YAHOOを見た時点では、日中韓首脳会談の記事は評価が高くないように見受けられる。
其れもその筈、南シナ海の問題が李コッキョウ首相では解決がつかないと考える。
以下に示す論文が、首脳会談の主題であると考える。中国は米軍に対して如何なる行動で対処するのか?
世界各国は興味シンシンデ見つめている。
>米軍ついに南シナ海へ! 中国政界激震、習近平がつぶされた「二つのメンツ」とは?
緊迫の東アジア情勢を読み解く
現代ビジネス 2015/11/2 06:01 近藤 大介
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151102-00046144-biz_gendai-nb
>中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ
経済は急失速、軍事ではアメリカに完敗
現代ビジネス 2015/11/2 07:01 高橋 洋一
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151102-00046183-biz_gendai-nb
首相、中国の海洋進出に懸念表明か…首脳会談
読売新聞 11月2日(月)8時39分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151102-00050016-yom-pol
【ソウル=小坂一悟】安倍首相は1日の中国の李克強(リークォーチャン)首相との首脳会談で、中国の海洋進出に懸念を表明した模様だ。
ただ、中国は東シナ海や南シナ海での活動を続ける方針とみられ、火種が解消される見通しは立っていない。
日本政府は、中国による南シナ海の岩礁埋め立てについて、ベトナムやフィリピンなどと摩擦が生じていることを念頭に、厳しい態度を示している。中国による一方的な現状変更の試みは「国際社会共通の懸念事項」(菅官房長官)との認識があるためだ。
米国は、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島にイージス駆逐艦を派遣し、中国が領有権を主張する人工島から12カイリ内で巡視活動を行った。日本政府は「航行の自由」を確保すべきだとの立場から、米国の行動を支持している。首相は李氏との会談でも、こうした立場を伝えたとみられる。
米軍ついに南シナ海へ! 中国政界激震、習近平がつぶされた「二つのメンツ」とは? 緊迫の東アジア情勢を読み解く
現代ビジネス 2015/11/2 06:01 近藤 大介
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151102-00046144-biz_gendai-nb
米海軍のイージス艦「ラッセン」(右) 〔PHOTO〕gettyimages
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アメリカ軍がようやく実力行使
10月27日、アメリカ軍がついに南シナ海に進軍した。横須賀基地に配備しているイージス駆逐艦「ラッセン」を、中国が自国の領土と主張しているスプラ トリー(南沙)諸島のミスチーフ(美済)岩礁とスービ(渚碧)岩礁の12海里(約22㎞)内に航行させたのである。
この件について、ある日本政府関係者に聞くと、次のように述べた。
「やや遅きに失した感があったが、ようやくアメリカ軍が実力行使に出てくれた。今回は、三つの意味で価値ある行動だった。
第一は、アメリカが南シナ海を守るという意思表示をしたことで、日本や東南アジアなど中国の台頭を懸念する国々を、ひとまず安心させたことだ。
二つ目は、アメリカ軍に対応する中国軍の動きを確かめられたことだ。人民解放軍がどの軍港からどんな艦艇をどのくらいの規模で出すのかということは、実際にアメリカが南シナ海に進入するまで不明だった(いくつかの予測は立てていた)。
三つ目は、アメリカ軍が『航行の自由作戦』を継続させると宣言していることだ。われわれとしては、アメリカ軍に毎日でも入ってもらいたい。そして理想を 言えば、早く中国の不法な建造物を、特に物騒な三つの軍用滑走路を破壊してほしいが、さすがにアメリカも、そこまではしないだろう」
〔PHOTO〕gettyimages
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米の「領海侵犯」に対抗できなかった習近平
今回のアメリカ軍の実力行使を北京の側から見ると、現代の「皇帝」である習近平主席は、二つの意味でメンツを失った。
一つは、中国共産党トップ(党中央総書記)としてのメンツである。
中国は10月26日から29日まで、「5中全会」(中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議)を開催中だった。これは、習近平主席が主催し、中国共産党8779万人のトップ約355人が一堂に会して行われた、年に一度の重要会議である。
場所は、北京西郊にある人民解放軍総参謀部が経営する京西賓館。私も一度訪れたことがあるが、警備がものものしい、まさに要塞のようなホテルで、全576席の荘厳な大会議場がある。
だが今回の「5中全会」は、3つの点で、決して楽観的で明るい会議とはならなかった。
まず第一に、降って沸いたような「アメリカ軍の侵入」である。党の幹部が一堂に会しているというのに、アメリカ軍の行動を制止することも対抗措置を取ることもできなかった。
第二に、この会議の参加者は、本来なら205人の中央委員会委員と171人の中央委員会補欠委員の計376人である。だが、過去3年ですでに12人も失 脚してしまっているのだ。具体的には、委員が令計画、周本順、楊棟梁、蘇樹林の4人、補欠委員が笵長秘、王敏、陳川平、朱明国、仇和、楊衛沢、潘逸陽、余 遠輝の8人である。
他にも病欠などの事由で、21人も減ってしまった。空席の目立つ大会議場で、各メンバーたちは、次は自分の番かも知れないと思い、戦々兢々とした気分なのである。
第三に、「5中全会」の最大の議題は、2016年~20年の経済発展計画である「第13次5ヵ年計画」の策定だったが、中国経済の現状と近未来予想が、あまりに悲観的なことである。
そのため、10月29日の最終日に採択した「公報」(コミュニケ)の最大のトピックは、「一人っ子政策を完全に廃止する」ということだった。国民の消費 能力を増やすには、人口を増やすことくらいしか思いつかなかったのではと思えるほど、A4用紙で4枚に及ぶ公報には、空疎な用語が羅列されている。
一つだけ、象徴的なエピソードを述べよう。「5中全会」に合わせて、国営新華社通信が、「第12次5ヵ年計画」の発展を祝して賛意を示そう、というキャ ンペーンを始めた。「賛」と書かれた部分をクリックすると、「賛意に投票した」として、脇の数字が増えていく仕組みである。
ところが、4日間行われた「5中全会」の最終日夕刻になっても、12万8989人しか賛意を示していないのだ。中国の人口は、昨年末時点で13億6782万人と発表されているから、賛意を示した者の割合は、0.094%! 実に10604人に一人という確率だった。
ちなみに私が、恐る恐る「賛」をクリックしてみたところ、パッと12万8990人に増えた。ためしにもう一回クリックしてみると、12万8991人に増えた。なんと一人が何回でも押せる仕組みではないか!
ともあれ、そうした中で、アメリカ軍が南シナ海の中国が主張する「自国の領海」に進入したのである。中国から見たら、まさに主権を侵害する「暴挙」だ。 これに習近平政権が対抗できなかったことは、習近平主席(党総書記)の共産党トップとしての求心力を危うくさせるに十分だった。
人民解放軍トップとしてのメンツをつぶされた
さて、習近平主席がもう一つ失ったのは、まったく報じられていないが、中国人民解放軍トップ(中央軍事委員会主席)としてのメンツだ。
習近平主席が、軍のトップに立ってからまもなく3年が経つが、その間で最も重要な軍のイベントが二つあった。第一は、まだ記憶に新しい今年9月3日の北 京での軍事パレード、第二が、昨年10月30日に、福建省上杭県古田鎮で開催した「全軍政治工作会議」、通称「古田会議」である。
習近平主席は、かつて17年間も福建省に勤務していた。その際、この古田を「聖地」にしていた。
1929年12月28日と29日、古田で、中国共産党第9回代表大会が開かれた。この時、古田会議の決議の第一項「党内の錯誤した思想を矯正する」を起草したのが、毛沢東だった。
毛沢東は共産党が絶対的に「紅軍」(後の人民解放軍)を掌握することを決議した。そして実際に、この古田会議を経てまもなく軍を掌握し、それによって1935年の遵義会議で、中国共産党全体を掌握した。
そこで、毛沢東主席を偏愛する習近平主席もまた、現代版の古田会議を開いたというわけだ。
2014年10月30日午前9時、習近平主席は、古田会議の史跡がある小高い丘までの151段の階段を上り、毛沢東像に花を手向けた。そして毛沢東像に向かって3回、深々と頭を垂れたのだった。
習近平主席はこの日、笵長竜、許其亮、常万全、房峰輝、張陽、趙克石、張又侠、呉勝利、馬暁天、魏鳳和……と、230万人民解放軍のトップに立つ420人余りの幹部たちを、ズラリと引き連れていた。彼ら軍の幹部たちも、習主席にならって3度、深々とお辞儀した。
習近平主席は、皆で赤飯とカボチャスープという「紅軍飯」を分かち合った後、人民解放軍幹部たちを睥睨しながら、重要訓話を垂れた。
「軍は人民への服務を旨とし、強軍興軍の精神を増強させるのだ。党の指導に従い、強軍の目標に合わせ、強軍の魂を培うのだ!」
その後、計16人の軍幹部が、習近平主席に対する忠誠と強軍の誓いを行った。その中で、「習近平の代弁人」と呼ばれる劉亜洲・国防大学政治委員(空軍上将)は、次のように述べた。
「われわれは、習近平思想を深く理解せねばならない。特に強軍の事業を成就させるのだ。習近平主席は、軍人は戦場に向かえと明確に要求しておられる。わ れわれは強軍の目標を掲げ、習近平主席に絶対忠誠を誓い、習主席の『戦争ができて、かつ勝利する軍隊となれ』との要求に照らして、現代戦争の勝機を掴むの だ。すべては戦争に勝利する能力を高めるためにある!」
つまり「現代版古田会議」は、習近平主席による人民解放軍の掌握セレモニーであると同時に、強軍建設と戦勝の宣言だったわけだ。
この「現代版古田会議」の一周年を記念して、人民解放軍では10月28日から、一連の記念行事を行う予定でいた。その前日に、中国軍の出鼻を挫くかのように、アメリカ軍が進軍したのである。
オバマと習近平は11月に2度会う
人民解放軍の機関紙である『解放軍報』(10月28日付)は、次のように報じた。
〈 習近平主席は古田全軍政治工作会議で、こう指摘した。中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するため、強軍興軍を目指し、政治工作を強めなければならない。
「二つの百年」の目標(中国共産党百周年の2021年までにアジアの強国となり、建国100周年の2049年までに世界の強国となるという目標)と中華 民族の偉大なる復興という中国の夢は、強軍の夢を含むものだ。強大な軍隊がなければ、強国の偉業をなし得ることはできない 〉
このような古田会議の精神に従えば、人民解放軍は「自国の領海」に侵入したアメリカ軍を駆逐するはずである。ところが実際には、そうはならなかった。
まず、国防部の楊宇報道官は、次のような談話を発表した。
〈 10月27日、アメリカは中国政府が何度も交渉し、固く反対しているにもかかわらず、駆逐艦ラッセンを、中国南沙群島の島嶼近岸水域に進入させた。
アメリカの行為は中国の主権と安全を脅かすものであり、島の人々と施設の安全を脅かすものであり、漁民の正常な漁獲を脅かすものであり、地域の平和と安 定を損害するものだ。中国国防部は断固として反対し、アメリカに厳正なる交渉を求める。中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」と巡洋艦「台州」を、法に則って 派遣し、警告を発した。
中国軍は国家の主権と安全を維持し保護する堅固な意志を持ち、今後とも一切の必要な措置を取って、自身の安全を維持し、保護する 〉
他にも、中国外交部が北京駐在のボーゲル米国大使を呼びつけて抗議したり、ワシントンの崔天凱中国大使がCNNテレビを通じて抗議声明を発表したりした。
11月は、米中外交の季節となる。オバマ大統領と習近平主席は、11月15日、16日にトルコで開かれるG20首脳会議と、11月18日、19日にフィ リピンで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、2度顔を合わせる。この場には、いまやオバマ大統領の最大の敵であり、習近平主席の最大の友で あるプーチン大統領も参加する。
その前に10月29日、アメリカ海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長と、中国海軍制服組トップの呉勝利海軍司令員が、約1時間のテレビ会談を行った。11月初旬には、アメリカ太平洋軍のハリス司令官が北京を訪問するという。
ピルズベリー博士が暴露する「米中裏面史」
私はアメリカ軍が進入した日に、東京で、とあるキーパーソンにインタビューをした。
過去45年の米中関係を見る時、アメリカで最大のキーパーソンが二人いる。一人は、70年代に両国の架け橋となり、その後も隠然たる影響力を行使しているヘンリー・キッシンジャー元大統領安保担当補佐官である。キッシンジャー博士は、言ってみれば「表の顔」だ。
それに対して、「裏の顔」とも言えるのが、ハドソン研究所中国部長のマイケル・ピルズベリー博士である。ピルズベリー博士は、過去45年にわたって、CIAと国防総省で、中国問題の責任者を務めるなど、米中関係に多大な影響を与えてきた。
そしてこのほど、70歳にして、『China 2049』(日経BP社刊)を上梓し、日本語版の発刊を記念して短期間、東京を訪れたのだ。そんなピルズベリー博士に、1時間半にわたって話を聞いた。
この本は、ピルズベリー博士が「50年かけて書いた」と言うように、438ページもある大著で、「米中裏面史」が、「半ば」赤裸々に語られている。
「半ば」と言うのは、「CIA、FBI、国防総省の査読を事前に受けた」と、本の扉に書いてあるからである。博士本人に、「査読を受けてやむなくカットした部分は多かったか?」と聞いたら、苦笑しながら、「多かった」と答えた。
それでもこれほどの「米中裏面史」は、書かれたことがない。特に、博士自身も言っていたが、全11章中、第3章が圧巻である。そこには、「1970年代から80年代にかけて、アメリカが中国に対して、密かに軍事援助を行っていた」と暴露しているのである。
担当者自らが語っているのだから、事実に違いない。興味のある方は、ぜひ同書を一読されたい。
写真:現代ビジネス
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複雑化する米中関係をどう読み解くか
そのことも踏まえて、今回のアメリカ軍の進入について聞くと、博士は次のように述べた。
「本来なら、2年前にアメリカ軍の艦艇を派遣しておくべきだった。そうしたら中国の不法行為も、事前に防げたはずだ。だが、第一にアメリカ議会が反対したのだ。議員には親中派も多く、彼らは中国は敵ではなく、アメリカに富をもたらす存在と見ているのだ。
第二に、オバマ政権自身が躊躇した。それは、70年代に始めた中国への秘密軍事援助が、いまだに一部、続いているからだ」
中国からの軍事援助については、同書を読んだ日本政府がアメリカに抗議し、改善してもらうことを願うばかりだ。
私はまた、「習近平という指導者をどう見ているか?」とも聞いてみた。すると一瞬、黙考した後に、次のように語った。
「習近平主席は、賢い指導者だと思う。軍の強硬派をバックにしていて、『一帯一路』(『シルクロード経済ベルト』と『21世紀海上シルクロード』)、AIIB(アジアインフラ投資銀行)といった素晴らしいアイデアを実現させていく。
だがその一方で、国民の人権は無視するし、国有企業改革も進まない。9月に30万人の裁軍を発表したが、この先も、人民解放軍の支持を最大のバックにして政権運営を行うだろう」
ピルズベリー博士と話していて感じたのは、米中関係の複雑さである。世界の両大国なのだから、その関係が複雑なのは当然だろう。
2009年に、当時のハンツマン駐中国アメリカ大使に話を聞いたことがあったが、やはり次のように述べていた。
「米中の国交が正常化して、ちょうど40年を迎えた。これからの米中関係は、大変複雑な時代に入っていく。それは海図のない航海のようなものだ」
日本としては、何とかしてこの複雑なパズルを読み解き、国益に反映させていくしかない。
* * *
【付記】
このたび『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』(講談社プラスアルファ新書)という新著を上梓しました。今回の新著では、われわれ日本人も決して他人事では済まされない、中国経済の昨今の減速ぶりを分析しました。
先週、アメリカ軍が南シナ海に駆逐艦を派遣したのも、中国の経済失速と無関係ではありません。「中国の経済失速」が引き金になって、東アジア全体の「位相」に変化が起きつつあるのです。
10月20日、中国商務部の瀋丹陽報道官が記者会見を開き、第3四半期まで(1月~9月)の経済統計を発表しました。
この時、瀋報道官が、景気のいい経済統計ばかりピックアップして発表するので、TBSの記者が思い余って、「第3四半期までの日本及びアメリカから中国への投資額とその増減を公表してほしい」と質問しました。すると瀋報道官は、木で鼻をくくったような回答をしたのです。
「私がいま発表した統計から見れば、日本からの投資はどうやら減少したようだが、具体的な数値は、いま手元にない。私が言えることは、下降の幅は大きくはないということだ。謝謝」
おそらく日本からの対中投資は前年同期比で25%程度、アメリカからの対中投資はそれ以上に減少しているものと思われます。つまりアメリカは、経済失速していく中国の足元を見て、南シナ海への進軍を強行したわけです。
『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』
著者: 近藤大介
(講談社+α新書、税込み821円)
株価暴落560兆円。地方負債480兆円。銀行不良債権36兆円。強引な共産党政治やトップたちの権力闘争と絡め、中国経済が抱える闇とその行く末に迫る!
『習近平は必ず金正恩を殺す』
著者: 近藤大介
(講談社、税込み1,620円)
中朝開戦の必然---国内に鬱積する不満を解消するためには、中国で最も嫌われている人物、すなわち金正恩を殺すしかない! 天安門事件や金丸訪朝を直接取材し、小泉訪朝団に随行した著者の、25年にわたる中朝取材の総決算!
中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ 経済は急失速、軍事ではアメリカに完敗
現代ビジネス 2015/11/2 07:01 高橋 洋一
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151102-00046183-biz_gendai-nb
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歴代の政権に失望する韓国の財界人
日中韓首脳会談が、ソウルで3年半ぶりに開催された。日中韓首脳会談の定例化などが確認され、3ヵ国の新たな協力体制がとりあえず確立された。
ホスト国の韓国は日中韓首脳会談を成功させたので、一安心だろう。2008年から毎年開催されていたが、2012年5月を境に開催されていなかった。2012年8月の李明博竹島上陸、9月の尖閣諸島問題で日韓、日中の関係が悪化したためだ。
そのことは今も尾を引いている。中韓首脳会談は日中韓首脳会談の「前」に行われたが、日中首脳会談と日韓首脳会談はその「後」に行われた。この会談の順番でもわかるように、日本vs.中国・韓国というのが基本構図だ。
例えば、歴史問題では中韓は共闘して日本に対峙する。日中韓首脳会談直後の記者会見で、ホスト国の朴・韓国大統領は「歴史問題」とは明言しなかったが、李・中国首相は何度も歴史問題と言及していた。
ホットな南シナ海問題について、三首脳は記者会見で言及しなかった。本来韓国は米韓同盟もあるし、韓国にとっても重要なシーレーンの問題であるので、取り上げるべきなのだが、中国の手前それはできない。
TPPについて、安倍首相は言及したが、朴大統領と李首相はもっぱら日中韓FTAの話題ばかりだ。本来であれば、韓国はTPPに参加すべきで、事実、韓国財界はTPPへ参加したがっている。日本に頼んでも参加したほうが韓国の国益にもなるが、これも中国に遠慮している。
韓国財界は、これまで日本より中国を優先してきた歴代政権に失望しているだろう。日本への対抗心で、今年2月、2001年7月に始まった日韓通貨スワップが打ち切られた。
ところが、先月、韓国の経済団体、全国経済人連合会は、日本の経団連に対して、日韓通貨スワップの再開を求めている。このことからも、それは明らかだ。
これまでの判断ミスをさらに印象付けているのは、中国の状況だ。今の中国は「外患内憂」という言葉がぴったり当てはまる。もし中国が好調ならば、韓国の中国寄りの姿勢は功を奏しているといえるが、そうでない以上、まるで当てが外れてしまっている。
覇権国家になろうとする中国の「浅はかさ」
まず、中国の「外患」として、南シナ海問題がある。10月27日、米海軍のイージス駆逐艦が南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)の海域を航行し、米中間の緊張が高まっている。
中国は、近年南沙諸島に拠点を築くことに躍起になっている。太平洋へと進出する足がかりを作るためだ。その流れで見ると、尖閣諸島に異常なこだわりを見せる理由もよく分かる。
南沙諸島(スプラトリー諸島)における中国の埋立などについては、本コラムでも写真入りで書いた(「安倍首相はポツダム宣言を読んでいた!? 理解不能だったのは党首討論での集団的自衛権めぐる共産党の主張だ」)。
つまり中国は、かつてのイギリスと今のアメリカが海洋国家で世界覇権をとったように、これまでの内陸国家の性格を変えてまでも、今こそ海へと進出し、覇権国家になろうとしているのだ。
「太平洋二分論」まで匂わせている習近平は、明確かつ具体的に、中国という内陸国家を海洋国家へとシフトさせようとしている、初めての国家主席といえるだろう。
安全保障からみると、中国が海洋国家化を進める理由の一つは、アメリカその他の国々の軍事技術の発達だ。軍事衛星の映像やグーグルの衛星写真を見れば、この事情は容易にわかるだろう。
非常に鮮明で、砂漠だろうと森林地帯だろうと、内陸部の軍事施設は、ほぼ丸裸である。いくら優れた軍事施設をもっていても、あれほど鮮明な衛星技術をもって空から攻撃されたらひとたまりもない。
しかし、海中の原子力潜水艦であれば、空からはとらえられない。しかも、原子力潜水艦は、燃料の心配なく長期間の連続航行が可能であり、有り余る電力によって海水から酸素も作れるので、数ヶ月以上の連続潜行ができる。おそらく原子力潜水艦が現時点で最強の兵器だろう。
中国は、南シナ海を支配し、そこを通じて太平洋に原子力潜水艦を配備したいのだ。
しかし、中国の行為は国際法を完全に無視している。国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。したがって、そこをいくら埋め立てて 「島」のようにしたとしても、国際法上は「領土」にはならない。中国はそれを無視して、領有権を主張していることになる。
日和った中国
海洋の自由航行は、海洋国家アメリカにとって死活問題となる。そこで、オバマ政権は、遅ればせながら、海軍のイージス駆逐艦を派遣して、中国の領有権主張を牽制したのだ。
海洋国家になりたい中国だが、海軍力での相対的な軍事格差から、中国はアメリカと一戦を構えるはずない。もし戦えば徹底的に敗北し、中国の体制崩壊につながるからだ。
中国はそれを分かっているから、米イージス駆逐艦に対して、「監視、追尾、警告」と、対内的にはアピールできても、国際的には事実上何の意味もないことしたできなかったわけだ。
もし中国がまともに対するのであれば、かつて黒海でソ連が米艦に行ったように、船の体当たりくらいはやるはずだ。必要なら、中国漁船を米イージス駆逐艦の前に派遣するくらいのことをするだろう。
なお、今回のアメリカの行動は、日本の安全保障に資する。本コラムでこれまで述べてきた国際関係論(7月20日付「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打 つ! 戦争を防ぐための「平和の五要件」を教えよう」)からみれば、安保法で日米同盟は強化されたので、中国は、迂闊に尖閣に手出しをできなくなった。
尖閣は日米安保の対象であるとアメリカは明言しているので、南シナ海に展開しているアメリカ軍は、尖閣でなにかあればすぐにでも対処できるからだ。
さらに、南シナ海は日本のシーレーン(海上の交通路)の一つたが、それも守られることになる。
なぜ中国の統計はデタラメなのか
次に、中国の内憂について。いうまでもなくそれは経済だ。米イージス駆逐艦が南シナ海を航行している時、五中全会(中国共産党第18期中央委員会第5回 全体会議)が開かれ、2020年に2010年のGDPを2倍にするという目標が決められた。これは、7%成長を維持するという意味だ。
この数字を中国人に聞けば、誰も「信じていない」というだろう。
本コラムでも、今の中国経済は7%成長どころか、マイナス成長であると書いた(8月24日付け「衝撃! 中国経済はすでにマイナス成長に入っている? データが語る『第二のリーマン・ショック』」)。
実は、中国の統計は、それを作成する組織もその作成手法も旧ソ連から持ってきたノウハウで行っている。中央集権・計画経済の社会主義国では、統計のいい加減さでは似たり寄ったりの事情だ。
ロシアでは、ペレストロイカの前まで経済統計は改ざんされていたが、批判はタブーだった。しかし、ペレストロイカ前後、ロシア人研究者などがそのでたらめ具合を明らかにした。
例えば、1987年、セリューニンとニーハンによる「狡猾な数字」が発表され、ソ連の公式統計では1928~1985年の国民所得の伸びが90倍となっ ているが、実際には6.5倍にすぎないとされた。平均成長率は年率8.2%から3.3%へとダウンだ。57年間にわたって、国内外を騙し続けたのだ。
公表されている統計からみても、そろそろ中国が経済成長の停滞期に入るだろう、というのが、ほとんどの学者のコンセンサスである。それは、「中所得国の罠」といわれる。
写真:現代ビジネス
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中国も陥った「中所得国の罠」
「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することをいう。
この「中所得国の罠」を突破するのは結構難しい。アメリカを別格として、日本は60年代に、香港、シンガポールは70年代に、韓国は80年代にその罠を突破したといわれている。ただし、アジアでもマレーシアやタイは罠にはまっているようだ。
中南米でも、ブラジル、チリ、メキシコも罠に陥っているようで、一人当たりGDPが1万ドルを突破してもその後は伸び悩んでいる。
そこで中国の動きを、これらの国のこれまでの軌跡とともに示したのが下図である。
実際のデータは、かなり複雑な動きなので、それぞれ2次曲線で回帰させ、各国の特徴がそれぞれわかるようにしている。
これまで中国は驚異的な成長率を保ち、「中所得国の罠」を破ろうとする勢いだったが、急速に成長率が低下し、壁にぶち当たっているのがわかる。
さらに、旧ソ連と同じように、5%程度も成長率が割増になっているとしたら、上の図で中国を左下に引き下げれば、これまで「中所得国の罠」に陥った国と同じ傾向になる。
中国は「中所得国の罠」を破れるだろうか。世界銀行やOECDなどから数々の提言が出ているが、筆者には中国が一党独裁体制をやめない限り、罠をやぶることは無理だと見る。
ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(1962年)では、政治的自由と経済的自由は密接な関係があって、競争的な資本主義がそれらを実現させると 書かれている。経済的自由がないと、国際機関の提言は実行できない。経済的自由を保つには、政治的自由が必要になる。つまるところ結局、一党独裁が最後に 障害になるのだ。
そう考えると、中国の外患内憂はそう簡単に解決しないだろう。
其れもその筈、南シナ海の問題が李コッキョウ首相では解決がつかないと考える。
以下に示す論文が、首脳会談の主題であると考える。中国は米軍に対して如何なる行動で対処するのか?
世界各国は興味シンシンデ見つめている。
>米軍ついに南シナ海へ! 中国政界激震、習近平がつぶされた「二つのメンツ」とは?
緊迫の東アジア情勢を読み解く
現代ビジネス 2015/11/2 06:01 近藤 大介
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>中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ
経済は急失速、軍事ではアメリカに完敗
現代ビジネス 2015/11/2 07:01 高橋 洋一
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首相、中国の海洋進出に懸念表明か…首脳会談
読売新聞 11月2日(月)8時39分配信
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【ソウル=小坂一悟】安倍首相は1日の中国の李克強(リークォーチャン)首相との首脳会談で、中国の海洋進出に懸念を表明した模様だ。
ただ、中国は東シナ海や南シナ海での活動を続ける方針とみられ、火種が解消される見通しは立っていない。
日本政府は、中国による南シナ海の岩礁埋め立てについて、ベトナムやフィリピンなどと摩擦が生じていることを念頭に、厳しい態度を示している。中国による一方的な現状変更の試みは「国際社会共通の懸念事項」(菅官房長官)との認識があるためだ。
米国は、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島にイージス駆逐艦を派遣し、中国が領有権を主張する人工島から12カイリ内で巡視活動を行った。日本政府は「航行の自由」を確保すべきだとの立場から、米国の行動を支持している。首相は李氏との会談でも、こうした立場を伝えたとみられる。
米軍ついに南シナ海へ! 中国政界激震、習近平がつぶされた「二つのメンツ」とは? 緊迫の東アジア情勢を読み解く
現代ビジネス 2015/11/2 06:01 近藤 大介
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米海軍のイージス艦「ラッセン」(右) 〔PHOTO〕gettyimages
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アメリカ軍がようやく実力行使
10月27日、アメリカ軍がついに南シナ海に進軍した。横須賀基地に配備しているイージス駆逐艦「ラッセン」を、中国が自国の領土と主張しているスプラ トリー(南沙)諸島のミスチーフ(美済)岩礁とスービ(渚碧)岩礁の12海里(約22㎞)内に航行させたのである。
この件について、ある日本政府関係者に聞くと、次のように述べた。
「やや遅きに失した感があったが、ようやくアメリカ軍が実力行使に出てくれた。今回は、三つの意味で価値ある行動だった。
第一は、アメリカが南シナ海を守るという意思表示をしたことで、日本や東南アジアなど中国の台頭を懸念する国々を、ひとまず安心させたことだ。
二つ目は、アメリカ軍に対応する中国軍の動きを確かめられたことだ。人民解放軍がどの軍港からどんな艦艇をどのくらいの規模で出すのかということは、実際にアメリカが南シナ海に進入するまで不明だった(いくつかの予測は立てていた)。
三つ目は、アメリカ軍が『航行の自由作戦』を継続させると宣言していることだ。われわれとしては、アメリカ軍に毎日でも入ってもらいたい。そして理想を 言えば、早く中国の不法な建造物を、特に物騒な三つの軍用滑走路を破壊してほしいが、さすがにアメリカも、そこまではしないだろう」
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米の「領海侵犯」に対抗できなかった習近平
今回のアメリカ軍の実力行使を北京の側から見ると、現代の「皇帝」である習近平主席は、二つの意味でメンツを失った。
一つは、中国共産党トップ(党中央総書記)としてのメンツである。
中国は10月26日から29日まで、「5中全会」(中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議)を開催中だった。これは、習近平主席が主催し、中国共産党8779万人のトップ約355人が一堂に会して行われた、年に一度の重要会議である。
場所は、北京西郊にある人民解放軍総参謀部が経営する京西賓館。私も一度訪れたことがあるが、警備がものものしい、まさに要塞のようなホテルで、全576席の荘厳な大会議場がある。
だが今回の「5中全会」は、3つの点で、決して楽観的で明るい会議とはならなかった。
まず第一に、降って沸いたような「アメリカ軍の侵入」である。党の幹部が一堂に会しているというのに、アメリカ軍の行動を制止することも対抗措置を取ることもできなかった。
第二に、この会議の参加者は、本来なら205人の中央委員会委員と171人の中央委員会補欠委員の計376人である。だが、過去3年ですでに12人も失 脚してしまっているのだ。具体的には、委員が令計画、周本順、楊棟梁、蘇樹林の4人、補欠委員が笵長秘、王敏、陳川平、朱明国、仇和、楊衛沢、潘逸陽、余 遠輝の8人である。
他にも病欠などの事由で、21人も減ってしまった。空席の目立つ大会議場で、各メンバーたちは、次は自分の番かも知れないと思い、戦々兢々とした気分なのである。
第三に、「5中全会」の最大の議題は、2016年~20年の経済発展計画である「第13次5ヵ年計画」の策定だったが、中国経済の現状と近未来予想が、あまりに悲観的なことである。
そのため、10月29日の最終日に採択した「公報」(コミュニケ)の最大のトピックは、「一人っ子政策を完全に廃止する」ということだった。国民の消費 能力を増やすには、人口を増やすことくらいしか思いつかなかったのではと思えるほど、A4用紙で4枚に及ぶ公報には、空疎な用語が羅列されている。
一つだけ、象徴的なエピソードを述べよう。「5中全会」に合わせて、国営新華社通信が、「第12次5ヵ年計画」の発展を祝して賛意を示そう、というキャ ンペーンを始めた。「賛」と書かれた部分をクリックすると、「賛意に投票した」として、脇の数字が増えていく仕組みである。
ところが、4日間行われた「5中全会」の最終日夕刻になっても、12万8989人しか賛意を示していないのだ。中国の人口は、昨年末時点で13億6782万人と発表されているから、賛意を示した者の割合は、0.094%! 実に10604人に一人という確率だった。
ちなみに私が、恐る恐る「賛」をクリックしてみたところ、パッと12万8990人に増えた。ためしにもう一回クリックしてみると、12万8991人に増えた。なんと一人が何回でも押せる仕組みではないか!
ともあれ、そうした中で、アメリカ軍が南シナ海の中国が主張する「自国の領海」に進入したのである。中国から見たら、まさに主権を侵害する「暴挙」だ。 これに習近平政権が対抗できなかったことは、習近平主席(党総書記)の共産党トップとしての求心力を危うくさせるに十分だった。
人民解放軍トップとしてのメンツをつぶされた
さて、習近平主席がもう一つ失ったのは、まったく報じられていないが、中国人民解放軍トップ(中央軍事委員会主席)としてのメンツだ。
習近平主席が、軍のトップに立ってからまもなく3年が経つが、その間で最も重要な軍のイベントが二つあった。第一は、まだ記憶に新しい今年9月3日の北 京での軍事パレード、第二が、昨年10月30日に、福建省上杭県古田鎮で開催した「全軍政治工作会議」、通称「古田会議」である。
習近平主席は、かつて17年間も福建省に勤務していた。その際、この古田を「聖地」にしていた。
1929年12月28日と29日、古田で、中国共産党第9回代表大会が開かれた。この時、古田会議の決議の第一項「党内の錯誤した思想を矯正する」を起草したのが、毛沢東だった。
毛沢東は共産党が絶対的に「紅軍」(後の人民解放軍)を掌握することを決議した。そして実際に、この古田会議を経てまもなく軍を掌握し、それによって1935年の遵義会議で、中国共産党全体を掌握した。
そこで、毛沢東主席を偏愛する習近平主席もまた、現代版の古田会議を開いたというわけだ。
2014年10月30日午前9時、習近平主席は、古田会議の史跡がある小高い丘までの151段の階段を上り、毛沢東像に花を手向けた。そして毛沢東像に向かって3回、深々と頭を垂れたのだった。
習近平主席はこの日、笵長竜、許其亮、常万全、房峰輝、張陽、趙克石、張又侠、呉勝利、馬暁天、魏鳳和……と、230万人民解放軍のトップに立つ420人余りの幹部たちを、ズラリと引き連れていた。彼ら軍の幹部たちも、習主席にならって3度、深々とお辞儀した。
習近平主席は、皆で赤飯とカボチャスープという「紅軍飯」を分かち合った後、人民解放軍幹部たちを睥睨しながら、重要訓話を垂れた。
「軍は人民への服務を旨とし、強軍興軍の精神を増強させるのだ。党の指導に従い、強軍の目標に合わせ、強軍の魂を培うのだ!」
その後、計16人の軍幹部が、習近平主席に対する忠誠と強軍の誓いを行った。その中で、「習近平の代弁人」と呼ばれる劉亜洲・国防大学政治委員(空軍上将)は、次のように述べた。
「われわれは、習近平思想を深く理解せねばならない。特に強軍の事業を成就させるのだ。習近平主席は、軍人は戦場に向かえと明確に要求しておられる。わ れわれは強軍の目標を掲げ、習近平主席に絶対忠誠を誓い、習主席の『戦争ができて、かつ勝利する軍隊となれ』との要求に照らして、現代戦争の勝機を掴むの だ。すべては戦争に勝利する能力を高めるためにある!」
つまり「現代版古田会議」は、習近平主席による人民解放軍の掌握セレモニーであると同時に、強軍建設と戦勝の宣言だったわけだ。
この「現代版古田会議」の一周年を記念して、人民解放軍では10月28日から、一連の記念行事を行う予定でいた。その前日に、中国軍の出鼻を挫くかのように、アメリカ軍が進軍したのである。
オバマと習近平は11月に2度会う
人民解放軍の機関紙である『解放軍報』(10月28日付)は、次のように報じた。
〈 習近平主席は古田全軍政治工作会議で、こう指摘した。中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するため、強軍興軍を目指し、政治工作を強めなければならない。
「二つの百年」の目標(中国共産党百周年の2021年までにアジアの強国となり、建国100周年の2049年までに世界の強国となるという目標)と中華 民族の偉大なる復興という中国の夢は、強軍の夢を含むものだ。強大な軍隊がなければ、強国の偉業をなし得ることはできない 〉
このような古田会議の精神に従えば、人民解放軍は「自国の領海」に侵入したアメリカ軍を駆逐するはずである。ところが実際には、そうはならなかった。
まず、国防部の楊宇報道官は、次のような談話を発表した。
〈 10月27日、アメリカは中国政府が何度も交渉し、固く反対しているにもかかわらず、駆逐艦ラッセンを、中国南沙群島の島嶼近岸水域に進入させた。
アメリカの行為は中国の主権と安全を脅かすものであり、島の人々と施設の安全を脅かすものであり、漁民の正常な漁獲を脅かすものであり、地域の平和と安 定を損害するものだ。中国国防部は断固として反対し、アメリカに厳正なる交渉を求める。中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」と巡洋艦「台州」を、法に則って 派遣し、警告を発した。
中国軍は国家の主権と安全を維持し保護する堅固な意志を持ち、今後とも一切の必要な措置を取って、自身の安全を維持し、保護する 〉
他にも、中国外交部が北京駐在のボーゲル米国大使を呼びつけて抗議したり、ワシントンの崔天凱中国大使がCNNテレビを通じて抗議声明を発表したりした。
11月は、米中外交の季節となる。オバマ大統領と習近平主席は、11月15日、16日にトルコで開かれるG20首脳会議と、11月18日、19日にフィ リピンで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、2度顔を合わせる。この場には、いまやオバマ大統領の最大の敵であり、習近平主席の最大の友で あるプーチン大統領も参加する。
その前に10月29日、アメリカ海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長と、中国海軍制服組トップの呉勝利海軍司令員が、約1時間のテレビ会談を行った。11月初旬には、アメリカ太平洋軍のハリス司令官が北京を訪問するという。
ピルズベリー博士が暴露する「米中裏面史」
私はアメリカ軍が進入した日に、東京で、とあるキーパーソンにインタビューをした。
過去45年の米中関係を見る時、アメリカで最大のキーパーソンが二人いる。一人は、70年代に両国の架け橋となり、その後も隠然たる影響力を行使しているヘンリー・キッシンジャー元大統領安保担当補佐官である。キッシンジャー博士は、言ってみれば「表の顔」だ。
それに対して、「裏の顔」とも言えるのが、ハドソン研究所中国部長のマイケル・ピルズベリー博士である。ピルズベリー博士は、過去45年にわたって、CIAと国防総省で、中国問題の責任者を務めるなど、米中関係に多大な影響を与えてきた。
そしてこのほど、70歳にして、『China 2049』(日経BP社刊)を上梓し、日本語版の発刊を記念して短期間、東京を訪れたのだ。そんなピルズベリー博士に、1時間半にわたって話を聞いた。
この本は、ピルズベリー博士が「50年かけて書いた」と言うように、438ページもある大著で、「米中裏面史」が、「半ば」赤裸々に語られている。
「半ば」と言うのは、「CIA、FBI、国防総省の査読を事前に受けた」と、本の扉に書いてあるからである。博士本人に、「査読を受けてやむなくカットした部分は多かったか?」と聞いたら、苦笑しながら、「多かった」と答えた。
それでもこれほどの「米中裏面史」は、書かれたことがない。特に、博士自身も言っていたが、全11章中、第3章が圧巻である。そこには、「1970年代から80年代にかけて、アメリカが中国に対して、密かに軍事援助を行っていた」と暴露しているのである。
担当者自らが語っているのだから、事実に違いない。興味のある方は、ぜひ同書を一読されたい。
写真:現代ビジネス
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複雑化する米中関係をどう読み解くか
そのことも踏まえて、今回のアメリカ軍の進入について聞くと、博士は次のように述べた。
「本来なら、2年前にアメリカ軍の艦艇を派遣しておくべきだった。そうしたら中国の不法行為も、事前に防げたはずだ。だが、第一にアメリカ議会が反対したのだ。議員には親中派も多く、彼らは中国は敵ではなく、アメリカに富をもたらす存在と見ているのだ。
第二に、オバマ政権自身が躊躇した。それは、70年代に始めた中国への秘密軍事援助が、いまだに一部、続いているからだ」
中国からの軍事援助については、同書を読んだ日本政府がアメリカに抗議し、改善してもらうことを願うばかりだ。
私はまた、「習近平という指導者をどう見ているか?」とも聞いてみた。すると一瞬、黙考した後に、次のように語った。
「習近平主席は、賢い指導者だと思う。軍の強硬派をバックにしていて、『一帯一路』(『シルクロード経済ベルト』と『21世紀海上シルクロード』)、AIIB(アジアインフラ投資銀行)といった素晴らしいアイデアを実現させていく。
だがその一方で、国民の人権は無視するし、国有企業改革も進まない。9月に30万人の裁軍を発表したが、この先も、人民解放軍の支持を最大のバックにして政権運営を行うだろう」
ピルズベリー博士と話していて感じたのは、米中関係の複雑さである。世界の両大国なのだから、その関係が複雑なのは当然だろう。
2009年に、当時のハンツマン駐中国アメリカ大使に話を聞いたことがあったが、やはり次のように述べていた。
「米中の国交が正常化して、ちょうど40年を迎えた。これからの米中関係は、大変複雑な時代に入っていく。それは海図のない航海のようなものだ」
日本としては、何とかしてこの複雑なパズルを読み解き、国益に反映させていくしかない。
* * *
【付記】
このたび『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』(講談社プラスアルファ新書)という新著を上梓しました。今回の新著では、われわれ日本人も決して他人事では済まされない、中国経済の昨今の減速ぶりを分析しました。
先週、アメリカ軍が南シナ海に駆逐艦を派遣したのも、中国の経済失速と無関係ではありません。「中国の経済失速」が引き金になって、東アジア全体の「位相」に変化が起きつつあるのです。
10月20日、中国商務部の瀋丹陽報道官が記者会見を開き、第3四半期まで(1月~9月)の経済統計を発表しました。
この時、瀋報道官が、景気のいい経済統計ばかりピックアップして発表するので、TBSの記者が思い余って、「第3四半期までの日本及びアメリカから中国への投資額とその増減を公表してほしい」と質問しました。すると瀋報道官は、木で鼻をくくったような回答をしたのです。
「私がいま発表した統計から見れば、日本からの投資はどうやら減少したようだが、具体的な数値は、いま手元にない。私が言えることは、下降の幅は大きくはないということだ。謝謝」
おそらく日本からの対中投資は前年同期比で25%程度、アメリカからの対中投資はそれ以上に減少しているものと思われます。つまりアメリカは、経済失速していく中国の足元を見て、南シナ海への進軍を強行したわけです。
『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』
著者: 近藤大介
(講談社+α新書、税込み821円)
株価暴落560兆円。地方負債480兆円。銀行不良債権36兆円。強引な共産党政治やトップたちの権力闘争と絡め、中国経済が抱える闇とその行く末に迫る!
『習近平は必ず金正恩を殺す』
著者: 近藤大介
(講談社、税込み1,620円)
中朝開戦の必然---国内に鬱積する不満を解消するためには、中国で最も嫌われている人物、すなわち金正恩を殺すしかない! 天安門事件や金丸訪朝を直接取材し、小泉訪朝団に随行した著者の、25年にわたる中朝取材の総決算!
中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ 経済は急失速、軍事ではアメリカに完敗
現代ビジネス 2015/11/2 07:01 高橋 洋一
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歴代の政権に失望する韓国の財界人
日中韓首脳会談が、ソウルで3年半ぶりに開催された。日中韓首脳会談の定例化などが確認され、3ヵ国の新たな協力体制がとりあえず確立された。
ホスト国の韓国は日中韓首脳会談を成功させたので、一安心だろう。2008年から毎年開催されていたが、2012年5月を境に開催されていなかった。2012年8月の李明博竹島上陸、9月の尖閣諸島問題で日韓、日中の関係が悪化したためだ。
そのことは今も尾を引いている。中韓首脳会談は日中韓首脳会談の「前」に行われたが、日中首脳会談と日韓首脳会談はその「後」に行われた。この会談の順番でもわかるように、日本vs.中国・韓国というのが基本構図だ。
例えば、歴史問題では中韓は共闘して日本に対峙する。日中韓首脳会談直後の記者会見で、ホスト国の朴・韓国大統領は「歴史問題」とは明言しなかったが、李・中国首相は何度も歴史問題と言及していた。
ホットな南シナ海問題について、三首脳は記者会見で言及しなかった。本来韓国は米韓同盟もあるし、韓国にとっても重要なシーレーンの問題であるので、取り上げるべきなのだが、中国の手前それはできない。
TPPについて、安倍首相は言及したが、朴大統領と李首相はもっぱら日中韓FTAの話題ばかりだ。本来であれば、韓国はTPPに参加すべきで、事実、韓国財界はTPPへ参加したがっている。日本に頼んでも参加したほうが韓国の国益にもなるが、これも中国に遠慮している。
韓国財界は、これまで日本より中国を優先してきた歴代政権に失望しているだろう。日本への対抗心で、今年2月、2001年7月に始まった日韓通貨スワップが打ち切られた。
ところが、先月、韓国の経済団体、全国経済人連合会は、日本の経団連に対して、日韓通貨スワップの再開を求めている。このことからも、それは明らかだ。
これまでの判断ミスをさらに印象付けているのは、中国の状況だ。今の中国は「外患内憂」という言葉がぴったり当てはまる。もし中国が好調ならば、韓国の中国寄りの姿勢は功を奏しているといえるが、そうでない以上、まるで当てが外れてしまっている。
覇権国家になろうとする中国の「浅はかさ」
まず、中国の「外患」として、南シナ海問題がある。10月27日、米海軍のイージス駆逐艦が南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)の海域を航行し、米中間の緊張が高まっている。
中国は、近年南沙諸島に拠点を築くことに躍起になっている。太平洋へと進出する足がかりを作るためだ。その流れで見ると、尖閣諸島に異常なこだわりを見せる理由もよく分かる。
南沙諸島(スプラトリー諸島)における中国の埋立などについては、本コラムでも写真入りで書いた(「安倍首相はポツダム宣言を読んでいた!? 理解不能だったのは党首討論での集団的自衛権めぐる共産党の主張だ」)。
つまり中国は、かつてのイギリスと今のアメリカが海洋国家で世界覇権をとったように、これまでの内陸国家の性格を変えてまでも、今こそ海へと進出し、覇権国家になろうとしているのだ。
「太平洋二分論」まで匂わせている習近平は、明確かつ具体的に、中国という内陸国家を海洋国家へとシフトさせようとしている、初めての国家主席といえるだろう。
安全保障からみると、中国が海洋国家化を進める理由の一つは、アメリカその他の国々の軍事技術の発達だ。軍事衛星の映像やグーグルの衛星写真を見れば、この事情は容易にわかるだろう。
非常に鮮明で、砂漠だろうと森林地帯だろうと、内陸部の軍事施設は、ほぼ丸裸である。いくら優れた軍事施設をもっていても、あれほど鮮明な衛星技術をもって空から攻撃されたらひとたまりもない。
しかし、海中の原子力潜水艦であれば、空からはとらえられない。しかも、原子力潜水艦は、燃料の心配なく長期間の連続航行が可能であり、有り余る電力によって海水から酸素も作れるので、数ヶ月以上の連続潜行ができる。おそらく原子力潜水艦が現時点で最強の兵器だろう。
中国は、南シナ海を支配し、そこを通じて太平洋に原子力潜水艦を配備したいのだ。
しかし、中国の行為は国際法を完全に無視している。国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。したがって、そこをいくら埋め立てて 「島」のようにしたとしても、国際法上は「領土」にはならない。中国はそれを無視して、領有権を主張していることになる。
日和った中国
海洋の自由航行は、海洋国家アメリカにとって死活問題となる。そこで、オバマ政権は、遅ればせながら、海軍のイージス駆逐艦を派遣して、中国の領有権主張を牽制したのだ。
海洋国家になりたい中国だが、海軍力での相対的な軍事格差から、中国はアメリカと一戦を構えるはずない。もし戦えば徹底的に敗北し、中国の体制崩壊につながるからだ。
中国はそれを分かっているから、米イージス駆逐艦に対して、「監視、追尾、警告」と、対内的にはアピールできても、国際的には事実上何の意味もないことしたできなかったわけだ。
もし中国がまともに対するのであれば、かつて黒海でソ連が米艦に行ったように、船の体当たりくらいはやるはずだ。必要なら、中国漁船を米イージス駆逐艦の前に派遣するくらいのことをするだろう。
なお、今回のアメリカの行動は、日本の安全保障に資する。本コラムでこれまで述べてきた国際関係論(7月20日付「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打 つ! 戦争を防ぐための「平和の五要件」を教えよう」)からみれば、安保法で日米同盟は強化されたので、中国は、迂闊に尖閣に手出しをできなくなった。
尖閣は日米安保の対象であるとアメリカは明言しているので、南シナ海に展開しているアメリカ軍は、尖閣でなにかあればすぐにでも対処できるからだ。
さらに、南シナ海は日本のシーレーン(海上の交通路)の一つたが、それも守られることになる。
なぜ中国の統計はデタラメなのか
次に、中国の内憂について。いうまでもなくそれは経済だ。米イージス駆逐艦が南シナ海を航行している時、五中全会(中国共産党第18期中央委員会第5回 全体会議)が開かれ、2020年に2010年のGDPを2倍にするという目標が決められた。これは、7%成長を維持するという意味だ。
この数字を中国人に聞けば、誰も「信じていない」というだろう。
本コラムでも、今の中国経済は7%成長どころか、マイナス成長であると書いた(8月24日付け「衝撃! 中国経済はすでにマイナス成長に入っている? データが語る『第二のリーマン・ショック』」)。
実は、中国の統計は、それを作成する組織もその作成手法も旧ソ連から持ってきたノウハウで行っている。中央集権・計画経済の社会主義国では、統計のいい加減さでは似たり寄ったりの事情だ。
ロシアでは、ペレストロイカの前まで経済統計は改ざんされていたが、批判はタブーだった。しかし、ペレストロイカ前後、ロシア人研究者などがそのでたらめ具合を明らかにした。
例えば、1987年、セリューニンとニーハンによる「狡猾な数字」が発表され、ソ連の公式統計では1928~1985年の国民所得の伸びが90倍となっ ているが、実際には6.5倍にすぎないとされた。平均成長率は年率8.2%から3.3%へとダウンだ。57年間にわたって、国内外を騙し続けたのだ。
公表されている統計からみても、そろそろ中国が経済成長の停滞期に入るだろう、というのが、ほとんどの学者のコンセンサスである。それは、「中所得国の罠」といわれる。
写真:現代ビジネス
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中国も陥った「中所得国の罠」
「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することをいう。
この「中所得国の罠」を突破するのは結構難しい。アメリカを別格として、日本は60年代に、香港、シンガポールは70年代に、韓国は80年代にその罠を突破したといわれている。ただし、アジアでもマレーシアやタイは罠にはまっているようだ。
中南米でも、ブラジル、チリ、メキシコも罠に陥っているようで、一人当たりGDPが1万ドルを突破してもその後は伸び悩んでいる。
そこで中国の動きを、これらの国のこれまでの軌跡とともに示したのが下図である。
実際のデータは、かなり複雑な動きなので、それぞれ2次曲線で回帰させ、各国の特徴がそれぞれわかるようにしている。
これまで中国は驚異的な成長率を保ち、「中所得国の罠」を破ろうとする勢いだったが、急速に成長率が低下し、壁にぶち当たっているのがわかる。
さらに、旧ソ連と同じように、5%程度も成長率が割増になっているとしたら、上の図で中国を左下に引き下げれば、これまで「中所得国の罠」に陥った国と同じ傾向になる。
中国は「中所得国の罠」を破れるだろうか。世界銀行やOECDなどから数々の提言が出ているが、筆者には中国が一党独裁体制をやめない限り、罠をやぶることは無理だと見る。
ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(1962年)では、政治的自由と経済的自由は密接な関係があって、競争的な資本主義がそれらを実現させると 書かれている。経済的自由がないと、国際機関の提言は実行できない。経済的自由を保つには、政治的自由が必要になる。つまるところ結局、一党独裁が最後に 障害になるのだ。
そう考えると、中国の外患内憂はそう簡単に解決しないだろう。