コロナ禍中、30代に読んだ筒井康隆の小説『敵』を再度読み直していた吉田大八監督はこう思ったそうである。家の中に閉じこもっている男の日常が妄想に侵蝕されていくストーリーは、ロックダウン下にある現代社会にも相通じるポテンシャルを持っている、と。脚色大魔王の異名をとる吉田大八監督曰く「今まででもっとも原作に忠実な映画」だそうで、90歳をこえて車椅子生活状態の筒井康隆があと20歳若かったら、実際主人公への . . . 本文を読む
山ピーと新木優子が共演した、目の見えない男と聾唖の女を主人公にしたアマプラ恋愛ドラマを、現実的には100%成立しないおとぎ話やなぁと思いながら最後まで見てしまった記憶がある。そこへいくとノーベル文学賞受賞のハン・ガンが2回目のブッカー賞に輝いた本小説は、ギリシャ語講師の男が完全な失明状態ではなく、女性の方も言葉はしゃべれないけれど耳は聞こえる分、山ピーのドラマに比べるとまだ救いはある。しかし、お互 . . . 本文を読む