うららかな昼さがり、わたしは彼女と桜の下にいた。堤防の草地に、その木は一本だけ、あった。うすいピンク色をした花びらが一重咲きになっている。
コンビニでお弁当をふたつ、わたし達はそれぞれ好きなのをおちゃと一緒に買った。ゴミなど落ちていないところを選んで、二人は腰をおろす。さぁ、今年の花見だ!
カァチャン、人参、何で、こっちへよこすのぅ
だって、人参が勝手にそっちへ行ったんだよ
あれっ? サトイモも**** もうっ、カァチャンの魂胆、分かってるんだからね
どちらも嫌いだから、相手の目を盗んでそっちへ移したのを先方は百も承知だ。
わたしは言った。バァチャン、バァチャン、好き嫌いはダメだよと。
ハア?どっちが好き嫌いだよ。第一、いい年して逆だよ、ん、もうっ!
お互い、ふざけてのやり取りだった。年のわかい彼女をわたしは茶目っ気たっぷりにバァチャンと呼ぶ。楽しかった。
色がうすいから、あれ、山桜かなぁ? 違うよ。山桜なら、もっと濃いピンクだよ。
じゃあ、何だろう。何桜って言うんだろう、ねぇ、バァチャンてば....
知らないよと、彼女はつれない。でも、二人でいると楽しかった。
それなのに、彼とはどうして砕けた会話ができないのだろう? 向こうも、わたしに対して身構える? 二人して、ぎごちなさを感じてしまうのだ。
どちらも自分か゛お腹を痛めて生んだ子供なのに、...そして、愛情の差があるはずないのに、何故か彼とは二人でお花見する気になれない。
そんな気持ちが許せなくて、わたしは自分を責め苛みつづけている。