貞子の弟で哲生が生まれ変わった。名前を柏田という。柏田は生まれ変わりだということは認識しているが、貞子や母の山村志津子の記憶を持っているわけではない。しかし、前世に何かあることは感じていた。数学の才能を持って生まれ変わった柏田は、予備校の数学教師として行方不明になった柏田という男になりすまして生計を立てていた。その生徒に理恵がいた。理恵の親友の春菜は、ボーイフレンドと一緒に諏訪の井戸尻遺跡を訪れた。そこで見たのは縄文時代の女性をかたどった土偶、その頭には蛇がとぐろを巻いていたのだが春菜が見た直後に蛇だけが逃げ出した。女性の土偶の頭には蛇はなかった。
その時から春菜は変わってしまった。親友の理恵にはそれがわかった。そして春菜の体は徐々に変調をきたし、ついに入院、体の一部が石のように変化していく病だった。そんな春菜を見た理恵は予備校の先生である柏田に相談した。そして、柏田は春菜と理恵を通して、古代、役行者と思われる存在からのメッセージを受け取る。その場所は伊豆の大島、役行者が讒訴されて遠島にあった場所である。柏田は伊豆大島に赴き、島の行者窟で仏像を見つける。そしてそこで自分の母、山村志津子と貞子の存在、そして自分が貞子に殺された高山竜司の生まれ変わりであると確信する。
そして竜司にはもう一人の生まれ変わりがいた。この世に生まれ変わって手に入れた名前が川口徹だった。柏田が秘密の情報を手に入れると同時に体の自由が効かなくなる現場に居合わせたのが川口だった。川口は柏田が自分そっくりであることに気がついた。そして、自分と同じ運命を背負っていることを悟った。そして徹は自分に欠けている記憶を共有するため柏田を自宅に連れて帰った。
そして二人で吉野の修験道のツアーに参加し、役小角の秘密を知ろうと奈良に赴いた。同行するツアーは50名ほどのグループだったが、初心者は柏田と徹だけだった。大峯山の修行コースは大変な山道だった。そして最後まで這々の体でたどり着いたと思ったら、50名の参加者は霧のように消えていなくなり、徹が一人だけ残った。そしてそこには山村志津子、そして貞子までもがいた。竜司は志津子と貞子のメッセージを受け取り山を降りた。
そして物語は最初の場面、井戸尻考古館に戻る。そこにいるのは理恵、そして春菜。理恵は娘の凪を生んでいた。物語の続きを匂わせるようなエンディングである。
いったい、このタイドという物語はリング3部作の続編なのか、プロローグなのか、分からなくなる。DNAや謎の病気、日本書紀、役小角、縄文式土器と土偶など、歴史と科学が錯綜するような複雑な物語、鈴木光司ファンにはたまらない。
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