満典は地中海クルーズでドイツ人の男から12万ドルを受け取っていたが、これをエフィーは画家の水谷に相談するようにとアドバイスした。エフィーは水谷に小切手にして12万ドルを託すが、水谷は殺されてしまう。水谷の姉が日本にいた満典を訪問、水谷が隠していた12万ドルの小切手を満典に手渡す。この金を巡ってエフィーがつけ回されているかもしれないと気になっていた12万ドルの小切手を持参していた。アテネの知人シーラの店を訪れ、この小切手を渡す。たしかにシーラは人を使ってエフィーを見張らせていたという。エフィーは見張りに気がつき、怖い思いをしていたと満典に告白する。
エフィーは満典の死んだ息子晋介の生まれ変わりを産むつもりだと満典に伝える。生まれ変わり、という言葉に満典は輪廻転生、という言葉を思い浮かべる。「再会の時は訪れる」という言葉を教えてくれた人から、同じ生を繰り返すのが輪廻転生であり、生まれ変わるのは六道輪廻であると教わる。来世で生まれ変わる晋介に会えるのではなく現世で出会いたいと満典は思う。エフィーが産んだのは女の子、名前をエミーと名付ける。満典がエフィーをミコノス島に迎えに行くところがラスト、エフィーと満典は幸せを誓い合う。
過去世、現世、来世、輪廻転生、六道輪廻などと仏教用語は多出するが、満典の生き方や考え方に仏教的示唆があるわけではない。むしろその逆で、エフィーへの思いやりや琴美への思いやりが欠けているのが満典の生き方である。それでも周囲が助けてくれて満典はなんとかエフィーとの人生の出発点にたどり着くというお話しである。ギリシャの様々な島が登場し、白い家並みや青いエーゲ海を思い浮かべながら読み進む物語は気持ちが良いのだが、そこに登場する観光客の日本人やその日本人をカモにするしたたかなギリシャ人の描写も手加減はない。ギリシャの経済情勢は現在最低の処まで来ているが、今が良ければいい、先のことはあまり考えないという国民性から財政破綻や脱税による闇経済が3割もあり政府財政再建を阻んでいる、というのも理解できる。ロードス島、クレタ島、サントリニ島など日本人なら訪れてみたい観光地、そこでうだつの上がらない日本人と団体旅行しかしない日本人描く舞台にする、ということでこの小説の存在が際だっている。
海辺の扉 下 (文春文庫)
海辺の扉 上 (文春文庫)
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