なのか何なのか、とても上手く演じています。

この4人の兄弟は、学校には行かせてもらえない状況でした。このあたりのシチュエーションも「万引き家族」と重なるところです。
母親のけい子は言います。学校なんか出なくても、立派になった人は沢山いる。。。

ベランダで、母親のけい子が明に「お母さん、今、好きな人がいるの」ともらすと、明が「またぁ・・。」とぼやくシーンがあります。

そうです、この4人の兄弟姉妹は、それぞれ父親が違うのでした・・。

そしてほどなく、母親のけい子が、現金を幾ばくか置いて、姿を消します。

その後一度だけ戻ってきて、以降、けい子は本当に帰って来なくなってしまいます。“影に男あり”です。

子供4人のサバイバル生活が、始まります。

光熱費、家賃、食費・・・長男の明がなんとか切り盛りしますが、母親が置いていった幾ばくかのお金では、そう長くはもちません・・。

明が、男親たちを訪ねるシークエンスがありますが、もらえたのは、たったの数千円と「ゆきちゃんは、俺の子供じゃないぞ、あのときはちゃんと避妊してたからな」のような無責任な言葉でした。
私を含め、こーゆーとき、男って、ダメなのね・・(T_T)

そしてそのうち、ガス、電気、水道までが、止められてしまいます・・。

まさに「息もつまる」状態。

兄弟のあいだにも、ストレスが溜まっていきます。明が、茂にキレて怒鳴りつける一幕も・・。

しかし、こういう苦しいシチュエーションに置かれても、明くんは色々、生きていく術を探して、実行してゆくから、バイタリティあるなぁ!と、思いました。

洗濯や、お風呂がわりに身体を洗うのは、公園の水道を使い、食べ物は、いつも立ち寄っているコンビニの裏口で、賞味期限切れのものを、店員のお兄さん(加瀬亮)からこっそりもらったり。。。飲み水は同じく公園の水道からペットボトルに入れて、アパートへ持ち帰り、電気の通じていない冷蔵庫に保管します。。。

陰湿なイジメにあい、学校へ通えなくなった高校生・紗希(韓英恵)が、ひょんなことから、明たちと交流することになります。
紗希も、明たちも、理由は異なれど、同じ「学校へ通えない」という点で、何か通ずるものがあったのかもしれません。


しかし、このような状態になったら、普通は、区役所や福祉事務所もしくは警察などに助けを求めるのが、常道だと思うのですが、明くんは、そういうところに行くと、「兄弟4人一緒に住めなくなる」という理由で、行かずに、4人でなんとかしよう、と頑張るのです(T_T)

末っ子のゆきちゃんが、自分の誕生日だから、お母さん絶対戻ってくる、と言ってきかないシーンがあります。
明くんが、夜の道を駅まで、ゆきを連れて行き、戻る途中で、夜空を走る羽田空港行きのモノレールを見上げるシーンが印象的です。
明くんはゆきちゃんに、「あれは羽田空港まで行くんだ。ゆきも今度モノレール乗って、飛行機見に行こうな」と。。。

コンビニの店員さんで、明を、万引きの容疑から救ってくれて、それ以降も要所要所で明たちのことを気にかけてくれた女性(タテタカコ)の存在も忘れることができません。


物語は、終盤で悲しい別れが訪れます。
事実としては、やるせない気持ちになってしまいます。。。
しかし、それからもまた、明くんたちの生活は続きます。。。

この作品を「この一本」で薦めてくれた知人の、どれ程まで私はこの映画を理解出来たかは、わかりませんが、新たな映像表現のスタイルと、新しいメッセージの発信のしかたを、知るきっかけになったのではないかと思います。

今後も是枝監督の作品で未見のものを、観ていきたいと思っております。。。





ヒッキー的満足度★★★★







つらい腰痛・肩こり・頭痛など、スタッフが全力でサポートします。
癒しの森整体院
丸ノ内線 新中野駅 徒歩3分















「万引き家族」

2020-09-15 14:51:38 | Weblog
                       「万引き家族」


是枝監督の作品を観るのは「誰も知らない」に続き、2作目。

本作が国内外で高い評価を得て、数々の賞を受賞しているのは知っていたので、観る側としては、ちょっとハードルが高くなってしまうのは、いたし方なし。

ちょい、あらすじ。。。

柴田治(リリー・フランキー)と、その妻の信代(安藤サクラ)、信代の妹(?)である亜紀(松岡茉優)、治と信代の息子のような(?)男の子・祥太(城桧吏)、そして治の母(?)である初江(樹木希林)。この5人は、下町のビルとビルの間に取り残された、廃屋のような一軒家に住んでいる。。。

一家は治の日雇いの仕事と、信代のクリーニング店での仕事、初江の年金、そして・・・治と祥太がタッグを組んで行う「万引き」で生計を立てていた。。。

お世辞にも豊かとは言い難い家計だったが、何故かいつも温かい空気がこの家族を包んでいた。。。

そんなある寒い夜、万引きを無事に(?)終えた治と祥太が歩いていると、とあるアパートの階段の下で、ひとりの少女(佐々木みゆ)が震えているのを見つける。。。


取るものとりあえず、厳寒の中、見捨てていくわけにもいかず、治と祥太は、少女を家に連れてくることに。。。

最初は、すぐ帰さないと、誘拐になっちゃうよと言っていた信代は、食事のあと眠った少女を背負って、治と一緒に、少女がいたアパートに近づくと、その部屋からはDVと思われる男女の諍う大声が聞こえてきた・・・。


この作品は、実際にあった事件を元に、作られているとのこと。

リリー・フランキーが、イイっす。
ちょっと頼りなさげで、ちょっとおしゃべりで、実はちょっと優しい、治のキャラクターを、ちょっと巻き舌で、上手く演じています。
彼の出演作は「ぐるりのこと」しか観たことないんですが、本作の治役はとてもイイっす。
もっと最優秀主演男優賞とかもらってもいいのになぁ、と思いました。

そして、安藤サクラ。イイですね(^^♪
彼女の出演作は「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「俺たちに明日はないッス」くらいしか観たことないのですが(朝ドラもあまり見ていませんで、失礼いたしました(T_T))、彼女の持ってるタイム感というか、演技なのか素なのか判らないような空気みたいなものが、この作品にハマっていました。


樹木希林さん演ずる初江も、存在感たっぷりです。
パチンコ屋で隣の席の人のパチンコ玉を箱ごとくすねたり、亡き夫と後妻との間にできた息子夫婦を、夫の月命日に訪ねては、お金を貰ったり、それとなく初江の転居を勧めに来る、元地上げ屋には「あたしがここ出ると、あんたいくら貰えんだ?」と、ドスの利いた声で尋ねたり・・・なかなかタフなキャラクターです。。。

松岡茉優が、信代の腹違いの妹という設定で、亜紀という風俗店で働く女の子を演じているのですが、ワタシこのレビューを書くまで、彼女が「蜜蜂と遠雷」の栄伝亜夜を演じていた女優さんだということに、恥ずかしながら気が付きませんでした(+o+)失礼いたしました(汗)!
「蜜蜂と~・・」のレビューにも書いたのですが、栄伝亜夜役の時は、正直、自分的にはちょっとしっくりこなかったのですが、本作の亜紀役はとても魅力的です(^^♪
ストーリー半ばで、お店でよく来てくれる4番さん(池松壮亮)にひざ枕するシーンがありますが、彼を抱きしめた時に、その優しさと温もりが伝わって来るようでした。泣けます(T_T)


ストーリーでは連れてきた女の子に「りん」と名付けて、一緒に暮らすことになるのですが、このりんは、どうやら自宅でDVを受けていたと思われるやけどの跡などが・・。

この、りんを演じた佐々木みゆの表現力には驚きです。
オーバーな表情の変化は見せないのですが、ふっと、不安になったとき、あるいは何かを、思い出しているとき、ふっとその表情が微妙に変わる・・。

かつて「クレイマー、クレイマー」という映画で、父(ダスティン・ホフマン)と母(メリル・ストリープ)の親権争いのはざまに置かれた少年・ビリーを演じたジャスティン・ヘンリーが、ホフマンをして「小さなマーロン・ブランド」と言わしめて高い評価を得ましたが、本作の佐々木みゆの演技はそれに匹敵するものがあるのでは、と、思いました。
演出する側も、どうやって演出したんだろう??


治とタッグを組んで、飄々とポーカーフェイスで万引きをやってのける、城桧吏演ずる祥太。「家で勉強できない奴が、学校へ行くんだ」と、クールに言ってのけますが、思春期が近いのか、万引きをすることに、徐々に疑問を持つようになっていきます。。。


近所の駄菓子屋で、りんが、いつもの祥太の真似をして万引きをすると、後ろから店主(柄本明)が祥太に声をかけるシーンが印象的です。人の温かみに触れる一幕です。

ストーリーは初江が亡くなって、急速に進展してゆきます。火葬する費用もないので、庭に穴を掘って埋めたのですが・・・。

祥太が万引きで逃走中に脚を骨折し、警察が介入してきて、すべてがバレてしまいます。
治と信代の関係も、祥太のことも、りんのことも・・・。

取調べ室での信代と警察官(池脇千鶴)とのやりとりに、この映画のフォーカスが合っているような気がしました。

治と祥太の二人が訪ねた、刑務所の面会室での信代の笑顔が、どこか清々しくて、とても印象的でした。

そして、親の元に戻され、一人遊びをしていて、ふと遠くを見つめた、りんは何をつぶやいたのでしょうか。。。




ヒッキー的満足度★★★★☆






つらい腰痛・肩こり・頭痛など、スタッフが全力でサポートします。
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「がんばって いきまっしょい」再び・・・

2020-09-02 05:42:08 | Weblog
                      「がんばって いきまっしょい」


敷村良子さんの原作を読む機会があり、映画もDVDを購入して、久しぶりに観てみました。

前の記事と重複するところあるので、お許しを・・。

この映画は、愛媛県・松山市が舞台になっています。
伊予東高のボート部でのエピソードを描いているのですが、モデルとなったのは、原作者の敷村さんが卒業した松山東高であるとのこと。原作では松山東高のまま登場します。

ちょい、あらすじ・・・。

主人公である悦子(田中麗奈)は、東高の合格発表があっても、これからどういう風になっていくのか、リアリティのないまま。「家出」と称し、海へやってくる。防波堤に座り、海を眺めていると、どこかの学校のボートが通り過ぎる。。。悦子とボートとの出会いであった。

このあと悦子は、学校のボート部の勧誘に、入部したい旨を伝えるが、女子の部は無いんじゃ、と先輩は申し訳なさそうに。。。
それでも諦めきれない悦子はひらめく。
無かったら、作ればええんじゃ!

顧問の先生が言うには、女子ボートであるのは、漕ぎ手4人、舵をとるコックス1人、という編成の「ナックル・フォア」という競技だけ。最低あと4人が必要だった。。。


そこから悦子の部員勧誘が始まるのですが、ここで出てくる、学生たちが学校帰りに寄るお店が、喫茶店ではなく「鍋焼きうどん」屋さんというのが何度見ても新鮮な驚きです。しかも、このシーンで悦子は鍋焼きうどんをおかわりする様子が描かれています(別におかわりしてもいいのですが)。舞台設定が1976年なので、この頃そういう学生文化があった(今でもあるのかな?)のでしょうね。とても興味深いシーンの一つです。

そしてなんとか集めた部員で、女子ボート部がスタートするのですが、そこで思いがけず、保育園の頃からの幼馴染で「天敵」である男子、関野ブー(松尾政寿)と遭遇します。入学したときにすでに見かけてはいたのですが、小さい頃太っていたブーは、カッコイイ青年になっていました。。。

この映画は、物語の時代設定が1970年代中盤から後半あたりの高校生ということで、私より少しお兄さん、お姉さんたちのお話で、前にも書いたのですが、「ベルばら」や「共通一次」など、懐かしい言葉が随所に出てきて、映画「世界の中心で愛をさけぶ」でもそうだったのですが、なにかあの頃にタイム・リープしているような気分にさせてくれます。

悦子役の田中麗奈は、勝気で一本気それでいて純粋なキャラクターを感情豊かに演じて、はまり役でした。公開された年のいろんな賞をもらったのも頷けます。

集まった部員である、ダッコ(真野きりな)、ヒメ(清水真実)、リー(葵若菜)、そしてイモッチ(久積絵夢)、それぞれもキャラクターが立っていて、素敵でした。

落ち着いていて優しい感じのリーは、合宿で料理をしながら身の上を悦子に伝えます。

コックス担当である小柄なヒメの「スパート!」の絶叫は、レースの緊迫感をいやが上にも煽ります。

ちょっとズレているイモッチと、クールなダッコとの掛け合いは、漫才を見ているようで、ストーリーに朗らかな笑いをあたえてくれます。

ストーリー途中から、中嶋朋子演ずる入江コーチが登場します。全日本選手権に出場経験のある元コックスという設定で。
このキャラクターは、実は原作には出てきません。この映画のためのキャラクターだと思います(原作でもコーチは登場しますが、別のキャラクターです)。
中嶋朋子が、気だるく、どことなくやる気のないコーチ役を好演しています。

悦子が貧血で倒れたあと、関野ブーが帰り道を、悦子を自転車の後ろに乗せて帰るシーンが印象的です。
今ではとんと見かけなくなった、自転車の二人乗り。かつての、青春の必須アイテムかも知れません(^^♪

そしてこの作品の魅力を高めているものの一つに、ストーリー随所に流れる音楽、その中でも、リーチェ(with penguins)というアーティストが歌う英詞の曲「オギヨディオラ」があります。
この歌は、悦子、ダッコ、ヒメ、リー、イモッチたちが駆け抜けた時代と、今の時代との時の隔たりを、いい意味で、ノスタルジックに観る者に感じさせてくれます。とても素敵な歌です。
“オギヨディオラ”とは、韓国の言葉で、船頭さんが船を漕ぐときの、かけ声なんだそうです。。。

この映画を観ると、まるでこのストーリーを主人公たちといっしょに過ごしたような、気持ちになります。
いつか機会があったら、松山を訪れてみたいと、思っております。
鍋焼きうどん屋さん、まだあるかな。。。(^^♪





ヒッキー的満足度★★★★☆






つらい腰痛・肩こり・頭痛など、スタッフが全力でサポートします。
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