裏庭の葡萄の木が伸び盛りなので葡萄棚にしようと竹竿の支柱を建て始めた。この間の日曜日も2本の竿を追加して、玄関に戻ったときに足を踏み外した。一瞬目の前が真っ暗になると共に激痛が股関節を襲った。最初は筋を痛めた程度に思っていたが、買い置きの鎮痛消炎剤クリームを塗りたくっても一向に痛みが治まらない。左足が上がらなくなっているので骨折の疑いもあると思い、翌日の早朝に整形外科で診てもらうことにした。
車の運転は出来そうもないので、月曜日の早朝に姉に電話を入れて、病院まで送ってもらうことにした。予約外の患者なので通常は1時間以上は待たされる。受付を済ませ診察用ファイルを受け取り、診察室前のファイル入れに裏返しに置いた。どうせ1時間近く呼ばれることはないと決めつけ、診察室前の椅子に座らずに入り口付近にある会計カウンター前の待合室に移動した。呼ばれる前に3人でお茶でも飲もうとしたのだが、姉は持参の麦茶を勧めた。常に麦茶を持ち歩いているというのでペットボトルかと思っていたが、姉がバッグから取り出した大きなステンレス製の魔法瓶を見て驚いた。バッグには紙コップまで詰め込んであった。ペットボトルが当たり前の昨今、魔法瓶と紙コップが出てきたのにはびっくりした。食べ物や飲み物にこだわっている姉らしいとは思った。おそらくペットボトルの清涼飲料や缶コーヒーよりも夏の暑さには冷えた麦茶が一番だと思っているのだろう。たしかに糖分の多い缶コーヒーやスポーツ飲料も時と場合によっては体に良くないのは事実である。
のんびりと待っている間に、姉から受付で順番票を受け取っていないのかと質問が飛んだ。それらしき紙切れは受け取っていないというと、診察室までいって確認してくると言いだした。仕方ないので3人で指定された診察室の前に行き、椅子に座って待つ十数名の患者さんをしりめに診察室のドアを開け、看護師に順番票を受け取っていない旨を説明した。すると今回は予約外患者なので受付票は発行していないと告げられた。それよりも、すでに9時35分頃に1回名前を呼んだが診察室前に見当たらなかったので診察をキャンセルされてしまったと看護師に言われた。しまった、おとなしく診察室の前で待っていれば30分以内に診察を受けられたはずである。確か、受付は9時5分から10分過ぎてあったと記憶している。10時近くまでは呼ばれることはないと診察室の前を離れたのはうかつであった。
そして待つことさらに1時間がすぎ、10時台の患者受付枠の中でなんとか診察が始まった。整形外科医による5分程度の問診の後、レントゲン撮影をすることになるが前立腺がん患者で骨への転移が見られるという過去のデータから、レントゲンだけではガンの転移までは判断できないので、CT撮影も行うことになった。
レントゲン撮影とCT検査が完了したのは昼の12時を過ぎてからであった。午後1時まえに再び診察室に入り、レントゲンを見せられ足の付け根の関節に近い突起状の骨が剥がれていると告げられた。心配していた通り骨折していた。骨折部位の専門用語は教えてもらったが書きとめてはいない。あとでゆっくりしらべてみよう。股関節にひびが入ったわけではないので、痛みはあったが一安心である。ただし、骨がかなり弱っているようで、虫食い状態のような骨の画像を見せられた。通常であれば、手術で骨を固定してもとに戻すのだが、骨折した部位の骨自体がもろくなっているので繋いでも無駄になる可能性が大きいので手術は勧められないとの説明である。手術を望めば即入院して、骨折部の手術を行うことは可能だが完治する保証はないとの説明では、無理に手術をする必要もないと判断した。前立腺の治療中患者であるという事で、すぐに泌尿器科の担当医に内線で連絡をとり、泌尿器科の診察室で待つこと10数分で、今度は泌尿器科の診察室で担当医に診てもらった。先生の説明ではPSA値が下がってきており骨への転移は治まってきたと判断していたようであるが、CT画像をみるかぎり左足の骨への転移は広がっているようである。今まで行ってきたホルモン治療を急遽取りやめて、抗がん剤治療に変更するという。ホルモン治療は長期に効果のある治療でないので、いずれ抗がん剤に変更するとは聞いていたが思っていたより早くホルモン治療の効果が薄れてきたという事なのか。
抗がん剤の副作用については世間一般にも良く知られていることで、多少の不安があったので抗がん剤の使用はあと延ばしにしたかったのだが、選択の余地はないようで医師の指示に従うことにした。
抗がん剤の治療も不安要素ではあるが、骨折した骨をそのままにしておかなければならないというのも心配である。手術できないという事は痛みも継続するということになる。骨折という症状のまま、ガンとも戦わなければいけないようである。骨折による痛みとガンによる痛みと二重の痛みを我慢することになるのだろうか。
日曜日の夕食後から抗がん剤を飲み始めた。飲み始めたばかりなので、いまのところ大きな副作用は感じていない。ただ骨折の痛みは眠れないほどではないが継続している。骨がかなり脆くなっているので足に負担をかけ過ぎると他の骨も骨折する可能性があると言われ、車椅子の使用をすすめられた。最後の診察が終了して会計の際に、車椅子の貸し出しについて問い合わせたところ預かり保証金と僅かな部品損傷費用で借りることができた。今後は車椅子生活を強いられることになるが、上半身が自由に動かせるのは有り難い。抗がん剤の副作用がひどくなければ職場復帰もできるだろうと期待している。
体の動く限り、仕事は続けたいと願っている。
Quality of Life だけは譲れない。
治療の為だけの病院生活は避けたい。
今日も明るく前向きに。
車の運転は出来そうもないので、月曜日の早朝に姉に電話を入れて、病院まで送ってもらうことにした。予約外の患者なので通常は1時間以上は待たされる。受付を済ませ診察用ファイルを受け取り、診察室前のファイル入れに裏返しに置いた。どうせ1時間近く呼ばれることはないと決めつけ、診察室前の椅子に座らずに入り口付近にある会計カウンター前の待合室に移動した。呼ばれる前に3人でお茶でも飲もうとしたのだが、姉は持参の麦茶を勧めた。常に麦茶を持ち歩いているというのでペットボトルかと思っていたが、姉がバッグから取り出した大きなステンレス製の魔法瓶を見て驚いた。バッグには紙コップまで詰め込んであった。ペットボトルが当たり前の昨今、魔法瓶と紙コップが出てきたのにはびっくりした。食べ物や飲み物にこだわっている姉らしいとは思った。おそらくペットボトルの清涼飲料や缶コーヒーよりも夏の暑さには冷えた麦茶が一番だと思っているのだろう。たしかに糖分の多い缶コーヒーやスポーツ飲料も時と場合によっては体に良くないのは事実である。
のんびりと待っている間に、姉から受付で順番票を受け取っていないのかと質問が飛んだ。それらしき紙切れは受け取っていないというと、診察室までいって確認してくると言いだした。仕方ないので3人で指定された診察室の前に行き、椅子に座って待つ十数名の患者さんをしりめに診察室のドアを開け、看護師に順番票を受け取っていない旨を説明した。すると今回は予約外患者なので受付票は発行していないと告げられた。それよりも、すでに9時35分頃に1回名前を呼んだが診察室前に見当たらなかったので診察をキャンセルされてしまったと看護師に言われた。しまった、おとなしく診察室の前で待っていれば30分以内に診察を受けられたはずである。確か、受付は9時5分から10分過ぎてあったと記憶している。10時近くまでは呼ばれることはないと診察室の前を離れたのはうかつであった。
そして待つことさらに1時間がすぎ、10時台の患者受付枠の中でなんとか診察が始まった。整形外科医による5分程度の問診の後、レントゲン撮影をすることになるが前立腺がん患者で骨への転移が見られるという過去のデータから、レントゲンだけではガンの転移までは判断できないので、CT撮影も行うことになった。
レントゲン撮影とCT検査が完了したのは昼の12時を過ぎてからであった。午後1時まえに再び診察室に入り、レントゲンを見せられ足の付け根の関節に近い突起状の骨が剥がれていると告げられた。心配していた通り骨折していた。骨折部位の専門用語は教えてもらったが書きとめてはいない。あとでゆっくりしらべてみよう。股関節にひびが入ったわけではないので、痛みはあったが一安心である。ただし、骨がかなり弱っているようで、虫食い状態のような骨の画像を見せられた。通常であれば、手術で骨を固定してもとに戻すのだが、骨折した部位の骨自体がもろくなっているので繋いでも無駄になる可能性が大きいので手術は勧められないとの説明である。手術を望めば即入院して、骨折部の手術を行うことは可能だが完治する保証はないとの説明では、無理に手術をする必要もないと判断した。前立腺の治療中患者であるという事で、すぐに泌尿器科の担当医に内線で連絡をとり、泌尿器科の診察室で待つこと10数分で、今度は泌尿器科の診察室で担当医に診てもらった。先生の説明ではPSA値が下がってきており骨への転移は治まってきたと判断していたようであるが、CT画像をみるかぎり左足の骨への転移は広がっているようである。今まで行ってきたホルモン治療を急遽取りやめて、抗がん剤治療に変更するという。ホルモン治療は長期に効果のある治療でないので、いずれ抗がん剤に変更するとは聞いていたが思っていたより早くホルモン治療の効果が薄れてきたという事なのか。
抗がん剤の副作用については世間一般にも良く知られていることで、多少の不安があったので抗がん剤の使用はあと延ばしにしたかったのだが、選択の余地はないようで医師の指示に従うことにした。
抗がん剤の治療も不安要素ではあるが、骨折した骨をそのままにしておかなければならないというのも心配である。手術できないという事は痛みも継続するということになる。骨折という症状のまま、ガンとも戦わなければいけないようである。骨折による痛みとガンによる痛みと二重の痛みを我慢することになるのだろうか。
日曜日の夕食後から抗がん剤を飲み始めた。飲み始めたばかりなので、いまのところ大きな副作用は感じていない。ただ骨折の痛みは眠れないほどではないが継続している。骨がかなり脆くなっているので足に負担をかけ過ぎると他の骨も骨折する可能性があると言われ、車椅子の使用をすすめられた。最後の診察が終了して会計の際に、車椅子の貸し出しについて問い合わせたところ預かり保証金と僅かな部品損傷費用で借りることができた。今後は車椅子生活を強いられることになるが、上半身が自由に動かせるのは有り難い。抗がん剤の副作用がひどくなければ職場復帰もできるだろうと期待している。
体の動く限り、仕事は続けたいと願っている。
Quality of Life だけは譲れない。
治療の為だけの病院生活は避けたい。
今日も明るく前向きに。