ソース⇒http://nukewaste.net/kabunusi/kabucost.html
原子力発電は本当に安いのか? (株 主 中 川 徹)
(8/24 設備利用率の錯誤及びAとFの数値を訂正)
A.中部電力の発表によれば、
電源種類別の営業費用単価(発電コスト・kWh当たり)は;<電源種類別1kWh当たり営業費用単価>
1999(H11)年度 2000(H12)年度 水 力 8.42 円 7.71 円 火 力 7.13 円 7.95 円 原子力 6.44 円 6.13 円 ・営業費用の送電端発電電力量1kWh当たりの単価を示す。
・この単価には、支払利息、一般管理費等は算入していない。というようになっています。
これは、次のような計算によって算出されたものです。
電源種類別営業費用(損益計算書) ÷ 電源別発電電力量 これを具体的に示すと次のようになります。
水 力 火 力 原 子 力 1999年度 2000年度 1999年度 2000年度 1999年度 2000年度 水力発電費
(百万円)73,660
70,437
火力発電費
(百万円)592,201
633,530
原子力発電費(百万円) 153,988
161,448
発電電力量*
(百万kWh)8,744
9,138
発電電力量*
(百万kWh)83,067
79,641
発電電力量*
(百万kWh)23,918
26,344
1kWh当たりのコスト(円) 8.4240
7.7081
1kWh当たりのコスト(円) 7.1291
7.9549
1kWh当たりのコスト(円) 6.4381 6.1284
(中電発表値) (8.42)
(7.71)
(中電発表値) (7.13)
(7.95)
(中電発表値) (6.44)
(6.13)
* 発電電力量はすべて送電端(発電電力から発電所内での消費分を差し引いた数値)
上記の式で計算した1kWh当たりのコスト(円)と中電が発表した値とはほぼ一致します。
B.発電コストは、設備利用率によって大きく異なってきます。(8/24錯誤を訂正)
(設備の利用率が高くなれば発電コストは安くなります。その度合いは、発電の種類によって違いがあります。)<設 備 利 用 率>
設備容量
(2000年3月末)2000年度
発電量(送電端)
(Aの表より)送電端発電量で計算した
設備利用率備 考 発電実績*
(中電公表)2000年度
設備利用率水 力 5,213 千kW
9,138 百万kWh
20% 92 億kWh 20 % 火 力 22,491 千kW
79,641 百万kWh
40% 830 億kWh 42 % 原子力 3,617 千kW
26,344 百万kWh
83% 275 億kWh 87 % (*火力と原子力は、総発電量の4%も発電所内で消費している)
設備利用率を同一にして発電コストを考えると;
40 %
(火力の利用率)83 %
(原子力の利用率)備 考
(2000年度燃料費)水 力 3.86 円
1.86 円
(0 円)
火 力 7.95 円
6.14 円
(346,027百万円)
原子力 10.70 円
6.13 円
(19,580百万円)
C.原子力発電には、水力、火力では必要のない、原子力発電の運転だけに必要な以下のような費用がかかっています。
(単位:百万円)
1999(H11)年度 2000(H12)年度 1.加工中等核燃料
(期首残高と期末残高の平均)101,815
123,197
2.出 資(すべて無配) ア.日本原子力発電 18,144
18,144
イ.日本原燃 12,260
12,260
ウ.核燃料サイクル開発機構 10,448
10,448
1+2 の合 計
142,667
164,089
長期借入金 平均金利 3.513 % 3.2 % 金 利 分 (百万円) 5,011 5,250 1kWhあたりの利息 0.2095円 0.1992円
D.国は、原子力関連の予算を計上し、Cのア、イ、ウにも資金を出しています。
また、原子力発電、核燃料サイクル推進のための研究や、先導営業を行っています。
ですから、これも原発のコストに含めると;
1999(H11)年度 2000(H12)年度 原子力関連国家予算 4,788(億円) 4,805(億円) 全国の原発の総発電量
(ふげんを含む)3166億1586万 kWh 3220億4953万 kWh 1kWhあたりコスト 1.5122 円
1.4920 円
E.費目分類の中の最大部分は、送電線部分の資産です。
これも原発のコストを押し上げていることがわかります。
送電費用部分を各発電施設に按分することはできませんが、以下の主要な総配電設備図を見ても、送電費の多くは原発分と考えて良いでしょう。
ですから、この部分の多くが原発の発電コストとして加えられて当然です。)ですから、この部分の多くが原発の発電コストとして加えられて当然です。)
http://nukewaste.net/souden.jpg損益計算書によれば、各設備の固定資産額と営業費の内訳は;
電気事業固定資産 (総額:4兆7,920億円) 営 業 費 内訳 水力発電設備 4,411億 円
水 力 発電費 704億 円
火 力 発電設備 9,801億 円
火 力 発電費 6,335億 円
原子力発電設備 2,577億 円
原子力発電費 1,614億 円
送 電 設 備 1兆4,032億 円
送 電 費 1,620億 円
変 電 設 備 6,007億 円
変 電 費 940億 円
配 電 設 備 9,013億 円
配 電 費 2,104億 円
(H12年度貸借対照表及び損益計算書より)
となっています。これは、
・発電設備と送電設備を比べて資産内各比率と費用内各比率が異なるのは、
発電費用には燃料費が含まれるため。・送電と配電で設備資産の比率(14:9)と費用比率(16:21)が逆転する
のは、配電分野では人件費と修繕費が多いため。そこで、1kWhあたりの平均送電コストを計算すると、1.408円となります。
ここで、各電源の立地点と消費地との距離、その他を考えると、原子力の電気の送電コストを、水力、火力の2倍と推定することは、過当ではないと考えられます。すると、
水力、火力の送電コスト(kWhあたり)1.1457円
原子力の送電コスト(kWhあたり) 2.2904円
コスト差: 1.1457円 F.A~Eまでの結果(煩雑を避けるため2000年度のみ)
発 電 方 式
(設備利用率)中電発表(A) より妥当なコスト
(A+C+D+E)水 力(20%) 7.71 円 7.71 円 火 力(40%) 7.95 円 7.95 円 原子力(87%) 6.13 円 8.97 円
設備利用率をおなじにすると(Bの仮定を取り入れる);(8/24錯誤を修正)
設備利用率 40% 設備利用率 83% 中電の計算方式では より妥当なコスト 中電の計算方式では より妥当なコスト 水 力 3.86 円 3.85 円 1.86 円 1.86 円 火 力 7.95 円 7.95 円 6.14 円 6.14 円 原子力 10.70 円 13.54 円 6.13 円 8.97 円 G.原発関連引当金は、過小に計上されています。
期 末 残 高 当期中の引き当て 使用済燃料再処理引当金 182,496 百万円
15,001百万円
原子力発電施設解体引当金 74,655 百万円
4,838百万円
両者は当期の原発営業費用に計上されていますが、明らかに過小です。このことが意味するのは以下のようなことです。
・ 現時点での原発コストを低くしている(低く見せている)
・ 将来引当金が費消されるとき不足を招き、財務を悪くする。
又は危険な、安全余裕度を生まない再処理や解体につながる。
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