【様々な訴訟形態】
[複数請求訴訟]
〔請求の併合〕
〇固有の訴えの併合
訴え提起の最初から原告が複数請求を定立している場合。
〇訴えの主観的併合。
当事者の少なくとも何れか一方が複数の場合の訴え。
〇固有の訴えの併合は、主観的併合に対して客観的併合と言う。
(請求の併合)第百三十六条 数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。
(1)併合形態
①単純併合
複数請求について夫々並立的に審理、判決を求める場合。
(例)
・賃料請求に加えて土地の所有権確認訴訟を併合する。
・主請求である建物の明渡請求に併せて延滞賃料相等損害金の支払請求(付帯請求)。
②予備的併合
各請求の順序付けとして先順位の請求が認容されることを解除条件として後順位の請求についての裁判を求めるものを言う。
(例)第一次請求(主位請求)として売買代金を請求し、第2次請求(予備的請求・副位的請求)として、売買契約の無効を前提として引渡していた目的物の返還請求をする。
✻基本的には各請求が排除的な関係が成立つ場合に認められる。
③選択的な併合
複数の請求を定位するが、其のいずれかについて認められれば残余の請求については裁判を求め無いと言う「併合形態」である。
✻基本的に各請求が両立する場合に認められる。
(例)所有権に基づく返還請求と占有権に基づく返還請求とを単純併合すると同一の結果に向けて二つの認容判決を下すことになることを避ける。
〇二十満足の防止
契約責任と不法行為責任に基づく損害賠償が何れも認容されると二重に執行出来る余地を二重に兼ね無い為である。
(2)併合要件
此れを欠く場合は基本的には各請求毎に別個の訴えが為されたと同様に処理される(通説判例)。
①併合される複数の請求が同種の訴訟手続きで処理されるものであること。
法は名分の例外がある場合を除き、原則として此れを赦さ無い。
(例)人事訴訟法(関連請求の併合等)第十七条 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とは、民事訴訟法第百三十六条 の規定にかかわらず、一の訴えですることができる。この場合においては、当該人事訴訟に係る請求について管轄権を有する家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
近時、解釈論として、そうした例外規定を類推する等して併合許容の範囲を拡張する立場も有力である。
✻手形訴訟等の略式手続との併合は、手続きの性質上、全く赦され無い。
②法律上と特に併合が制限されて無いこと
特別な政策的な理由から併合が制限されている場合
(例)行訴法(請求の客観的併合)第十六条 取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。
③何れの請求についても受訴裁判所管轄権があること
(例外)(併合請求における管轄)第七条 一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。
他の裁判所の専属管轄に属する場合を除いて(13条)、どれか一つの請求に付いて当該裁判所に管轄があれば良いとされる。
(3)効果
単純併合に在っては、原則として裁判所の裁量により弁論の分離が為され得る(152条1項~主要の争点が共通する場合に赦され無いと言う見解も有力とされる)。
(口頭弁論の併合等)第百五十二条 裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
✻単純併合では、判決を為すに熟した請求のみについて為される一部判決も原則として可能である(尤も、鮮血的な法律関係に立つ請求等については全部判決が望ましい。此の場合には一部判決は寧ろ赦され無いとの見解も有力である)。
✻平成19年6月(犯罪被害者保護法)成立
刑事手続きに付随する損害賠償手続きが導入された~法17条
(費用の徴収)第十七条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第十一条第二項各号に定める書面を提出したことによりその判断を誤らせたときは、裁判所は、決定で、当該被害者参加人から、被害者参加弁護士に支給した旅費、日当、宿泊料及び報酬の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法 の規定を準用する。
3 費用賠償の裁判の執行に関する刑事訴訟法 の規定は、第一項の決定の執行について準用する。
〇付帯私訴とは厳密には異なる。
続く。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます