意思による楽観のための読書日記

日銀券 幸田真音 ***

物語は、経済学者の中井が英国の友人に誘われて南アフリカに旅をして、旅先で若い女性に出会うところから始まる。2003年に日銀の政策審議会委員になった中井、その後に史上初の女性副総裁として登場する芦川笙子はなんと南アフリカで出会った女性だった。この60歳を超えた中井と39歳の芦川笙子とのアフェアを絡めた経済小説なのだが、中井と笙子の恋物語が嘘くさくて、この小説には要らないのではないかと感じた読者は多いのではないか。物語には短資会社のディラーである三上とその部下も登場させ、先輩が後輩に教える形で短資市場の状況を読者に説明している。長引く異常なゼロ金利状態、日銀による量的緩和政策が危うい前提に立っていることを理解しながらも、緩和政策をやめられない日銀とその状況のなかで危機感さえも薄れてきた短資ディーラーの状況も解説する。その後2005年に笙子が仕掛ける、日銀による金利引き上げ、金融引締め、その後に続くドル安、米国債暴落、日本国債の外人買い、というお話。初老の日銀委員と39歳の美人副総裁の恋物語などというへんてこな挿話は絡めずに、日銀の内部からみた日本経済の危機的状況を中心に物語を進めた方がすっきりとした小説になったのではないかと思う。
日銀券 上巻
日銀券 下巻
ロロ・ジョングランの歌声
タックス・シェルター (新潮文庫)
日本国債〈上〉 (講談社文庫)
日本国債〈下〉 (講談社文庫)
cc:カーボンコピー
小説ヘッジファンド (講談社文庫)
偽造証券 (新潮文庫)
バイアウト
コイン・トス (講談社文庫)
傷―邦銀崩壊〈上〉 (文春文庫)
傷―邦銀崩壊〈下〉 (文春文庫)
凛冽の宙 (小学館文庫)
あきんど―絹屋半兵衛〈上〉 (新潮文庫)
あきんど―絹屋半兵衛〈下〉 (新潮文庫)
代行返上〔文庫版〕 (小学館文庫)

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