ヒッキーはつむじ風!!

ヒッキーが観て気に入った映画を、ブログで紹介します。

「愛を乞うひと」

2020-12-26 14:32:25 | Weblog
                     「愛を乞うひと」


監督・平山秀幸
脚本・鄭義信 
原作・下田治美

以前に一度、感想をアップしたことがある本作。

先日、下田治美さんの原作を読む機会があり、映画ももう一度観たので、改めてレビューを書くことに致しました。

観終わって。。。やはり原田美枝子さんがスゴい。。。

だけど、それだけじゃなくて、野波麻帆さん演ずる、主人公の娘である深草<みぐさ>の存在感も大きい。。

そして、中井貴一さん演ずる、主人公の父親である陳文雄の誠実で実直な姿は、この映画のストーリーの「柱」として、とても重要な部分を占めています。。

それにしても、観るのにそのたび覚悟を要する映画です。

あらすじ・・・。かなりネタバレあります。。。

昭和20年代後半・・・土砂降りの雨の中・・まだ小さかった照恵(小井沼愛)は、アッパー(お父さん)である陳文雄(中井貴一)に手を引かれて、歩いていた・・。
後ろの方で照恵と文雄に罵声を浴びせながら、ついてきているのが、照恵の産みの親である豊子(原田美枝子)であった・・。
「台湾でもどこでも、行っちまえー!!バカヤロー!!」照恵は振り向きながら、母の姿が遠くなるのを見ていた・・。


それから数十年の時が流れ、照恵(原田美枝子・二役)は印刷会社で働いていた。
結婚し、娘の深草<みぐさ>をもうけたが、夫とは死別し、今は高校生になった娘・深草(野波麻帆)との2人暮らしである。。

照恵は最近、娘に内緒で、仕事帰りや休日等を使って、昭和30年前後に結核のため亡くなった、優しかった自分の本当のお父さん(アッパー)である陳文雄の「お骨」探しをしていた。。

照恵には、当時、文雄が亡くなったあと、児童施設にいた自分を、あの女・豊子が「引き取り」に来てから始まった、壮絶なDVの日々という忘れられない過去があった。
おでこの左側には、今でも消えない傷があるので、照恵は前髪でそれを隠している。。

そんな時、照恵の出勤中に、警察から家の方へ「詐欺の犯人を捕まえたのだが、肉親は?と聞いたところ、姉が一人いるから、会いたい・・と言うもので」という電話があり、その電話を受けた深草からその旨を職場の電話で聞かされた照恵は、取るもの取り敢えず、深草も連れて、指定の拘置所へ向かう。。向かうバスの中で深草は「おかあさん、天涯孤独とか言っちゃってさ、ウソばっか!」・・・。深草には自分の半生を話していない照恵であった。。照恵には、もう三十年ほども会っていない、武則という異父弟(うじきつよし)がいたのである。。。

舞台変わって昭和29年の結核病棟。
入院している文雄と、知人の王東谷<おん>さん(小日向文世)が、台湾の言葉で話をしている。
照恵は預けられている児童施設から、大好きな父をお見舞いするために、施設の職員に病院へ連れてきてもらったのだ。
ベッドの横に座り、父である文雄が手鏡を使って、天井に当てた光を見た。。
文雄は照恵に「あの丸いのが、台湾だよ。青い空に、どこまでも続くさとうきび畑・・アッパーの病気が治ったら、一緒に行こうな・・。」

しかし程なくして、文雄は帰らぬ人となってしまう。
この頃であれば、お金さえ出せば、「パス」や「ストマイ」などの特効薬がすでにあったにもかかわらず、台湾から一人で渡日して、親族からの仕送りも受けていなかった病床の文雄には、お金が無かったのである。。。

照恵は、児童施設の中で友達と遊んだり、勉強したりして、暮らしていて、10才になった。。。
そこへ、どういうわけか、それまで音沙汰無かった産みの親である豊子が、照恵を「引き取り」に現れる。施設長の先生は喜ばしく送り出すのだが、それが激しい虐待の日々に続いているとは、施設長の先生にも、照恵にも、思いもつかないことなのであった。。。

という感じで、ストーリーの軸が、照恵と深草が文雄のお骨を探す「現代」と、照恵の幼少時の生活を映し出す「過去」というふうに大まかに分けて、「現代」のストーリーに「過去」のストーリーが所々でインサートされる感じで、物語は進んで行きます。

このお話は、主人公は照恵で、現代の照恵と、その母親の豊子(過去のシーン、現代の美容院のシーン、ともに)を、原田美枝子さんが二役で演じているのですが、親子の設定で、演じているのはどちらも原田美枝子さんなので、基本的な見た感じなどは、必然的に似ているのですが、似ているんだけども、2つのキャラクターの性格や雰囲気、言葉のトーンなどが全然違って、見事に演じ分けられているので、映画を観ている側も、「照恵」と「豊子」はそれぞれ独立した人格なんだな・・と、無理なく認識できるのです。原田美枝子さんの卓越した演技力と、平山監督の演出の妙だと思います。

照恵と豊子は、性格的に175°差(?)くらいの真逆の気質を持っています。

照恵が豊子に引き取られてから、激しい虐待が始まります。。


原作では引き取られて間もなく始まるのですが、本作では、豊子の三人目の男・和知三郎(國村隼)のいる、引揚者定着所へ移ってから、激しさを増してきます。

お祭りの日に、近所の友だちが、浴衣を着て、照恵を誘いに来た時、おそるおそる、お小遣いをもらおうとした照恵の手のひらに、燃えているタバコを・・・のシーンあたりから、虐待はエスカレートしてゆきます・・。

この辺から先は、観るのがしんどくなってきます(T_T)

この虐待につぐ虐待のシーンは、いったいどうやって撮影したんだろう。。。と、心配になるくらい、生々しいものがあり、キレる豊子を演ずる原田美枝子さんもたしかに凄い鬼迫なんですが、この年齢の頃の照恵を演じた牛島ゆうきさんという子役の方が、豊子からのDVを受ける側を演じて、原田美枝子さんに負けていない存在感がスゴいです。

しかし、そこまでやるか!・・って感じです。

そんなDV女の豊子が、照恵を唯一褒めるのは、櫛で髪を梳かせているひと時でした。。。
このひとときの安寧のシーンが、ラストの美容院のシーンにつながっていく感じです(ネタバレしちゃって、スンマセン)

しかし、ひとたび火が付けば、烈火の如きDVが、また始まる訳で。。。

原作では「せっかん」という言葉を使っています。。

國村隼さん演ずる養父・和知さんも、内地から引き揚げたばかりで、正職にはなかなかつけなかったんでしょうね。街頭で傷痍軍人の衣装を着て、道行く人から貰う募金が唯一の収入。。。せっかんで顔が腫れた照恵と、武則にも手伝わせたりします(この街頭でお金を貰うエピソードは、原作にはなく、脚本の鄭義信さんのオリジナルだと思うのですが、不自然さは無く、ストーリーのひとつのエピソードになっています)

豊子は2人の子供(照恵の他に、二人目の男である中島とのあいだに生まれた武則という異父弟がいる)にはろくに生活費を渡していなかったようで、食べ物も粗末なものしか食べられず、おそらく銭湯へもろくに通えなかったようで、学校の身体検査の時も「結膜炎ですね。たまにはお風呂に入りましょうね」と言われ、友達から疎んじられる有様。。。

一方、「現代」のシーンでは、区役所の戸籍係や、文雄が亡くなった病院などを照恵は訪れて、文雄の「お骨」の行方を探すのですが、なかなかこれといった情報も得られません。。

照恵と深草は、文雄の生まれ故郷である台湾まで足を伸ばすことになるのですが。。。

台湾では、方々探して歩くのですが、文雄の親族たちとの関係がうまくいかず、お骨は見つからないのですが、父の友人である前出の王東谷さんと、その奥さんである、はつ(熊谷真実)さんに何十年かぶりに会えて、文雄の生前の話や、文雄と豊子との出会いのエピソードなどをいろいろうかがうことが出来た照恵と深草でした。。

ここで回想として描かれる、豊子が文雄に少しずつ好意を抱いてゆくシークエンスは、文雄の実直な姿と、豊子の、素直に気持ちを表現するのが下手な一人の女性としての一面を描いていて、新鮮な印象を受けます。


そして、昭和39年、照恵(浅川ちひろ)は学校を卒業して、就職することになります。
複雑な家庭状況なので、彼女は採用の際に“戸籍謄本が要らない”会社を選び、入社して、働き始めます。

そこでもらった初任給をもとでに、母親からの独立を期していた照恵でしたが、その初任給は母親が強引に取り上げてしまいます。

次の月にもらった分の封筒から、少しこっそりと隠しておいた分まで、取り上げられそうになったとき、照恵は我慢の限界に達し、給料を奪い返して、逃げます!
途中、弟の武則のアシストもあって、照恵は母親から脱出することに成功します。
それから何十年間も、照恵は母親のいない世界で、生きていくことになります。。


この物語は、照恵が亡くなった父のお骨を探す、というのがストーリーの幹になっているのですが、その探した先に、母親である豊子への複雑な想いがあることに、照恵は深草の助言によって、気付かされます。

父・陳文雄のお骨は、区役所の人が、機転を利かせて、陳文雄さんは日本に帰化していなかったので、日本の謄本に載っていないのでは・・外国人登録の窓口へ行けば登録証があるのでは・・・とのことを照恵に案内します。
照恵は外国人登録の窓口で、父の登録証をやっと手に入れます。

そこから辿って、職員が埋葬許可証を見つけ出し、そこからいろいろ問い合せてくれて、三鷹のあるお寺に父のお骨が眠っていることが判明します。。。

数十年ぶりの、父と娘の再会でした。。

そして深草の勧めもあり、ストーリー終盤で、照恵は、美容院を営む年老いた母親・豊子と再会することになります。

深草が付き添いで、雨の降る日に。

お客として入って来た照恵が、鏡の前に座り、豊子は彼女の前髪を整える際に、おでこにある傷を見て、そのお客が自分の娘であることを認識します。


子供の頃、母親に、髪を梳くときに、褒められたので、自分は美容師になりたかった、と、照恵は問わず語りに、呟きます。。

両者とも、特に名乗るでもなく。。。

お金を払って、外に出ると、雨はあがっていました。

この再会のシーンで、「会えたから母親を許す」、とかじゃ決してないと、思うんですね。

豊子が外に出て、照恵と深草の方を見ている姿が印象的です。。

帰りのバスの中での、照恵と深草のやり取りは、ストーリーの余韻が感じられて、とても好きなラストシーンです。

ーお母さんに、可愛いよと、云って欲しかったー

このラストで、物語の中で行き場所を探していた照恵の心が、氷が溶けるように緩んで流れ出すような感じがしました。。。

そして台湾のさとうきび畑の一角に、文雄のお墓を作るため、照恵と深草たちが働いているシーンにエンドロールが重なります。。。

それにしても、原田美枝子さん、素晴らしいです。。。(^0_0^)

「愛を乞うひと」のレビューでした・・・。





ヒッキー的満足度★★★★★






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「ばるぼら」

2020-12-13 13:03:45 | Weblog
(C)2019「ばるぼら」製作委員会


原作・手塚治虫
脚本・黒沢久子
監督・手塚眞
撮影監督・クリストファー・ドイル
音楽・橋本一子

友人に誘われて、シネ・リーブル池袋で観てきました。

土曜日。2番スクリーンは3~4割程度の入り。

何となくは、“哲学的で難解”という評判を聞いていたので、覚悟はしていたのですが。。。

観終わって。。。う~ん。。。クリープを入れないコーヒーなんて。。。??あぁ。。。(T_T)

稲垣くん演ずる小説家が、ばるぼらに出会って堕ちてゆくのですが・・・??

覚えてる範囲内で、ほんのちょい、あらすじ。。。

小説家の美倉洋介(稲垣吾郎)は、新宿駅(と思われる)の通路で、ゴミのように倒れている少女「ばるぼら」と出会う。。。

ばるぼら(二階堂ふみ)は、酒ばかり飲んでクダを巻いていて、お世辞にも上品とは言えないが、洋介は何故かそんなばるぼらが気になるようになった。。。

そして洋介は徐々に、ばるぼらの魅力に惹きつけられてゆく。。。

担当編集者の加奈子(石橋静河)の心配をよそに、ばるぼらと離れられなくなっている自分を押しとどめることが出来ない洋介であった。。。

洋介がばるぼらに夢中になってしまったので、相手にされなくなった里見代議士の娘・里見志賀子(美波)は、洋介を“潰す”よう側近に命ずる。

そんなある日、加奈子は歩いていて交差点でトラックに轢かれ、生死の境をさまようことになる。。。

洋介はばるぼらと結婚するために、彼女の母親(渡辺えり)に会いにゆくのだが。。。
(C)2019「ばるぼら」製作委員会

こんな感じなのですが、「ばるぼらは芸術のミューズ」みたいなニュアンスなんだと思うんですが、観ているこちらに芸術を理解する感性が無いので、ツラい(+o+)

何か示唆しようとしてるんだろうな・・・と、一所懸命なけなしのアンテナ伸ばしてみたのですが。。。

でも二階堂ふみさん演ずる「ばるぼら」ってキャラクターは、たしかに魅力あります。ちょっと中性的なのがカッコ良かったりする。

一緒に観に行った友人は、美波さん演ずる里見志賀子がタイプとのこと。ワタシは断然、石橋静河さん演ずる加奈子がいいなぁと、思って観ていたので、トラックに轢かれちゃって、あぁ!!っと思って見ていましたが、ストーリー終盤も回復して出てきて、よかったな~!って感じでした(全然ストーリーの本流と違うところばっか見てますね。すんません(+o+))

ばるぼらの母親を演じた渡辺えりさん、存在感ありまくり。
なんか、読めない文字(何の文字だろう??)で書かれた誓約書みたいなのだして、洋介にサインさせるのですが、えりさんに言われたら、公定力感じるから洋介もサインしてしまうんでしょうね~!
(C)2019「ばるぼら」製作委員会

あと、洋介の作家仲間の四谷弘行役で、渋川清彦さんという俳優さんが出てらっしゃるのですが、「どこかで見たような・・・??」と思って、見終わってから調べてみたら、「閉鎖病棟」という映画で、暴力を振るうとんでもない悪人の役で、出てました!スゴいインパクトでした。今回のような渋い役も演じられて、ちょっと注目したい俳優さんです。

ネタバレになっちゃうのですが、ストーリー終盤でばるぼらが死んじゃうんですが、エンディングで、また新宿駅に座っているばるぼらの姿が映し出されます。
この辺も、いろいろ解釈出来ますが、また繰り返すってことなのかな。。。??そのへんが微妙ではあります。。。
(C)2019「ばるぼら」製作委員会

原作には、洋介の作家仲間の名前が「筒井隆康(つついたかやす)」だったり、最終話に登場する漫画家の名前が「松本麗児」だったりと、ウィットに富んだネーミングもあるらしく、面白そうなので、機会があったら、読んでみようと思います。
原作読んでから、本作をもう一度観たら・・少しは理解できるのではないかと。。。





ヒッキー的満足度★★★☆






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「オリエント急行殺人事件」

2020-12-11 09:12:29 | Weblog
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation         「オリエント急行殺人事件」


公開時に新宿ピカデリーで観て、先日Amazonの配信でまた観てみました。

突然洋画なのですが、「探偵」つながりということで、載せてみました(^0_0^)

オールスター・キャストってやつですね。

エルキュール・ポアロにケネス・ブラナー、列車内で殺される男ラチェットにジョニー・デップ、ロシア出身のドラゴミロフ公爵夫人にジュディ・デンチ、信仰心の厚い宣教師ピラール・エストラバトスにペネロペ・クルス、犯行時刻頃に自分のコンパートメントに男がいたと主張するアメリカの女性ハバード夫人にミシェル・ファイファー、ドイツ人の大学教授ゲアハルト・ハードマンにウィレム・デフォー、イギリス人の家庭教師メアリ・デブナムにデイジー・リドリーなど・・。

監督ケネス・ブラナー。

オープニング・ロールを見て驚いたのは、製作にリドリー・スコットが加わっていることでした!それだけで期待度が高まります。

この作品、ストーリーの本筋はブレていないのですが、原作とも、1974年公開の映画とも、若干、人物設定およびストーリーの展開の仕方が違っています。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ほんのちょい、あらすじ・・・。

エルサレムで、事件をひとつ解決したエルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は、少しの間、休暇を楽しもうとしたが、イギリスより知らせあり、急遽仕事のためにロンドンへ戻らなくてはならなくなった。友人で国際寝台車会社の重役であるブーク(トム・ベイトマン)のはからいで、その日のイスタンブール発のオリエント急行の部屋を探してもらったが、季節はずれのこの冬の時期に珍しく、その日のコンパートメント(部屋)はほぼ満室・・。なんとか二人部屋で場所を確保してもらったポアロは、ブークと共に出発するのだが・・。

食堂車で読書しているポアロに話しかけてきたのは、古美術商をやっているというラチェット(ジョニー・デップ)という男だった。
ラチェットは、最近身の危険を感じるので、金を積むから、列車に乗っている間、自分の警護をして欲しい、と・・。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

「私は自分が興味を持った事でないと仕事はしない。なにより、あなたの、その顔が嫌いだ」
ポアロはラチェットの依頼を一蹴する。

その日の夜、ユーゴスラビア国内を走行中だったオリエント急行は、行く先を雪崩に阻まれ、脱線して立ち往生する・・。

何度か隣の部屋(ラチェットのコンパートメント)の音や廊下の音などで目が覚めたポアロだったが、翌朝起きてみると、執事がラチェットの部屋の扉をノックしているが応答がない。

異常を感じたポアロが扉をこじ開けてみると、ラチェットがベッドに仰向けの刺殺体で発見される・・。
窓は開けられた状態で、雪が吹き込んでくる寒さだ。

乗客の中にいたドクター・アーバスノット(レスリー・オドム・Jr.)が検死したところ、刺し傷は12~15箇所、深いものからかすり傷のようなものまで・・。
ブークはポアロに、警察が来る前に、事件を解決したいと・・、ポアロはこの殺人事件の捜査に臨むことになる・・。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

という感じでストーリーが展開してゆくのですが、まずアガサ・クリスティの原作「オリエント急行の殺人」および'74年版の映画では、「アーバスノット」は医者ではなく「大佐」であり、別に「コンスタンチン」というギリシャ人の医師が謎解き側(ポアロ側)で出て来ます。

本作で、コンスタンチン医師というキャラクターを登場させず、アーバスノットがドクターも兼ねている設定にしたのは、思い切った脚色だと思います。元狙撃兵という設定もストーリー終盤で意味をもってきます。

あと、原作ではグレタ・オールソン婦人というキャラクターがスウェーデンの出身という設定で、'74年版でもその設定通りでイングリッド・バーグマンが演じてアカデミー助演女優賞を受賞していますが、本作ではその位置づけにあたるピラール・エストラバトスという敬虔な宣教師をペネロペ・クルスが演じています。

ポアロは、ラチェットの部屋に残された、紙の燃えたあとの燃えさしをランプの炎で炙って文字を再現し、ラチェットの本名が「カセッティ」だということ、そしてこの事件にはカセッティがアメリカではたらいた営利誘拐殺人事件が絡んでいることをつきとめます。

作品中ではアメリカで起きた「デイジー・アームストロング事件」として語られます。
カセッティはアームストロング大佐の娘で当時3才だったデイジーを誘拐、身代金を要求、デイジーを殺害し、逮捕される前に国外逃亡。
第二子を妊娠中だったアームストロング夫人は事件のショックで流産、夫人本人も亡くなって、悲嘆にくれたアームストロング大佐は拳銃自殺・・。
また、カセッティが捜査線上に浮かぶ前に、警察が容疑をかけて激しく責め立てたデイジーの子守娘であるフランス人のスザンヌは窓から身を投げて・・・という痛ましい事件でした・・・。

パイプクリーナー、「H」のイニシャル入りの女性用ハンカチ・・・。
手掛かりになりそうで、しかしもしかしたら犯人がわざと残していった物か・・。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

着物風の真紅なナイトガウン・・・。

ハバード夫人がコンパートメントで見つけたという車掌の制服のボタン・・・。

ドラゴミロフ公爵夫人のメイドであるヒルデガルデ・シュミット(オリビア・コールマン)のコンパートメントの棚で見つかるボタンのとれた車掌の制服・・・。

ドクター・アーバスノットとメアリ・デブナムが交わしていた会話の意味・・・。

アンドレニ伯爵夫人であるエレナ(ルーシー・ボイントン)のパスポートに落とされた油の染み・・・。

ドラゴミロフ公爵夫人のファーストネーム・・・。

アームストロング事件で疑いをかけられて、窓から身を投げてこの世を去ったフランス娘・スザンヌの姓は?・・出身地は?・・・。

そして、悲劇を演じさせたら右に出るものなしと言われた、アメリカの舞台女優・リンダ・アーデンの現在は・・・。

約2時間の上映時間に、詰め込むわけですから、若干「あれ??」と思う間もなくストーリーは進んでゆきます。
「なんでポアロそんなこと判るんだ??」という感じも多少あるのですが、ケネス・ブラナーの演ずるポアロは何故か説得力があります('74年版のアルバート・フィニーより私はケネス・ブラナーのポアロの方が好きです(^^♪)
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

列車が走るシーンそのものは、'74年版は本物に近いし、本作はVFX(っていうのかな??)なので、微妙に違和感はあるものの、登場する当時のファッションや食事風景などを見ているだけでも、ゴージャスな気分に浸れます(*´∀`*)(ストーリー序盤でポアロが焼きたてのパンを褒めちぎるシーンが好きです(^^♪)
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

乗客を演じる俳優さんも、私の大好きなデイジー・リドリーをはじめ、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルスなど、素敵な面々が集まっていて、観ているこちらをストーリーに惹きつけます。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

個人的な好みで恐縮ですが、アンドレニ伯爵夫人のエレナは、原作でも「とても美しい」という設定なのですが、映画でも、本作ではルーシー・ボイントン、'74年版ではジャクリーン・ビセットが演じていて、両者ともとても美しくて、びっくりしちゃいました(^0_0^)

上、ルーシー・ボイントン。下、'74年版のジャクリーン・ビセット

どの配役かは判らないのですが、キャスティングの段階で、アンジェリーナ・ジョリーも候補に挙がっていたとのこと。見てみたかったですね(^^♪

本作は、ストーリー終盤に、原作や'74年版には無かった、拳銃を交えたアクション・シーンが用意されています!
そう来たか!という感じで緊迫感急上昇!

ラストのポアロの謎解きの説明は、列車内ではなく、トンネルの入り口にテーブルを並べて、乗客を横一列に座らせて・・・という、少し舞台っぽい設定で行われます・・。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ポアロは真相を解明します。
これから観る方もいらっしゃると思うので、あまり書かないですが、ポアロは犯人の前に拳銃を置いて「私を撃って湖に放り込め!!」
思い切った脚色で、私的にはとても感動いたしました(T_T)

この作品、音楽がとても素敵です!
決して派手なメロディではないのですが、ストーリー終盤、事件の真相が明らかになる辺りで流れる旋律は、観ている者の心を揺さぶります。
この映画が単なる推理物にとどまらない、人間のドラマであることを感じさせてくれます。

犯人としては、列車が雪崩で立ち往生することと、エルキュール・ポアロが乗り合わせることが、想定外だったようです・・。
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

静かなエンディング・・・列車を降りたポアロを待っていたのは、「ムシュー・ポアロ、エジプトのナイル川で殺人事件が・・・」・・・つながるわけですね(^0_0^)

しかし、これほどの濃い内容なのだから、2時間半くらいの長尺くらいのほうが、より素敵な作品に仕上がったのではなかろうか、とも思うのですが、114分・・・商業ベース、いたしかたなし、というところでしょうか。。。

ということで、2017年公開の「オリエント急行殺人事件」のレビューでした。。。

追記
写真、選んでいたら、デイジー・リドリー嬢のばっかりになってしまいました(汗)
どうもスンマセン。。。





ヒッキー的満足度★★★★☆






つらい腰痛・肩こり・頭痛など、スタッフが全力でサポートします。
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