ヒッキーはつむじ風!!

ヒッキーが観て気に入った映画を、ブログで紹介します。

「ザ・ウォーカー」

2010-06-30 20:21:46 | Weblog
                              「ザ・ウォーカー」
ユナイテッドシネマ豊島園にて。
監督・アレン&アルバート・ヒューズ

その名の通り、「歩く」映画でしたな(^^♪。
歩くといっても「夜のピクニック」は一晩だけでしたが(笑)こちらは何と30年以上歩き続けている男“ウォーカー”(デンゼル・ワシントン)が主人公です。

戦争で全世界が滅亡し、僅か残った人々が散在するアメリカを、その“ウォーカー”は、1冊の「本」を持ち、ひたすら「西へ、西へ・・・」歩き続けるのであります・・。

ということは、その“ウォーカー”は元はすいぶん東に住んでいたんでしょうな(苦笑)。
まぁ、それはいいとして(^^♪、

本作でまず、いいな~と感じたのが、映像の色調なのですが、ストーリー全般を通して、「カラーなんだけども何となくセピア色がかった色調」なのですよ。
この、独特の色調が、「最終戦争で全世界が滅亡した後」という設定に「それっぽさ」を与えていると感じましたな。

“ウォーカー”とくもすけ(って今時言わないか、しかもアメリカだもんね(苦笑)たちとのバトルは、「これ絶対日本の時代劇の殺陣だよ!」って思わず叫びそうになっちゃいました!カッコよかったなぁ・・。「寄らば斬る!」の世界でした。

独裁者カーネギー(ゲイリー・オールドマン)が仕切る街での銃撃戦は西部劇さながらでしたが、何と言ってもマーサおばあちゃん(フランシス・デ・ラ・トゥーア)とジョージおじいちゃん(マイケル・ガンボン)の家での顛末は思いもかけず笑わせていただきました(^^♪。

ソラーラ役のミラ・クニス、素敵な女優さんですね。サングラスが良く似合います。
盲目のクローディア役のジェニファー・ビールス、私にとっては久しぶりでした。

その“ウォーカー”の持っている1冊の本をめぐって争いが起きてゆき、ついにはその「聖書」はカーネギーの手に渡ってしまうのですが・・。

この作品は、キリスト教圏(というかキリスト教徒)の方たちが観ると、そうでない私などには解らない深い感動があるのでは・・と思いました。

そういった意味深長な面を持ち合わせているので、銃撃戦やサーベルでの殺陣はありますが、いわゆる「アクション大作」にはなっていないし、作り手の狙いもアクションにフォーカスを合わせている訳ではないと、私は思いました。
しかしデンゼル・ワシントンの殺陣はカッコよかったです(^^♪。



ひきばっち的満足度★★★☆




「告白」

2010-06-29 08:29:39 | Weblog
                                 「告白」
ユナイテッドシネマ豊島園にて。
原作・湊かなえ
監督・中島哲也

かなり物議をかもしている本作をやっと観て参りました。

私は「原作既読」だと、ダメなのかもしれません(T_T)。本作も原作は読んだことがありました。
「原作既読」で“ダメ”と、大雑把な表現をしたのは、以前公開された「ゼロの焦点」の時は、原作を何度も読んだことがあったので、映画と原作の「ズレ」が気になってしまい、個人的に“ダメ”だった訳ですが・・。

本作ではどちらかといえば逆でした。
原作の感覚が見事にスクリーンで蘇り(それ以上かも)ました。

「ルナシー」に影響されている女子生徒と少年Aとのくだりは、かなり前に読んだことと、原作を人にあげてしまったので、正確に確認は出来ませんが、
その他のエピソードはほぼ原作のイメージ通りに出来ていたのではないでしょうか。

かなり前、「告白」が映画化されると聴いて「えっ!・・。」言葉を失いました。
この小説を映画にしてしまうのか・・・。ゾッとするとはあんな感じでしょうか・・。

原作を読み終えた時点で、よもやこの小説を映像化するなど考えも及びませんでしたので、驚きとともに、どうアレンジするのだろう・・・と、想像もつかなかったくらいです。
たしかに原作は、本をあまり読まない私ですらグイグイ引き込まれる小説でした。
それだけに、「映像化」は・・・ええっ!マジで!?って感じでしたよ。

「嫌われ松子の一生」「下妻物語」の中島監督だから、もしかしたら思いっきしコメディにするとか・・・。あらぬ期待をしてしまいましたが、
ほぼ原作のイメージを忠実に・・・でしたね。



ひきばっち的満足度★★☆




「Flowersーフラワーズー」

2010-06-23 17:50:43 | Weblog
                            「Flowersーフラワーズー」
ユナイテッドシネマ豊島園にて。
企画・製作総指揮・大貫卓也
監督・小泉徳宏

蒼井優、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、鈴木京香、広末涼子、という日本を代表する(?)6人の女優さんが織成す“命”の系譜・・。

ネタバレありますのでご注意を・・。
冒頭、白黒の画面に、蒼井優さん演ずるが登場します・・。昭和11年の桜の季節です。
この「凛さん」からの命の系譜を、時代が行きつ戻りつしながら辿ってゆく、そんな作品でした。

この映画は、企画・製作総指揮の大貫卓也さんが「日本の女性のために」作られた作品だということで、確かに、男の私が観るのでは、おそらく女性の方がご覧になって感じるニュアンスの半分もワカラナイのだろうなぁ、と思いました・・。

劇中では、凛さんのエピソードの次にいきなり平成21年の(鈴木京香)と(広末涼子)の姉妹の時代にお話が飛ぶのですが・・。

奏がとった田舎の父(平田満)からの電話は・・おばあちゃんが、いよいよいけないみたいだ・・。

この辺りで、もしかすると、おばあちゃんというのは、「凛さん」なのでは・・という予想はついてきますが・・。

エンドロールの「写真」を見て、ようやく合点がいったので、一人で頷いてしまいましたが(しかし、パーマネントを当てた姿で3人の娘と写真に写っている蒼井優さんは、見事に“昭和の母親”のオーラを放っていました!)、凛さんの娘は三人でしたね。事故で夫(大沢たかお)を亡くした悲しみから、少しずつ立ち直ってゆく長女・を演じたのは竹内結子さん。

勝気でいわゆる“ウーマン・リブ”の走り、でもその実はたおやかな女心を持つ次女・を演じたのは田中麗奈さん。

そして奏と佳の母親であり、佳を産んだときに亡くなってしまう三女・を演じたのは仲間由紀恵さんでした・・。このエピソードは私もしんみりしてしまいました・・。

この映画の見所の一つとして、「それぞれの時代に使われていた画面の色彩や音響、髪型やファッションなど」があります。凛さんの登場シーンはモノクロの画面にモノラルの音声。題字「Flowers」の出し方も、何となくその時代を感じさせてくれます。

薫や翠が登場する昭和30年代後半~40年代中盤は、「黄色」が際立つ独特の映像で、私も懐かしさを感じてしまいました。何なんでしょうかね。使っているフィルムのメーカーとかの違いなんですかね。総天然色って感じですね(笑)。翠がうさ晴らしに行くのは<トリスバー「裏窓」>(笑)。飲んでいるのは近頃あまり飲む機会がなくなった「水割り」「ハイボール」!

昭和52年に登場する慧の着ているセーターの柄が何とも懐かしさを覚えます。映像の色は温かみがありますね。岩崎宏美懐かしいっす(^^♪!

そして奏と佳が登場する平成21年はどうなんでしょう??。今っぽいですね(当たり前だ(笑)。映画にもよるんでしょうけれども。音楽はいきなりジャズが流れていました。

そんな楽しみ方をした私でしたが、エンドロールが終わり明るくなると、ハンカチで涙を押さえる女性がたくさんいらっしゃって、やはり、そうなのだろう(なにがそうなのだ!)なぁ・・と、思う次第でした・・。



ひきばっち的満足度★★★



「アウトレイジ」

2010-06-19 13:42:18 | Weblog
                               「アウトレイジ」
ユナイテッドシネマ豊島園にて。
監督・北野武
音楽・鈴木慶一

OUTRAGE=非道<無法、乱暴>、憤慨させる、法を犯す・・・。
まぁ、そんな感じの映画でしたね(笑)

しかし、こういう教育上よろしくないバイオレンス・ムービーなんですが、正直なところ、私すごく楽しんで観てしまいました!!

元々ハード・ボイルド系(?)は大好きなので(この作品がハード・ボイルドか否かという話は置いておいて)、冒頭のシーンからビリビリ来てしまいました・・・!

オープニングから黒いネクタイの男、男、男・・・まぁよくこれだけコワそうな若い衆を集めたものだ・・と感心してしまいました!

物語りとしては非常にオーソドックスというか、「暴力団の内部抗争」を骨子にストーリーが進んでゆくのですが、その面々を見てみると、
北村総一郎、三浦友和、國村隼、杉本哲太、ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、石橋蓮司、中野英雄、塚本高史・・。
これだけのツワモノたちが一堂に会して抗争を始めるのですから、難しい芸術論はさておき
、私にとっては面白くないわけがない!

なかでも、山王会大友組組員・石原を演じた加瀬亮の“カミソリ”のようなカッコよさには男ながら惚れボレしてしまひました・・!オレも生まれ変わったら加瀬亮になりたい(笑)!

大友組若頭・水野を演じた椎名桔平もカッコイイっす!不敵な笑みがたまらないっす。
ラーメン屋に入っていくシーンがあるのですが、桔平さん怖いから!

ストーリーにコミカルな味わいを与えているのが山王会村瀬組組長・村瀬を演じた石橋蓮司さんでございます(^^♪
蓮司さんはスゴい役者さんですな。普通にしていると充分コワい(失礼)のに、困惑している演技をするとなにかとてもユーモラスで、この作品の緩衝剤の役割を果たしているのですよ。
しかし石橋蓮司さんを見ると、どうしても“おかまの文ちゃん”「今度は愛妻家」より)を思い浮かべてしまうのは私だけでせうか??

山王会池本組若頭・小沢を演じた杉本哲太さんは貫禄、威圧感、そして頭のキレ、全てを表現して見事でした。以前から(「おくりびと」よりもっと前からかなぁ)しっかりした演技をする、わたしのとっても好きな俳優さんです。

大友組組長・大友(ビートたけし)に小判鮫のように取り付き、裏で金をもらっている悪徳刑事・片岡を演じた小日向文世さんも、彼独特の粘着質的で軽薄な笑顔(ホメているんですよ!)と、その裏に見え隠れする凶暴な顔を演じ分けて小気味良かったです!小日向さんは演ずる役の振り幅がとても広いですね~。
私が憶えているだけでも、「7月24日通りのクリスマス」では優しい喫茶店のマスター(中谷美紀演ずる主人公のお父さん役でした)を、周防監督の「それでもボクはやってない」では主人公(加瀬亮)側の発言をにべも無く却下する事務的で体制的な裁判官を。そして今年公開された山田洋次監督の「おとうと」では人間味溢れるホスピスの館長を・・そして今回は悪徳刑事・・・改めてスゴい俳優さんだと思いました。

さて、肝心の本作については・・まぁ、暴力団の間でちょっとしたことで内輪もめが始まり、最初は若い組員の指で済ます予定が、実はトップの方は傘下の弱小組同士を戦わせて“潰し合い”させような~んて魂胆で、しかし、さらにその上には“下克上”を企む奴らが・・・。

といったような感じで、私としては、ストーリー云々よりも、これだけの男たちがしのぎを削って闘い、撃ち合う姿に“ハード・ボイルド”を感じ、単純に「男臭さに酔いしれ」たのでした・・。

特筆すべき点としては、音楽(鈴木慶一)が、必要最小限にだけ使われているというのが、私的には非常に好ましく感じました。
またその「ここぞっ!」という時に流れる音楽が「ハード・ボイルド」なのですよ・・!

まぁ、内容は残虐なシーンが多いですから、R15+が当然だと思います。R18+でもいいくらいだと思います。「大人が観る」映画でしょうな・・。

そして、映像的には「キタノ・ブルー」が何故か心地よく、この作品に合っていたのでは、と、私は思いました・・。



ひきばっち的満足度★★★☆






「BOX 袴田事件 命とは」

2010-06-17 20:14:40 | Weblog
                             「BOX 袴田事件 命とは」
銀座シネパトスにて。
監督・高橋伴明                         公式サイト           

この映画の公開を知ってから、必ず観ようと思っていた作品である。
本作は、昭和41年6月30日に静岡県清水市で起きた強盗放火殺人事件で、犯人とされ逮捕され、そして裁判にかけられた袴田巌さんと、その裁判の主任裁判官であった熊本典道さんの判決後の苦悩と闘いを描いた作品です。

ネタバレしていますのでご注意下さい
通称「袴田事件」の概要・・。
昭和41年6月30日未明。静岡県清水市の味噌工場が放火され、焼け跡から一家四人が焼死体で発見された。四人ともに、刃物で何箇所も刺された跡があり、警察は殺人事件と見て捜索を開始。柔道2段の被害者(専務)をもやり込めただろう犯人ということで、捜査を進めると、味噌工場で働いている男の中に1人「ボクサーくずれ」がいることが・・。味噌工場の工員で橋口社長と縁故がないのはそいつだけ・・そしてそいつは土地の人間ではない・・。立松警部(石橋凌)は、味噌工場で働いている元プロボクサー袴田巌(新井浩文)を逮捕。しかし袴田さんは容疑を否認。一旦は釈放したものの、すぐにまた逮捕。そこから拘留期限の3日前(袴田さんが耐え切れずに「やりました」と言わざるを得なかった日)まで、後に熊本さんが調べてわかったのだが、1日12時間や17時間という常識では考えられない長時間の尋問が(内容は推して知るべし)続けられていたのだ。

この後、第一審が始まるのですが、この裁判の裁判官は3名おりまして、その一人がこの裁判の主任判事である熊本典道(萩原聖人)なのですな。
こういう映画で演技論もどうかとは思いますが、萩原聖人がいいんですよ。こんなにイイ役者さんだとはついぞ知らなくてすみません。

この映画は、その熊本典道さんが2007年に話した真実、「袴田事件は無罪だという確証があったが、多数決で2対1で有罪になってしまった。判決文は主任判事が書くのが慣例なので、裁判長に言われて書いた。本当に申し訳ない」
の内容を骨子として作られています

映画は、裁判官同士の学閥や、「出世するには」といったような、今まで見たこともないような側面を描いてみせます・・!

そして犯行から1年以上も経った頃に、警察から法廷へ“新証拠”なるものが提出されます。「血染めの犯行着衣」が、事件当時一度捜査した味噌樽の中から新たに発見されたというのです。

前述の警察による袴田さんへの取り調べの時間の余りの長さ、そしてそれが自白を得るまで何日も続けられたこと、などを調べて、自白の信憑性を疑っていた熊本裁判官は、新しい証拠が突然出てきたことにも、何か“意図的”な臭いを感じ取ります・・。

しかし、「疑わしきは、罰せず」という刑事裁判で最も尊重されるべき熊本さんの考えは、「多数決」という歪んだ民主主義に押し潰されてしまうのでした。

そして1審判決日。前述の通り、「全員一致」ではない「付言」付きの判決が言い渡された。
「死刑」です。そこに付けられた「付言」が、熊本裁判官の行き場のない怒りだったのだと思います。

この判決の後熊本さんは裁判官を辞任し、袴田巌の無実をはらすべく、活動を始めます。

ここから後は、是非、映画をご覧になってください!

2007年の熊本さんの発言は、裁判官の「合議の秘密」を破ったのは事実でしょう。

しかし、私などは法律を専門に勉強したこともないので、忸怩たる念を禁じ得ないのですが、「孤高のメス」を観た時(こちらはフィクションですが)にもありましたが、「法律で決まっているから、しない」というのと、「人間として、どちらが正しいのか」というのは次元が全然違うと思うんですな。

ちなみに、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%だそうです・・・。
「冤罪」・・冗談抜きで怖いっす。
高橋伴明監督の気迫のこもった一作でした。

袴田巌さんの再審が1日でも早く決まるように願ってやみません。



ひきばっち的満足度★★★★☆
























「孤高のメス」

2010-06-14 03:03:27 | Weblog
                                 「孤高のメス」
ユナイテッドシネマ豊島園にて。
原作・成島出
監督・大鐘稔彦

静かで深い感動でした。
「慣例だから、諦めるんですか?」
この一言に涙が止まりませんでした。

自分も含めて、世の中というものは、とかく「まわりがみんなそうしているから」「前任者がこうしていたから」という「慣例」に従うことが多い。
「慣例」に従うことが全て悪いわけではない。そのほうが人間関係などがスムーズにいく時だってある。

しかし、悪い「慣例」があったとき、それを覆して正しい方向へもっていくのは並大抵のエネルギーでは出来ない。事によれば周りを全て敵にまわす可能性だってある。

この映画の主人公・当麻鉄彦(堤真一)は、それができる男だ。
決して仰々しくも熱血漢でもないのだが、スクリーンの彼を見ていると泣けてくる。
素敵なお医者さんだ。私も盲腸になったら執刀してほしい(笑)。

この作品は、オープニングとエンディング以外は、さざなみ市民病院の看護師(当時はまだ看護婦でしょうか)中村浪子(夏川結衣)の目線で語られてゆきます。

私、夏川結衣さんの演技を見たのはこれがほぼ初めてなのですが、渋くていい(ほめているんですよ!)女優さんですね~。微妙な表情の変化が細やかで素敵です~(^^♪

最初は当麻先生をあまり良く思っていなかった浪子が、先生の手術のオペ看として一緒にオペを体験していくうちに、当麻先生の医師としての“真摯”な姿勢に心打たれて、自分も家で勉強するようになったりするシークエンスは観ているこちらも気持ちがポジティブになるいいストーリーの流れでした。

ストーリー終盤に当麻医師が行うことになる「脳死患者からの肝臓移植手術」。
法律的には根拠となるものがなく、最悪の場合当麻医師が「殺人罪」に問われる可能性もある・・シビアな局面でした。

結果的に、当麻先生はオペを行い、無事、移植手術を終えるのですが、「法律的に根拠がないからできない」でなく、
このくだりで当麻医師が行ったような「人間として正しい選択」が、果たして自分が同じ立場だったら出来るのだろうかと、この映画は見ている者に問いかけてくるのです。

それにしても、オペに「都はるみ」は笑っちゃいました(^^♪。



ひきばっち的満足度★★★★

「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」

2010-06-06 16:12:03 | Weblog
                       「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」
新宿武蔵野館にて。
監督・ジョニー・トー

ハード・ボイルドには何故か、夜の雨がよく似合う・・
そして何故か、香港、マカオが似合うと、Gメン'75の頃から決まっているのです(笑)

私はジョニー・トー監督作は初めてだったのですが、オープニングからド肝を抜かれてしまひました・・。
ネタバレありますのでご注意を!

ストーリー冒頭、マカオ在住と思われる幸せそうなフランス人家族がいきなり殺し屋に銃撃されます。

銃弾を体に受けながらも、奇跡的に生き残ったのは夫人(シルヴィー・テステュー)ひとりだけ・・。会計士の夫と子供二人は銃弾の餌食になってしまいます・・。

夫人は辛くも生き残ったものの、後遺症でベッドの上に横たわり、喉からチューブが入っているため“声”を失ってしまいます・・

そこへ、初老のフランス人の男が訪ねてきます。
フランス本国から来た夫人の父、フランシス・コステロ(ジョニー・アリディ)でした・・。

コステロは新聞の文字を使って声を失った我が娘と会話をします・・。
夫人は現場で倒れながらも犯人たちの行動を見ていたのでした・・!
「犯人・・・三人・・耳・・・」
どうやら夫人が逆襲で放った銃弾で犯人の一人が耳に傷を負ったことが解ります・・。
「Vengeance・・」復讐・・の文字を夫人は指差すのでした・・。

ここからコステロは、復讐の鬼と化すのですが、異郷の地で自分一人では無理だということをコステロは知っていました。

“毒をもって毒を征す”
コステロはクワイ(アンソニー・ウォン)、チュウ(ラム・カートン)、フェイロク(ラム・シュ)の殺し屋3人を“復讐”のために雇うことになります・・。

この辺からアブナい香りがムンムンしてきて、ハード・ボイルド好きにとってはたまらない展開となってきます(^^♪!

ストーリー的にはまぁ、ありがちな“復讐用心棒”的な展開なのですが、これがなかなか渋くてカッコイイんですよ~!!

ひとつは、マカオという地で、フランス人であるコステロは最初は当然フランス語を話すのですが、クワイたち中国人とコミュニケートするために、中国語は解らないので、フランス訛りのたどたどしい英語を使い始める・・。

一方、クワイたち殺し屋三人は、最初は当然中国語(この辺りは広東語ですか?)を使って登場するのですが、コステロとコミュニケートするために、フランス語は解らないので、片言の英語で話し始める・・

こういう点が、うやむやにごまかしていないので、不思議なリアリティがあるんですね~!

そこに、マカオ香港うらぶれた住宅・商店密集地の夜リアリティに拍車をかけるんですよ(^^♪!!

あと感じたのは、ジョニー・アリディもさることながら、アンソニー・ウォンという俳優さんの図抜けた存在感ですね。

私は彼の出演作を観たのはこれが初めてなのですが、銃を構えて立っているだけでこんなにサマになる俳優さんが東洋にいたことに驚きました!(私的には松田優作以来かもしれません)。
サングラスも似合うし(似合うから、夜にサングラスかけてもサマになる(笑)!
いまさらでスミマセンm(__)m。彼の出演作を遡って観たいと思っております。
一緒に観た連れは「あ~、あの三橋達也に似てる俳優さんでしょ」って(笑)そう言われれば似てるかも・・。

作品的には、終盤、埋立て地みたいな場所で撃ち合いしちゃうあたりから、西部警察っぽくなってきてしまって(笑)う~ん・・もったいないな~・・って感じがしました。

しかし、ハード・ボイルド好きな方にはたまらない1本であることは間違いありませんな(^^♪。



ひきばっち的満足度★★★☆















「プレシャス」

2010-06-03 17:55:54 | Weblog
                                  「プレシャス」
TOHOシネマズ・シャンテにて。
監督・リー・ダニエルズ

以前から観たいと思っていた本作をようやく観ることが出来ました。

人間は、自分が産まれる場所や環境、肌の色を自分で選ぶことが出来ません。
ある者はその環境に同化してポジティブな人生を(たとえそれが敷かれたレールの上だとしても)送ることができるかもしれない。
また、ある者は産まれた環境に抗い、麻薬中毒の友達の仲間に入るかもしれない。

この映画(原作はサファイアという詩人の、自らがハーレムで読み書きを教えた体験を基に書いた小説「Push」(邦題プレシャス))の主人公、クレアリール・プレシャス・ジョーンズ(ガボレイ・シディベ)は、ニューヨーク、ハーレムに住む16才の少女。
ところが彼女は妊娠をしていて、父親は実の父なのです・・。
これが2度目の妊娠で、一人目を身篭った時プレシャスは12才、父親は同じ・・。

そして父親は行方知れず。
家では母・メアリー(モニーク)による肉体的及び精神的虐待・・。

プレシャスは16才だが、まだ中学校に通っている。字が読めないのだ。読む能力は備わっていても読めないのだ・・。
しかしその学校も、妊娠がバレて、退学処分。

彼女は“イーチ ワン ティーチ ワン”という代替学校へ行くことに・・。
恐る恐る行ったそこにいたのは、理由は違えども何らかの問題で普通の学校に通えない“仲間”と、レイン先生(ポーラ・パットン)だった。

映画「プレシャス」では、現代(アメリカでは特に'90年代以前らしいですが)の社会の隅で、女性たちが抱えているコンプレックス(特に太った黒人女性を蔑視する風潮が強かったらしい)、荒んだ家庭環境、家庭内暴力、性的虐待、ままならぬ教育、HIV感染と、これでもかというくらいにネガティブな要素が主人公を襲います。

監督はこのプレシャスという少女に、全世界でネガティブな要素で苦しめられ、虐げられている女性たちの姿を投影したのだと思うのです。

ストーリー終盤で流れる主人公の涙が、全ての女性の涙なんだな、と思い、胸が詰まりました。

しかし主人公プレシャスは、代替学校で出会った恩師レインに、「自分を表現してもいいんだ」と、気付かせてもらったことで、闇の中に小さな光を見たのではないかと思います。

“イーチ ワン ティーチ ワン”
観終わってなにかとても爽やかな気分になれる作品でした・・。



ひきばっち的満足度★★★★☆