小説「破裂」と同様の内容が1章から3章までで解説されている。東京医大の心臓手術連続死亡事件、慈恵医大青戸病院での未経験医による内視鏡手術による前立腺がん患者死亡事件などを実名入りで紹介。つづいて医局についての解説である。医局の構成員はどのようにして決まるのか、ヒエラルキーは教授、助教授、講師、助手、大学院生と研究員、最下層が研修医。そして医局員の一生、勤務医になる場合、開業医になる場合、そして大学病院などに残る場合、教授になるのは最後のケースである。そして筆者は自身のケースを紹介している。医局の問題はマスコミでその閉鎖性や封建制が問題視されているが、悪いことばかりではないと説明、そして小泉改革で研修医制度が改革された結果、医局が崩壊することとなったと説明している。その推進役が新臨床研修制度だったとして、その仕組みを解説している。以前は研修医は研修ノウハウのある大学病院を研修の場に選んだが、古い体質で硬直化している大学よりも実践的な技能を学べる一般病院を選ぶようになってきた。その結果、研修医をマンパワー(雑用係)として使っていた大学病院は人手不足になり、一般病院へ派遣していた医師を呼び戻した。人手不足に陥った一般病院では残った医師の負担が増えて外来の一部を閉鎖したり、小児科や産婦人科を消滅させてしまう結果となった。結果的に医局が持つ一般病院への影響力がさらに薄れ、病院は独自に医師をリクルート、大学病院では呼び戻された医師が研修医がしていたような雑用をさせられ、研修医はそれを見てますます医局に入りたがらない、という悪循環があるというのだ。相次ぐ産科休止病院の原因がこうしたところにあり、さらに昼夜休日を問わない激務と訴訟のリスクから敬遠されているとのこと。筆者は打開策として、大学病院の初期化、老教授の一掃、研究と診療の切り離し、等を提案する。今出産をひかえた女性は妊娠が分かったときにはもう出産する病院の予約をしなければ間に合わないという話を聞く。少子化対策、必要な施策はたくさんあるが、まず踏み出すべき第一歩はここにあるような気がする。 大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す (幻冬舎新書) 読書日記 ブログランキングへ